パーフェクトスター番外編 Interlude :優しさ

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デスクライトに揺らめく2人が、視界とともに何もない黒へ飲まれていく。
どうしてだか、あの2人の背を見続けることより、この暗闇に安堵を覚えていた。
…多分、私はこの映像、夢の続きを見続けることが辛いのかもしれない。

《Interlude:優しさ》

『──あの、もしもーし?』

誰かの聴覚を通して黒電話の受話器から聞こえてくる声で、
私の意識は映像の中へ三度戻された。

そこは、前回と同じどこにでもあるような民家の廊下で。
かがみはそこにいた。

「あ、ごめんなさい…。つかさ、でしたよね?」

謝罪の後にもう一度用件を確認するかがみに、電話の相手は律儀に受け答えていた。
かがみは、受話器を置いてから家の中全体に届くように声を張り上げた。

「つかさー!友達から電話よ!」
「ん?今行くよぅ」

2階の部屋から聞こえるつかさの声を確認し、かがみは再度受話器を耳に当てた。

「もしもし?つかさ、今来るんでもうちょっと待ってください」
『はいー』

受話器から聞こえる音はノイズ混じりだけど、
間延びしたその声は、意識しかない私に懐かしさを感じさせた。

「つかさ、泉さんって人から電話よ」
「こなちゃん?」

出来ることなら、この夢を終わらせて今すぐにでも会いたい──泉こなた、その人の声だった。
どうしてすれ違いばかりの、この悲しみの色に満ちた夢にこなたが出てくるのだろうか。
私の中にその答えはない。
ひとり動揺している私を他所に、かがみは平然と手にある受話器をつかさへと手渡す。

「はい、私は部屋に戻って引越しの準備進めてるわ」
「うん、わかった。…電話終わったら、また手伝いにいくね」

そう言って受話器を受け取ったつかさは、少し寂しそうな顔をした。

「お姉ちゃん、お待たせ」
「別に待ってないわよ。電話終わったの?」
「うん、こなちゃんが明日暇だったら遊びに行こうってさ」
「そう」

つかさのほうを見もせず、相変わらずの冷たい返答を返したかがみは淡々と荷物をダンボールへと詰めていく。
2人の間にしばらく沈黙が流れて、辺りは気まずい雰囲気へと変化していった。

「…泉さんって人と本当に仲いいのね」
「え、あ、うん!3年間ずっと同じクラスだったしね。こなちゃん面白いから」

自分で作り出した空気に耐え切れなくなったであろうかがみは、ふてぶしくも自分から話題を振った。
一方、つかさは嬉しそうにその話題に乗っていった。
その姿は子犬のようで。
いつも素っ気無いかがみが自分に興味を示してくれたことが嬉しかったから、と言った感じだった。

「いいんじゃない?高校時代の友達は一生の友になるって言うしさ」
「…そう、だね」
「つかさに、そういう友達が出来てよかったわよ。私は明日から東京で1人暮らしだし」
「……お姉ちゃん」

“1人暮らし”という言葉が出た時点で、つかさの表情が一気に曇った。



車のエンジンの音が聞こえると、場面は外へと変わっていた。
家々の庭に植えられた梅の木がしっかりと色づいていて、香るはずもないのに春らしい空気を感じた。

車のエンジン音は、引っ越し業者の車のエンジン。
すでに荷物は積み終わってるらしく、業者の人が家主と挨拶を交わしていた。
その車の前には、かがみがいて。
そして、つかさがいた。

「…お姉ちゃん、あんまり無理しちゃだめだよ?」
「つかさだって…」
「…くすっ」
「………何よ?」
「なんでも、ないよ」

今までとは違って強い口調で説教をかますわけでもなく、言葉を濁すかがみにつかさは苦笑した。
ばつ悪そうに目を泳がせた後、かがみは左手をつかさの前に出し、つかさは不思議そうにその手を見つめていた。

「これ、渡しとくわ」
「ん?…これは?」
「もし…もしも何か辛い事があったり、寂しくなったら」

かがみの手からつかさの手へ。

「いつでも…うち、来てもいいから」

渡されたものは、菫色の鈴がついた鍵だった。
つかさは、笑いながら泣いていた。


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