後日談的な何か (後編)

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こなたはネットゲームをやりながら、ふと、今日の屋上での会話を思い出す。

 私とかがみの愛情は一度、あの湖で行き着くところまで行き着いてしまった。お互いに出会うために生まれたと確信し、そしてこの世界でこの愛が認められないならば、共に死ぬ事をも選ぶほどの愛情・・・しかしいつまでもあのような激情のままに愛し合う訳にはいかない筈だった。人間は、その愛情を日常性の中に定着させなければならないのだ。
 長年連れ添った夫婦がいつまでも激しい恋情を持ち続ける事がありえぬように、恋愛感情というのは時間と共に変質せねばならない。それが出来ない場合にこそ、物事は刃傷沙汰のような愁嘆場を見せる羽目になるのだ。
 私とかがみの愛は、今はともかく、いずれは家族愛のようなものへ変わっていく筈で、そこでなお、激しかった恋愛感情の思い出を忘れ得ぬ者が、浮気へ走り、恋愛感情の幸福な幻想を求め家庭を破壊するのだ。いや、何も結婚したものだけではない、激しい恋愛感情自体が麻薬のように人に取りつき、熱が冷めた瞬間には次の恋愛、また次の恋愛、と飛び石を跳ぶように恋愛を繰り返し、その者は自分でも気づかぬまま自分の恋愛感情を愚弄する羽目になり、やがてはいかなる愛も築く事ができなくなるのだ。
 私は当然そういう事は望まない。私は私が生涯で真に愛する者はかがみだけだと確信し、かがみのためにこの命を捧げようとさえ思っている。いや、幼き恋愛経験者は誰でもそう思うのかも知れないが、それでも私は・・・
 しかしもし、今後、かがみが私に対して気持ちが冷めたと・・・あるいは、同性愛者として見られるのが嫌だと言って私と別れようというなら、私はそれに耐えなければならない。そこで問題なのは、相手を余りにも深く愛していた場合、それに耐えるのが極めて難しいという事なのだ。ましてや私は一度は・・・本音を言えば今でも・・・かがみに会うために生まれてきたと思った人間だ。それでかがみと別れたら、私は一体何のために生まれてきたのだろうか?

 今日の屋上の会話・・・。

 もし、かがみと別れたならば、そのあと、死を選ぶという選択がまず、ありうる。しかしそれがもしかがみの耳に入ったら、恐らくはかがみは傷つくだろう。かがみの繊細さを、私はよく知っている。
 だから決してかがみの耳に入らぬよう、充分に時間を置き、どこか遠くでひっそり死ぬ、という可能性はある。しかしそれは、多くの困難を伴い、現実的に考えれば、私がどこで死のうと、いつかはかがみはそれを知るだろう、その原因は分からぬまでも、もしやと察する可能性は決してなくならないのだ。だから恐らく私に出来ることは、生きる意味を失ったまま、ただかがみを傷つけぬために、残りの人生を死人として過ごす事だけだろう。だから・・・。

 かがみは今日、屋上で・・・

 ふと、ネトゲに先生がサインインしてきた。

「よ、泉、元気かー」
「先生、今日はまた速いですね」
「まーな、たまにはこんな日もあるわな。ほんならちょっと狩りでもいこかー」
 よし、気持ちを切り替えて頑張るか、と思ってキャラを歩かせていると、ふと、ななこ先生は私に言った。
「泉、お前んちに柊住んどるんやってな」
「先生、どこでそれを!?」
「あほか、担任が生徒の住所把握しとかん訳にいかんやろ。桜庭先生から聞いとるわ。ご両親から連絡があったからな」
 私は先生が、何故かがみが泉家に住むことになったのか、その事情まで知っているかどうかを、まず疑った。そこまで、父そうじろうや、柊家の人々は明かしたのだろうか?
「なるほど・・・」
「そんでもやな、事情までは教えてくれんかったわ。一身上の都合っちゅー奴や。まあ教師としては、家族が明かしたくない事情なんか無理に聞けんわな。なんか絶対教えてくれん雰囲気やったっちゅー話やし」
 案外簡単に、黒井先生はその手の内を明かす。こなたは少し考え、キーボードを打つ手を止めた。黒井先生の話は続く。
「ただやな、今は別に教師じゃなく、黒井ななこ個人として気になっとるんやけど、一体どうなっとんねん?ああ、別に無理に言わんでもええけど、私はこう見えて教師やからな、生徒が困っとるなら、力になるのも仕事のうちやとは思うとる。話したくなったらいつでも言ってや」
 結論から言えば、私は黒井先生には秘密を明かさないだろう、と思った。疑う訳でも、信用していない訳でもないが、黒井先生は組織人で、職業人だった。余計な事を知っていると、その秘密を明かさないといけない時が来るかも知れない、それが社会に生きる人間のあり方であり、義務なのだ。 
 また、やはり黒井先生にとって、自分は所詮通り過ぎる一人の生徒に過ぎず、今までだって無数の生徒を担当してきた黒井先生の生徒に、一人の同性愛者もいなかったとは限らないだろう。いや、毎年多数の人間が入り出て行く学校という場所で、一人もいないと考える方が不自然なのだ。
 そして、その時、黒井先生にとってこの秘密は、ありふれた秘密に過ぎなくなり・・・要は一回性の重みを持たず、だからこそ軽がると職員室の話題として消費されてしまう可能性があった。桜庭先生、あいつら付きおうてるらしいよ、女の子同士で・・・・と。
 彼女達にとっては職員室で話題にしても構わないありふれた秘密でも、当事者にとってはそうではないのだ。まずかがみの担任に秘密を明かし、教師同士の連帯の中でその秘密はどんどん囁かれ広がっていくだろう。ああ、毎年一人はいますなあ、そういう生徒が、今年はあいつらでしたか!という風に・・・

 要は、結局のところ私は、大人を信用していないのかも知れない。

 かといって子供を信用している訳でもないが、なんら背景や組織を持たぬ子供には子供の、守らなければならない仁義というものがある。組織人とは立場が違う。子供はただ、己の良心と信義を守るだけだ。
「気が向いたら相談しますって」
「OK、そんじゃ、今日こそレアアイテムゲットといくか!」
 黒井先生は特にそれ以上追及せず、嬉々としてモンスターを狩りはじめた。


  ・・・・・・・


 かがみは部屋に帰って、暫く一人で本を読んだり、音楽を聴いていたりしたが、なんとはなく物足りなく、寂しい気持ちがしてきて、段々と集中できなくなっていく自分を意識した。
「うーん」
 やっぱりここが、他人の家だからかな?
 読みかけていた本を閉じ、考えだすと、同じ屋根の下にこなたがいる、というのが気になってきた。
 柊家に住んでいる時は、会いたいと思っても現実的に不可能だったけど、今はその気になって部屋を出て、階段を上れば会いにいける距離にいる。一度それを意識しだすと、どうにも気になって集中できない。
「なによこれ・・・」
 なんだかこれじゃ、本当に寂しがりやみたいじゃない。
 こなたに会いに行きたいな・・・と思うけど、理由もなく会いに行くときっと「かがみったら寂しんぼさんなんだから~」とからかわれるのが目に見えている。それはちょっとプライドが許さないのよね。
「あ、そうだ」
 今日の宿題、うちのクラスだけじゃなく、きっとこなたのクラスでも出てる筈、あいつのことだから、絶対やってないわ。
 やってるかどうか様子を見に行こう。っていうかもともと、あいつの宿題の様子を見に行きたいって思っただけだったし。
 かがみはいつの間にか記憶を改竄し、こなたに会いたいと思った事実を、宿題の様子を見に行くという理由にすりかえて部屋を出た。
 階段を上り、こなたの部屋のドアをノックすると「開いてるよ~」という返事が返ってきて、あけると珍しく、読書をしているこなたが居た。どうやらマンガ本ではない。
「何よあんた、珍しいじゃない」
「ん~。ちょっとね」
 こなたが読んでいるのは、村上春樹の、世界の終わりとハードボイルドワンダーランド、だった。私は驚きの声をあげる。
「あんたが現代文学!?」
 思わずのけぞってしまう。
「驚き過ぎだよ、かがみん」
「だって、私がラノベも読みなよ、って言っても全然関心示さなかったのに、どういう風の吹き回しよ!?」
「現実に、どういう風の吹き回し、なんていい方する人初めて見たよ」
「余計な突っ込みすんな!それで、どういう心境の変化なのよ?」
 私が問い詰めると、こなたはちょっと、少女らしいあどけない表情になって言った。
「ん~、お父さんみたいな、オタクになりたいなあ、って思って」
 その目は純粋に、父を慕う少女の目をしている。
 どこか遠くを畏敬する殉教者のような、澄んだ目。
 かなわない、と私は思う。
 なんだか、胸の辺りがきゅんとするような、ぽかぽかとあったかくなるような、そんな気がした。
「やれやれ、あれだけ私が薦めても本を読まなかったあんたがねえ、父っていうのは、偉大ね」
「もう、なんか、かがみの言い方は照れるよ。それで、かがみは何しに来たの?寂しくなって私に会いに来た?」
「な!何言ってんのよ!」
 思わず動揺して、赤くなってしまう。そういえば、何しにきたんだっけ、肝心なことを、動揺で忘れてしまった。
「かがみったら寂しんぼさんなんだから~」
「ち、違うわよ!そう、宿題!宿題、あんたちゃんとやってる?」
 そういわれると、こなたはにやりと笑ってⅤサインをみせた。
「今日のは、実はやってあるのだよかがみん。驚いた?」
「え、え、え、な、なんで!?」
「そりゃあ、偶にはまじめにやるよー、それじゃあ、かがみの用事は終わりかな?」
「う、そ、それは・・・」
「じゃあ、私は読書の続きに戻るから」
 そう言ってこなたは本を読み始める。出て行くに出て行けない私・・・。
 探り合うような沈黙が続く・・・・
 ・・・・・・・・・・静かだ。
 ページをめくる音だけが聞こえる・・・
 その沈黙に耐えられず、遂に私は言った。
「へ、へー、村上春樹って、私読んだことないなー、お、面白い?」
 私のかけた声に、こなたはにやりと笑って本から顔をあげた。
「なになに、かがみん、読書中の私に話しかけたりして」
「私もちょっと、それに興味あるなー、なんて・・・」
「んー、かがみが興味あるのは本じゃなくて・・・私、なんじゃないの?」
 ぎくり。
「そ、そんな事・・・」
「ないなら、読書の邪魔になるなー、私は一人でじっくり読書したいのだよ、かがみ」
 こなたはそう言って、ドアを指差した。お帰りはあちら、という訳だ。でも今更、自分の部屋に一人でなんて帰れない。今帰って部屋で一人になったら、それは余りにも寂しすぎる。
「も、もう、意地悪しないでよ!」
「何が意地悪なのかなー、かがみの口から、なんで私の部屋に来たのか聞きたいなー」
 もう!もう!こいつは!なんでこんな時だけ悪知恵が働くの!?
 私は顔を真っ赤にさせて言った。
「だ、だって、一人でじっと部屋でいるのって、退屈なんだもの!それでちょっと、こなたの様子を見に来ただけよ!悪い!?」
「あくまで、寂しいとは言わないんだね。ほんとは寂しい癖に」
 こなたは本を置いて椅子から降り、私に抱きついてきた。
「かがみは、ほんと寂しがりやさんだな~。かがみ可愛いよ、かがみ」
 べったべったとまとわりつく再び、でも今は屋上と違って、誰の目もない。私はこなたをふりほどかず、そのままぷいと顔を背けた。
「そんなんじゃないわよ。ただちょっと、まだ慣れない家だったから」
「寂しくなっちゃった?」
「それは・・・」
 つかさも、姉さん達も、お父さんもお母さんも、ここにはいない。もう一緒のところにはいないんだ、と、ふと、とっくに分かっている筈の事に私は気づいた。そう思うと、寂しさがこみ上げてくる。
「そう、寂しかったのよ、悪い?」
 開き直るみたいに私は言う。
 家族と離れるのは、寂しいよ。
 ちょっと、涙ぐんじゃったかも。
「かがみ・・・」
 今までよりも強く、ぎゅっと、こなたは私に抱きついてきた。
「私がいるよ。私がかがみの寂しさ、埋めてあげたいな」
「こなた・・・」
 どちらからともなく、私達はくちづけした。そしてそのまま・・・・
「お姉ちゃん、かがみ先輩、ご飯だよ~・・・・って?!お、あ。あわわ・・・!?」
 抱き合っている私達を見て、ドアを開けたゆたかちゃんが固まっている。
「お、お邪魔しました!」
「いや待ってゆーちゃん!未遂だから!」
「未遂とか言うな!!」
 なんだか締まらなくて大変格好悪いけど、少しづつ、この家にも慣れていけそうだ、と思います。とほほ、って感じでね。



  ・・・・・・・・・・・・



夕飯の、凄く微妙な味付けの、やけに豪快な盛り付けの料理を食べ終えると、こなたがそうじろうさんを睨んだ。
「お父さん、かがみが来たから張り切るのは分かるけど、慣れない料理なんて作ろうとするからこうなるんだよ」
 確かに、凄く、凄く微妙な味だった。居候の礼儀として、おいしいです、とか笑顔で言ってたけど。
「いや、あはは、おかしいな、本の通りに作った筈なんだけどな」
「もう、言ってくれたら私が作ったのに」
「いや、かがみちゃんがせっかく来てくれたんだから、家長としてだな、びしっと料理を振るまいたかった訳でね・・・」
 私には細かい事は分からないが、切られた肉は薄味過ぎたし、サラダのドレッシングは奇妙に油っぽかったし、揚げ物の料理は多すぎたし、火の通りは悪かった。それに、平日にしてはパーティーみたいな山盛りの料理は、やりすぎな気もする。
「お父さん、そんな無理しなくていいよ。いつもみたいにぐうたらしてればいいのに」
「う、こなた、今日はやけに厳しいな・・・ま、まあ、次からはそうするよ」
「あ、あの、気にしないで下さい。誰でも失敗はありますよ。それじゃ、私が片付けますね」
「い、いやいや、かがみちゃんは座っててくれ。俺が片付けるから、って、うお!?」
 片付けようとした皿が、フリスビーのように跳んで台所へ消えていった。一拍おいて、ガチャン、という何かが割れる無情な音が響く。こなたが呆れた口調で言った。
「お父さんこそ、座ってた方がいいよ」
「こ、こなた、そんなに冷たいとお父さんは悲しいぞ!?」
「あ、私、片付け手伝いますね」
 結局、手伝いたがるおじさんを座らせ、私とこなたと・・・やはり手伝いたがるゆたかちゃんに、おじさんの心のケアという役目を与え・・・2人で台所へ向かった。見れば、洗い物は結構溜まっている。
「何故、今日の分の皿は今持ってる筈なのに、既に洗い物がある?」
「いやー、あはは、私もお父さんも、こまめに洗うとか苦手で・・・」
 要は昨日の分とかも溜めているのだ。
「もう、しょうがないわね」
 私はこなたと2人で、テキパキと洗い物を始める。こなたに皿を持ってきてもらって、洗うのは私だ。そんなに時間はかからず、すぐに洗い終わることが出来た。
「ふえー、かがみん、手際いいね」
「まあね、洗い物くらいはね」
「料理はあんなに・・・なのにね」
「そんな事を言うのは、この口か」
 私はこなたの口を持って引っ張ってみた。うにょーん。
「あにふんだおー、かがいー」
 うふふ、なんか、おかしい。ちょっと楽しくなってきちゃった。それなのに、こなたは私の手から逃れてしまって口を尖らせる。
「もう、いきなり何するんだよ、かがみ」
 少し残念。
「あんたが悪いのよ。デリカシーのないこと言うから」
「事実を言っただけなのに~」
 こいつ・・・。
「そのうち、料理であんたをびっくりさせてやるからね」
「漫画みたいに爆発するとか?」
「殴るぞ」
 そんな風にふざけ合いながら私達が戻ると、おじさんがゆたかちゃんに慰められているところだった。
「うう、こなたが冷たい。お父さんは、ちょっと、ちょっと頑張りたかっただけなんだよ。それを、それを・・・」
「えっと、わかりますよ、はい、誰だって、失敗はありますもんね。この次、頑張ればいいんですよ」
 おい、どっちが年上だこの組み合わせ。
「もう、かがみの前であんまりみっともない事しないでよ、お父さん」
「うお!?更にとどめの追撃までしてくる!ゆーちゃーん!!お父さんはこなたに嫌われちゃったのかなー!!」
「えっと、お姉ちゃんはかがみ先輩の前だから、格好よくみせたいだけなんですよきっと!だから大丈夫」
「ちょ!?ゆーちゃん!?」
 こなたが珍しくうろたえた。
そういえば、こなたは今日、ちょっとおじさんに厳しかった。料理を失敗したり皿を割ったり、確かに今日のおじさんは駄目駄目だったけど・・・それに対して妙にこなたが冷たかったのは、私のせい?
「別に・・お父さんが変にはりきって失敗するのは迷惑だから厳しかっただけだって!」
「えっと、えっと、お姉ちゃん、おじさんも悪気があった訳じゃないし、許してあげてね?」
「こなた」
 私がよびかけると、こなたはぎくり、という感じで振り返った。
「なんだい、かがみんや」
「私は別に、気にしないから。私を歓迎しようとしてくれた、おじさんの気持ちはうれしいし、それに・・・背伸びして良く見せようとしても、駄目よ。だって・・・家族・・・なんだから」
 ちょっと、照れてしまう。来てそんなに日が経ってないのに、家族、とか・・・。
 でも泉家のみんなはちょっと感動したようで、家族、という私の言葉を、まるでかみ締めているみたいだった。
「そうだな・・・お父さん、ちょっと張り切りすぎてたな。家族なのにな」
「うん・・・かがみ先輩も、家族ですもんね!」
「おじさん、ゆたかちゃん・・・」
 ちょっと、うるっときてしまう。そんな中、こなたが言った。
「ふむ、しかしそれなら、かがみんはお母さんだと言えよう」
 何を言い出すんだこいつ、何か、台無しなことを言おうとしてないか?
「なんで私がお母さんなんだよ」
「だって、お父さんはだらしない父親でしょー?で、私がだらしない娘でー、ゆーちゃんはしっかりものの末娘、ほら、かがみは母親ポジションだよ~」
「勝手に人を母親にすんな!
 しかし、ふと思う。もしかしたら、こなたは亡くなった母親を私に求めていたのかもしれない。私にとってそれは、嫌な事ではなかった、むしろ、嬉しい、かも・・・。
「あー、でもやっぱ駄目だな」
「な、なんでよ」
「だってそれだと、かがみがお父さんの嫁みたいだもん。かがみは私の嫁だよ~」
 するとおじさんの目がいきなり、きらりと光った。
「ほほう、しかし、かがみちゃんが嫁とは悪くないな。お父さんよく考えたら独身だし。どうかな?かがみちゃん?」
 何を言い出すんだこの人。
「え・・・いやあの、おじさん、うしろになんか出てますよ」
 振り向くと、おじさんはそこに居た謎の悪霊に引きずられて別室に消えていった。
「うぎゃああああああああ!!」
「もう!そうくんったら!あんな若い子に手を出そうなんて!めっ!めっ!」
 ほほえましい光景、かなあ?
「なんかお前のお母さん、普通に出てくるようになってるんだが」
「いやー気のせい気のせい、目の錯覚だよ」
 そうだな、深く考えると色々困ったことになりそうだし。
「さ、かがみん、気持ちを切り替えて、一緒にお風呂入ろうか」
「ふざけんな」
「てもて~。てもて~。って」
「お前ほんとそれ好きだな!?」
「ふふ、ああやって一緒にお風呂に入った時の、かがみのケダモノのような視線が忘れられないよ」
「一人で入れ」
 その時、不意に電話が鳴り、謎の悪霊にマウントポジションを取られ、馬乗りで殴られているおじさんの代わりに、ゆたかちゃんが電話に出た。
「はい、泉です。あ、かがみ先輩ですか、待って下さいね」
 私?
「あの、かがみ先輩のお母さんからです」
「お母さん!?」
 私が電話に出ると、のんびりした声で母は言った。
「かがみちゃん、元気~?」
「う、うん」
どういう用件だろう。
「もう、母親からの電話なのにそんなに堅くならないでよ」
「う、うん」
まるでテープレコーダーのように同じ答えを返してしまう私。
「この子ったらもう・・・用件は特に無いのよ。かがみちゃんが元気か知りたかっただけなの」
「それだけ?」
ちょっと拍子抜けした。
母は言う。
「そう、それだけ。でもこれから、定期的にこういう電話、かけたいと思っているのだけれど、いいかしら・・・?私達も、かがみちゃんのこと、とっても気になるから」
 母は、見知らぬ他人の家に住むことになった私が心配なのだろう。だから電話をかけてきたのだ。いや、母だけではない、姉も、妹も、みんな、きっと心配している。私は家族の愛情を感じて、ちょっと感傷的になった。
「私は・・・構わないけど」
「そう、ありがとう、たまには、かがみちゃんの元気な声を聞かせてね。あ、そうだ、せっかくだから、そうじろうさんにご挨拶をしておきたいわ。いま、いいかしら?」
 見れば、おじさんは謎の悪霊にフルネルソンを極められているところだった。
「ちょっと今は手が離せないみたいです」
「あら、残念。うふふ、あのね、かがみちゃん、お父さん、性同一性障害の本とか読んでるのよ」
「ええー!?」
 何を勘違いしてるんだ。
「私が、かがみちゃんはそうじゃないわ、って言っても、『いや、こういう世界の事を少しでも多く知っていた方が、かがみのためになる』とか言って聞かないの。バカでしょ?」
 確かに。
 でもお父さんは、お父さんらしく不器用なやり方で、分かろうとしてくれているんだ、というのは伝わった。
「他にもジェンダーとかなんとかかんとか、そういう本を山盛り買ってきて、こつこつ読んでいるみたい。だからね、お父さんも今は、かがみちゃんのこと認めようとしている、っていうのは分かってあげてね」
ちょっと、胸が熱くなる。
「うん、もちろんだよ」
「私からはこれだけ、それじゃあ、そうじろうさんによろしくね」
「うん!」
 電話が切れ、私は、たとえ離れて住んでも、自分は家族と繋がっているのを知る。泉家も、柊家も、私の家族で、そして繋がっている。そう思えるのって、幸せなことじゃないかな?
 母がよろしくと言っていたおじさんの方を振り返ると、何故かゆたかちゃんがレフリーとして間に入って「ブレイク、ブレイク」と叫んでいるところで・・・。
「両者、コーナーに離れてくださーい!」
 なんでそんなにきびきびレフリー役が出来るんだゆたかちゃん・・・泡を吹いているおじさんを見ながら私はしょうがなく、やれやれだぜ、と呟いた。あれ!?ちょっとこなたに染まってきてる?!私?


  ・・・・・・・・・・・・


「それじゃあ、いってきまーす」
昨日のお返しという事で、今日はみんな揃ったところで朝食を私が振舞って、朝の泉家の団欒に参加してから、私達は家を出た。
「かがみんも、無理して頑張ってたね、今日の朝ごはん。ふふふ、私のお父さんの前で格好つけたかったの?」
「うるさい!」
 かなり、図星だった。だって、良い風に見られたいじゃない、こなたのお父さんなんだもの。
 だから、確かにちょっと、はりきってたのは事実だけど・・・それを見抜いて言ってくるのがムカツクわ。
「もう、怒らないでよかがみ~、そういうかがみも可愛いな、って事なんだから~」
「はいはい、すぐそれなんだから」
 そんな風に2人で登校する朝の風景。
 その風景の中に、不審なものを見かけた。
 奇妙にゆっくりと歩く、一人の男。
 朝のジョギング姿って事でジャージなのは良いのだが、もう完全に歩いているし、マスクで顔を隠してるのがいかにも怪しい、しかも、明らかにこっちを・・・私をガン見している。結構なお年の方で・・・っていうか私にはもう誰か分かっているんだけどね。
 ジョギングの振りをして・・・その割にはスピードが余りにも遅すぎるが、私達の方へ近づいてきたその男に、こなたがいきなり跳び蹴りをくらわせた。
「ちょ?!こなた!?」
「かがみの方を見てたろ不審者!!成敗!!」
 そのまま正中線を踏みながら相手の体を駆け上がり、顔面を蹴ってこなたが宙を舞う・・・まるでカンフー映画のような技だが、故あって名は伏せるものの、この技が出来る人物は実在する・・・!(板垣恵介風)
 やられた男がばったり倒れたので、私は慌てて駆け寄った。
「大丈夫!?お父さん!?」
「え!?これ、かがみのお父さんだったの!?」
 お父さん、マスクで顔を隠したくらいじゃ、実の父親ってものは隠せないよ。
「う、うう・・・ぐぐ」
 父は何とか立ち上がり、笑顔を作った。
「い、いやあ、たまたまジョギングしてたら通りかかったんだけど、かがみ、元気か?」
 ここはどう考えても、私の家からたまたまジョギングして来るような場所ではない。なんて嘘が下手なんだろう。
「元気よ、もう。何してるのよ、お父さん。そんなんじゃ、こなたじゃなくても不審者と勘違いされて、警察に連れて行かれるわよ」
「む、いや、ただ、ジョギングしていただけなんだが・・・」
まだ言い張るのか、この親父。
「それで、こんな遠くまでジョギングだなんて、何してるのお父さん」
「いや、その・・・かがみ、お父さんはもう、怒ってないからな。結局、お父さんみたいな考えが、いろんな人をその、苦しめてたんだと分かったから・・・まあ、それだけ、言いたかったんだ」
「お父さん・・・」
「お父さんはいつでも、かがみが帰ってくるのを、待ってるからな」
私がちょっと、じーん、としていると、いきなりこなたが言った。
「さっきは蹴ってすいません!そんでいきなりですがお父さん・・・かがみを下さい!」
路上プロポーズ!?
「む、ま、まだ早い!!」
「断られた!?」
まだまだお父さんは手ごわいようです。
「高校を卒業してからにしなさい、まだ君達は若いだろう」
「でも私達、真剣なんです!必ず、必ず娘さんを幸せにしてみせます!」
「路上ですんな!!」
すぱーん、とこなたの頭を叩く私。お父さんもまともにそれに乗るなよ。
「まあ・・・その話は後日にして・・・お父さんは帰るよ」
 そして、お父さんは私に耳打ちした。
「かがみのために、大人に向かって飛び掛っていくなんて、なかなか出来ない事だと、お父さんは思うよ」
「いや、あいつは・・・」
 つかさの時だって、いきなり相手を倒したっていうし・・・考え無しなだけなんじゃないかな?
「じゃあな、いたた・・・全く。君の蹴りは、よく効いたよ」
 と、こなたに向かって、お父さんは少し意味ありげに言った。
「愛がこもってますから」
 とこなたは笑う。
 ちなみに、今日も遅刻しそうです。


 ・・・・・・・・・・・・


「おーっすひいらぎぃ~、二日連続遅刻かー?」
と日下部が、私の肩を叩きながら挨拶してくる。ちょっと痛いんだけど、こいつ、加減を知らないよな・・・それはともかく、ちょうどよく峰岸も一緒だ。私は深呼吸した。この2人は親友、だから打ち明ける、OK?
 私は覚悟を決めた。
「あのさ、大事な話があるんだけど、屋上いかない?」
「ほえ」
「いいわよ、柊ちゃん」
 今日は、一人で行こう。日下部も峰岸も、私の友達だ。だからこなたは呼ばない、三人だけで屋上に行く。
 屋上はよく晴れて、青空からの光がさんさんと降り注いでいた。こんな日は、行楽にうってつけなんだろうな。
 でも今の私は行楽には行けない代わりに、告白をしなきゃならない。私はフェンスまで行って振り返り、2人を見た。きっと大丈夫、2人なら、きっと、きっと分かってくれる。
「あのね、私・・・」
 想像力をオフにする。そうしないと、悪い想像が湧いて勇気が出ないから・・・私は決死の気持ちで言った。
「こなたと付き合ってるの」
「え?え?」
「そう・・・」
 峰岸は冷静で、日下部は、訳が分からない、という顔をした。
「どゆこと?付き合ってるって、なに?あれ?え?え?」
 私は何も言わず、動揺している日下部を眺めた。何を言っていいか分からなかったから・・・。
 すると驚くべき事に、日下部が泣き出したのだ!
 彼女は泣き声そのままで、まるで千切れた魂を投げつけるみたいに私に言った。
「なんだよ、なんだよそれ!なんでだよ!」
「ちょっと、みさちゃん!」
「なんで、なんでちびっことそんな風になるんだよ!私と、私達との方が付き合いが長いじゃんか!なんで、なんでちびっこが私達から柊を取ってっちゃうんだよ!なんでだよ!!」
 彼女はそのまま、大声で泣いた。涙がこぼれないように青空を見上げるが、涙はぼろぼろと零れて屋上の床を濡らしていく。
「なんでちびっこなんだよ!なんで、なんでだよ!私は、私はみとめねーかんな!絶対、絶対私は、そんなの認めねーー!!」
「みさちゃん!」
 峰岸が、日下部の頬をぶった。
 ぶたれた日下部は一瞬ぽかんとして、それからまるで幼子のように辺り構わず泣き出した。ただただ、泣き声だけを張り上げる子供の泣き方で・・・。
「ごめんね、柊ちゃん。みさちゃんを落ち着かせたら、謝らせるから・・・また後で」
「峰岸、でも・・・」
「柊ちゃん、今は、任せて、お願い」
 思った以上に鋭く言う峰岸は、私に去れとその目で言っていた。にらむような、鋭い目で・・・。
 私は追い出されるように屋上を降りるしかなかった。
 振り返れば日下部は、峰岸の胸の中で、おお泣きに泣いていた。
 泣きたいのは、私もだよ、日下部。


 ・・・・・・・・・・・・・・・


 日下部は、私が、その、女の子と付き合ったから、認めないって言ったのかな?
 でも、それにしては・・・。

 分からない。

 認めないって言われたこと、その事だけ、胸に残った。
 長い間ずっと、友達だった日下部に、認めないって・・・。
 バカで、考え無しで、言ったことすぐ忘れて、でもサバサバと明るくて、おおらかで優しくて、そういう私に無いところがある日下部が、好きだった。日下部だったら、こなたとの事も「ん、いいんじゃね?ひぃらぎがそれでいいなら」って言ってくれると、勝手に期待してた、私・・・。
 この世の全ての人が認めてくれるようなものじゃないって、分かってた筈なのに。
 こなたは言っていた。
 『それはそれで仕方ない・・・性格の不一致で友達付き合いはお仕舞い・・・私とかがみの関係を認められない人と友達付き合いしてもしょうがない。。。』と。
 私、日下部と友達じゃなくなるの?
 思い出すこなたの言葉。
 『・・・しょうがないよ。そういうのって、無理に認めさせるもんじゃないと思うし。友達付き合いとかって、無理矢理するもんじゃないもの・・・』
 泣きそうになる。
 やっぱり、認めて貰えないのは寂しいよ。
 日下部が友達じゃなくなるのは、辛いよ。
 でも私は、こなたとの関係を辞める訳にはいかなかった・・・たとえ、誰が私の許から立ち去ったとしても・・・
「こなた・・・日下部・・・」
 目を閉じる。
 ああ、そうか。
 わがままなんだな、私。
 こなたとの関係は絶対辞めないし、大事な人にはその関係を認めてほしかった。
 でもそれが無理なら、誰を傷つけても、こなたとの関係を続けるしかない・・・
 だから。
 私はもう、無垢でイノセントな少女ではなかった。
「柊・・・」
 目を開けると、日下部と峰岸が私の前に立っていた。日下部の目は赤い。
「さっきはごめん、テンパって変なこと言った」
「日下部・・・」
「私、ちびっこに柊が取られちゃって、私の友達じゃなくなっちゃうんじゃないか、って思ったんだ・・・なあ、柊、ちびっこと付き合っても、私達、友達だよな?」
「当たり前じゃない!!」
 私は、席を立った。日下部をにらむ。
「日下部も、峰岸もさ、私を、気持ち悪いって思わないの?」
 今度は日下部が、私をにらんだ。
「何言ってんだ!!」
 日下部は、かなり怒っていた。
「柊とどんだけ長い付き合いしてると思ってんだよ!!今更そんなことぐらいで、どうこう思うわけねーだろ!!」
「私もみさちゃんと同意見よ。さっき、みさちゃんが色々わめいていたのは、柊ちゃんが遠くに行くみたいで寂しかったから、駄々こねてただけだもの」
「あやの~~。そんな言い方ないじゃんか~~私は・・・」
「そんなことよりみさちゃん、ほら」
「あ、そうだ。ひいらぎ、そんじゃあ、仲直りの握手」
 日下部が、手を差し出してきた。
「さっきはごめん、ひいらぎと、ちびっことのこと、認める。でもこれからも、友達でいてくれよな」
「当然よ、こっちこそよろしくね」
 私は日下部と硬く握手した。しばらく見つめあい、それから日下部は「へへっ」と笑って手を離した。
「そんじゃ私帰るから。ひぃらぎはちびっこと仲良くするがいいさ~」
 そう言って日下部は教室を出て行った。なによそれ、まったく。
「もう、みさちゃんったら・・・」
 日下部の背を見送りながら呟いた峰岸が、不意に、私の目をまじまじと覗き込んだ。
「ねえ、柊ちゃん」
 峰岸が、何かを懐かしむように、いとおしむように言う。
「みさちゃんはずっとね、柊ちゃんは凄い凄いって言ってたのよ。賢いし、頼りがいがあるし、責任感があるし、自分とは全然違うって言って、あこがれてたの。だからきっと今度のことで、動揺しちゃったのね」
「峰岸・・・」
「またね、柊ちゃん」
私は去っていく峰岸の背を見ながら、考えた。
私がこなたを選んだ事で、傷ついた人もいるのかも知れない。
父だって、あのとき、傷ついていたのかも知れない。
日下部だって、もしかしたら傷ついたかも知れない。
誰かを選ぶことで、誰かを傷つける。
それでも私はこなたを選び、それを引き受けるだろう。
それによってたとえ、加害者となるとしても。
きっとそういう風に、世界は回っている。
「そっか・・・」
私は、ある事に気づいた。


 ・・・・・・・・・・


「お姉ちゃん、おそーい」
いつもの四人組、みんな、校門で私を待っている。
「ごめん、遅れた」
そして私はみゆきに、あのとき、屋上ではいえなかった事を言った。
「あのね、みゆき」
「はい?」
「私、同性愛者でいいや」
私がそう言うと、こなたとみゆきが、同時に驚いた顔をした。
「だって、私がこなた以外の誰とも付き合わないなら、それは同性愛者って事と同じだもんね。だったら、私はそのレッテルを引き受けるよ」
「かがみさん・・・」
「こなたが好きだから、同性愛者でいいよ私。あの時、屋上でこなたが言っていたのは、そういう意味だったのね」
 あそこで、同性愛者ではないと否定して、男の子でもいける、なんて主張をする必要はないんだ。だって、私にはこなたしかいないんだもの。未来のことなんて何も分からない癖に、と非難されるとしても、私はそれを引き受ける。
 だって、こなたが好きだから。
「かがみ・・・」
 いきなり、こなたが私にキスした。
「ちょ、おま、路上で!?」
「かがみと噂になっても、ううん、かがみとの事なら何でも、私は引き受けるよ。かがみだってそうじゃないの?」
「こなた・・・」
 私はこなたを選び、こなたは私を選ぶ。それが誰かを傷つけるとしても。
 それを引き受け、私達は大人になる。いつまでも、無垢な少女のままではなく、私達は・・・。
 つかさが、おずおずと尋ねた。
「あの、お姉ちゃんたち、私達、お邪魔かな・・・?」
「うん邪魔」
「こなちゃん酷い!?」
「邪魔な訳ないでしょ、さあ、帰ろ」
私の隣にはこなたがいて、みんながいて・・・きっと、ずっとずっと、これから先も、きっと・・・


  ・・・・・・・・・・


夜、泉家で。
私が部屋で一人で宿題をしていると、ドアをノックする音が響いた。
「はあい、開いてるわよ」
「やふ~」
 開くと、そこにはこなたが立っていた。
「なあに、こなた。何の用?」
「この前のお返し」
「この前?」
こなたはにやりと笑って言った。
「かがみが寂しくなって私の部屋に来た時の、お返し」
「それ、引きずるなよなあ」
ふふふ、とこなたは笑う。
「今日は私が、一緒の屋根の下にかがみがいるってことが、気になってしょうがなくなったから来たの」
その気持ちは、とてもよく分かる。
「へー、なあに、寂しくなっちゃった訳?」
「寂しいというか、かがみ分を補充しに来たのさ。ほじゅ~」
 そう言って、こなたが抱きついてくる。
「もう、何よこなた、甘えたいの?」
「甘えたいというか・・・かがみの、可愛い姿がみたい、かな」
 そう言って、こなたはドアの鍵を閉めた。
「ちょっと、なんで鍵閉めるのよ」
「また、ゆーちゃんが来たら困るでしょ。かがみが見られる方が好きなら、止めないけどね」
「そんな性癖はねえ!」
 突っ込む私に、こなたはぎゅっと抱きつく。いつでも心が温かくなるような、こなたの抱擁。
「あのさ、今日、うれしかった。私だけかなって思ってた。同性愛者って呼ばれる事とか、いろんな事、引き受けてもいいって思ってたのは・・・だからいつか、かがみが私を」
「ストップ、その先を言ったら殴るからね」
こいつはいつだってそうだ。一人で勝手に、先回り先回りして、相談もしない。言ってくれなきゃ、わかんないよ。
「バカじゃないの?どんだけ私のこと信用してないのよ。ほんと、バカじゃないの?私達、2人で湖まで行ったじゃない。私の気持ちの根っこは、あの時と全然変わってないよ。ううん、これからだって、変わらない」
「じゃあ、私とおんなじだ。両思いだね、かがみ」
「当たり前でしょ、もっと、私を信じなさいよね」
そして私達は、自然な流れのようにキスをして、そして・・・。

 私達は愛し合う、ずっとずっと、この先だって愛し合うだろう。色々な辛いことや悲しいことがあっても、私達は繋がっている。何度だってめぐりあう。私達はもう、家族なのだから。

 夢の中で私は大人になり、社会人で、さまざまな経験をし、それでもなお、私はこなたを選んで一緒に居た。こなたもまた、私を選び、私達はどこまでも繋がって、この星の上で生きている。私達が愛し合い、めぐり合い、つながり、その上に立って生きていくこの星。人間が生まれたことは、とても可能性が低い事だと言う。この宇宙にある殆どの星々が生命の住まない死の星で、そして人は一秒に一人の割合で人に出会ったとしても、この星の全ての人々に出会う事はない、それでも私達はめぐり合い、愛し合い、慈しみ合い、確かにここで生きている。

 この幸運の星の上で。




             了


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  • あなたが神だ -- 名無しさん (2010-12-27 20:26:06)
  • 最初はギャグかと思ったけど…感動した(泣) -- 名無しさん (2010-04-05 01:22:29)
  • 泣いた。
    若い頃に持っていた愛への理想像を思い出しました。

    いや、本当に良いものを読ませて貰いました。 -- 名無しさん (2010-03-27 17:05:56)
  • 凄い感動した。 -- 名無しさん (2009-11-21 09:03:12)
  • 文才すげぇ

    泣いた -- 名無しさん (2009-03-02 05:37:47)
  • ぼろ泣きさせていただきました!!
    素敵な作品ありがとうございます!!!! -- 名無しさん (2009-01-30 00:57:27)
  • いいもん読ましてもらったわ。 -- 名無しさん (2009-01-28 01:20:16)
  • もう! 永遠に2人に幸あれ -- ラグ (2009-01-25 16:20:30)
  • 後日談的なものまですっご面白い。
    作者は神か?神なのか!? -- 名無しさん (2009-01-22 21:45:11)
  • こなかがは、やっぱりこういう結末が一番お似合いですよね。
    あとは二人の幸運を祈るのみ。 -- 名無しさん (2009-01-22 16:40:42)
  • こなたもかがみも一人ではないんですよね。
    家族が仲間が居てくれてます。
    きっと大丈夫。遠い未来、死が二人を「一時的に」別かつその時まで幸せで行けます。
    「世間」よりも「愛」を貫いて下さい -- こなかがは正義ッ! (2009-01-21 02:18:47)
  • マジ理想的なハッピーエンドでした☆お見事ッ!! -- 名無しさん (2009-01-21 02:09:00)
  • よかったですね(ノ_・。)
    世間の目という壁を
    二人で超えて行ってください! -- 無垢無垢 (2009-01-21 01:48:26)


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