『待ってよ、かがみぃ~!』
『あはは、こっちまでおいでー!』
『あはは、こっちまでおいでー!』
楽しく遊んでいる私たち。
傍にいるのは誰‥?
傍にいるのは誰‥?
『かがみ!ほら、川に魚がいるよ!』
『あ、ほんとだ。でも川じゃなくて池でしょ!』
『あ、ほんとだ。でも川じゃなくて池でしょ!』
大きな人工的な池。
でも何処だかはわからない。
でも何処だかはわからない。
『かがみぃ!一緒にブランコしようよ!』
『ばか、危ないってば!』
『ばか、危ないってば!』
切り取られた時間。
遥か遠くて、懐かしい記憶。
私は、夢を見ている‥?
遥か遠くて、懐かしい記憶。
私は、夢を見ている‥?
‥『雪の日の約束』‥
――。
肌寒い、朝の気温と太陽の光に私は目を醒ます。
時計の針は既に8時を差していた。
急いで支度をしなければアイツとの待ち合わせ時間に遅れてしまう。
もっとも、アイツが約束通りの時間に来るとは思えないけど…。
肌寒い、朝の気温と太陽の光に私は目を醒ます。
時計の針は既に8時を差していた。
急いで支度をしなければアイツとの待ち合わせ時間に遅れてしまう。
もっとも、アイツが約束通りの時間に来るとは思えないけど…。
―夢を、見ていた。
何か、とても大切な事だった気がする。
……ダメ、夢の記憶がどんどん遠ざかっていく。。
何か、とても大切な事だった気がする。
……ダメ、夢の記憶がどんどん遠ざかっていく。。
ぼんやりとする意識のまま、天井を見上げる。
私は、何か大切な事を忘れてしまっているような気がする。
でもそれが何なのかは、わからない‥。
私は、何か大切な事を忘れてしまっているような気がする。
でもそれが何なのかは、わからない‥。
ベッドから起き上がって大きな伸びをした。
窓を開けると、強い光が射し込んで、同時に視界が一気に白く広がった。
窓を開けると、強い光が射し込んで、同時に視界が一気に白く広がった。
「わあ、雪ね・・!」
‐‐
午前10時。待ち合わせの場所にアイツはいない。
はぁ・・・どうしてアイツと二人きりで出掛けることになってしまったんだろう。
はぁ・・・どうしてアイツと二人きりで出掛けることになってしまったんだろう。
確か、あれは期末テストが終わった日の事だった。
いつものように私たちは4人で集まり、そして談笑していた。
そんな中だった。
いつものように私たちは4人で集まり、そして談笑していた。
そんな中だった。
「ねぇ、24日の日はみんなでどっか遊びに行かない?」
アイツがイヴの日に遊びに行く提案をしてきた。
みゆきはニッコリと頷き、私もその提案には大賛成だった。
そして当然つかさも…そう思っていた。
みゆきはニッコリと頷き、私もその提案には大賛成だった。
そして当然つかさも…そう思っていた。
「ごめん、こなちゃん。私、その日は用事があるんだ」
‥意外だった。
こういう話には1番乗り気になると思っていたつかさが、断りを入れたのだ。
こういう話には1番乗り気になると思っていたつかさが、断りを入れたのだ。
「…まさか、あんた男でも出来たの?」
「ううん、違うよ。ちょっと買い物に行きたいだけ…。
あっ、ゆきちゃんも付き合って欲しいんだけど、いいかな?」
「ううん、違うよ。ちょっと買い物に行きたいだけ…。
あっ、ゆきちゃんも付き合って欲しいんだけど、いいかな?」
どうやら男ではないらしい。
だけど、わざわざイヴの日に買いに行きたい物って何だろう?
みゆきはみゆきで、突然のつかさの頼みを快く了承している。
だけど、わざわざイヴの日に買いに行きたい物って何だろう?
みゆきはみゆきで、突然のつかさの頼みを快く了承している。
「つかさ‥私は、4人でいる時間も大切だと思ってるよ?」
「いいから。遠慮しないで…」
「いいから。遠慮しないで…」
こなたは、買い物よりも4人で遊びに行こうと言いたかった。
つかさは、私たちに遠慮せず、二人で楽しんで来てと言いたかった。
そう、あの時はそう解釈したんだ。
つかさは、私たちに遠慮せず、二人で楽しんで来てと言いたかった。
そう、あの時はそう解釈したんだ。
…今思えば妙に腑に落ちないやり取りだった気がする。
だけど結局、私は何を気にするというわけでもなく、こなたと二人で遊びに行くことになっていた。
それが今日、私がアイツをこうして待っている理由。
それが今日、私がアイツをこうして待っている理由。
長々と回想をしていたら、遠くの方で青いアホ毛が揺れているのが見えた。
「あ、こなたぁ!!」
・・・まったく、アイツは。何で突っ立ったままこっちに来ないのかしら。
私はアイツの元へ駆け寄る。
私はアイツの元へ駆け寄る。
「もう!遅いわよ!!」
「ゴメン、遅れちゃった!」
「ゴメン、遅れちゃった!」
10分遅刻。
まあコイツにしてはマシな方か‥。
まあコイツにしてはマシな方か‥。
「で、今日はどこに行くの?」
「えーと、まず午前中は買い物でしょ。それから昼ご飯を食べて、その後は映画館行って、それから・・・」
「えーと、まず午前中は買い物でしょ。それから昼ご飯を食べて、その後は映画館行って、それから・・・」
「あー、わかったわかった。とりあえず買い物ね?」
どうやら予定はちゃんと決めて来ているようだ。
元々こなたが遊びに行きたいと言い出した事なので、
今日はこなた任せでいいと私が言ったのだ。
元々こなたが遊びに行きたいと言い出した事なので、
今日はこなた任せでいいと私が言ったのだ。
「じゃ、行こっか?」
「うん!」
「うん!」
――――――
変わった店長&店員のいるアニメショップ。
よくわからんカードやらグッズやらを真剣に見るこなた。
一段落して、ようやく昼食。
よくわからんカードやらグッズやらを真剣に見るこなた。
一段落して、ようやく昼食。
さあ、これから映画だ!
そう思っていたら‥‥なんとまあ、アニメ映画だった。
まあ、結構いいアニメだったけど・・・。
そう思っていたら‥‥なんとまあ、アニメ映画だった。
まあ、結構いいアニメだったけど・・・。
「それにしても、あんたって本当にアニメが好きね‥」
思わず呟かざるを得なかった。
そんな所もコイツの可愛い所だとは思うけどさ。
そんな所もコイツの可愛い所だとは思うけどさ。
「えへへ~、かがみと二人でこのアニメ見たかったんだよ♪」
「うーん、みゆきやつかさはアニメとかあんまり興味無さそうだからな~。
一緒に見るなら私しかいないわね‥」
「うーん、みゆきやつかさはアニメとかあんまり興味無さそうだからな~。
一緒に見るなら私しかいないわね‥」
妙に上機嫌なコイツの口からは子供っぽい声がする。
そんなに嬉しそうにしてると姿形まで子供にしか見えない。
可愛いなぁ、もう‥。
そんなに嬉しそうにしてると姿形まで子供にしか見えない。
可愛いなぁ、もう‥。
「そんな消去法じゃないんだけどね…。
まあいいや、ちょっと近くに公園があるんだけど、そこ散歩しない?」
まあいいや、ちょっと近くに公園があるんだけど、そこ散歩しない?」
「今から?」
「うん。ちょうど散歩に適した広い公園があるから。
ほら、せっかくなんだし、雪景色を楽しむのもいいんじゃない?」
「うん。ちょうど散歩に適した広い公園があるから。
ほら、せっかくなんだし、雪景色を楽しむのもいいんじゃない?」
まあ、確かに。
せっかく降り積もり、どこまでも真っ白な世界が広がっているのだ。
その景色を見もしないでカラオケとかに行っちゃうのも勿体ない気がする‥。
せっかく降り積もり、どこまでも真っ白な世界が広がっているのだ。
その景色を見もしないでカラオケとかに行っちゃうのも勿体ない気がする‥。
「いいわよ、行きましょ」
こんな雪の日ぐらい、散歩をするもいいだろう。
たまにはロマンチックに浸るのも悪くはない。
たまにはロマンチックに浸るのも悪くはない。
‐‐
「大きな公園ね‥」
着いた先は、とても大きな公園だった。
案内図を見て、色んな広場があるのがわかる。
1周するのに散歩だと1時間くらいか‥。
案内図を見て、色んな広場があるのがわかる。
1周するのに散歩だと1時間くらいか‥。
「ね、散歩には丁度いいでしょ?」
「‥あんた、この公園に来た事あるの?」
「‥あんた、この公園に来た事あるの?」
電車で~公園前なんていう停車駅があるぐらいに広い公園だから、
こなたが此処の公園に来ていた事があっても、まあ別に不思議ではないのだが。
こなたが此処の公園に来ていた事があっても、まあ別に不思議ではないのだが。
「うん。昔何度か、ね…。ほら、行こっ!かがみ!」
「あ、待ってよ~!」
「あ、待ってよ~!」
……?
一瞬、変な顔してたように見えたのは気のせいだろうか…?
一瞬、変な顔してたように見えたのは気のせいだろうか…?
‐‐
真っ白としか言い表せない銀世界。
辺り一面、何もかもが白く。まるでファンタジーの中にいるようだった。
小さな白が、なおも空から降り続けてる。
辺り一面、何もかもが白く。まるでファンタジーの中にいるようだった。
小さな白が、なおも空から降り続けてる。
「ほんとに綺麗ね‥」
二人の歩く足音がする。
ザクッ、ザクッ、と雪を踏み締める音がする。
足跡は暫く残って‥また降り積もる雪が消して行くのだろう。
ザクッ、ザクッ、と雪を踏み締める音がする。
足跡は暫く残って‥また降り積もる雪が消して行くのだろう。
「‥かがみ、あのね・・。
………手ぇ繋がない?」
「手って、おまっ・・・・いきなり」
………手ぇ繋がない?」
「手って、おまっ・・・・いきなり」
まるで恋人じゃないか。
いや待て、姉妹とかでも手を繋いでたりするわね‥。
いや待て、姉妹とかでも手を繋いでたりするわね‥。
「・・・ダメ?」
「‥いいわよ、ほら」
「‥いいわよ、ほら」
コイツと私の仲なんだ。
べつに手ぐらい繋いでても不思議じゃない。
…あったかいわね、コイツの右手。
べつに手ぐらい繋いでても不思議じゃない。
…あったかいわね、コイツの右手。
「~~えへへっ♪」
「‥なんだか恥ずかしいわね…」
「‥なんだか恥ずかしいわね…」
・・・・
木々から時折、雪の落ちていく音がする。
溜まった量に耐え切れず、落下していく塊の雪たち。
空は灰色で、でも日が届かないような模様でもない。
溜まった量に耐え切れず、落下していく塊の雪たち。
空は灰色で、でも日が届かないような模様でもない。
「なんで未来に帰って行っちゃったんだろね」
「そうね…あのまま現代に留まる事は出来なかったのかな」
「そうね…あのまま現代に留まる事は出来なかったのかな」
左利きだから右手を握る。
コイツは両利きだから、私に合わせて右手で左手を握ってくる。
握ってる手の平が熱い。
コイツは両利きだから、私に合わせて右手で左手を握ってくる。
握ってる手の平が熱い。
「かがみはさ、過去に戻ってやり直せるとしたら、何をする?」
「そうね…色々あるわね。あんたはどうなのよ?」
「そうね…色々あるわね。あんたはどうなのよ?」
大きな人工的な池。
何処かで見たような、そうでもないような…。
何処かで見たような、そうでもないような…。
「私はね、後悔している事があるから、やり直せるとしたらやり直したいかな‥」
「ふーん・・」
「ふーん・・」
コイツのやり直したい事って何だろう?
後悔してるって、どんな事なんだろう?
…何だか胸が痛い。
後悔してるって、どんな事なんだろう?
…何だか胸が痛い。
「でも、大切なのは今、これからだよね。過去の事ばかり見てても何も始まらないし」
「まあ、あんたの言う通りかな‥」
「まあ、あんたの言う通りかな‥」
…どうしてだろう。
私は、何か大切な事を忘れてしまっているような気がする。
でもそれが何なのかは、わからない‥。
私は、何か大切な事を忘れてしまっているような気がする。
でもそれが何なのかは、わからない‥。
「ね、時間が止まってしまえばいいのにね」
「そうね…」
「そうね…」
これから何が起こるかなんてわからない。
今のままでずっといられたら、どんなに幸せな事か。
今のままでずっといられたら、どんなに幸せな事か。
「‥もう少しゆっくり歩こ?」
「‥うん、わかった・・」
「‥うん、わかった・・」
‐‐‐‐
だいぶ歩き回って、ほぼ周回してきただろう。
もっとも、この公園を細かに全て周ろうとすれば、行ける所はまだ沢山あるが…。
とりあえず椅子に座って、私たちは自販機で買った温かい飲み物を飲む。
木の影になってて、椅子が濡れていなかったのは幸いだった。
もっとも、この公園を細かに全て周ろうとすれば、行ける所はまだ沢山あるが…。
とりあえず椅子に座って、私たちは自販機で買った温かい飲み物を飲む。
木の影になってて、椅子が濡れていなかったのは幸いだった。
目の前にあるグラウンドは、一面に雪が降り積もって真っ白になっていた。
暖かくなれば子供たちが此処で遊んだりするのだろうか。
暖かくなれば子供たちが此処で遊んだりするのだろうか。
「ね、かがみ。雪だるま作ろうよ!」
バッとこなたは立ち上がって、走り出して行く。
そしてグラウンドの中央で、手を広げて私を呼ぶ。
そしてグラウンドの中央で、手を広げて私を呼ぶ。
「あんたねー、子供じゃないんだから…」
「いいじゃない、たまには子供の頃に戻って遊んでみてもさ?」
「いいじゃない、たまには子供の頃に戻って遊んでみてもさ?」
まるで無邪気だ。
だけど、どこか儚いように見えるのは気のせいだろうか‥。
だけど、どこか儚いように見えるのは気のせいだろうか‥。
‐‐
…ほら、この細長い草を両端に引っ付けて、かがみの完成だよ。
…なんで私のなんかを作るのよ。変なの付けないでよ。
…なんで私のなんかを作るのよ。変なの付けないでよ。
…いいじゃない、べつに。
…もう。だったら目がツリ目になってて凶悪に見えるのなんとかしてよ!
…もう。だったら目がツリ目になってて凶悪に見えるのなんとかしてよ!
――雪が降って、辺り一面真っ白だった。
――空は薄く、灰色になっている‥‥
――空は薄く、灰色になっている‥‥
…ねぇ、かがみ。
…何よ?
…何よ?
…楽しいよね。
…うん、そうね‥。
…うん、そうね‥。
…今度は私の分作る?
…わかった、あんたの分まで作ってやるわ。
…わかった、あんたの分まで作ってやるわ。
――どうしてだろう。
――なんでこんな時に、私はこんな気分になるのだろう。
――何か大切な事を忘れているような・・・
――なんでこんな時に、私はこんな気分になるのだろう。
――何か大切な事を忘れているような・・・
…かがみ!私の雪だるまに変な棒を差さないでよ!
…ふふーん、あんたのアホ毛を再現してんのよ!
…ふふーん、あんたのアホ毛を再現してんのよ!
…むぅ~。せめて枝じゃなくて草とかにしといてよ。
…いいじゃない、よく似合ってるわよ?
…いいじゃない、よく似合ってるわよ?
――懐かしいような、それでいて幻のような・・・
――こなたは、今何を思っているのだろう?
――どうして、私と遊びたいと言ってきたのだろう?
――こなたは、今何を思っているのだろう?
――どうして、私と遊びたいと言ってきたのだろう?
…出来た。二人分の雪だるま。
…なんかどっちも不細工じゃない?
…なんかどっちも不細工じゃない?
…まあまあ、草と枝だけじゃこんなものでしょ。
…確かに、ちゃんと形になってるだけでもマシかも。
…確かに、ちゃんと形になってるだけでもマシかも。
…こうして見るとお揃いだね。
…まあ、悪くはないかな。
…まあ、悪くはないかな。
――なぜだろう。
――こなたが遠くに行ってしまう。
――そんな気がした。
――こなたが遠くに行ってしまう。
――そんな気がした。
……………
「もう暗くなってきたわね…」
もう時刻は5時を回っていた。
この時期は陽が沈むのが早い。
空から明るさが消えて、だんだん光が失われていた。
この時期は陽が沈むのが早い。
空から明るさが消えて、だんだん光が失われていた。
「そろそろ帰ろっか?」
私はそう言った。
早く家に帰らないと本当に真っ暗になってしまう。
少なくとも公園で遊べるような時間じゃない。
早く家に帰らないと本当に真っ暗になってしまう。
少なくとも公園で遊べるような時間じゃない。
「―――ダメッ!!」
……!!
いきなりキツい声で叫ばれた。
その大きな声で私は驚きのあまり身を竦んでしまう。
普段のコイツからは想像できないリアクション‥。
いきなりキツい声で叫ばれた。
その大きな声で私は驚きのあまり身を竦んでしまう。
普段のコイツからは想像できないリアクション‥。
「‥あっちの方に、噴水があるんだ‥。
夜は綺麗にライトアップされているから‥ね、一緒に見に行こ?‥」
夜は綺麗にライトアップされているから‥ね、一緒に見に行こ?‥」
まるで縋り付くような声だった。
…なんだろう、どうしたというのだろう。
何か‥何かに怯えているような‥‥
そんな気がした。
…なんだろう、どうしたというのだろう。
何か‥何かに怯えているような‥‥
そんな気がした。
「‥いいわよ、行きましょ?」
もう時刻なんて関係なかった。
コイツの傍に居てやりたい。
ただ、そう思う。
コイツの傍に居てやりたい。
ただ、そう思う。
私は時々、コイツの事がわからなくなる。
いつもは元気でマイペースなくせに。
時折、遠くを眺めていたり‥。
いつもは元気でマイペースなくせに。
時折、遠くを眺めていたり‥。
本当は、私に何か隠してるんじゃないかと思う。
でも、それを教えてはくれない‥。
でも、それを教えてはくれない‥。
‐‐
少し歩いている内に、空は完全に闇に包まれていった。
真っ白な世界に、まだ雪が降り積もり続けてる。
暗くても白い景色が広がっているせいで、全体的にぼんやりとしている。
真っ白な世界に、まだ雪が降り積もり続けてる。
暗くても白い景色が広がっているせいで、全体的にぼんやりとしている。
「‥綺麗な噴水ね」
「ね?‥私のお気に入りの場所だよ」
「ね?‥私のお気に入りの場所だよ」
辿り着いた噴水。
そこは赤や緑、青といったカラフルな光で彩られた場所だった。
ただ光るだけでなく、弱く光ったり、強く光ったり。
落ちてくる雪の欠片たちが、より一層、幻想的な空間を作っている。
そこは赤や緑、青といったカラフルな光で彩られた場所だった。
ただ光るだけでなく、弱く光ったり、強く光ったり。
落ちてくる雪の欠片たちが、より一層、幻想的な空間を作っている。
「奇跡は起こるかもしれないから奇跡っていうのかな?
それともやっぱり起こらないから奇跡っていうのかな?」
「…あんた、また何かのアニメネタか?」
それともやっぱり起こらないから奇跡っていうのかな?」
「…あんた、また何かのアニメネタか?」
やれやれ、と呆れる。
やっぱりコイツはコイツらしい。
やっぱりコイツはコイツらしい。
「じゃあこんなのはどう?
一万年と二千年前から愛・し・て・る~♪」
「唐突にアニソンなんか歌い出すなっての!」
一万年と二千年前から愛・し・て・る~♪」
「唐突にアニソンなんか歌い出すなっての!」
いつもの、コイツとの会話だった。
1年生の時から変わることない、私たちのやり取り。
そうだ、ずっとこんな風に高校生活を送ってたんだ。
気が付けば、いつも隣にコイツがいて‥‥。
1年生の時から変わることない、私たちのやり取り。
そうだ、ずっとこんな風に高校生活を送ってたんだ。
気が付けば、いつも隣にコイツがいて‥‥。
「ねぇ、かがみ。ずっと一緒にいてくれる?」
「何よ、いきなり‥。そんなの当たり前じゃない!」
「何よ、いきなり‥。そんなの当たり前じゃない!」
いつも隣にいるコイツが、大きな存在となっていた。
私がこんなに楽しい生活を送れているのは、コイツのおかげだ。
一緒にいるなんて、私にとっては当然の事‥。
私がこんなに楽しい生活を送れているのは、コイツのおかげだ。
一緒にいるなんて、私にとっては当然の事‥。
「じゃあさ、もし私たちが離れ離れになるような事があったら、この噴水を待ち合わせ場所にしよっか?」
「あんた、何言ってるの‥?離れ離れになんて、なるわけないじゃない!」
「あんた、何言ってるの‥?離れ離れになんて、なるわけないじゃない!」
突然、コイツは何を言い出すのだろう。
私がいきなり何処かへ消えてしまうとか、考えているのだろうか‥。
私がいきなり何処かへ消えてしまうとか、考えているのだろうか‥。
「‥なってからでは遅いんだよ。時刻は今日、12月24日、夜6時。いいよね?」
「ちょっと待ってよ!私、こなたと離れ離れになるつもりなんてないわよ!」
「ちょっと待ってよ!私、こなたと離れ離れになるつもりなんてないわよ!」
何処へも行くつもりはない。
こなたが心配する事なんて何一つ無いのに。
こなたが心配する事なんて何一つ無いのに。
「かがみ!明日の事なんて誰にも分からないんだよ?
空から何時爆弾が降って来るかもしれないし、巨大な地震が起きて都市が壊滅するとも限らない。
大事なのは今ここでちゃんと取り決めておく事。
出来ることをやっておかないと、後悔してからじゃ遅いんだから!」
空から何時爆弾が降って来るかもしれないし、巨大な地震が起きて都市が壊滅するとも限らない。
大事なのは今ここでちゃんと取り決めておく事。
出来ることをやっておかないと、後悔してからじゃ遅いんだから!」
「・・・こなた?
‥あんた、一体・・・・」
‥あんた、一体・・・・」
――強い、想いを感じた。
コイツは、何に怯えているのだろう‥?
わからない‥‥だけど……
わからない‥‥だけど……
「かがみ…お願い‥‥」
消え入りそうなコイツの声を聞いて、やるべき事は一つだった。
そもそも迷う理由なんて何一つない。
そもそも迷う理由なんて何一つない。
「わかった…。12月24日の夜6時、この噴水ね。ちゃんと覚えたわよ?」
コイツがこれで安心できるというのなら、簡単な事だった。
これぐらい、私はいくらでも聞き入れるだろう。
これぐらい、私はいくらでも聞き入れるだろう。
――本当は、コイツはめちゃくちゃ淋しがりなのかもしれない。
でもそれ以上に、淋しさに慣れているというか――…
なんだかそんな感じがした‥
でもそれ以上に、淋しさに慣れているというか――…
なんだかそんな感じがした‥
‐‐
「良かった…。ねぇ、かがみ。プレゼントがあるんだ」
そう言って四角いキーホルダーを取り出すこなた。
手渡されたそれには、この公園の名前と、噴水の絵。
そして裏の方には丁寧に『12.24』と書かれている。
手渡されたそれには、この公園の名前と、噴水の絵。
そして裏の方には丁寧に『12.24』と書かれている。
「この公園には記念品売場があってね、そこでこの噴水の描かれたキーホルダーを見付けたんだ。
これでかがみが記憶喪失になったりしても、このキーホルダーを手掛かりに此処に来れるでしょ?」
これでかがみが記憶喪失になったりしても、このキーホルダーを手掛かりに此処に来れるでしょ?」
「…あんた、どんだけ用心深いんだ・・」
正直、ここまでコイツが心配症だとは思わなかった。
空から爆弾が降ってきて、都市が壊滅し、携帯なんかも繋がらなくなって、
そして私は記憶喪失になって・・・
空から爆弾が降ってきて、都市が壊滅し、携帯なんかも繋がらなくなって、
そして私は記憶喪失になって・・・
たとえばそんな未来でも想像しているのだろうか?
それでもコイツは‥‥どんな未来が起こっても私と離れたくない。
そんな強い気持ちがとても伝わって来た。
それでもコイツは‥‥どんな未来が起こっても私と離れたくない。
そんな強い気持ちがとても伝わって来た。
「かがみ‥‥受け取ってくれる?」
まるで祈るように、願うかのように私を見つめている。
‥こんなに強い想いの篭ったプレゼントを、私は今まで貰った事がない。
‥こんなに強い想いの篭ったプレゼントを、私は今まで貰った事がない。
「ありがとう、こなた‥。なんだかとんでもない物を貰っちゃったわね‥」
私はこんなにも‥
こんなにも、大事に想われていたんだ・・・
こんなにも、大事に想われていたんだ・・・
「‥私もね、あんたにプレゼント買ってたんだけど、なんだかあんたの後だと恥ずかしいわね」
「何々?かがみもプレゼント用意してくれてたの?頂戴!」
「何々?かがみもプレゼント用意してくれてたの?頂戴!」
‥はぁ。あんなに凄いものを貰った後だと、何だか自分のプレゼントが小さく見えてしまう。
まさかこなたが私の事をあんなに考えていたなんて‥。
まさかこなたが私の事をあんなに考えていたなんて‥。
「…ほら、あんたが好きだって言ってたアニメのOVAよ。
TVにも放映されてない分だから、あんたも初めてだと思う。・・一緒に見よっか?」
TVにも放映されてない分だから、あんたも初めてだと思う。・・一緒に見よっか?」
「…かがみ、ありがとう!私、嬉しいよ‥!
もうこれは私の一生の宝物だね!」
もうこれは私の一生の宝物だね!」
まあ、出来るだけ喜んでくれそうなのを選んだつもりだった。
私だって、一生懸命に考えてプレゼント買ったつもり。
そして予想以上にコイツは喜んでくれている。
だけど・・・足りない。
私だって、一生懸命に考えてプレゼント買ったつもり。
そして予想以上にコイツは喜んでくれている。
だけど・・・足りない。
「ねぇ、こなた。
‥あんた、もし淋しいんだったら、いつでも私に甘えてきていいのよ?」
「‥・・かがみ・・いいの?」
‥あんた、もし淋しいんだったら、いつでも私に甘えてきていいのよ?」
「‥・・かがみ・・いいの?」
コイツは、本当はとても淋しがりなんだと私は思った。
だけどそれを我慢していて、誰にも見せないでいる。
きっと、我慢し慣れている程に、それは深いんじゃないかって・・。
だけどそれを我慢していて、誰にも見せないでいる。
きっと、我慢し慣れている程に、それは深いんじゃないかって・・。
「いいのよ、ほら」
「~~ッ!かがみぃ~!!」
「~~ッ!かがみぃ~!!」
コイツの淋しさを拭ってあげたい。
そう思った。
そう思った。
‐‐‐
…かがみ、今日はデレデレだね。
…うっさい。あんたがそんな淋しそうな態度取るからでしょ!
…うっさい。あんたがそんな淋しそうな態度取るからでしょ!
…あはは、ごめんね‥?いつもの私らしくなかったよネ‥。
…謝らなくていい。それに、ね・・
…謝らなくていい。それに、ね・・
…うん‥。
…私はあんたの事、本当に大切な友達だと思っている。かけがえのない友達だと思ってる。
…私はあんたの事、本当に大切な友達だと思っている。かけがえのない友達だと思ってる。
…かがみ‥‥。
…だから、そんな淋しそうな顔しないで?‥私が傍にいてあげるから‥。
…だから、そんな淋しそうな顔しないで?‥私が傍にいてあげるから‥。
…かがみぃ‥!私、私…
…どうしたのよ、もう‥。
…どうしたのよ、もう‥。
…私は――本当は‥‥かがみの事――ずっと‥ッ!‐‐
…‥?こなた‥?何を言っているの‥?
‥‥よく聞こえないよ‥‥
‥‥よく聞こえないよ‥‥
――雪が降っていた....
――終わる事なく、白い欠片が落ちていた....
――終わる事なく、白い欠片が落ちていた....
こなた‥聞こえなかったよ‥‥
‥‥大きな声で言ってよ‥‥お願い‥‥
‥‥大きな声で言ってよ‥‥お願い‥‥
風が、冷たい…。
肌に突き刺さるように吹き付ける…。
肌に突き刺さるように吹き付ける…。
‐‐
「…何でもないから」
「…‥‥こなた‥」
「…‥‥こなた‥」
私の身体から、こなたが離れていく。
でもそれは、お互いの顔が見れる距離を取っただけの事。
でもそれは、お互いの顔が見れる距離を取っただけの事。
「ね、約束しよう!‥ずっと一生、大切な友達でいるって…」
「…うん、約束する‥」
「…うん、約束する‥」
私たちは顔と顔の間で、手を握り合った。
そしてお互いに見つめ合う。
そしてお互いに見つめ合う。
――大切な約束を交わした――
お互いに、とても大事な友達である事を。
世界で一番の親友である事を。
二人で、分かち合った。
世界で一番の親友である事を。
二人で、分かち合った。
‥‥‥
‥友達‥‥そう、大切な友達・・。
触れていた所が熱いのも、大切な友達だからだろうか?
コイツを見ていると無性に抱きしめたくなるのも、特別な友達だからなのだろうか?
それとも、コイツが淋しがってるのを知ってしまったから‥?
確かにそれもある、それもあるけれど‥‥
コイツを見ていると無性に抱きしめたくなるのも、特別な友達だからなのだろうか?
それとも、コイツが淋しがってるのを知ってしまったから‥?
確かにそれもある、それもあるけれど‥‥
白暗く、まるで音の無い世界にいるようだった。
街灯だけが雪を反射して丸く光っている‥。
街灯だけが雪を反射して丸く光っている‥。
…私は、何か大切な事を忘れてしまってる気がする。
そして今も、この気持ちをうまく言葉に表せないでいる。
分かってるのは、コイツがとても大切な存在だということだけ‥。
そして今も、この気持ちをうまく言葉に表せないでいる。
分かってるのは、コイツがとても大切な存在だということだけ‥。
「ね、時間が止まってしまえばいいのにね…」
「うん、そうね……」
「うん、そうね……」
握り締めてる手が熱い…。
きっと、この気持ちの答えはすぐに分かると思う。
忘れてしまった何かも、いつか思い出す時が来るだろう。
コイツといれば・・・いつか、きっと‥‥。
きっと、この気持ちの答えはすぐに分かると思う。
忘れてしまった何かも、いつか思い出す時が来るだろう。
コイツといれば・・・いつか、きっと‥‥。
――噴水が虹色に光って‥‥‥
――雪が静かに降り落ちていた・・・・
――雪が静かに降り落ちていた・・・・
二人で見つめ合って、手を握り合った。
そして私たちは、固く誓い合う。
そして私たちは、固く誓い合う。
それは、永遠の約束だった‥‥
- 夢と幻を越えてへ続く
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- GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-05-01 20:23:36)
- 早ぇし、ウメェし、GJ -- 名無しさん (2010-11-15 18:46:41)
- メッチャ続きが読みたいです!
文章が上手くて、引き込まれました!! -- チハヤ (2008-09-11 11:18:52) - 続き読みたいです! 幸せな二人を見届けたいです。 -- 名無しさん (2008-09-08 19:46:07)
- 避難所スレにも感想書いたけど、ほんときれいな文章です!前作「星に願う者」と共に心にグッと来ました…!ああ、貴方の文章見習いたい…それと、できることなら。続き、見たいです!!!
それにしても、保管の速度早いですね…w -- 名無しさん (2008-09-08 01:01:16)