もし、こなたが例のシーンを見ていたら?

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――今日は、修学旅行の二日目。

私たちは今、銀閣寺に来ているのだが、
ひとつだけ気になることがある。

……かがみの様子がおかしい。

こちらが何を言っても気のない返事。
仕草もどこかそわそわした感じで、
心ここにあらず、という言葉がぴったりだ。

……かがみ、どうしたんだろ?
・・・・・・・・・・。
・・・・・。

――21:00。
ホテルに帰って、ゴハンを食べたら
後はいつもの雑談タイムだ。

――と行きたいのだが、
私は、いつの間にか忽然と姿を消したかがみを探している。

……つかさ、みゆきさんの話では

「用がある」

と言って部屋を出たっきり戻ってないみたいだ。

……普通に考えると、同じクラスの友達のところに
行ってそうなもんなんだけど、そこはさっき確認した。

―ロビーに到着。
全面大理石張りの床には、
ふかふかで居心地のよさそうな椅子が並ぶ。

…予測通りほぼ同校の生徒で満員。
が、かがみの姿はない。

「はぁ……」
ため息を、一つ。

――ふと、外の景色に目を向ける。
すでに外は真っ暗で、ビルの明かりが乱反射しており、
とても綺麗に見える。

視界を下に移すと、頻繁にすれ違う
車のヘッド/テールランプが流れる。

――瞬間。


……ひときわ明るいH.I.Dランプに照らされて、
浮かび上がる人影が、……ふたつ。

――仲よさそうに今、手を繋いでいる所だ。

……片方は見慣れたツインテール。

――間違いなく、かがみだ。

…もう一人は……まったく知らない。
制服を着ているから、
同校の生徒だというのはすぐに分かった。


――問題は、男だったということだ。


…問題?
普通に考えたら、友達にオトコができたとしたら
喜びそうなもんなのに……。

――「何か」が強烈に、目の前の光景を拒んでいた。

……見ていないことに、したかった。
……早く、この場所から、逃げたかった。
……だけど、体はまったく動かなかった。

「………っ!!」

――体が石のように重く感じる。
心を吹っ切るように、走り出す。

――息を切らして部屋に戻る。
オートロックのドアを開けると、みゆきさんが
一人でちょこんと座っていた。

「…?あれ?…つかさは?」

……自然に振る舞ったつもり、だったんだけど
よほど変な顔をしていたんだろう。
みゆきさんの顔は、すごく不思議そうな顔をしている。

「つかささんは、お土産を買いに行かれたようですが……」
「何か…、あったんですか…?」

…ほ~ら。やっぱり見抜かれてた…。

「…………」
「……私でよければ、…相談に乗れますよ?」
「……」
「…話して、楽になることもありますよ?」

――同意を求めたかったのか、共感してほしかったのか
それは分からないけど、口は自然に開いていた。

「“友達”に…カレシが、…できたみたいなんだよ」
「……」
「誰よりも…喜んであげたいのに…ぜんぜん、嬉しくないんだよ」
「……」

――みゆきさんは、真面目な顔をしたまま、
私の話を、ただ黙って聞いている。

……視線が、痛いよ。

――思わずうつむいて、視線をそらす。

「…私、おかしいのかな。…間違ってるのかな…」
「……」
「……」

――両人とも、沈黙が三秒ほど続いた。
先に口を開いたのは、みゆきさんだった。

「泉さんは…」
「…?」
「泉さんは、…そのお友達のことが、大好きなんですね」
「………ほえ?」

……何で?

――みゆきさんの表情が、少し緩んだ気がする。

「それは今、泉さん自身が言われたことですよ?」
「……?」
「『喜びたいのに、喜べない』、『全然嬉しくない』って言われました」
「…うん」

――みゆきさんの表情は、もういつも通りの笑顔になっていた。

「……後は消去法です」
「…そのお友達のことを、『嫌い』とか『普通のお友達』
と思っている人は、…そんな事言いません」
「……ぅん」
「…それなら、泉さんはそのお友達のことが『すごく大事』、『好き』
…だという事には、なりませんか?」

…『すごく大事』、『好き』…。
……そうかも知れない。

――でも。

「…でも、もう…」
「…カレシ…できちゃったんだよ?」
「――大丈夫です」

……えらくキッパリ言い切るみゆきさん。

――自信のような物まで、見て取れた。
・・・・・・・。
・・・。

「急用を思い出しましたので、ちょっと失礼しますね」
「え?」

――言うが早いか、みゆきさんは
すでに立って、歩き出していた。

……高い身長に、長くて緩やかにウェーブのかかった髪。
立てばシャクヤク、座れば…なんて、「ことわざ」があるケド
こういう人のことを言うんだろうなぁ~。


みゆきさんが、うらやましいよ。
私なんか…………。


――「パタン」という扉が閉まる音が鳴ると、部屋は私一人になる。
流れから言って、"かなり"みゆきさんの行動が気になるのだが
本当に急用か、私にとって害になるようなこともないと思う。

―放っておくか。

……ひとりになっちゃった。
なんか寂しくなったなぁ。
DSしてようかな、とも考えたけど
なんとなく、そんなのやる気になれなかった。

――虚無感。
ただ広い空間の中に、私一人だけ置き去りにされたような
そんな、感覚。

唐突に、私は少し未来のことを考え始めていた。

……この先卒業しても、ひんぱんに連絡とか取って、
ず~っと一緒にいられると、思ってた。


――かがみ。


……欲しがってたオトコができて、よかったね。
かがみってばツンデレだから、
これからは、オトコにばっかりデレるんだろうなぁ。

やっぱ、フラれたりしない限りは、
そのまま結婚とかしちゃうんだろうなぁ。

…そんなのいやだよ…。
こっちにいてよ。
また、今までみたいに四人で楽しくやっていこうよ。


――かがみっ。


…「いつもの」四人組も、もう…終わりなのかな…?
なんか、かがみが遠くにいるように思えてきた。

オトコと一緒にご飯とか食べて、
オトコと一緒にデートとかして、
オトコと一緒に卒業して、
オトコと一緒に生活して、
そして……。

これから、かがみは私たちの知らないトコロに
どんどん行っちゃうんだ。

将来は大学を出て、弁護士志望だって?
かがみなら、絶対やれる。
今までずっと見て来たんだもん。

かたや、私は……。
……私なんか…。


――かがみぃっ!!


……あぁ、もうだめだ。鼻の奥のほうでツーンとした感覚。
もう…泣いちゃいそうだ。

……同時に気づいた。
私は、こんなにもかがみのことが「大好き」なんだね…。

――でも。

……でも、もう遅いよ。
・・・・・・・。
・・・。

――玄関の方で小さく、「カチ」と言う音がした。
カードリーダーで、ドアがアンロックされた。

……みゆきさんかな?

――瞬間。

威勢のいい「バン!」と言う音を立てて
蹴破るような勢いで、ドアが開く。

――続けて入ってくるのは、…かがみだ。

……ツカツカと歩いてくるその顔は本当に、「鬼」のような顔つきだ。
おお、こわっ。

「ちょっとアンタ!!」
「!……!??」

……な、なんでスか?
というか、オトコできたからって「アンタ」呼ばわりですかい。

「見たわね!? …その、…オトコとあってるトコを!」
「ぇ? ……えと、………ぅん」

……ちょっと待って。
なんで「見た」という事を知ってる?

「まず、誤解を解いておくと」
「私、オトコなんて……できてないから」
「……」
「まったく。変な妄想してんじゃないわよ!?」
「いろいろ聞かされたわ…。みゆきに」

……え?オトコいないって、なに?
と言うことは、わたしのカンチガイだったの?
ってコトは、かがみ…って…フリー?
つ~か、やっぱりみゆきさんだったんだ。
でなきゃ知ってるハズないもん。「見た」って事。

――かがみの顔から怒気が引いている。
何故か、代わりに赤面してきたようだが…?

「それで…その、…知ってるんだから」
「?」
「アンタの………キモチ」

………へ?

「その、…あの、…だから」
「言って欲しいな、…もう一回。…あんたの口から」
「ふぇ?」

……みゆきさん。……あなたまさか?

「だって、あんたのキモチ知ってんのに」
「…自分から言うのも………は、恥ずかしいじゃないっ!」


……み、みゆき…さん?
あなたは…一体、…一体ナニをかがみに吹き込んだ―――!!!?


…とはいっても、さっきまでの「大好き」
ってキモチにもウソはない。

――要は、最良の状態で告白のチャンスを与えられたわけだ。
…みゆきさんによって。

……言うんだ。
いま、ここで、私が、かがみにっ!
…今しかない。…言うしかない。
大丈夫。きっと……大丈夫。


――…いっけえええええええええええええ!!!


「私っかがみのコト好きっ。大好きっ!!」

「! …うんっ!」

――地を蹴り、かがみが私に「飛んで」きた。
首根っこを抱きしめられ、畳に押し倒される。
正直、後頭部が滅茶苦茶痛い。

「私も! 好きだったよ! こなたっ!!」
「うんっ……うん」

……よかった。
そっか。
通じてたんだ。

つ~か、声が大きいよ?かがみ?

「何度でも言ってあげるわよ!  好き! だぁ~い好きぃ!!」
「ちょ! ちょっと…こ、声が大きいよ」
「そんなの知らないわよ!!」
「…!?」
「私は! こなたの事が大好きっ!! って言ってんの!」
「わ、わかった。分かったから落ち着いて?」

――これは恐らく、かがみなりの照れ隠しなのだろう。
だが、最悪なことにここはホテルだ。
両隣に、今頃ツツ抜けになっているだろう。

そんな私の心配をヨソに、かがみは嬉しそうに
私の髪を無我夢中で撫でている。

「……ぁ」
「?…どったの?」
「こなたの体って、思ったより小さいんだね」

……悪かったな~。どうせ私はチビですよ。
私だって、気にしてんのに……。

――思わず不機嫌な顔になってしまう。

「あ、いや。そういう意味じゃなくて」
「…」
「こなただけは、…『絶対』守らなきゃ! って、…思った」
「…ふむふむ」

……二人で一緒に守られながら、か。
悪くないかも…ね。

「あ! そうだっ!」

――何か妙案を思いついたらしい。
かがみの顔がパァっと明るくなる。
見ていて、私も同じくらい嬉しい気持ちになった。

「せっかく…『恋人』同士になったんだからさぁ」
「…二人っきりのときは、呼び方変えようよ?」

……オトメだね~? かがみは。

「んじゃ、私は『かがみん♪』とでも呼ばせてもらうかな~」
「じゃあ、私は『こなちゃん♪』かな?」

――アイタタタタタ…。

……それは流石にナイっしょ。
『こなちゃん』って言ってあげるのョ――。
な~んて、ゆ~だけゆ~だけ、アハハ……。

「…かがみんはさ、普通に『こなた。』でいいよ」
「え~っ」

――かがみは不満そうな顔をしているが
私が真剣な表情をしているので、本気と受け取ったらしい。
また、無言で私の髪をいじり始める。

「ねぇ、こなた」
「ん~?」
「…キス、しよっか」
「…かがみん…」
「こなた…」

……もう。こんなふうにに名前呼び合っちゃったら
やるっきゃないじゃん。

――どちらからでもなく、目を閉じて。
初めはそっと、触れ合って。
そして、深く、優しく絡み合って。

……あぁ。この瞬間がいつまでも、続けばいいのに。
・・・・・。
・・・。

――私は今、つかささんと一緒にロビーの椅子で休憩しています。

……私の考察、言動がすべて正しかったとすれば
今頃、かがみさんと泉さんは仲良くされているのでしょうね。

余計なことを…。と言われるかも知れませんが、
私は、行動せざるを得ませんでした。

お二人の気持ちを、知ってしまった為に。
そして、お二人が笑顔で笑っていられる為に。
そして、その光景を見ることで私自身も
幸せになれると思っています。

ひょっとしたら、「単なるワガママ」と言われるかもしれません。
ですが、こんな私で良かったら
いつでも、お二人を暖かく見守っていますよ。

……いつでも…いつまでも。

fin

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コメント:
  • こ~なたんっ♪ -- かがみ(ぷにゃねこ) (2013-02-07 19:16:37)
  • ↓蜂屋せいいちだと思われ。
    アニメの21話に出てきたヤツ。 -- 名無しさん (2012-11-10 17:47:28)
  • 男とは!? -- かがみんラブ (2012-09-15 04:44:56)
  • ラストのみゆきさんの語りがカッコいいッス! -- 名無しさん (2012-06-16 13:25:10)
  • この後は、二人きりになったらバカップルになって、
    こなたへの呼び名が「こなタン」に変わるに違いない
    …という妄想 -- 名無しさん (2011-10-23 20:42:47)
  • みゆきさん超すげー流石眼鏡キャラwwwwwww
    -- 名無しさん (2010-08-11 20:54:47)
  • みゆきさんは天使。これマメな -- 名無しさん (2009-12-07 19:46:51)
  • みゆきさんナイスです>ω<b


    読んでて何度もそう思いましたww -- ひな (2009-05-18 18:06:43)
  • みゆきさんが良い人過ぎたw
    気持ちの良いSSですねw -- 名無しさん (2009-03-19 16:50:04)
  • なんという爽快感www -- 名無しさん (2008-12-05 12:38:07)
  • みゆきさんサイコー!!

    あんな友達思いは他にいない!!! -- ユウ (2008-06-04 17:41:19)

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