パーフェクトスター番外編 Interlude :起点

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本当は、言葉では形容できないくらい大切な妹に優しく接したい。
でも、その妹を守るために強さを求めて、決して自分を甘やかさない姉。
それと大好きな姉と時間の許す限り一緒に、ただ仲良く日々を過ごしたいだけの妹。

かがみが歩み寄れば、つかさはいつでもその手を喜んでとるのに。
自分の間違いに気づいているけど、気持ちに素直になれないかがみにはそれをしない。
ここにきて、久々にみせたかがみの歩み寄りはどういう結末を生むのか。

── この双子のすれ違いは何を生んだのだろう。

この夢はもうすぐ終わる。
誰に予告されたわけでもない、直感で分かる夢の終わりを──見届けようか。

終焉を。


《Interlude Last:起点》

明かり一つ灯っていない部屋。
唯一の明かりは窓から差し込む夕日だけで──かがみは、その夕日すら当たらない暗がりに座っていた。

今までと違って状況がまったくわからない私は、見える範囲を模索するも、
不鮮明すぎる映像からはほとんどわからない。
読み取れたのはの日めくりカレンダーの日付くらいで。
その日付は──7月7日だった。

─私らしくないって…なんなのよ。
─そもそも、私らしさって何?私でもわからないのに、あいつらに私の何がわかるのよ…。

目の前にいる彼女は一切口を動かしていないのに。
それでも私に届いたこの声は、そう思った刹那──ドクンと何かが胎動するような振動が私の中に生まれた。
意識しかない私に初めて生まれた感覚は……嫌悪感と挫折による絶望感だった。
今の私にあるはずのない五臓六腑の1つ、胃が締め付けられるような強いストレスに。
気持ち悪ささえ感じるこの状況に、意識を絡めとられそうになり、必死になって抗うだけ。

── ここまできて私は理解した。
これはかがみの感じている感覚で、私はその感覚を体験しているんだと。

何故?どうして?私が?かがみの?
疑問符ばかりが浮かぶも、私は答えを持ち合わせていなくて。
意識が強い負の感情に流されそうになっていた。

気持ち悪い。
このまま意識を断とうかと、諦めをつけようとしたとき。
ガチャっと、鍵が解錠されたような音が聞こえた。
丁度その音は、かがみが座っている正面──玄関から聞こえてきた。

状況の変化で若干気が紛れた分の余裕を見る事だけまわす。
かがみもその音に気付いたのか、自分の膝から音のしたドアへ注視していた。
開かれるドアから差し込む夕日が妙に眩しく感じられた。
その中心に立つ影が1つ──つかさがそこにいた。

「…お姉ちゃん?」

不思議そうに呟いたつかさの声から一瞬の安堵を感じたのもつかの間。
一番助けて欲しかった人、でも一番見せたくない人に見られてしまったから、かがみは溢れた。

「…お姉ちゃん、どうし」
「……………………帰って」

つかさの言葉を、かがみの冷たい声が遮り、

「でも…!!!」
「でもじゃなくて!お願い、帰ってよ!!!!!」

悲痛な叫びが部屋に響いていた。
私には先程と似た胎動。
そして、先程とは比にならない重圧に押し潰されていく。

もう音声が聞こえない。でも、映像は流れたままで。
つかさは手に持っていた荷物を落として走り去っていくまで、私はずっとこの場面にいた。
はずだった。



夕日の色に似たヘッドライトが目の前を通り過ぎる。
音声は戻っているようで、荒い息をはく音だけが届いていた。
何台もの車が通り過ぎ、何人もの人を追い抜く。
そんな夜の街を走っているのは──ワタシ?

映像が乱れ、次は赤い光と緑の光がいの一番に目についた。
荒い映像、人工的な光の中に浮かぶ影は4つ。
全部が全部、こちらに向かってくる。

「──?」
「──、つかさが…!」

欠損が多い映像と音声。所々聞き取れない。
だから前を見て。なんとなく赤い光に浮かぶ文字を読んでみた。

「手術中?」

さっきまでなかったはずの口が静かに言葉を紡いで、
その直後にガンっと物騒な音がどこからか聞こえた。

なかったはずの肩に触れるモノ。
霞んでよく見えないそれは誰かの手。

『あんたがついてたはずなのに!!!どうしてつかさがこんなことになってるのよ!ねぇ、かが──』

ワタシハ、だれ?

 * * *

(ピピピピッ…ピピピピッ…)

聞き覚えのある電子音。肩に何か触れている感触で私は目を覚ました。

「──さん、おーい」

徐々に感覚が戻ってくると、肩にふているモノが何か分る。
それは──自分とは別の温度をもった人の手。

「ひぅっ!!?」

自分でも聞いた事ないような声が喉から出て、その場から立ち上がる。
勢いで堅い何かが床に叩き付けられて、凄い音を立てていた。
他から見ればさも間抜けな光景かもしれないと、考えられるだけの思考が戻ってきた。

「うわぁ!?ご、ごめん、泉さん」
「──は?」

でも、完全覚醒には程遠いのか、今置かれた状況が把握出来ずにいた。
泉、泉…と、あるだけの情報から抜けた糸を手繰り寄せる。

── ああ、そうだ。今は“泉こなた”なんだっけ。

自分から進んでやった日雇いのバイト。
私には名前があっても名字がないから、同居人であるこなたから名義を借りている。

── うん、今はその休憩中だったはず。

手元に丁度ある時計兼携帯を引き寄せて、寝起きの霞んだままの目で確認する。
休憩は確か13時から1時間で、今は14時──10分を過ぎていた。

「…泉さん、まだ寝ぼけてる?」
「…え、あ!!」

ようやく自分の置かれている本当の状況が理解した。
つまり、私は休憩時間に知らずうちに寝ていて──寝坊したんだ。
目の前にいる人は確か何度か派遣先が一緒で、たまたま仲良くなった人──Aさん(仮名)だ。

── ああああああ!

自分の失敗に脳内で悶えてから、倒した鉄パイプの椅子を高速動作で立て起こし、
現状を改善すべく頭を大きくふり下げる。

「ご、ご、ごめんなさい!!!」

勢いだけなら土下座も出来そうなくらいの謝罪をした。
そんな様子をどう思ったかは不明だけど、Aさんはクスリと笑った。

「そこまで慌てなくても…まぁ面白いもの見れたから御咎めなしね。休憩交代しましょ」
「本当にごめんなさい…」
「いいって。それより早く現場でないと、そっちで起こられちゃうよ?」

それもそうだと同意を、上げた頭だけで表して、今度はお礼を言った。

「気にしない気にしない、あ」
「?」
「携帯、なってたよ?まさかの彼氏からだったりして」

言われてから携帯を確認すると、確かにメールが来ていた。
今確認しようかと思いつつも、とりあえずこの場にいると現場に出るのが確実に遅れそうだから、
そんな相手いませんよとだけ返して、休憩所から出る事にした。

現場まではそんなにかからないけど、携帯を見る余裕くらいはある。
ボタン一つ押して、送信者を確認すると──といっても今の私にメールをくれる人は1人しかいないわけで。
当然の如く、こなただった。

『仕事終ったら連絡ちょーだい。それにあわせてご飯つくるからさ』

それだけの内容だったけど、ちょっとだけ嬉しかった。
ここ最近元気のないこなたを、どうにか元気にしてやろうと思いながら携帯をしまう。
そして、心に残っているもう1つの事を考えた。

── 長い夢をみてた。でも、内容はほとんど覚えていないとか。

大切なことはたくさん詰まってたあの夢。
忘れちゃいけないのに、起きた衝撃が大きかったせいかすっかり頭の中には残っていない。


だから、このバイト中はその夢を少しでも思い出そう、と。


《Interlude OUT》



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  • 重いな……
    愛すること・愛されることをしらずに育った子供は、自分も他人も愛せなくなる。
    愛に満たされることによって育まれるはずの健全な自尊心を奪われ、
    ただ自分がこのままいてもいいんだという安心感を剥奪される。
    かがみのせいじゃないんだよ、もっと楽に生きてもいいんだよと、心の底から言ってあげたい。
    でもそれができるのはこなただけ。
    こんな辛い思いをしてきたかがみにこそ、本当の幸せを掴んでほしいと切に願います。 -- 18-236 (2008-10-04 19:12:43)

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