例え聖夜が終わっても

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チャイムが鳴って、この日最後の授業が終わった。
両手を上に伸ばして、大きく伸びをする。

今日は十二月二十四日。クリスマス・イブ。
それなのに、私の学校ではこれから三日間、冬期補修がある。
元々冬休みは短いんだし、なにもクリスマスの日にやることないのに。

騒がしくなり始めた周りを尻目に、ゆっくりと帰り支度を始める。
……これからどうしようかな。
クリスマスイブだけど、特にこれといった予定もない。
代わりに明日は、補修が終わってから四人で出かけるつもりだけどね。

何をしようか考えながら、鞄を閉じていると、
不意に、教室の扉が開く音が聞こえた。

「かがみー」
振り返ると、コートとマフラーと手袋でいつになく防寒対策を徹底したこなたが、開いた扉の先にいた。
目を細めて、猫口を大きく開けて、どことなく嬉しそうな表情に思える。
……とりあえず今日は補修から開放されたわけだしね。

こなたは私の姿を見つけると、片手を軽く挙げて走ってきた。
「かがみ、今日何か用事ある?」
「別にないけど……どうしたの?」
こなたは首を少し横に傾けて、
「帰りに買い物行かない?」
買い物?
「何? またあんた向きのじゃないでしょうね」

椅子に座ってるから、珍しくこなたを見上げる形になる。
こなたは私を見下ろしながら、にやっと笑って、
「それもあるけど、それがメインじゃないよー」
「じゃあ、メインは何なのよ」
「んー、色々かな。まぁ、とにかく来てよー」
背中をぽんぽんと叩かれた。
買い物ねえ。……どうしよう。

「かがみってばー」
「わっ、ちょ、何するのよ!」
こなたはしゃがみこんで、密着するぐらいの近距離で、私の脚を直に掴んできた。
……温かい、手の感触。
何故か体が熱くなるのを感じた。
背中がぞくっと震えて、逆上せたように頭がくらくらしてくる。
なんだろう、この感じ。風邪……かしら。

「かがみ様ー、お願いだから来てよー」
脚を左右に揺さぶられた。
「……あー、分かった分かった。行ってあげるから」
「ほんと? いやー、さすがはかがみ。空気読めてるねー」
こなたは途端に元気よく立ち上がった。
……全く、現金なんだから。
そう思いながらも、コートを着て、鞄を掴んで、席を立った。
こなたと並んで、教室の外に出る。

今年のイブは、こなたと一緒に買い物か……。


聖夜を数時間後に控えた街は、冬の寒さの中でも活気に満ちていた。
その人ごみの流れに乗って、こなたと歩いていく。
結局何を買うのかと思ったら、アニメイトに寄って何かの雑誌とカレンダーを購入しただけだった。
後は、歩いてばかり。
こっちがメインじゃないって言ってたのにな。他に何を買うつもりなんだろ。

ついでに私はライトノベルの新刊を買っておいた。
……行ったからには何か買わないとって思っちゃうのよね。
ふと携帯の時計を見ると、四時八分だった。

冬の夜は訪れるのが早い。太陽ももう傾きかけている。
でも、夜になったらなったで、街の活気はより賑やかなものになるだろう。
むしろ聖夜の名前通り、クリスマスイブは夜なんじゃないかと思う。

……それにしても、
「カップルが多いわねー」
「そうだねー」
周りを見ると、どこもかしこも男女の二人組ばかり。
そして皆、顔に笑顔を浮かべながら、仲睦まじそうに話している。
少し見回しただけで、そんな情景が何組も目に入った。
視界が向く先には、必ずカップルがいると言っても過言ではないほどの数だ。

中には、マフラーをお互いの首に巻いて、笑いあっているカップルもいる。
何処の誰かも分からない彼らは嬉しそうで、眩しいほどに、輝いて見えた。
その二人の顔を、二人の首に巻かれた茶色いマフラーを眺めながら、
思わず、鞄と袋を提げた手を握り締めた。

……少し。
少しだけ、
羨ましいな。
「羨ましいの?」
「えっ!?」
狙いすましたようなこなたの声に、思わず聞き返してしまった。
こなたは私の反応を見ると、急ににやにやした笑いを浮かべて、
「ん~。羨ましいのかにゃ~」
「ち、違うわよ」
「あれー、でもさっきからずっと周りを気にしてたよ?」
「そ、それは……」
何も言えなくて、俯いた。
歩道の上を歩く自分の靴。隣には、こなたの靴が見える。

つと、こなたの靴が下の方へと流れていった。
不意のことで一瞬分からなかったけど、立ち止まったみたいだ。
どうしたんだろう。
そう思って、振り返ろうとして、
「!」

ふわっとした感触。
こなたの靴が近づいてきて、
冬の大気に直に触れて、冷たくなっていた首に、何か温かいものが被せられた。
こなたの方を振り向くのと同時に、こなたがそれを引っ張って、くるくると巻きつけた。
それは、黒色のマフラー。

「こなた……?」
外はこんなに寒いのに、コートの中の体はやけに火照っていた。
私とこなたの首には、一つのマフラーが巻かれている。
マフラーはそんなに長くなくて、こなたと自然に密着する形となった。
「なんで……?」
言葉が白い息になるのを感じながら呟く。
こなたは微笑を浮かべて、
「ふっふ~、かがみ、こういうのに憧れてるんでしょ?」
え……?
隣にはこなたがいて、なんとなく温かい。
でも、

「別にあんたとやっても、そんなに嬉しくないっていうか……。
 これは、その……恋人同士がやるもんでしょ」
こなたは、えーっ、とわざとらしく驚いた声を上げて、
「せっかく恋人もいない寂しいかがみに、いい思いをさせてあげようと思ったのにー」
「いや、だから、そっちじゃないってば」
言うと、こなたは少し考えるような仕草をして、あー、と納得したように唸った。

「何なに? そんなにかがみ恋人願望強いの?」
「う、うるさいわね! それくらい当たり前じゃない。あんたはどうなのよ」
「私? 私は別に、そんなに彼氏とか欲しくないし」
そう呟いて、目を背けるように視線を斜め下に向けるこなた。
別にあんたの趣味を咎めるつもりはないけど……。
このままじゃ駄目だ。なんとか引き戻さないと。
「……あんたねぇ、本当に二次元に没頭してるだけでいいの? 
 ちょっと手を加えたら、元々可愛いんだし彼氏くらい出来そうなのに」

不意に、こなたはこちらを向いて、小悪魔のような笑顔になった。
「かがみ、私のことそんな風に見てたの?」
「え、な……。きゃ、客観的に見てよ」
「でも可愛いとかって主観的だよねー」
後悔しても、後の祭りだった。
口が滑ったというか、失言だったというか……。
思わず逃げ出したくなったけど、マフラーがそれを頑なに拒んだ。
精一杯顔を逸らして、
「と、とにかく、あんたも少しは頑張りなさいよ」
「はいはい。頑張ってるよー」
こなたの適当な返事を聞きながら、逸らした視線で歩き続ける。

しばらく無言のままだった。
こうして見ると、こなたの背の小ささを改めて感じる。
首の位置も違うから、マフラーはかなり傾いていた。
これだと、周りからは姉妹みたいに思われるのかな。
女同士だし、恋人には見えないわよね。

はぁ、と小さく溜め息をついた。
さっきから、なんでだろう。
体がどんどん熱くなっている気がする。
思わず身震いするほどの冷たい風が吹いているのに、どうしちゃったのかな。
ドクドクという、心臓の鼓動まで聞こえてくる。

「どうしたの、かがみ。顔真っ赤だよ」
「な、なんでもないわよ……。それより、マフラー外さない? 女同士でやってるなんて、変に見られるわよ」
「えー、あったかいし、別にいいじゃん」
「だって、は、恥ずかしいじゃない。こんなことしてると」
「んー、かがみ、そんなに私のこと意識してるの?」
「う、うるさい!」
こなたが何か言うより早く、マフラーをほどいてこなたの首にだけ巻きつけた。
「あ~……」
いかにも不満そうなこなたの声。
でも、周りの視線が耐えられなかったのよ。

とにかく話を逸らそうと思い、何か話題はないかと考えて、
「そういえばあんた、今日はバイトあるの?」
「え? 今年は今日じゃなくて、明日あるんだよ。
もちろん夜からにしてるから、みんなと遊びにいけるけどね」
「そう……」
こなたはクリスマスの夜もバイトなのか。大変というか、そんなのでいいのかしら。
……まぁ、私も家で家族と過ごすだけなんだけどね。
「それで、今年もサンタのコスプレするの?」
「うん。去年あれで大盛況だったからね。お客さんも喜んでくれてたし」
思わず頭に、サンタ姿のこなたが浮かんでくる。
背も小さいし、胸も平面だし、子供っぽいし。

「何? あんたのとこのお客って、ロリコンなの?」
「それって、暗に私を幼児体質って言ってない? ……まぁ、中にはそういう人もいると思うよ。
 皆が皆ってわけじゃないし、大体は同族の臭いがする人だけどね」
同族……って、オタクのことか。
「そんなの、外見で分かるもんなの?」
「雰囲気だよ、雰囲気。それに、私に言わせたらかがみも……」
「わ、私はオタクじゃないわよ。一般人だって言ってるじゃない」
そう言った途端、手に提げたアニメイトの袋が、自己主張するように擦れる音を立てた。
いやいやいやいや、別にライトノベル読んだり、アニメイト行くだけだって。
それくらい、普通の人だってやってるじゃない。
見ると、こなたは口元に手を当てて、何か言いたそうにしていた。
話を変えよう。そう思って、また考える。

「そういえばこの前も話したけど、オタクの男子はオタクの女子を彼女にしたいって思ってるらしいけど、逆はないものなの?」
「んー、どうだろう。別にそんな風に考えたことはないんだけど……」
「でも、自分の趣味を理解してくれる相手の方がいいんじゃないの?」
こなたは少し首を傾げて、考え込んでから、
「それはそうだけど、二次元に逃避してる人と付き合いたいとは思わないなー。
 男子の方が症状が重いというか、依存度が高いって感じがするんだよね」
「……あんた、言ってて虚しくないか?」
「別にー」
こなたは平然とした顔で微笑んだ。
あんたはその辺のオタクの男子よりも、よっぽど濃いと思うわよ。
そう思ったけれど、声には出さなかった。

「っ!」
不意に冷風が正面から来て、思わず顔をしかめる。
話し込んでたから気づかなかったけど、手とか顔は、相当冷たくなっていた。
冬の外をずっと歩き続けているんだから、当然だ。
でも、このまま歩いて、何処に行くんだろう。
こなたに聞こうかとも思ったけど、どうせはぐらかされて、肝心なところは言ってくれないだろうから、やめておいた。
このまま歩いていれば、いずれ目的地も分かるはずだ。

「かがみってさー」
「ん、何?」
徐々に青く、薄暗さを感じてきた街並みを見ながら、
「サンタさんって、いつまで信じてた?」
え?
いきなり何を言い出すのかと思ったら……。
でも、いつ頃までだろう。もうあまり覚えてないな。
「う~ん、小学校高学年くらいの時にはもう分かってたと思うけど……。あんたはどうなのよ」
「私は結構最近まで信じてたけど……。てかつかさに言われて、初めていないって知ったんだよね。
 それまではうちにサンタが来ないから、代わりにお父さんがプレゼントをくれてるって思ってたんだよ」
「……それって、なんというか、お父さんも子どもの夢を壊さないように必死だったのね」
つかさに教えてもらったって、少なくとも中学生までは信じてたってことじゃない。
ある意味、こなたらしいとも思うけど。

「サンタさんがいないって言われた時は、さすがにびっくりしちゃったよ」
「まぁ、私も小さい時は、イブの夜になったらサンタさんが来て素敵なプレゼントをくれるって信じて、
寝ないでずっと起きてたこともあったけどね」
白髭に、親しみのある丸顔という、典型的なサンタさんの顔が頭に浮かんでくる。
そこから連想ゲームのように、さっきのサンタ姿のこなたが脳内に姿を現した。
「……さしずめあんたに会いに来る客は、夢を捨てきれない子供心を持った人か、ただ単にコスプレが好きな人ってところかしらね」
「そんな感じかなぁ。でも、私も色んな人に夢を与えてるサンタさんだね」
こなたはそう言って、綻んだ表情で笑った。
……色んな人ではないと思うけどね。

こなたを眺めていると、不意に目眩がするほどの熱を全身に感じた。
心臓の鼓動が、やけに大きく耳に響く。

真っ直ぐ歩くこともままならないようになってきた。足元がふらつく。
視界のこなたが、急に霞んで、
体に力が入らなくなって、何も考えられず、どうすることもできないまま、

倒れこんだ。


……何か、音が聞こえる。
声のような音。
……あれ、私、眠ってたの?
記憶が曖昧で、さっきまで何をしていたのか、思い出せない。
頭がぼーっとしていて、うまく働かなかった。

「……み」
また、聞こえる。
「……がみ」
これは、この声は……。
「かがみっ!」

私を呼ぶ声に応えようと思って、重い瞼を無理矢理こじ開けて、
「……こなた?」
ぼんやりとした薄暗い視界に映るのは、すぐ近くまで迫った、こなたの顔。
何故か眉尻が下がっていて、目は赤くなっていた。

「か、かがみ!?」
こなたは急に驚いたように目を見開いて、それから満面の笑みを浮かべた。
「よかったぁ……。大丈夫? 苦しくない?」
「え、ここは?」
気がついたら、周りはもう薄闇に包まれていた。
空はほとんど真っ暗で、端っこの方に僅かに太陽の残滓が見えているだけ。
こなたの背後には木と、外灯と、少し遠くに背の高いビル群。
どうやらここは、何処かの公園みたいだった。
そして、私がもたれて眠っていたのはベンチの上で、傍らには鞄と、アニメイトの袋。

「公園だよ。……かがみがいきなり倒れこんできたから、とにかくどっか落ち着ける場所を探してたんだよ」
「え?」
同時に、今までのことが全て頭に蘇った。
そうか、私、こなたと一緒に歩いてる時に、気を失って……。
ずっと頭がふらふらしてたし、体も熱かったし、やっぱり、たちの悪い風邪だったんだろう。

「ほんとは、病院とかに行ったほうが良かったのかもしれないけど、何処にあるかも分かんなかったし、その時はそんなこと考えられなくて……」
こなたはそう言って、少し俯いた。顔に影が降りる。
「ううん。でも、ここまで連れてきてくれたんでしょ」
まだ目眩のようなものは続いてるし、体も異常なほど熱を持っている。
全身は虚脱感で包まれ、声を出すことですら辛かった。
インフルエンザではないと思うけど、多分相当悪質な風邪だ。

でもこなたは、そんな私をここまで連れてきてくれた。
最近ちょっと太り気味で、重かったはずなのに。
実際に見たわけじゃないけど、第三者視点で、背中に回した手で私を支えて歩く、こなたの姿が頭に浮かんだ。
「ありがとう、こなた」
それから、
「ごめんね。……迷惑かけて」
周りから変な目で見られたかもしれないし、重かっただろうし……。

「ううん。謝るのは、私の方」
椅子に乗り上げた犬のように、ベンチに手をついて私の前で屈んでいたこなたが、ゆっくり立ち上がる。
気がついたら、ぼんやりとこなたの顔を見上げていた。
どういうこと、だろう。
ふらふらと壊れかけている私の頭じゃ、明確な答えを出すことも出来なかった。

「……私のせいだよ。私が寒い中、かがみをずっと連れ回したから。
 だから、かがみが、こんな目に……。
私が他のお店に行こうとしなかったら、こんなことにはならなかったのに……」
こなたの目から、何かが零れ落ちた。
それは、ずっと後ろの街のネオンで、光って見えた。
それは、何故かとても、綺麗に思えた。
多分風邪で思考がおかしくなってるんだろう。何考えてるんだ私は。

「かがみ、ごめん……。ごめんなさいっ……!」
こなたは、馬鹿丁寧なくらい深々と頭を下げた。
こんなの。こんなの、おかしいわよ……。
ふらつく足に力を入れて、体重以上に重く感じる体を立ち上がらせる。
同時に、何かが軽い音と共に地面に落ちた。

外灯の淡い光に照らされるのは、私が着ているのと同じコートだった。
拾おうとして、コートの上を掴んで、
自分の手に、手袋がはめられているのに気がついた。

はっとして、首元に手を当てると、温かい布の感覚。
もう一度こなたを見る。
こなたは制服姿で、マフラーも手袋も、コートさえしていなかった。
「こ、こなた、何やってるのよ! 風邪引くわよ?」
急いでマフラーを取って、頭を下げっぱなしのこなたの首に巻きつけて、丸めた背中の上からコートを羽織らせる。
不思議と、体が機敏に動いた。
「だ、だって……、かが、みのことが、心配だったから。外で……夜だし、かがみの体が冷えちゃうって、思って……」
こなたは、咽んで何度も言葉を詰まらせながら、背中を震わせながら、消え入るようなか細い声で、そう言った。
……どうして。
ともすれば後ろに倒れこみそうになる体を屈ませて、下からこなたの顔を覗き込む。

泣いていた。
こなたの目からは涙が溢れていて、ポタリポタリと、私の顔に雫が零れた。
普段のこなたからは想像も出来ないほど、哀しそうな顔で。
「こなた……」
肩を掴んで、頭を上げさせる。
こなたは、光の溜まった虚ろな目で、私を見上げた。

なんだろう、この感じ。何だかよく分からない気持ちが、込み上げてくる感触。
それは声にならなくて、ただ私は口を開けただけ。
嗚咽のようなものが、私が喋るのを遮っていた。
でも、それはやがて治まって、
「……あんたが謝る必要なんてないのよ。私は元々調子悪かったんだし、私が勝手にあんたの誘いに乗っただけなんだから。
 別に、誰のせいでもないの」
喋りづらいのは、きっと風邪の症状が喉に来てるからだろう。

こなたは訴えかけるような、不安そうな顔で、私を見つめてきた。
「で、も、かがみ、を、こんな目に、合わせたのは、わ、私、だから……」
そう言って、また俯こうとする。
だから、それを遮るように、
「……馬鹿ね。あんたが風邪引いたら、どうしようもないじゃない」
そっと、抱きしめた。
こなたを温めるように。こなたが風邪を引かないように。
羽織っていたコートも落ちて、こなたは今制服姿になっている。
その小さな体は、冬の空気に晒されて冷たく、小刻みに震えていた。
……責任を、感じてるのかな。
そんな必要なんてないのに。

「こな、た」
言って、自分の声も震えていることに気がついた。
何かが引っかかって、うまく喋れない。
だから、もっときつく抱いて、声を搾り出す。
「こなたのせいじゃ、ないのよ……。
むしろこなたは、私を人気のないところに、連れて行ってくれたし、介抱、も、して、くれたし。
……私の体が……冷えないように、して、くれたし」
「かがみ……?」
こなたの顔は見えないけど、声が、零距離で聞こえてくる。
「……だから、ね。謝るのも、お礼を、言うのも、私の方なの、よ」
だから、もう一度、言おう。
「こなた……ありがとう、ね」
「…………うん。……どう、いたしまし、てっ」
強く抱きしめられる。

……突然、周囲の木々や、遠くの明かりの輪郭が崩れて、世界が滲んだ。
温かい何かが、冷たい頬を滑り落ちていく。
あれ? 何で私、泣いてるんだろう。
哀しいことがあったわけでもないのに、辛いことがあったわけでもないのに。

それに、何でだろう。
冬で、夜で、風も強いのに、全然寒さを感じなかった。


「お姉ちゃん、熱は下がった?」
「ええ。……て言っても、まだ三十七度八分はあるけどね」
「そっか……。じゃあ、今日皆で出かけるっていうのは中止かなー」
「ううん。私のことは気にしなくていいから、三人で楽しんできてよ」
「でも、それじゃお姉ちゃんに悪い気がして……」
「いいっていいって。風邪引いた私が悪いんだし、これ以上つかさたちに迷惑かけるわけにはいかないでしょ」
その後も、渋るつかさを何度も説得して、何とか学校に行かせた。
つかさの気遣いはありがたいんだけど、私のせいで、皆の楽しみを奪うわけにはいかないからね。

今日は十二月二十五日。
多分、今までで一番最悪なクリスマスだ。
誰もいなくなった部屋の中で、独り溜め息をつく。

……あれから私は、こなたに家まで送ってもらった。
帰り道の記憶は全くないけど、帰った時は、確か八時を過ぎていたと思う。
それから何したかも覚えてないけど、しっかり着替えはしてたし、やることはやっておいたんだろう。

時計を見ると、まだ九時にもなっていなかった。
一日経っても、熱は完全に引いたわけじゃないし、体はだるくて動かす気も起きない。
唯一目眩が治ったのが救いだけど、まだ体は火照っていて、さっき替えたばかりの寝巻きも、汗でべっとりと肌にくっついていた。

左腕で額の汗を拭う。
今日はクリスマスなのに、私は世界から切り離されたような孤独な部屋の中で、ベッドに横たわったまま。
なんだか時代に乗り遅れたような、そんな焦りのようなものが湧き上がってくる。
出来れば今すぐにでも外に出たいのに、体は言うことを聞かなかった。
もしかしたら、朝起きたら治ってるんじゃないかって期待してたけど、やっぱりサンタさんは存在しないみたいだ。
私の今一番欲しいもの、健康な体は、届いていなかった。
……早くこんな日、終わってしまえばいいのに。

起きていても、何もすることがないから、目を瞑る。
自分の症状を実感して思うのは、こなたのこと。
こなたは私のために、コートもマフラーも手袋もつけず寒空の下にいたし、風邪を引いた私の傍にいた。
風邪引いたり、してないわよね。
不安になってきたけど、確認をとる方法はなくて、だから無理矢理信じ込むことにした。
大丈夫だと。

でももし、こなたが風邪になんてなったら、私は、どうすればいいんだろう。
こなたは、肩を支えてくれたし、わざわざ家の前まで来てくれたし、本当にこなたには、感謝してもしきれないほど感謝している。
だから、そんなこなたが、私のせいで風邪なんて引いたら……。

……こなた。
こなたに、会いたい。
会って、元気なことを確かめたい。
会って、もう一度、迷惑かけたことを謝りたい。
会って、今までのことに、お礼を言いたい。
だから、会いたい。
そんな思いが、心の奥から溢れ出して来る。
……でも、何かが違う気がした。
本当に、元気なことを確認したいから、謝りたいから、お礼を言いたいから。
それだけ、なのかな。

考えても、分からなかった。
目眩は治ったと思ってたけど、やっぱりまだ頭は正常に機能してないみたいだ。
そんなこと、別に明日でも明後日でも出来るはずなのに。
どうして、こんなに、今日に拘ってるんだろう。
分からない。
……でも、
どっちにしろ、こなたには今日、会えないんだ。
こなたは今日、補修が終わったら、みゆきとつかさと街に出かけるし、夜になったらバイトだ。
会えるわけがない。
どうしようもない怒りのような、哀しみのようなものが湧き上がってくる。
……もう、どうでもいいや。
不貞腐れるように、体を丸めた。


気がついたら、辺りは夜だった。
何故か私は、暗い道の上にいた。
ここは何処だろうと周りを見回しても、建物の輪郭がぼやけていて分からない。
しばらく彷徨っていると、ふと、前方から誰かが歩いてくるのが見えた。
目を凝らすと、それは、並んで歩く二つの人影。

左側は、右側に支えてもらって、おぼつかない足取りで歩いている。
右側は、小さい背を精一杯伸ばして、左側の肩を支えながら歩いている。
その姿に、不思議な既視感のようなものを覚えた。

二人はゆっくりと、でも確実にこっちへと近づいてきた。
誰だろうと思って、そして、
……あ。
こなたと、それからこれは……私?
こなたの隣にいるのは、紛れもない、自分だった。
変な感じだ。私が、私を見ている。
でも何故か、それがおかしいとは思わなかった。

私は、夜道を歩いている。
こなたの小さな体に、もたれかかるようにしながら。
こなたは、不安そうな顔で、私をちらちらと眺めている。
それを見ていると、何故かとても、胸が苦しくなった。
こなたにこんなに心配かけて、こんなに迷惑かけて。
本当に、私は……。

でも、こなたは、疲れた表情を隠すように、ちょっとだけ顔に笑みを浮かべて、
「かがみ……寒くない?」
その言葉に、私は何も言わなかった。
ただ、頷いただけ。
だけど、こなたは安心したように、笑みを深めた。
「そう……」

そして、空を見上げて、
「かがみ」
一息。
「大丈夫だよ。……私は、ずっとかがみの傍にいるから」
え……。
「だから、安心して」
私が見ている私は、驚いたように、伏せた顔を少しだけ上げて、こなたを見る。
熱のせいで、その顔は赤くなっていた。
それに応じるように、こなたも私の方を向く。
「心配しなくていいから、早く元気になってね」
そして、無理に明るい感じで、
「かがみが元気なかったら、私も落ち込んじゃうって言うか、調子でないんだよね」
目の前の私は、こなたを虚ろな目で見つめるだけだった。
そのまま二人は、私のいる場所を通り過ぎて、前へと進んでいく。

その後も、しきりと話しかけてくれてたみたいだけど、もう遠くて、聞き取れなかった。
でもきっと、私を励ます言葉を紡いでるのよね。

……私を家まで連れて行ってくれて。
重いのに、ずっと支えてくれて。

何でこんなに、優しいんだろう。
何でこんなに、温かいんだろう。
こなた……。
どうして、ここまでしてくれるの?
自分のことを、後回しにしてまで。

もう、本当に、
……ありがとう。


目を開けると、視界を遮る何かが見えた。
すぐに布団だと分かって、そこから顔を出す。
どうやら、眠っていたみたいだ。

……じゃあ、今のは、夢だったんだ。
でも、何処か現実味を帯びた夢だった気がする。
もしかしたら、昨日の帰り道のこと……?
記憶にないと思ってたけど、しっかりと、覚えてたんだ。
一部だけだったけどね。

今何時だろうと思って、時計を見ると、四時十五分。
途端に、気分が重くなった。
……まだ、こんな時間か。

今頃、こなたたちはどうしてるだろう。
三人で、楽しくやってるのかしら。
そうであって欲しいような、そうあって欲しくないような、変な感覚を覚えた。
ふと外を見ると、空は一面灰色で、薄暗かった。
クリスマスには相応しくない天気だけど、私には関係ないかな。
今年のクリスマスは、もう終わってしまったんだから。

腕を枕に、天井を見上げる。
体は朝に比べたら幾分楽になっていた。全身のだるさもかなり抜けてきている。
でも……。

頭に浮かんでくるのは、三人の今の光景。
今頃は、一段落して喫茶店にでも入ってるかもしれない。
皆、好きなものを注文して、色んな話をしてるんだろう。
こなたの話に、つかさは驚いたり共感したり。みゆきは、微笑を浮かべたり、補足したり。
想像でしかないんだけど、でも、掠ってはいるはずだ。そして、
……その輪の中に、自分はいない。
悔しいってわけじゃないけど、ただ、哀しかった。
取り残されたような感じだ。
私だって、こなたと話したいのに。

……あれ?
どうして?
どうして、そんな気持ちが込み上げてくるんだろう。
……それは、こなたに元気かどうか聞いて、謝って、お礼を言いたいから。

違う。
漠然と、そんな気がした。
それなら、私は、こなたのことを、どう思ってるんだろう。
昨日までなら、親友だって言い切れたはずだ。
それなら、今は?
考えても、答えは出ない。

でも、それは本当に考えてるの?
考えないようにしてるだけじゃないの?

現実なのか夢なのか分からないけど、こなたは言ってくれた。
……ずっと傍にいるって。
嬉しかった。その言葉を、こなたから聞けて。
そして、それは多分、親友の間で言うような台詞じゃないと思う。
それなら……。

こなたの姿が頭に浮かぶ。
二人で夜道を歩いている時に、すぐ目の前にあった、こなたの顔。
それは、いつものようにおちゃらけてなくて、不安に満ちた哀しそうな表情。
でも、その目には、何かを決心したように力がこもっていて、その……かっこ、よかった。
こんな風に思ったのは、初めてだ。
いつもからは想像も出来ない、凛々しいこなた。
その姿は、今でも繊細に蘇ってくる。
目にしっかりと、焼き付いていた。

……うん。
目を瞑る。
いつからだろう。
いつから、こんな気持ちを抱いていたんだろう。
分からないけど、でも、昨日ようやく、気づくことが出来た。

私は。
……私は、こなたのことが、好きなんだ。

だから、
こなたに会いたい。
その思いは、自覚してもっと強くなる。
会いたい。

でも。
こなたは今、傍にいない。
ずっと傍にいるって、言ってくれたのに。
どうしてかなって考えて、すぐに気づく。
……私のせいか。
私が風邪を引いたから、だから会えないんだ。
こなたのせいなんかじゃない。
やり場のない虚しさに、深く溜め息をついた。
目を開けて、じっと天井を見つめる。
今すぐにでも会いに行きたいのに、体はそれを許してくれない。

不意に、天井の輪郭がぼやけて、目の前が真っ白になった。
また目に、何か熱いものがこみ上げてくる。
それを隠すように、寝巻きの袖で目を拭った。
「こな、た……」
自然と声が漏れる。
「こなたぁぁ……」
もしかしたら、駆けつけてくれるんじゃないかなんて、淡い希望を抱きながら。
でも、所詮そんなのは妄想に過ぎない。
それを分かってるから、余計に辛かった。

こなたの気持ちは分からない。そもそも女同士なのに、こういうのはおかしいかもしれない。
でも、聖夜は過ぎたけど、大事なクリスマスを、こなたと一緒に過ごしたい。
昨日みたいに親友じゃなくて、……大切な、大好きな人として。
隠し切れなくなった涙が、目から溢れて、耳の方へと流れていった。
止まらなかった。


……ぼそぼそとした、話し声のようなもので、目が覚めた。
ああ、私はまた眠ってたんだ。
微妙なところで起こされて、まだ眠り足りないらしく、瞼は重かった。

誰だろう。つかさが帰ってきたのかな。
そう思っていると、扉が開く音がして、こちらへと歩いてく足音と、人の気配。
足音は、私のすぐ近くまで来ると止まった。誰かが、私の隣に立っている。
誰だろう、何の用だろう。
少し怖くなって、目を開けた。
「え……?」
そこには、至近距離で私を見つめている、こなたの顔。

「メリークリスマス、かがみ。いい子にしてた?」
こなたはそう言って、微笑んだ。
よく見ると、こなたは真っ赤な、サンタの衣装を身に纏っている。
「どうして……?」
「ん、これ? バイト先から借りてきたんだよ。やっぱり雰囲気は大事……」
「そうじゃなくて! ……どうして、来てくれたの?」
会いたかった人が、今目の前にいる。
……どうしてなの?
「かがみが独りで寂しがってるんじゃないかなーって思ってね」
目を細めて、
「だから、会いに来たんだよ」

……こなた。
本当に、私の傍にいてくれた。
もう今日は会えないのと思ってたのに、こなたは、来てくれた。
こなた。
「……ありがとう、こなた」

こなたは頷くと、いつもの軽い口調で、
「いいっていいって。私、お金ないからプレゼント持ってきてないし」
「な、何よそれ」
「サンタさんがプレゼントを持ってくるのはイブの夜だからね。
今日はクリスマス当日だし、かがみへのプレゼントは無しだよ」
「そう……」

別に期待してたわけじゃないけど、こなたはサンタ姿で、だから、そういうのをくれるんじゃないかなんて、思ってたのに。
ほんの少しだけ、哀しかった。
こなたから、プレゼントもらいたかったな……。

「それに」
でもこなたは、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、真面目な感じで、
「かがみ昨日、プレゼントもらわなかった?」
「え……?」
「私は……もらったよ」
そう言ったこなたの顔は、何処か嬉しそうで、ほんのりと紅潮していた。
どういう意味だろう。別に私、何ももらってないし、サンタさんには願いを無視されたし。
とうとう、こなたからももらえなかったし。
それに、昨日なんて……。

「あれ、違ったかな……」
こなたは恥ずかしそうに頬を指でかきながら、視線を逸らした。
「よく、分かんないんだけど……」
「え。えーと……」
窓の外を眺めながらも、ちらちらとこっちに視線を移してくる。
それは、何か考えてるようだったけど、私にはよく分からなかった。
やがてこなたは、赤く染まった顔を私の方に向けて、
「じゃ、じゃあ、私の直感を信じて……」
独り言のような台詞を言いながら、
「これで、分かる?」
目を閉じて、私に顔を近づけて、

「ぅ、ん……」
こなたの唇が、私の唇に触れて……。
思わず目を瞑った。
温柔の感触。ケーキみたいな、甘い味がする。

私、こなたに、キス、されてるんだ。
驚いたけど、でも、何故か自然に受け入れられた。

しばらくして、こなたが唇を離す。
目を開けると、立ち上がって、私と少し距離を置いたこなた。
「どう……かな? 間違って……る?」

「ううん。……私も、プレゼントもらったわよ」
私が欲しかったのは、風邪の完治じゃなくて……。
それなら、サンタさんは、ちゃんとプレゼントをくれてたんだ。
昨日。あの時、不確かな感情として、もらってたんだ。
こなたが好きだっていう、気持ちを。
それに、こなたももらったってことは……。
心の中に、確かな実感が生まれる。

だったら、私も……。
こなたは勇気を出して、私にキスしてくれた。
だから、私もそれに応えないと。
「こなた……、こっち来て」
「え? うん」
こなたが、顔を近づけてくる。
その首筋を、両腕で抱くようにして、更に私の方に寄せる。
少し顔を起こして、こなたの唇に、そっと、口付けした。
……こなた、大好き。
そう心の中で呟いて、でも声には出さなかった。
言わなくても、分かってくれてるはずだから。

息が詰まってきて、唇を離す。
首に回していた手を外して、またベッドに倒れこんだ。
見ると、こなたははにかんだ笑みで頷いて、
「……ねぇ、かがみ」
サンタの衣装をぱたぱた動かしながら、
「私、今からこの衣装返しに行かなきゃいけないんだけど、一緒に行かない?」
え……。
その言葉に、体が一瞬反応して、でも、
「私、風邪引いてるし……」
「大丈夫大丈夫」
こなたは、力強く言い放って、
「私が、支えてくから」


見上げると、いつの間にか雲はなくなっていて、見渡す限りの星空が広がっていた。
クリスマスを祝っている、自然のイルミネーション。
それに照らされるように、昨日の道を逆に進んでいく。
でも、進んでいるのはこなたで、私は……。

「これじゃ、人さらいみたいじゃない。それに……恥ずかしいわよ」
「お姫様だっこを人さらいとは失敬な! このまま何処までも愛の逃避行しちゃうよ」
「いや、意味分かんないから。……と、とにかく、下ろしてよ。誰かに見られるかもしれないじゃない」
私はこなたに胴体を抱えられて、膝下を支えられて、お姫様抱っこをされている。
私はいいって言ったけど、結局こなたに押し切られてしまった。

「でもかがみ、風邪で歩けないじゃん。それに、私と一緒に過ごしたいんでしょ」
「う、そ、それは……。だ、だけど、重くない? 私最近太り気味だし……」
「平気平気。少し太ったぐらいじゃ、なんともないよ」
「……なんか素直に喜べないんだけど」
熱はまだ残ってたけど、今までに比べたら、かなり楽になっていた。
少し火照った体が、冬の風にはちょうどいい。
多分歩けるんじゃないかと思うけど、このままでいたいとも思う。
このままこなたに、何処までも連れて行ってもらいたいって思う。

こなたは真っ直ぐ前を向いていて、しっかりとした足取りで歩いている。
その横顔は凛然としていて、見ていると引き込まれそうだ。
「あのさ、かがみ」
不意に、こなたが私の方を向いた。
思わず、胸がどきっとする。
「な、何?」
「……サンタさん、いたよね」
そう言って、口元に笑みを浮かべた。
サンタさん。
こなたへの気持ちを気づかせてくれたし、私たちを結んでくれたし……。

「みんな信じてないかもしれないけど、私は、そう思うわよ」
それに、
「今目の前にいるしね。遅れてやってきたサンタが」
「う……。確かに一日遅れだけど……」
サンタ姿のこなた。こなたは、私の所に駆けつけてくれた。
ただの都合のいい願望だって思ってたのに、来てくれた。
「かがみ……?」
堪えきれなくなって、こなたの胸に顔をうずめる。
こなたが来てくれてからは、泣かないようにしてたのにな……。

「来るのが、遅すぎよ……、バカ……」
もう何度も泣いたのに、涙がどんどん溢れてきた。
まただ。嬉しいはずなのに、どうしてだろう。
全然止まらなかった。
「ずっと独りで……寂しかったん、だから」
理不尽なことを言ってるのは分かってる。
だけど、思いも止まらなかった。
「お願いだから、私の傍にいてよ……。こなたぁぁ」
哀しいわけじゃないのに。こなたは来てくれたのに。
気づいたら、泣きじゃくっていた。
もう、あんな寂しい思いは、したくなかったから。

「ごめんごめん。……もうかがみを独りにしないよ」
体が揺らされる。振動じゃなくて、揺りかごのように、あやすような感じで。
そして、
「これからは、ずっと、一緒だからね」
そう、言ってくれた。
「ほんと? 本当に、一緒でいられる?」
うずめていた顔を上げて、涙を拭って、こなたを見る。
本当に、こなたは私の傍にいてくれるの?
本当に、絶対に。

「全く心配性だなー、かがみは。じゃあ、クリスマスプレゼントの代わりに、約束するよ」
私を掴んで、支えている、腕の温もりを感じながら、
「私は、いつでも、どんな時でも、何があっても、かがみの傍にいるって」
こなたが私を包んでくれていると実感しながら。
「約束……だからね」
見上げると、こなたも私を見つめてきて、
力強く、しっかりと、頷いてくれた。
「うん。……約束だよ」

サンタさんはいないって思ってたけど、今は自信を持って、いるって言える。
一日遅れでやってきた、小さいけどかっこいいサンタだけじゃなくて、
何人ものサンタさんがいて、色んな人たちに、目に見えないプレゼントをあげてるんだって思う。

少し先には、たくさんの電飾で彩られた、ほのかに明るい誰かの家。
聖夜じゃないけど、まだクリスマスは続いている。
最悪じゃなくて、最高の、クリスマスが。

私を抱きかかえているこなた。
その瞳は、イルミネーションに照らされてか、暗闇の中で一際輝いて見えた。










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  • 最高!!ちょっと最後涙腺が緩んじゃいました -- 万座 (2010-03-29 21:54:42)
  • すばらしい!かなり感動しました -- 名無しさん (2009-08-17 03:25:26)

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