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私の日常

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匿名ユーザー

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誰にでもある、日常というもの。
特に刺激もなく、何の代わり映えもしない。
中には、ループのように続くありふれた日常に嫌気が差し、刺激を求める人も少なくはないと思う。
だけど、いつかは気付く。
そんな日常が、本当はすごく幸せなんだということ。



私の日常



人は慣れる生き物で、同じような日々が続くと刺激が足りなくなり、何か大きなことを求めるようになる。
それはきっと人間の心理だから、そう考える人がいるのは当然だ。
私も、そう思う事は今までに何度もあった。
でも、私は平凡な日常を送れる事が、どれだけ幸せかって事も知っているつもり。
妹のつかさ、才色兼備なみゆき、そして、ちまくて、どことなくほっておけないこなた。
私の大切な人達。そんな人達と過ごす日常が、私にとってはこれ以上ない幸せで。
きっと、どんな些細な事があったとしても、皆とは離れる事はない。
そう確信している位、私から皆への信頼は強い。
逆もまた然りだと、勝手に思っている。
…でも、今の私は大きな不安を抱えている。
確信している…なんて言ったけど、多分今の私が抱えている問題は、きっと"些細な事"のレベルを超えているから。
少なくとも、私の中では、私の大好きな日常が壊れかねないと、そう思ってる。
そう、あれは半年ほど前に遡る…



まだ私達が2年生で、ちょうど季節の変わり目。
まだ控えめな風で木枯らしが舞い、その涼しくて心地よい風が頬を撫でる秋から、
急激に肌をつんざくかのような寒風を吹かせる冬に季節が移る頃、12月。
木々はすっかり葉という名の衣を捨て、枝のみとなってしまった、寂しい校庭周り。
道行く人も、皆防寒具を着込み、吐く息は白い。
そんな景色を、自分の教室の窓から眺めていたのを覚えている。
教室には、冬独特のにおい。これは、ストーブによるものだけど。
私達のいるような教室は見た目もあまり暖かくはなさそうだけど、
案外ストーブ効果はあるようで、つい、うとうととしてしまいそうな、そんなとある日の午前中。
その日も午前中の授業はつつがなく終了し、私はいつものように、親友達が待つ教室へと向かう。
「おーっす、来たよー」
私の声に揃って顔をこちらに向ける3人。
「お姉ちゃん、待ってたよ~」
ふんわりと笑うつかさ。
「いらっしゃい、かがみさん」
温かな笑顔で迎えてくれるみゆき。
「やふー、かがみん。早くこっちへ座りたまへー」
いつもの笑顔で、私がいつも拝借している席へと促すこなた。
三者三様の反応で、温かく私を迎えてくれる、私の居場所。
私も笑顔で返して、いつもの場所に納まった。
そこからは、いつもと同じ光景。
こなたがぼけて、私がそれにつっこんで、つかさが少し天然な会話をして、みゆきがそれをフォローして。
そんな"いつも"が、私はたまらなく好きだ。
こなたあたりにからかわれるから、口に出しては言わないけど。
その日も、"いつも"で始まり、"いつも"で終わる。そう思っていた。
でも、違った。その時の私にはよくわからなかったけど、今思えば、明らかに違っていた。


「…でさー、そのキャラがすっごいツンデレでさ~」
「へぇ~、そうなんだ~」
「つかさは身内にいるからわかるよね~、まんまなツンデレが!」
そうニマニマと力説しながら、私の方をちらちらと見てくるこなた。
どうせ言いたい事はわかってるけど…
「何よ、人の顔ちらちら見て」
「いやぁ~、改めてかがみはツンデレだな~って思ってさ」
「私はツンデレじゃないっていつも言ってるだろうが!」
私が拳を上げる動作を取ると、こなたは「ひゃー、かがみ凶暴~」と、座っていた椅子からさっと立ち、
頭を抱える仕草をしながら少し距離を置く。
「全く、今日と言う今日は拳で教育が必要みたいね…!」
私も席を立ち、こなたを追いかけようとした瞬間。
「あ…!」
私は運悪く、床に敷き詰められているタイルの、かけてはがれている部分に足を取られ、バランスを崩してしまった。
「かがみ!」
目前に迫るいかにも硬そうなタイルに、痛みを覚悟し、きゅっと目をつむった。
けれど、私がコンマ数秒後に感じたのは、思いの外柔らかい感触と、「うぐっ…」という、何だか情けない声。
次にわかったのは、とくん、とくんというリズムのいい音と、心地よい暖かさ。
あまりの心地よさに、一瞬、自分が今しがたこけたことなど忘れてしまっていた。
私が現状を把握するに至るのは、「かがみ、だいじょぶ?」という、聞き慣れた舌ったらずな声が私の下から聞こえてからだった。
ゆっくりと顔を上げると、すぐ目の前に、親友を本当に心配している表情のこなたの顔があった。
「………」
「あの、かがみ…」
まだ理解しきれていないのか、私の体も、表情も動かない。
次第に、こなたの顔が桜色に染まり出し、滅多に見る事のない、少し照れ臭そうな表情で…
「かがみ…顔、近いよ…」
とくん…
………ん?
何だ、今のは…?
急に体温が上がりはじめ、ようやく異常事態に気付いた私は
「な、ななな!?」
狼狽するしかなかった。急いで飛びのくと、やれやれと言った感じで、こなたもゆっくりと起き上がる。
「も~、かがみはにぶちんだな~。私が滑り込んでなかったら怪我してたかもよ?感謝したまへー」
「…え?あ、あぁ…ありがと」
この状況を見るに、私がすっころびそうになったところに、間一髪、こなたが私の下に滑り込んでことなきを得たようだ。
よく即座に反応出来たな。その運動神経には感心するし、私を助けてくれた事も素直に嬉しい。
でも、待てよ…
「そもそも、こうなったのってあんたが原因じゃないのよ」
「あ、あれ…そうだっけ?あっはっは、細かい事気にしちゃ世の中渡り歩けないのだよ、かがみん」
親指を立てて、私にむけてぐっと突き出して来るこなたに、今度は私が呆れる番だった。
「いや、お前は気にしろよ」
全く、相変わらず能天気だ。でも、その方がこなたらしいか。
さっきみたいな表情は…
そう思った瞬間に、先程まで頬を桜色に染めていたこなたの顔が私の脳内に広がって。
さっきのこなた…何だか……って!
煩悩を振り払うように、頭を左右にぶんぶん振る。
な、何を考えているんだ、私は…。よりにもよってこなたを"可愛い"だなんて。
いや、可愛いのは確かに可愛いんだけど。
でも、この感情は、普段こなたに対して感じている"可愛い"とは違う…と思う。自信はないけど。
結局、それが何だったのかわからないまま、時間も時間だったので、私は自分の教室へと戻る事となった。


午後の授業は、昼休みの事が気になってしまい、半分しか授業を聞けていなかったっけ。
みゆきほどではないけど、私も気になる事はそのままにしておきたくはない性分で。
いつもならしっかりと板書しているノートも、今日は具合が悪いらしく、いつもの半分程度のペースでしか埋まっていない。
ちゃんと耳に入る担当教師の説明すら、今の私にとってはBGMでしかない。
他人からすれば、「そんなに気にする事か?」かもしれないけど、私のなかでは、それが妙に引っかかっていたから。
何で、こんなに気になるんだろう。過去にこなたがあんな表情してたって、今まで気になった事なんて一度もないじゃない…。
こんな、名前もわからない、もやもやした感情なのに、どうして胸がちくちくするのよ。
今日の私は絶対におかしい。おかしいと言っても、体調は別に悪くない。でも、辛い。
何がそんなに辛いの?
わからない…。ずっと、そんな事が延々と、頭の中でぐるぐるとループしていた。
そんな初めての感情に戸惑う事しか出来ない私は、確実に私の中に宿った小さな火には、この時はまだ気付かなかった。



午後の授業に全く身の入らなかった私は、深く溜息を吐いた。
「一体、何やってたんだか…」
午後、目いっぱい使って自己討論をしているうちに、先程のもやもやした感情は収まってきていた。
自嘲気味に、誰にでもなく呟いた私は自席を立った。
既に午後の授業は全て終わり、ホームルームも今しがた終わった教室は、すっかり放課後の色となっていた。
これから部活に行く人、雑談に花を咲かせている人、帰りにどこか寄っていこうかと話す人。
本日の課題が終わった事による安堵感というか、ホームルームの前と後では、皆の表情も柔らかく見える。
教室も、気持ち温度が上がったような、そんな風に感じてしまう位に、一気に活気付く放課後。
自席から窓越しに眺めた景色が、登校している時と、下校している時とで温度差があるように感じるのも、きっと同じ理由なんだろうな。
私も例外ではなく、放課後を心待ちにしている1人ではあるわけで。
1日の中でも、楽しみな時間を過ごすため、今日も今日とて、親友達が待つ教室へと向かう。
「お待たせー、ちょっと遅くなっちゃったわ」
私の声に、昼休みと同じように、3人が揃って私の方へと顔を向けてくれる。
「ううん、私達もさっき終わったところだから~」
「ええ、ちょうどよかったです」
やはり、温かく迎えてくれる二人に「そっか~」と笑顔で返す。ここまではいつも通り。
「おやおや、私達より早くホームルームが終わったかがみんは、教室で1人何やってたのかな?」
とくん……
おかしい。
たった一声聞いただけなのに。
さっきようやく収まったはずの感情が再び疼き出す。
「…?おーい、かがみ?」
「…え?あ、べ、別に…考え事してただけよ」
私の反応がない事に疑問を抱いたこなたの声に、気付くのがワンテンポもツーテンポも遅れている。
顔が熱い。
「ふふーん…その反応、もしや男かっ!?」
「はぁ!?ち、違うわよ、そんなんじゃないって!」
素っ頓狂なこなたの発想に、思わず本気で反論してしまう。ていうか、何でもそっち方面につなげるな。
私とこなたのやり取りに、「え、お姉ちゃんそんな人いたの?」と本気でぼけるつかさにフォローを入れる身にもなって欲しい。
「ん~、じゃあ何のさ。かがみが1人で考え込むような事って…。あ、まさか…!」
「な、何なのよ?」
こういう時は、嫌な予感しかしない。こなたが悪戯を思いついたようなにまにま顔で私の事を見つめているから。
そのはずなんだけど、今日の私は、何度も言うようだけど、おかしい。
きっと、何かを期待している。何を…?
「ようやく、私の嫁になる決心がついたんだね!かがみ~ん!」
「え…えぇぇ!?」
「私の嫁」なんて、こなたがいつもふざけて私に言ってくる単語の中では常套句のはずなのに。
より一層、私の胸の鼓動は早くなり、過剰反応してしまう私に、こなたも少し訝しげな表情。
「どったのかがみ?何ていうか、ちょっといつもと違う?」
「い、いや、えっと…あんたが変な事言うからよっ」
「変な事って、いつも言ってるじゃん」
「それはそうなんだけど…」
上手く弁解出来ず、言葉に詰まってしまうのも必然か。しばしの沈黙。
つかさもみゆきも、どう入り込んでいいか迷っている様子だった。
しまったなあ、私。

それをこなたはどう取ったのか、ちょっと申し訳なさそうな表情になって
「かがみにだって、そういう事あるよね。ごめんネ、からかいすぎたよ」
私を気遣う言葉をかけてくれた。こなたは、実は相手の心を読むのが上手だから。
冗談が過ぎる事はあっても、本当に相手が嫌がる事は言わないし、引き際を知っているというか。
そんなこなたの言葉に、申し訳ないと思う気持ちと、心に染み込む優しさと。
そして、先程から止む事のない鼓動とが、入り乱れていた。
「いや、こなたが謝る事じゃないわよ。私も、なんかごめん」
私の言葉を聞いて、ようやくこなたの表情が元に戻る。
「ささ、そろそろ帰ろうか。青春は待ってはくれないのだよ!」
こなたに続いて、つかさ、みゆき、そして私と続く。
帰りのことは正直、あまり良く覚えていない。
ずっともやもやが晴れずに、私の中で燻っていたから。
こなたの優しさに改めて触れた事と、「私の嫁」発言が、確実に私の心を鷲掴みにしてた。
何で、こんなにこなたの事が頭から離れないのよ。
今まではこんな事なかったのに、絶対おかしい。
これじゃあ、まるでこなたの事が…!
その単語が思い浮かんだ瞬間、すぐにそんなわけはないと、頭の中からその考えを追い出した。
確かに、こなたの事は嫌いじゃない。
そうでなければ、親友なんてやってない。
でも、この感情は明らかに今までのものとは違う。
じゃあ、本当にそうなの…?
私は、こなたの事が…。
もう一度、その単語が思い浮かんだけど、今度はその考えを受け入れてみる事にした。
するとどうだろう。
今まで苦しかったもやもやが、心地よいものに変わって。
見つからなかったパズルの最後のピースが、ぴったりはまった感じと言えばわかるだろうか。
答え自体は、単純なものだった。
今までそういう経験自体なかったから、気付くまでに時間がかかっただけで。
その感情に、不思議と嫌な気持ちはしなかった。むしろ、清々しい位。
そっか、私はこなたの事が…。



途中、みゆきと別れたのが15分位前だっただろうか。
今は私、つかさ、こなたの3人で降車駅まで雑談をしているところ。
12月ともなれば日が落ちるのも早く、まだ16時半だというのに、もう辺りは夕焼けに照らされている。
夕刻になると、まだ1日が終わったわけじゃないのに、「今日もおしまいか」という気持ちになる。
それはきっと、一日の中で、私が一番好きな時間が終わりを迎える時間に他ならないからだと思う。
こなたとも、もうすぐお別れ。もう少しで、降車駅に着いてしまう。
また明日会えるのに、こんなに切なくなるものなのだろうか。
きっと、さっき気付いてしまった感情による作用が大きいとは思うのだけれど。
「まあ、かがみも今日はゆっくり休みなよ~。つっこみがいないと張りがないのだよ~」
「毎日つっこむ方の身にもなれって。幸い、今日は宿題も出てないし、ゆっくり休むわよ」
「あはは~」と冗談めかして言うけれど、こなたの目は真剣で。
「うん、でも本当に心配してるからさ。些細な事でも。だから、明日はいつものかがみに会わせてよネ!」
とくん…
あぁ、何でこんなに、私に優しくしてくれるのよ、あんたは。
いや、それはただの自惚れで、こなたは私以外にだって優しくしてると思う。
でも、この感情に気付いてしまった私には、止められない。
わかってはいても、期待もしちゃう。
だって、私は…
「おっと、そろそろお別れだネ」
「うん、また明日ね、こなちゃん」
「あんたも気つけて帰りなさいよー」
「うん。それじゃ、また明日ね、つかさー、それから…」
私は、こなたが…
「私の嫁!じゃーにー!」
どくん…
最後の一言で、更に心臓が跳ね上がる。
きっと、あいつは何の気なしに言った言葉。
でも、私にとってはそれがとても大切で。
だって、私は…"こなたを好きになってしまったから"



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  • あなたの文才に惚れ惚れした -- 名無しさん (2024-02-25 21:58:06)
  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-07-01 17:25:39)
  • 堪能させて頂きました。心情の描写がとても丁寧なんですね -- 名無しさん (2013-06-24 15:14:33)


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