こなた×かがみSS保管庫

その一言が聞きたくて

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匿名ユーザー

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「私はこなたの事が好きなの。」

夕焼け空の屋上で、私の声が響いた。
周り、いや学校にすら、人一人がいないように感じられた。
私が想いを伝えた相手、泉こなたを除いては……

ザワザワと冷たい風が校内の木々を揺らす。
その風の冷たさに、放課後の屋上なんて告白の選んで失敗だったかな、なんてこの場面で思ってしまう。
そう思ってしまうほどに、今の私は落ち着いていた。
先ほどの緊張はどこにいってしまったんだろう?
想いを口にした途端、さっさと駆け足でどこかにいってしまったのだろうか?

風がおさまった頃、下を向いたままのこなたが、私の気持ちを確かめるようにこう聞いてきた。

「私でいいの?」

馬鹿な質問だった。そうでなければ、こんなにも苦しんだり悩んだりするものか。

「本当に私でいいの?かがみだったら…」
「こなたじゃなきゃ駄目。こなたじゃなきゃいけないの。」

こなたの言葉を遮る様に、私は言う。
嘘なんかじゃ決してない、私の心からの本心を。

「もう一度だけ言うわ。私はこなたのことが好き。こなたは……」

瞬間、何かが私に抱きついてきた。それがこなただと分かるのに、少し時間がかかった。
こなたは泣いていた。こなたの涙が私の胸元をぬらした。
私は片腕をこなたの背中に回して抱き寄せ、そしてもう片方の腕でこなたの頭を撫でる。

もう言葉はいらなかった。
夕焼けの空の下、私達はお互いの体温を感じ続ける。

時折吹く冷たい風が、妙に心地よかった。

―――――

これが私達が親友という枠を飛び越えた瞬間。私とこなたの想いが通じ合ったとき。

あの時の緊張、そしてこなたに抱きつかれたときの幸福感。
その時の感情を、気持ちを、私は今でも忘れていない。

だけど、喉に刺さった小骨のように気にし続けていることが一つ。


私はこなたからあの言葉を聞いていない。


「好き」っていう、その一言を聞いていない。





『その一言が聞きたくて』





私が告白して以来、こなたは私に対して「好き」という言葉を使わなくなった。
あのこなたが、私をからかう時ですらだ。
最初は告白したばかりだから、恥ずかしいのだろうと思っていた。
少し時間が経てば好きって言ってくれる。
そう思っていた。

だけど、一日経ち、一週間経ち、二週間経ち、果ては一ヶ月以上経っても、こなたは私に対して「好き」と言わなかった。
なんで?今まで冗談でも散々言ってきてくれたのに?!
そうこなたに言ってやりたかったが、そんなこと言えたら苦労はしない。

けど、もう我慢の限界。私はどうしてもその一言が聞きたくてたまらない。

もちろん、こなたが私のことが好きだと言う事は十分に分かっている。
あの日以来、必要以上にベタベタするようになったし、二人っきりの時は手を繋いだりもしている。

こなたの気持ちは言われなくても分かっているのだ。
分かっているけれども、こなたの口から聞きたいと思うのはいけないことだろうか?

無粋な考えだと自分でも思う。だけど、聞きたいものは聞きたい。

そんな悶々とした気持ちを抱いていた私に、この度絶好のチャンスが訪れた。

―――――

それは一週間前の放課後の事だった。きっかけはこなたのこの一言だった。

「クリスマスイブにみんなでパーティをやろうよ!!しかも泊まりで。」

唐突にそんなことを言い出した。
そういえば、私達四人でクリスマスを過ごしたことはなかった。

「おお、いいね。最近勉強ばっかりだったし、息抜きにはちょうどいいかも。」

もちろん私が反対する理由なんてない。「泊まり」という言葉がちょっと気になるけど。

「そうですね、こういった機会もこれからどんどんなくなっていくことでしょうし。」
「うん、私もこなちゃんに賛成だよ。」

みゆきとつかさも賛成の声をあげる。

「それではパーティ会場だけど……みゆきさん!」
「は、はい!!」
「君の家に決めた!!」

こなたがみゆきを指差しながらそう言った。そのポーズはなんかのネタか?

「私の家……ですか?」
「いいのよ、みゆき。無理にこいつに合わせなくても。」
「いえ、大丈夫です。父と母にも伝えておきますので、心配なさらないでください。」

みゆきがいつもの笑顔で言った。まあ、みゆきがそういうのなら大丈夫か。

「というわけで、12月24日、みゆきさんの家に集合だよ。
 終業式があるから、時間はちょっと遅めで夜の8時くらいにしようかなって思ってるんだけど。」
「夜の8時か、ちょっと遅いね。」
「いやいや、つかさ。その日は泊まりなんだから、どれだけ時間が遅くても問題ないのだよ。」
「そういう問題か?」

とりあえず突っ込んではみたけど、ここら辺は会場提供者であるみゆきしだいだ。
まあ、答えは分かってるんだけどね。

「私の方は大丈夫ですので、何時でも結構ですよ。」

ほら、やっぱり。みゆきならそういうと思ったわ。

「あっ、でも深夜の0時とかですと、ちょっと困りますね。朝早くなどは大丈夫なのですが……」

いやいや、そこまで非常識なことしないから……

―――――

その日の夜、こなたから電話がかかってきた。

「やふー、かがみん。」
「おーす。急にどうした?」
「いやいや、私の嫁がさびしがってるんじゃないかと思ってね。」

ふーん、好きとは言ってくれないけど、嫁とは言ってくれるんだ。
胸の中の悶々とした気持ちがまた強くなった。

「なに馬鹿なこと言ってるのよ!」

気取られないように、いつもと同じ口調で切り返す。うん、いつも通りだ。

「おうおう、つれないねかがみんは。」

こなたもどうやら気がついていないようだ。我ながら、こういったところだけ嘘がうまい。

「まあそれはさておき、クリスマスパーティのプレゼントなんだけど。」
「ああ、私も今考えてたところよ。」

正直悩んでいた。みゆきやつかさが喜ぶものとは一体なんだろう。
ちなみに、こなたの分は悩む事もなく決まった。

「それは丁度いいね。それでね、つかさとみゆきさんのプレゼントは、私とかがみの二人からってことにしない?」
「何でよ?」
「いや~、みゆきさんとつかさのプレゼントはペアルックなんてどうかなって思ってね。
 私が同じのを渡すより、私とかがみで渡した方がより効果があるんじゃないかと。」
「で、その心は?」

なんでみゆきとつかさにペアルックの物をプレゼントするのか、正直全然分からん。

「その心は……二人の仲を親密に!」
「はあ?」

余計分からなかった。親密も何も、あの二人は元から仲がいい。

「気付かないかな、かがみんは。あの二人も、私達と同じだってことだよ。」
「…ええっ!!そうなの?」

驚いた。ええ、そりゃあもう驚いたわよ。つかさなんて全然そんな素振り見せなかったのに。

「そうだよ。まったく、何で気がつかないかな、かがみんは。」

言われてみれば、思い当たる節はあった。
例えば四人で歩くときの立ち位置。
こなたが私の横にいつもいるからだと思っていたけれど、みゆきの隣はいつもつかさだった。
学校でもそうだ。みゆきは私やこなたよりつかさと一緒にいるほうが圧倒的に多い。
そう言えばつかさも家に帰るとき、
「パーティの料理は私とゆきちゃんの二人で作るから、おねえちゃんとこなちゃんは後からゆっくり来てね。」
って、やけに「二人」と「ゆっくり来て」の部分を強調して言ってた。

「と言うわけなのだよ。ただ私達みたいな関係にはなってないから……」
「ペアルックのプレゼントで後押しってか。」
「その通り!これで、あの二人にもフラグが立つね!!」

こなたが意気揚々と言った。

「まあこなたがそう言うんだったら、きっとそうなんでしょうね。いいわ、こなたの言うとおりにする。」

私の事以外の感情の機微には鋭いこなたが言っているのだ。
なんだかんだできっとうまくいってしまうのだろう。

「ありがとう、かがみん。それじゃあ、当日に一緒にプレゼントを買いに行こう?」
「当日?いくらなんでも遅すぎない?」
「いいじゃん、別に!集合時間は学校が終わったらすぐだよ。分かった?」

早口だった。なぜかどことなく声色も緊張しているように聞こえる。

「うん、分かったわ。」
「集合場所はあとで決めようね。それじゃあ、そういうことで。じゃね~。」

言いたいことだけ言うと、こなたは電話を切った。
こなたが電話を切った後、私はようやくこなたの最後の方の言葉が理解できた。
学校が終わった時間から、パーティの時間まで十分すぎるほどの時間がある。
二人のプレゼントを選んでも余りあるほどの。


つまり………


これって、デートのお誘いってこと?

―――――

12月24日、午後12時30分。私は約束の場所でこなたを待っていた。
こなたとの約束の時間は午後1時だから、30分ほど早く来た事になる。
当然のことながら、こなたはまだいるはずもない。
ちなみにつかさはもうすでにみゆきの家に向かっているところだ。

「はぁ。」

ため息一つ、そしてそれと同時に、ある決意を胸に秘める。
それは、「今日こそこなたに好きと言わせる」ということだ。
クリスマスイブとはいえ、今日はカップルの日。
無宗教の私だけど、きっと聖ニコライもキリストも応援してくれるに違いない。

自信はあった。なにしろ私は目的を確実に遂げられる魔法の言葉を知っているから。
それは、「こなたは私のこと好き?」だ。
そう聞けば、こなたは絶対に私のことを好きだと言ってくれる。
それはもう100%、間違いなくそう言うに決まってるわ。
今まで聞かなかったのは、こなたがいつか言ってくれると信じていたからだ。

でも、今日この日、ついに私はこの魔法の言葉を使うことを決意した。
だけどなんの脈絡のなしにその言葉を使っちゃったら、なんか催促しているみたいだ。
待たされ続けた身としては、それはちょっと悔しい。
だからそれとなく、かつ自然に聞くようにしないと。
大丈夫、練習はバッチリしてきた。

ふふっ、覚悟しなさい、こなた……

「何を覚悟するの?」
「そりゃあ、当然こなたが……って、こなた!!いつからそこに?」
「ついさっき。」

あ、危なかった。いきなり作戦が失敗するところだったわ。

「な、なんでもないわよ。それにしても、こなたにしては早かったわね。奇跡?」

時計を見ると、午後1時ぴったりだった。
こなたが待ち合わせに間に合うなんて、奇跡以外のなにものでもない。

「相変わらずひどいな~、かがみんは。待ちきれなくて早く来ちゃったんだよ。」
「待ちきれないんだったら、普通約束の時間より早く来るものじゃないの?」

私にみたいに。

「いや~、そこは私らしいってことで一つ。」
「はいはい。ほら、行くわよ。私なんかお腹すいっちゃったわ。」

私はそう言ってこなたより先に歩き始めた。

「ちょっと待ってよ、かがみ様~」

すぐ後ろから、こなたの声が聞こえる。

さて、決戦の始まりだ。
―――――

食事の後、私達が最初に向かった場所はアニメショップだった。
いつもだったら嫌がるところだけど、今回ばかりは好都合だ。
今週発売の私のお気に入りのラノベ。このラノベの告白シーンが最高なのだ。
その話をネタにして、それとなく話を持っていけば……うん、絶対うまくいくわ。
店内に入ると、私はさっそくそのラノベを探し始めた。

「あった!」

件のラノベは平積みにされていた。さっそく私はそれを一冊手に取る。

「ねえ、こなた?このラノベの主人公の告白シーンがさ……って、いないし!」

すぐ隣にいたはずのこなたの姿が、どこにも見当たらなかった。

「おお、かがみ!それ買うんだったら、一緒に買うから貸して。」

いきなり後ろからこなたの声がした。
振り返ってみると、漫画や雑誌、それにグッズを抱えたこなたが立っていた。

「何それ?」

こなたが抱えているものを指差して、思わず聞いてしまった。

「何って、漫画と雑誌とあとアニメのグッズだよ。いや~、今日はクリスマスフェアでポイントがなんと3倍なんだよ!!」
「そう……なんだ。」
「そうなのだよ!それでかがみ、その本買うの?買わないの?」

今度はこなたが私のラノベを指差して聞いてきた。

「こ、これ?この、あの、告白のシーンが…」
「もう、かがみのラノベ話だったら後で聞いてあげるよ!!
 かがみがそれを買わなかったら、私はもう一冊買う漫画を選ばないといけないんだよ!!だからどっち?」
「………買うわよ。」


聞けよ、人の話………



「いや~、久しぶりに来たから、盛り上がっちゃったね~」
「あんただけな。」

お店を出てホクホク顔のこなたに対して、ぶっきらぼうに答えた。

「グッズも買って満足したし、かがみ様のラノベ話でも聞こうかね。で、何の話だったの?」
「………なんでもない。」

もう語る気も失せた。

はぁ………失敗。

――――

さて他の店も冷やかしつつ、次に私達がやってきたのはシルバーアクセサリーのお店。
理由はもちろん、つかさとみゆきのプレゼントを買うためだ。これが一番の目的だったしね。
店内に入ってデザインが良くて、かつ手ごろな値段のものを二人で分かれて探す。

「どうこなた?なんかいいのあった?」

合流したこなたに塩梅を聞いてみる。

「う~ん。やっぱり、デザインがいいのは高いし、安いのはデザインがどうもいまいちだよ。」
「こっちも。やっぱりそういうものよね。」

今度は二人で探してみることにした。
大雑把に見ていた商品を、今度は二人で丁寧に見ていく。
するとこなたが商品の一つを手に取った。

「これなんかいいんじゃないかな?」

そういって私にそれを見せてくれた。

羽の形をしたシンプルでリングだった。
カジュアルテイスト、だけどどこか控えめなデザインはみゆきにも、そしてつかさにも似合いそうだった。
値段の方も確認してみたけど、十分買える範囲だった。

「うん、いいんじゃない?」
「それじゃあ、これを二つっと。ところでかがみ?」
「なに?」
「かがみもさ、こういうの欲しい?」

あまりに急な質問に、すぐには答えが出なかった。

「そ、そうね。あったらうれしいわね。」
「そっか。じゃあ、一緒に買おうよ。私も欲しいし。」
「う、うん。」

ちょっとテレながら話しかけてくるこなたに対して、私もそう答えるのが精一杯だった。
こうして私達は今度は自分達の為に店内を回ることになった。

そう言えば、何か大切な事を忘れているような……

……失敗。

――――

「たまには映画って言うのも悪くないわね。」
「そうだね。」

映画館にて、私達は恋愛物(しかも甘々のやつだ)の映画を鑑賞し終えたところだった。

「けどさあ、あんなロマンティックな告白シーンなんて映画の中だけだよね。現実じゃありえないよ。」
「あら?私達の告白も、なかなかロマンテックだったと思うけど?」
「えっ……」

私からこんな切り返しが来るなんて思ってもみなかったのだろう。
こなたはそのまま黙り込んでしまった。

「こなた。」

そう言って私はこなたの手を取った。そして互いの指を絡める。

「かがみ……」

私の方を見ていたこなたの顔が赤くなっていくのが分かった。
恥ずかしいのか、すぐに下を向いてしまたけど。

「ねえ、こなた。私のこと、好き?」
「えっ!それは、その…」

私の問いかけに、ついに歩くことすら止めてしまうこなた。

「私は好きよ。こなたは?」
「うん、私もかがみのこと、好きだよ。」

2度目の問いかけで、ようやくこなたは私の望む答えを言ってくれた。はにかんだ笑顔と一緒に。


…………


……


………って、なるはずだったのよ、私の想像の中では!!

実際は……

「いや~、昨日なかなか寝付けなくてね。
 ネトゲなんぞを嗜んでいたら、なんとレアアイテム出まくりで……」

なんでこういうときに限って寝ちゃいますか、こなたさん……
こんなんで、聞けるはずがない……

………失敗!!

――――

日はすっかり暮れてしまった。
月明かりの下、私とこなたはみゆきの家に向かって歩く。

「いや~、楽しいデートだったね。」
「そうね。」

こなたの言葉に私はそう答えた。
うん、楽しかった。最近は勉強ばかりだったから、余計に楽しかった。

楽しかったけど………

私の目的は果たせなかった……

あの後も、聞くタイミングは何度もあった。

だけど、結局聞けなかった。自分のヘタレ具合に呆れ果てる。
あの告白のときの私はいったいなんだったのだろう?

そんなことを考えながら歩いていくと、みゆきの家にたどり着いていた。
タイムリミット。あ~あ。結局、今日も好きって言ってもらえなかったな。
私はこなたに気付かれないように、軽くため息をはいた。

「ねえ、かがみ?」
「何よ」

私の方を見ずに、こなたが私に話しかけてきた。私もこなたの方を見ずに答えた。

「かがみさ、今日ずっと考え事してたでしょ。」

そう言いながら、こなたはチャイムのボタンを押した。
ピンポーンというチャイム独特の音が辺りに響く。

気付かれてた……おかしい、絶対にそんな素振りは見せなかったはずなのに……

「はい。どなた様でしょうか?」

インターフォンからみゆきの声が聞こえた。

「すみません、泉ですけど。」
「ああ、泉さん。いま参りますので、少々お待ちいただけますか?」
「ほーい。」

ガチャっという受話器を置いた音が聞こえた。
もうすぐみゆき達がこっちに向かってくるのだろう。

「何で分かったのよ?」

みゆき達が来る前に、どうしてもこなたに聞いておきたかった。

私の方を振り向きながら、こなたはこう答えた。
「かがみは一つの事に集中すると、他の事は疎かになるからね、もう受け答えとかですぐ分かるよ。」
「そう…なんだ……」

前に日下部にも同じような事を言われた記憶がある。
その時は別段気にしていなかったけど、こなたにまで分かってしまうとなると話は別だ。
よし、来年はその悪癖を直すように心がけよう。

「かがみ様の突っ込みも、今日は切れが鈍かった~」
「それはどうでもいいことね。」
「ひどいよ、かがみん。それは私にとって重要な事なのに!」

こなたが不満の声を上げる。私は別に突っ込みたくて突っ込んでるわけじゃないぞ。

「それに……」

こなたの声色が、ほんの少しだけ変わった。そして私の目を見ながら一呼吸して……

「私かがみのこと大好きだもん。かがみのことなら、かがみ以上に分かるんだよ。」

私が望んでやまなかった言葉を、あっさりと言ってくれた。しかも大のおまけ付で。

「あっ……」

思わず声が出た。

だって……やっと、やっと言ってくれたんだから……

知っていた。
こなたが私を好きなことぐらい知っていた。

なのに……

なのに、何でこんな気持ちになるのだろう?
「好き」って言われただけなのに、知っていた事を声に出されただけなのに、なんでこんなにも嬉しいのだろう?
涙が溢れそうになるのだろう?
これじゃあ、今日初めてこなたに告白されたみたいじゃない!

「初めて好きって言われた……」

下を向きなら、思わずそう呟いた。

「なに?何か言った?」

こなたが聞き返してくる。

「初めて好きって言われた!!」

同じ言葉をもう一度繰り返す。今度は大声で、こなたにも聞こえるように。

「あれ?そうだっけ?」

ああっ、もうっ!!
知っていた。知っていたけど……やっぱり、こなたはずるい!!

「そうよ。私が告白したときも、その後も、こなた一度も好きって言ってくれなかったじゃない…」
「いや~、ちょっと照れくさくてね。つい……」
「ついじゃないわよ!!私が、どれだけ、聞きたかったと思ってるのよ……」

そこまでが限界だった。言い終えた途端、私の目から涙が溢れてきた。

「もしかして、今日それでずっと考え込んでたの?」
「そうよ、悪い!!」

もうこなたの顔も見ることが出来なかった。下を向いてただただ泣いていた。

「よしよし、かがみはいい子だね~。」

何時の間に近寄ってきたのだろう?
こなたがそう言って私の頭を撫でた。しかもつま先立ちで。
無理するな、と人事のように私は思った。

「うるさい!子ども扱いするな!」

そう言い返してみたものの、やっぱり涙は止まらない。
おかしい、これじゃあいつもと逆じゃない。

「かがみ……」

こなたはそういうと私を抱きしめてくれた。
その温もりが暖かいと感じるのは、外が寒いからか、それとも別の理由からだろうか?

「これからずーっと言い続けるのにさ、一回言われたくらいで泣かないでよ。」
「うるさい!全部あんたが悪いんだから!!あんたがあの時、ちゃんと言ってくれないから……」
「はいはい、私がぜーんぶ悪かったよー。」

いつもの口調で答えるこなた。こいつ、絶対そう思ってないな。
突っ込んでやろうと思ったけど、何故か言葉がでなかった。

「かがみ。」

私の涙が少しだけ収まった頃、耳元でこなたの声がした。

「何よ?」

泣いてばっかで悔しいから、ぶっきらぼうに答える。

「好きだよ。」
「―――――!!」

今日二度目の言葉。
もう何を言っていいのかわからなかった。何も考えられなかった。
溢れ出る感情に、涙だけがただただ流れ落ちる。
だから、言葉の代わりに私はこなたを抱きしめ返す。
この感情が、この気持ちが、こなたにも分かるように、伝わるようにと。

そうすると、こなたもさっきよりも強く私を抱きしめてくれた。

こなたを抱きしめ、そして抱きしめられながら、私は思った。
私とこなたは両思いなんだ。私はこなたが好きで、こなたも私のことが好きなんだって。
本当に、本当に今更ながらそう思った。


クリスマスイブの夜。

私が最初にもらったちょっと早めのプレゼントは、こなたからのたった一言だった。

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  • GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-18 10:17:12)
  • ちくしょう、ニヤニヤとまらないwwwGJ! -- 名無しさん (2009-01-12 22:44:55)
  • GJです!
    好きと言ってもらえないことを気にかけるかがみがとても女の子らしく描かれてますね。
    何度もかがみが好きと言わせようとして失敗したのに、あっさりと言っちゃうあたりがとてもこなたらしい(笑)。
    こなたに好きと言われて泣いちゃう姿も、かがみのこなたへの想いの強さを表していていますね。
    こなたの方も自分に向けられた想いをちゃんと理解し、応えてあげる優しさを持っていて、
    お互いを強く想う気持ちがすごくよく伝わってきて、ほんわか幸せな気分になれました。
    「好き」という大切な一言をめぐる、初々しさの溢れるSSをありがとうございました。 -- 18-236 (2008-12-30 20:20:28)
  • ↓ww。 そしていい話でした GJです!!  -- 名無しさん (2008-12-27 16:35:27)
  • 違いないWW↓ -- 名無しさん (2008-12-27 16:26:39)
  • つかさとみゆきさんはきっと、玄関扉の内側か門の見えるところで
    二人のやり取りを見聞きしてにやにやしてるに違いないw -- 名無しさん (2008-12-26 14:21:47)
  • いい~ -- 名無しさん (2008-12-26 10:06:09)

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