かがみのみぞ汁

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「こなた~、こないだ貸したフルメタの短編集、ちゃんと読んだ?」
「う、うん。結構面白かったよ。てか、かがみ顔近いよ?」
「でしょでしょ? 原作のラノベだってなかなか面白いでしょ?」
(だから顔が…って、聞いてないか)

「はい、これ次の巻」
「いいっ!?」
「ささっ、読書の秋。さっそく次行ってみよう!」

『目と鼻の先-Eye Don't Nose-』

「行ってみよー!」というかがみの勢いに負け、私はその場で本を開いた。
 ペラリとページを何枚かめくり、とりあえずカラーイラストに目を通す。

(おおうっ!早速巫女かなめ♪相変わらず四季童子さんのイラストは可愛いなぁ…)
 なーんてことを思いながらちらりと目線を上げるとかがみのそれとぴったり合った。
 じ~~~~~~っと言う擬音が聞こえてきそうなほど顔を近づけて、かがみは私の正面から
こちらを見つめている。
 上機嫌な笑顔に私の心音が跳ね、慌てて下を向く。
(うぅ、読みづらいやぅ…)

 新たにページをめくり、読んだフリをしながらもう一度視線を上げる。
 やっぱりいつものように両手で頬杖をつきながら、私の目と鼻先でニコニコとかがみは微笑んでいた。
 私にラノベを薦める時、いつもこうやってかがみは私の傍にすごく近づきこちらをじ~っと見てくる。

「あの~かがみ?顔が…」
「ん?どした?もうボン太くん出て来た?」
「ううん、まだだけど…」
「ささっ、早く読もう!」
(んもう、こっちの気もしらないで! そんなに近くで見つめられたら、集中できるわけないじゃないか…)

 再び本と向き合うが、やっぱり一文字も頭に入らない。
 私はもう読むことを諦め、適当に文章を目だけでなぞり、ゆっくりページをめくっていく。
 頭に浮かぶのは目の前のかがみの小さな唇。柔らかそうな『それ』は、かがみが
いつも使っているリップのせいか潤いに満ちたまま軽い弧を画いている。
 気のせいか、かがみに抱きついたりすごく傍に近づいた時にだけ感じる甘い香りもする。

(全く…かがみは無防備すぎだよ)
 もし私がひょいと顔を上げて首を伸ばせば、かがみが抵抗する暇もなくその唇を奪える距離だ。
 かがみがすうっと息を吸い、唇が少しだけ開いた。
 まるで空気とともに吸い寄せられるような感覚に私は思わず息をのむ。

『奪っちゃえって。かがみだって望んでいるからこうやって誘っているのかもよ?』
 私の中にいる蛇がそう囁く。
(いやいや、蛇さんやそんな訳あるわけないじゃないですか。ってゆーか、それ何てエロゲ?)
『馬鹿だなー、かがみフラグなんて立ちまくりだって。間違いなくトゥルーエンド一直線。もう
ゴールしてもいいんだよ?』
(いやいやいやいや!!最近のギャルゲー舐めちゃいけませんぜ蛇さん! トゥルーエンドと見せ掛けて
カオス!ラブラブと思ってたらNTRエンドは当たり前! 空鍋、包丁、鉈、おはぎ!!)

『そ、そうなの?』
(そうなんです!)
『というか空鍋とおはぎって何?』
やれやれ、この蛇のギャルゲ歴は葉鍵全盛期で止まってるみたいだ。
(と、ともかくそんなこと無理なんだからっ!)
『ふーん…でも禁断の果実ってのは甘美な味だっていうけどな~』
(う゛~、もういいから引っ込んでなさい!!)

『はいはい、そうしますよ。それにしても、いつもは飄々としている風を装いながら
心の中じゃ焦りまくってるなんてかがみが知ったらなんて言うんだろうね』
 ニヤリと――いつもの私のように笑って蛇は私の中に帰っていく。

(うぅぅ…)
 図星を指されたせいか、私の心は何も言い返せないまま押し黙る。
 頭の中ではかがみの唇と一緒にさっきの蛇の言葉がぐるぐる回る。

(禁断の果実…か…)
 確かにそうかもしれない。
 神様が食べちゃダメ!っと言ったのに蛇の囁きに負けてイヴが食べた果実。確かそれは
リンゴだったと聞いたことがある。
 そういえば、ずっと昔やった心理テストには「リンゴの味のイメージでファーストキスの味がわかる」
というものがあった。

 望む全てのモノがあるエデンの園でイヴが食べた果実は『知恵の実』。
 その実を食べて知恵をつけ、自分が裸であることなど様々なことを『知ってしまった』二人は
神様に楽園を追放されてしまった。

 きっと私も、これを食べてしまったら『何かを知って』今の幸せはなくなってしまう…
そんな気がして私は今までこの目と鼻の先にある果実に触れることが出来なかった。


 多分、私は贅沢なんだろう。
 好きな人が傍にいてこうして笑っていてくれる。私のダメなところを怒ってくれて、私の
度を超した悪ふざけも何とか許してくれる。居心地の良い場所を私にくれる。
 こんなに幸せなのにそれ以上を求めてしまう。
 ひょっとしたらそれを求めることで今の全てを失うかもしれないのに…。

 でもそんな不安とは別に、私の中の蛇はどんどん大きくなっていく。

『――が私のことをどう思っているか知りたい』

 あの果実に触れ、その中に満ち満ちた甘い果汁を吸ったら分かるかもしれない。
 閉じた目を開けた時、――はどんな反応を見せるのだろうか。

 今みたいに微笑んでくれるのかな?
 それとも…。



「ちょっとこなた、ちゃんと読んでる?」
「へっ?!」
 こなたが我に帰るとかがみの顔が目の前にあった。
 先程よりずっと近くにある『それ』にこなたの顔が真っ赤になる。

「よ、読んでますよっ?!」
「本当に? なんだか反応鈍いけど、どこまで読んだのよ」
「か『空回りのランチタイム』…かな?」
 先程目次を見た時にチラリと目に入ったタイトルを挙げる。

「嘘つき、ページからしてまだ一話目じゃないの」
 さすがは所持者、しっかり嘘がバレてしまった。
 かがみは機嫌を損ねたように腕を組み、そっぽを向く。
「ううっ、そんなにマジマジと見られたら集中できないんだって…」
 こなたがなんとか小声を絞り出すとかがみはこなたにずずいっと接近し、人差し指を立てた。

「それじゃ、この本貸すからちゃんと読んでおくように!」
「う、うん」
 その返事に満足したのかかがみは立てた人差し指でこなたの額をツンとついて笑った。

「ちゃんと感想聞かせてね、ニブニブこなた」

 こなたの目と鼻の先には、笑みによって細められたかがみの『目』がある。
 それはこなたが知りたがっていた疑問の答えそのものなのだが…そのことを知っているのはただ一人。
 God only knows….




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  • 内容とアホなタイトルとのギャップ萌えwww -- 名無しさん (2009-09-05 00:41:10)
  • 『神の味噌汁』と掛けてるだけじゃ? -- 名無しさん (2008-07-29 19:18:31)
  • ↓かがみ『のみぞ』知る、じゃない?俺も最初勘違いしたが -- 名無しさん (2008-06-20 15:49:39)
  • このSS、みぞ汁ってタイトルでいーのかよ… -- 名無しさん (2008-06-20 01:03:47)
  • ↓猛るなww けど面白い!グッジョ~ブ! -- 名無しさん (2008-06-20 00:40:53)
  • うわーうわーうわわわ!!!こなたが揺れてる描写が新鮮で…猛りました!! -- 名無しさん (2007-11-22 05:44:41)

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