1月11日

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「鏡開き」という行事をご存知だろうか?簡単に言うと、お正月に供えた‘鏡餅’を割って、お汁粉やお雑煮にして食べる、という日である(みwiki参照) だが、この行事のことはこの話自体には関係ない。
 ただ、今年のこの日が平日であり、学校があると言うことが問題なのだと学生諸君には分かっていただけるだろう。

 さて、故にセンターを間近に控えた今でさえ‘センター対策’という名目の授業があり、そして真面目に受ける奴は受ける、真面目じゃない奴は平気で居眠りしていたりする、と変わらない日常が続いていた昼休み。
 真面目に授業を受けない代表格、泉こなたが昼食用チョココロネをハモハモと食べながら、隣に座る親友、柊かがみに話しかけた。
「今日って鏡開きだよね~、かがみん♪」
「だから何よ?まさか‘かがみ’開きなだけに、かがみはどこを開いてくれるのかな~? なんて言うつもりじゃないでしょうね」
「ああ!何で先に言ってしまうの?かがみ様!」
「あんたの言いそうなことぐらい、すぐに分かるわよ」
 かがみは、フン、と横を向くとお弁当のおかずである玉子焼きの欠片を口に入れた。

 これが彼女らのいつものやり取り。こなたが何かを言い、かがみが突っ込む。このやり取りは傍から見ても微笑ましい親友のもの。
 だが、そこには本人達さえ気が付かないような、微かに淡く……しかし、それでいて着実に育っている、恋心が隠されている。
 この恋を知っている二人の親友、高良みゆきは二人の想いを成就させる為に、さてはて色々と動き回っているのだが、それを述べてしまうと、前作までと被ってしまうので、そういった諸々は割愛させていただく。

「でも、お姉ちゃんが開くとしたらどこかな……やっぱり口?」
 と、二人のやり取りに更に横槍を入れるのは柊つかさ。かがみの双子の妹。
 つかさの言葉に、こなたはよしっ!と、かがみは余計な事を……と、それぞれに思い反応する。
「ねえ、かがみん。お口をあ・け・て?」

 やはりそう来たか、予想していたことだ。故にかがみにはいつでも「い・や・よ」という準備があった、しかし、こなたのほうが一枚上手。
「い・や――「隙ありっ!」 ふごっ!?」
 かがみが言葉を発した――つまり口を開いた瞬間、こなたはチョココロネの欠片をかがみの口に放り込んだ。
「ふっふ~ん、甘いよ?か~がみん」
 勝ち誇るこなた。むぐむぐと口を動かすかがみ。さて、このタイミング、シチュエーション。みゆきはこのチャンスを逃さない。
「お二人のやり取りは新婚さんがよくやる‘はい、あ~ん’といったものに見えて、微笑ましいです」
「あ、そうだね。こなちゃんがお嫁さんで、お姉ちゃんがお婿さんかな?」
 みゆきの言葉につかさも乗ってくる。つかさなら絶対この話に乗る、みゆきには確信があった。

 さて、話題になってしまった二人は、ただの友人なら笑って過ごすところを、こなた、かがみ共に赤面して俯く。
 そして、その反応に本人達は戸惑う。という微妙な乙女心理が働いていた。
 そんな二人を見てみゆきは微笑み、つかさは?マークを浮かべる。
 いやはや、全く。いつもと同じ、そんな1月の11日だった。


 さて、学校が終わり、夕日も沈み、あたりは闇に包まれた時間帯。かがみは一人、帰途についていた。
 こんなに遅くなったのは進路相談故。まぁ、進学校であるし、かがみ自身の目標も高いこともあり、担任との相談に時間がかかるのもやむなし、と、ご理解いただけるだろう。

 もう少しで家に着く。早く温まりたい、という心理がかがみの足を逸らせた。と、
「こんばんは、かがみさん」
 急に声をかけられ、ビクッとする。咄嗟に振り返ると、そこには街灯に照らされたみゆきの姿。
「なんだ、みゆきじゃない。脅かさないでよ」
 と言ってからかがみは気付く。みゆきの家は全く別方向、つかさに言わせれば‘上り民’それが何故ここに?
「実は、かがみさんにお願いしたいことがありまして、御宅にお伺いしようかと思ったのですが、その途中でバッタリ、というわけです」
 そう言ってみゆきは眼鏡の端を押さえる。表情が隠され、かがみからは見えなくなった。
「なんだ、電話してくれれば良かったのに」
「いえ、まぁ、こういったことは直接話したほうがよろしいかと思いまして」
「ふ~ん、何?そのお願いって」
「今日、泉さんとご連絡を取っていただけませんか?」
 さて、これはどういったことか。こなたと連絡を取る?それでは、用があるのはかがみに、ではなく、こなたに、ということになるのではないだろうか。
「明日の合宿について、かがみさんから泉さんに忘れ物等しないよう言って頂けないかと」
「まあ……別にいいけど。みゆきが直接言えばいいじゃない」
「いえ、私では伝達に齟齬を生むかもしれませんので」
「? 意味が分からないんだけど」
 かがみの疑問に、例えば、とみゆきは前置きすると、
「私とかがみさんは今会話をしていますよね?それは、私が発した言葉に載せた意図を、かがみさんが受け取った際に推察、解釈して、自分の中で考えを構築して、私の意図に沿った意味を定義付けているからです。
 さて、ここでもし、意図と解釈に違いが生まれた場合、両者間ではコミュニケーションが成立しません。言葉によるコミュニケーションとは、案外脆い物なのです」

 難しくてよく分からないが、取りあえず、かがみは頷いておいた。その様子を見たみゆきが続ける、
「ですが、何故コミュニケーションが成立するか?それは表情、仕草等色々な要因が含まれますが、一番重要なのは、相手がこの言葉にこの意味を載せた、そしてそれが正しいと思うことが出来る、そして相手も、この人になら伝わっていると思える。謂わば信頼感です」
「はぁ……」
「さて、世の中には以心伝心、と言った諺があります。意味はご存知ですよね?言葉を介さずにも意思が伝わる、と言った意味です。
 これも信頼感が生み出せる業、と言えるでしょう」

 さてはて、みゆきは何が言いたいのか。かがみは段々分からなくなってきた。
「で、私がこなたと連絡を取ることと、その話に一体どう言った繋がりがあるのよ?」
 みゆきは、わざとらしく驚いたように、
「お分かりになりませんか?私はかがみさんと泉さん、お二人なら言葉数少なく正しい情報のやり取りが出来る。と思っているのです」
「えっと、つまり?」
「私が泉さんに言うより、かがみさんが仰ってくれた方が、間違いが少ない。と言うことです」
 かがみは、はぁ、と溜息をついた。やれやれ、と某団員その一なら言っていることだろう。
「そんな事無いわよ。大体、以心伝心?私とこなたが?ありえないわよ」
「さて、そうでしょうか?学校でのやり取りを見ている限り、お二人の間には確かな好意があると思うのですが?」
 好意、その言葉にかあっ、かがみの顔が赤くなる。
「な、ななななな何言ってるのよっ!」
「失礼しました。信頼感、と言った意味だったのですが。この様に言葉だけでは齟齬を生みやすいものです。ですが、友人なら好意を持っていても当たり前では?」
 確かにそうだ。自分は何を焦っていたのだろう。
 かがみが物思いに沈んだのを見て取って、みゆきは、
「本当はそれだけではないのですが……よろしくお願いしますね」
 と、一礼し、夜の闇に紛れていった。


 お風呂上り。かがみは携帯を手に取ると、こなたの携帯へと発信した。
 週末には毎週繰り返していることだ、充電して準備もオッケー。
『もしもし、かがみ?』
 こなたが出た。先程みゆきが言った‘好意’という言葉を思い出し、僅かに体温が上がった気がする。
 お風呂上りだし、とかがみは無理矢理思い込むことにした。
「もしもし、こなた?」
 みゆきに言われた用件、まずはそれを手短に伝える。こなたは『分かってるよぉ~』と言っていたが、怪しいもんだ。
 それ以外にも話すことは幾らでもある。合宿のこと、センターのこと、まぁ、色々。

「それが臭くってさぁ~」
 電話をしながら、かがみは無意識に机の上の写真立て、そこに納められたこなたの写真を見つめていた。

 ――こなた。

『……かがみ、どったの?』
 一瞬会話が途切れたのを不審に思ったのだろう。こなたが出した声、そこには気遣いが含まれていた。そして、それが分かった自分にハッとするかがみ。

 ――以心伝心。そっか、これがそうなのか。

「ねぇ、こなた……」
『ん~?』
「明日は、電話しなくても、いいのよね?」
『そだよ~、だって、明日はずっと一緒じゃん!!』
「そう……よね!じゃあ、明日も早いからもう切るわ。遅刻しないでよ?」
『分かってるって。んじゃ、お休み~』
 電話と、写真のこなたに向かってかがみは呟く。
「お休み。こなた……」




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  • みwikiさん.なんか、黒いよ? -- 名無しさん (2010-08-13 21:18:20)

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