夢を見た。こなたの夢。
空を見ると満天の星空で、ちょっと寒く感じられるぐらいの夜だった。
私の隣にこなたがいて、二人で笑い合ってた。些細なことや、身近な事。そう、高校時代のように。
凄く、温かくて、楽しくて、幸せで。ずっと続いたらいいなって思った瞬間、こなたが、いなくなっていた。
いくらこなたを呼んでも、戻ってこなかった。そこで夢は、終わった。
枕が濡れていたのを覚えている。




こなたとはあれ以来、ずっと『友達』でいる、って約束してから、頻繁にメールや電話をするようになった。

「聞いてよーかがみ!」
「・・・で、かがみはどう思う?」
「かがみならそう言ってくれると思ったよ。」
「照れるかがみに萌え。」

いつもこなたから連絡をくれた。自分の話をしたり、私の事を聞いてくれたり。
もちろん、昔のように、とはいかない。それは私のせい。

「うん。」
「へぇー。」
「そうなんだ。」

そんな返事しかできなかった。そんな返事しか、したくなかった。
こなたを、感じたい。もっと傍に感じたいのに、その想いに比例して、こなたとの距離をおいてしまう。
本当は嬉しいのに、本当は、もっともっとこなたとたくさん話したいのに。
そう思えば思うほど、胸が締め付けられる。言葉がでなくなる。泣きたくなる。

「かがみそっけないなー。せっかく面白い話をしてあげてるのにさ。」

ごめん。
こなたには謝罪の言葉しか出てこない。こなたは、本当はきっと気が付いているんだろうな。
私が抱いている醜い感情。ダメだ、押さえなきゃって思っても、溢れる、嫉妬。
それでもこなたは私に声を聞かせてくれる。温かい声。眠くなりそうな声。この声を聞くたびに、私の想いは強くなる。
嫉妬とは真逆の想い。純粋な、淡い想い。
止められないんだ。この想い。ごめんね、こなた。
もう『友達』で、いたくないんだ。こなたの『特別』になりたいんだ。


ーーーー

「おーっす柊ぃ!元気にしてたかー?」
「あんたは相変わらず元気そうで安心したよ。」
「久しぶりに柊ちゃんと会えたから、みさちゃんはしゃいでるの。」
「喜んでいいのか分からないな。峰岸も元気そうで何よりね。」
「まっ、かたっ苦しいのは抜きにしてさー。何か食いにいこーぜ。」
「さんせー。」

今日は日下部と峰岸と3人で夕飯を食べに行く約束をしていた。
こなた達といるのもいいけど、日下部達と何かをするのも、とても楽しい。
でも、こんな時でも、私の中にはこなたがいて、どんどん想いが膨れていく。ちょっと日下部と峰岸には悪いな。

「そーいえば、柊ぃ。ちびっ子は元気かー?」

こいつ、超能力でも持っているのか?

「・・・元気なんじゃない?」
「え?ちびっ子とは最近遊んでねーのか?」
「・・・まーそんなとこ。お互い忙しいしね。」

ふっ、とため息を月ながら空を見上げる。夢のように、空は綺麗じゃなかった。

「ふぅーん。私はてっきりまた一緒にいるのかと思ってたよ。」
「そーよね。柊ちゃん、泉ちゃんと一緒にいるが一番幸せそーだしね。」
「あやのがウチの兄貴といるときみたいになー。」
「み、みさちゃん!?」
「照れなさんなって。」

凄いな、日下部と峰岸は。中学からずっと私を見てきたからかな?

「そう、思う?」
「んーまぁ、友達っていうより、恋人の方が実は合ってるかもなー。」
「柊ちゃん、泉ちゃんと何かあったの?」

前に進むって決めたんだ。決して普通じゃない、むしろ異端かもしれない。
同姓で、しかも彼氏がいる人を好きになるなんて。
でも立ち止まりたくない。後悔するのも、もうたくさん。傷つくのも、もう慣れた。
ここから、始まるんだ。
私は、澄んだ夜の空気を吸う。そして、一歩を踏み出した。

‐‐‐‐

「やっぱりかー・・・モグモグ・・・」
「やっぱりねー・・・」

口にミートボールをいっぱい詰め込む日下部。ゆっくりスープわ味わう峰岸。対照的な二人だけれど、反応は同じだった。

「な、何よ、その反応。喧嘩うってんの?」
「いえいえ、決してバカにはしてないよ。むしろ納得したんだってヴぁ。」

納得、か。
私は二人に打ち明けた。4ヶ月前のこと、この間の事、そして私の想い。
この二人なら分かってくれるかもしれない。つかさ、みゆきには逆に話しにくかった。
これ以上、私のせいで、みんなとの関係を壊したくなかったから。

「柊ちゃんも恋するのね。中学から一緒だけど、そんな素振りなかったから。」
「わ、私だって・・・恋の一つぐらいするわよ。それよりも・・・」

そう、私にはよく分からない事があった。

「・・・変とか、気持ち悪い、とか思わないの?」
「べっつにー。そんな事思わねーけどな、あやの?」
「うん、私も性別なんて関係ないと思うわ。」
「・・・ホント?」

正直、私が日下部や峰岸の立場だったら、こんなこと言えたか分からない。
臆病者だから、傷つきたくないから、きっと変だとか思ってしまう。だから、4ヶ月前も、こなたの事を傷つけてしまった。

「ホントよ?それにね、柊ちゃんは、一人の人として『泉こなた』ちゃんが好きなんでしょ?」
「え・・・?」
「好きになったのがたまたま女の子だった。ただそれだけだと、私は思うわ。」

私はこなたが好き。大好き。ずっと傍にいたい。
峰岸の言うとおりだ。私はこなたのどこが好きだとかは、分からない。ただ、こなたが好き。
『泉こなた』の存在を、愛しているんだ。

「あやのも中々良い事言うなー。まぁこれもひとえにウチの兄貴の・・・」
「みみみみみみ、みさちゃん!」
「真っ赤になってやんのー。」
「あはは。・・・峰岸、ありがと。」

勇気を出して、良かった。また、一歩、進んだ。あの日に帰れない代わりに、私は進んでる。

「なぁなぁ、柊ぃ?」


‐‐‐‐

「はぁっはぁ・・・っはぁ・・・」

胸が苦しい。足が痛くなってきた。ふくろはぎがパンパンだ。

「っはぁ・・・はぁ・・・」

『柊はさ、頭良いから、考えすぎるんだよ。もっとバカになったら楽だぜ?』
『日下部さん・・・よく意味が分からないんだが?』

「はぁ・・・っこ・・・」

もう疲れた。自分でもビックリするぐらい走った。でも、まだ走り続けたい。

『要するにだな、後先考えないでばしーっと決めてこいってこと。』
『みさちゃんの言うとおりだと思うわ。ここで、諦めたら、それこそ一生後悔する。』

「はぁっはぁっ・・・っ・・・なた」

バスを使っても良かった。でも走りたかった。月に照らされた街を、思いっきり走りぬけたかった。

『ほら、行ってこいよ。ちびっ子のところにさ。』
『・・・でも・・・私、こなたを拒絶したのに・・・許される?それに、もう彼氏いるし・・・』
『あーうじうじしやがって!柊らしくねーぞ!いいか?結果なんてやってみないと分かんねーんだよ。陸上も恋も同じだろ?』
『柊ちゃん、今から、泉ちゃんのトコに。家、知ってるんでしょ?善は急げ、よ?』

「っ・・・こなたぁぁ!」

そうだ。行かなきゃ。伝えなきゃ。じゃないと私は、4ヶ月前より、後悔する事になる。
急ぎすぎなような気もする。でも、なりふり構ってられない。

『・・・うん。私、行ってくる。』
『そうこなくっちゃ。』
『ごめんね、二人共。また遊ぼうね。』
『今度はちびっ子も一緒がいいなー。』
『妹ちゃんや、高良ちゃんも一緒にね。』
『・・・ありがと。』
『負けんな、頑張れ、柊ぃ。』
『負けないで、頑張って、柊ちゃん。』
『うん、行ってくる。』

ありがと、日下部、峰岸。

「はっ・・・はっ・・・」

あいつのアパートまであと1キロ。私は走る。想いを乗せて。雲がなくなって星がはっきりと見える満点の空の下を。
気持ちが良かった。


‐‐‐‐

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」

ここが、こなたの住むアパート。古くない、でも決して新しくはない。
乱れた呼吸を整える。汗で少し風が冷たい。私の汗ばんだ手のなかにある携帯。
少し震えた手で電話をかける。プルル・・・。無機質な音がやけに大きく聞こえる。

『もしもし、お姉ちゃん?どうしたの?こんな夜遅くに?』

聞き慣れた声。こなたとは違った安心感。鼓動が落ち着いていく。

「つかさ?今何してた?」
『んー、ゆきちゃんがウチに泊りに来てたから、雑談してたの。お姉ちゃんは?』
「・・・私、今から試験受ける。すごく難しいの。・・・私、怯えてる。」
『お姉ちゃん?』
「・・・応援、してくれないかな?一言でいいから。お願い。」
『・・・頑張れ』
「・・・うん。」
『負けるな、頑張れ、お姉ちゃん。』
「・・・うん。」

早くも、泣きそうになった。いつからこんなに泣き虫になったのかな?

『・・・かがみさん?』
「みゆき・・・」
『話は、つかささんから聞きました。私も、応援してもいいですか?』
「・・・ありがと・・・」
『頑張って下さい。かがみさんならきっと、うまくいきます。』
「・・・うん。」
『負けないで下さい、頑張って下さい。』
「・・・うん。」

つかさ、みゆき、ありがと。本当に助けられてる。
私、逃げないで、頑張る。例え、失敗しても。

「じゃ、行ってくる。」
『いってらっしゃい、かがみさん・・・いってらっしゃい、お姉ちゃん。』

行ってくるよ。大事な、大事な試験に。


‐‐‐‐

今度は電話帳の1番、上の電話番号に電話をかけた。
プルル・・・プルル・・・
待ち遠しい。指先がチリチリする。胸がはじけそうだ。体から汗が吹き出る。

『はーい、もしもしかがみ?珍しいね、かがみから電話するの。』

うん、久しぶり。高校以来、ずっとこなたからだったね。私はアパートの階段を一段一段ゆっくりと上っていく。

『で、何かしたの、夜遅いけど?』
「うん、ちょっと、こなたに大事な用事があってね、それで電話したの。」

どんどん鼓動が早くなる。喉がやけに渇いた。手も、声も震えだしたのがわかった。

『えー、何々?まさか・・・ゲームを買ってくれるとか?それとも漫画?あ、夏コミに付き合ってくれるのかなー?』

ぷっと吹いてしまった。変わらない。私もこなたも変わったと思ったら、根元は、確かに、こなただった。

「違うわよ。あのね・・・」

目の前のドアには汚い字で、泉こなた、と書いてあった。
深呼吸をする。そして、研ぎ澄ませる。私の大事な想いを。

「今から、こなたんち、行ってもいい?」
『ええー!?今!?んーまぁいいっちゃーいいけど・・・もうバスも電車もないんじゃ・・・』
「・・・アパートのドア開けてみてよ?」
『ふぇ?』

部屋の中からドタバタという騒がしい音がした。するとすぐに、ドアが開いた。

「か、かがみ・・・」

負けるな、頑張れ、お姉ちゃん。
負けないで下さい、頑張って下さい、かがみさん。
負けんな、頑張れ、柊ぃ。
負けないで、頑張って、柊ちゃん。

うん、私、頑張るよ。

「こんばんわ、こなた。」



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