魔法の言葉 ~かがみ~

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こんなに近くにいるのに。伝えたいのに。
大きな声で大好きって言いたい。
でも臆病な私は伝えた後を考えてしまう。

パソコンに向かってる顔。
今はこっちに向かってないけど普段はその満面の笑顔で笑ってくれる。
その顔を見ることが出来なくなってしまったら?
傍にいることも出来なくなってしまったら?
そんなこと耐えられない。
だからこの気持ちを閉じ込めよう。

―――そんなこと出来るの?

今までだって何度も同じこと考えた。
夜に一人で考えて無理やり納得させて布団に入った。
でも待ち合わせ場所であいつの顔を見るとそんなことは無理だった。

それでもしようと思う。
この感情は普通じゃないから。

そうも思うのと反対に我慢すればするほど気持ちが溢れてくる。
好きなのに伝えられない。今、目の前にいるのに伝えられない。
それがとてもつらい。

ぽろ…

気持ちが涙になって溢れてくる。
駄目。泣き止みなさい柊かがみ。
今はただの友達として家に遊びに来ているのに。

「どったのかがみん?」

こっちを向いてるこなたは心配そうにして。
分かってる。ふざけてるような口調だけど本当は優しい性格だからすごく心配されてるって。
今もほらすごい心配そうな顔で見てる。
だからこそ泣き止まなきゃないのにぽろぽろと涙は止まらない。
涙が止まらないならせめて顔を見られたくないから下を向いた。

……好き。好きなのぉ。

「ねぇ、本当にどうしたの?」
「なッ…んでも…な…ぃから」


やめて、そんな優しい声で言わないで。
我慢できなくなるから。本当のことを言いそうになるから。

ギシ…

いつの間にか椅子から立ち上がったこなたは私の横に座っていた。
顔は見えないけど心配されているのが雰囲気で分かる。
こんな顔は見せたくないから、これを見せたらもっと心配される。
こなたにはいつでも笑っていてほしい。
だから私は全部嘘よ、なんて言っていつもの調子に戻らなきゃならないのに。

誰か教えてよ。
今すぐ泣き止めて彼女を笑顔にする魔法の言葉を。

……いや本当は知っている。
幸せになれるたったの二文字で完成する魔法を。
その魔法が掛かれば私はすぐに泣き止めるし、これから泣くことも無くなるだろう。
でもそれはこなたが紡がなきゃ意味がない言葉。絶対に聞けない言葉。

「ねぇ、かがみ。言いたくないことだったら言わなくてもいいけどさ。
でも私はかがみのこと親友だと思ってるし好きだよ。
だから我が儘かもしれないけど本当のこと聞きたい。それに……」

分かってる。勘違いなんかしない。
こなたの言ってるのは親友としての好き。
でもそんな風に言われると勘違いしそうなのよ。
だから…

「かがみ…」

そんなに優しくしないでよ…

―――ペロッ

「――――――ッ」

吃驚して横を向くと悲しそうな顔をした彼女がいた。
彼女が何をしたいのか分からなくて、私はまだされたことが何なのかちゃんと理解してなくて。
違う。理解はしてるけどその理由が何なのか分かってないんだ。
―――そんなことしていいの? 本当に勘違いしちゃうよ?

「かがみ。これは―――」

悲しそうな顔を一変させ、真面目な顔で彼女は言い始めた。
私の勘違いじゃないなら言ってよ。泣き止ませて見せてよ。
魔法の言葉で――



「……嘘を付いてる味だね?」


「………」
「………」
「くっくっくははは!」
「…あはっ、はははは!」

私たちはそれからしばらく馬鹿みたいに笑いあった。
今までの雰囲気を全部吹き飛ばして頭の中をからっぽにして笑った。





「あー1ヶ月分くらい笑ったわ」
「じゃあこれから1ヶ月はかがみんの笑った顔を見れないんですかなー」
「いや物の例えでしょうが」

よかった普通に話せてる。
私はこれからも普通に過ごせる。

「まあ私が笑わせればいいんだけどねー。わきわき」
「自分で効果音つけるな!」

でも今までとは違う。私は魔法にかかってしまったから。
想像していたのと違う魔法だけどたしかにかかってしまったのだ。
この気持ちを奥底に沈めても生きていける。

手をわきわきと動かすこなたを見てそう思った。





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