こなかが1/2:1-B話 後編

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『こなかが1/2:第1-B話「3月18~28日 泉こなたの11日間 後編」』





最初聞いたときは何かのネタかと思った。
いや、普通そう思うよ。何かの冗談じゃないかって思うよ。

急に……

「お前には許婚がいる。今度一緒に会いに行くから。」

って言われれば……

許婚設定なんて、まんま『らんま』だよね。冗談にしか聞こえないよ……。
何?私の許婚は水を被ると女の子になる男の子?声は工藤新一?私はコナンの声の方が好みだよ。

ホント、冗談にしか聞こえなかったんだけど、お父さんのこの言葉でそれが本当だと実感させられた。

それは、「この話はな。かなたが生きてたときに、かなたが言った事なんだ。相手だって、かなたが決めたんだぞ。」という一言。

お父さんにとってお母さんは絶対だ。
お母さんの事では、お父さんは絶対に嘘はつかない。
だから許婚のことも、今度会いに行くっていうのも嘘じゃないんだ。

「相手は誰?」

当然の疑問を私は聞いた。

「禁則事項です。」

頭にきた。こっちは真面目に聞いてるのに!

「お母さんが決めたって事は、お父さんも相手がどんな人か知ってるんだよね?」
「禁則事項です。」
「お父さんの親戚?それともお母さんの知り合い?」
「禁則事項です。」
「はっきり言ってよ!真剣なんだよ、私!!」

テーブルを思いっきりたたく。ドンッという大きな音が部屋中に響く。たたいた手がジンジンと痛い。

「すまん。本当に言えないんだ。ただな、かなたがこなたの為に選んだ人だ。絶対にお前の喜ぶ人だよ。」

お父さんは私の顔を真っ直ぐに見つめながら言った。

「それじゃあ、そういうことだから。」

お父さんは言いたい事だけいうと、さっさと私の部屋から出て行った。
私はというと、その場所から動かなかった。いや、動けなかった。

―――――私に許婚がいる

この事実をまだうまく認識できなかった。
認識できないながらも、私は考えた。


お父さん、笑いながらこのこと話してた。みくるの真似までしてたもん。よっぽど嬉しいんだよ。
それもそうだよね。これって、言わばお母さんの最後の願いだもん。
それがようやく叶うんだ。お父さんだってうれしいよね。

お父さんも喜ぶ。お母さんだってきっと喜ぶ。
だったら、このことを受け入れて……

「受け入れられるはずないよ。納得できるはずがないよ!」

大好きな人のことを想う。かがみのことを想う。
それをまったく無視して許婚?その人と結婚?そんなの嫌に決まってるよ。

だけど……お母さんの最後の願いだ。お父さんも喜ぶ。
だったら二人の娘として、協力するのが当たり前だよ。

「でも、でもそれでも嫌だよ。嫌なんだよ……」

涙が溢れてきた。大好きなかがみのことを想う。

叶わない恋だとは分かっていた。かがみは普通の人で、それを望んではいけないのだから。
でも、そんなのはこの想いに気付いたときから分かっていた。
それでも、それでも好きでいたかったんだから……

「やっと素直になれたのに……」

かがみのことが好きだと素直になれて、たった一日しか経ってない。

「やっとかがみが好きだって分かったのに!」

ライブの時から、まだ一週間も経ってない。たった6日間。

「短い。短すぎるよ……」

短い夢という言葉があるけれど、あまりにも短すぎる。

「頑張ろうって思ったのに……」

かがみに置いていかれないように頑張ろうと思ったのが、ほんのちょっと前のこと。
そのほんのちょっと前の事が、今となってはあまりにも遠い。

私は感情の表現に乏しい人だって、ずっとずっと思ってた。
でもそれは違んだ。ただ、表現するだけの機会がなかっただけないんだね。

だって、ほら?

私は今、こんなにも涙を流してる。

私は今、こんなにも悲しいもん。


見得も外聞もなく、私はずっとずっと泣き続けた。

結局その日は、涙はいつまでも止まる事はなく、悲しい気持ちと嫌だという気持ちは治まることは決してなかった。


――――――――――――――


NANAKON:なあ、泉。なんだか最近ずっとINしてるけど、生活リズムとか大丈夫か?

チャットウィンドウに先生のキャラクターの名前が表示される。内容は、私への説教のようだ。
うるさいな。春休みなんだからいいじゃん。
……うん、分かってる。分かってるよ。悪いのは勝手にイラついている私のほうだよ。

KONAKONA:大丈夫ですよ。INしてるだけで、夜中は寝AFKですから。

『許婚がいる』。その話を聞いてから、私は終始こんな感じだ。
家からでる元気もなければ、勉強なんかする気力もない。
だから、当然ゲームの時間も増えるわけで……

NANAKON:そうか。でも、寝AFKはあかんよ。回線に負担かけるわ。
KONAKONA:それもそうですね。気をつけます。
NANAKON:うっし、それじゃあ今日はどうしよか。

『偶にはペア狩りじゃなくてギルド狩りなんてどうですか』と打とうとしたそのときだった。
携帯電話からメロディが流れて振動し始めた。このメロディは……かがみだ。

急に現実に戻された気分だった。かがみのことで頭がいっぱいになる。
すぐに電話に出てかがみの声を聞きたい。

「でも……駄目だよ。」

決めたんだ。許婚がいるっていうことを受け入れようって。
それでお父さんが喜ぶなら、お母さんの最後の願いが叶うならそれでいいって。
今かがみと話したら、きっと意思が揺らぐ。かがみにこのことを話してしまう。
そんなことしたら、かがみにまで迷惑がかかっちゃう。
それだけは……絶対に駄目だ。だからせめて許婚と会うその日までは駄目なんだよ。

私は目を閉じて、耳をふさいだ。そして、携帯が振動しなくなるまで、じっと我慢する。
数十回振動した後、ようやく携帯は振動しなくなった。

NANAKON:おーいどうした?寝落ちか?

ウィンドウに先生の催促の文字が表示される。

KONAKONA:いえ、ちょっと用事が。えーっと、偶にはペア狩りじゃなくてギルド狩りなんてどうですかね。
NANAKON:おっ?ええな。偶には全員でパァっとやるか!それじゃあ、ギルメン呼んでみるか。

ギルドメンバーへの催促の文字がウィンドウに表示される。私はその間に携帯電話を手に取った。

画面に表示される『着信あり1件』の文字。
決定ボタンを押すと、『柊かがみ』の文字と電話番号。

たったそれだけの表示なのに、なんだかとても悲しくて涙が止まらなかった。


かがみの電話は次の日も、その次の日もかかってきた。
その電話を私は次の日も、その次の日もとることはなかった。


――――――――――――――


そして今、3月28日。私はこうしてお見合いの席に座ってる。
服装は着物。いつもとは違って、後ろで髪を束ねてる。
浴衣のときはお父さんがしてくれたけど、流石に今回は無理だったみたい。わざわざ美容室まで行って着付けをしてもらった。
着物を着る。髪を束ねてもらう。その一つ一つが許婚に会いにいくんだという事を実感させた。

お父さんはここにはいない。なんでも先方とお話をしてくるそうで。
許婚の人はまだ来ていない。でも、ついたらすぐに部屋に入ってくるそうだ。
だから、今ここには私一人しかいない。

「許婚かぁ…」

一人ぼっちだから、私は一人でこのことを考える。

「会いたくない。会いたくないよ…」

お母さんが選んでくれた人だから、この数日間必死になって納得しようとした。
でも、駄目だった。どんなに遠ざけても、どんなに忘れようとしても、かがみのことが頭からはなれない。
それでも……仕方ないよね。私はお父さんとお母さんの子供だから。
お父さんが喜ぶなら、お母さんの最後の願いなら、進んで叶えてあげるのが子供だよ。

願いを叶えてあげたい。だから、きっと私はこれを受け入れる。でも、嫌なものは嫌なんだよ。
もし間違いがなければ、そのまま結婚して、子供を産んで、その人と歳をとるんだ。
…そんなの嫌だよ。嫌で嫌で堪らなかいよ……
間違いがなければ、そうなっちゃうんだよね。間違いがなければ……

「間違い…起こしちゃおっかな…」

これから入ってくる許婚を思いっきりひっぱたく。そうしたら、きっとすごく怒るよね。
許婚って言ったって、初対面の人に殴られたんだ。怒るに決まってる。
そうしたら、きっとこの話もなくなる。うん、きっとそうなるよ。

実際には、都合よくそんな風に話が進むわけがない。
もしそうなったとしても、お父さんものすごく怒るよ。死んだお母さんもきっと悲しむよ。

それでも、この考えが、ひどく魅力的に感じた。

どうしよう?間違いを起こすんだったら、今しかないよね。どうしたらいいと思う、かがみ?
自問自答をしていると、スーッと襖が開く音がした。

そしてそれと同時に……かがみの匂いがした。
どんな匂いって言われても分からないし、答えられない。
だけど、それは間違いなくかがみの匂いだった。

卑怯だよ、これじゃあ間違いだって起こせないじゃん!

涙が出てくる。顔を上げられない。嗚咽が止まらない。
それでも、私の前に人の気配を感じる事は出来た。

何か話さなきゃ。お母さんがせっかく選んでくれたんだもん。ちゃんとしなきゃ駄目だよ。

いくらそう思っても、私から出てくるのは声ではなくて涙だけだった。
顔すら満足にあげることができない。私はまだお母さんが選んでくれた許婚の顔すら見ていない。

「あっ、あの!」

不意に、目の前から思いがけない声が聞こえた。私はその声に導かれるように、ゆっくりと顔をあげる。
だってその声は、私の知っている声だったら。
顔をあげてその声をした人を見つめた。

何時ものツインテールじゃない。服装だってシャツにネクタイじゃなくて着物。
いつものシャキッとした雰囲気なんてどこにもない。

だけど………

その人は確かにかがみだった。
目の前で目を閉じて深呼吸をしている人。
それは間違いなく、私の大好きな柊かがみだった。

「かがみ?」

これって夢か何かかな?
だって、ここには許婚が来るって聞いてる。絶対にかがみがいるはずがなんかないんだ。

「こ、こなた?!なんでこんなところにいるの?!」

夢でも幻でもなかった。目の前にいるのは間違いなくかがみだ。

「かがみこそ、なんでいるのさ?!」

もう訳が分からないよ!
何?もしかして、かがみも許婚?!
そいつはビックリだ!なんてゆい姉さんの物まねなんかしてる場合じゃないよ!

考えがまとまらない。開いた口がふさがらない。ああっ!一体なにがどうなってるのさ!

驚いたのは私だけじゃなくて、かがみも同じみたい。
私と同じように口を空けたまま、私から視線をそらさない。

急にスーッと襖の開く音が聞こえた。私達は同時に襖の方に振り向いた。
そこにはお父さんとかがみのお父さんとお母さんが並んで立っていた。

「な?こなた。絶対喜ぶって言ったろ?」

お父さんが笑いながら嬉しそうに言った。

まとまらない考えをまとめようと、私は必死に考える。

お父さんは言った。『お母さんが選んで、なおかつ絶対に私が喜ぶ人』って。
それでいてこの状況、お父さんの笑い顔…

私はチラッとかがみを見つめた。

もしかして、許婚って……かがみ?

コーン...、コーン...とししおどしの乾いた音が部屋中に響きわたる。


はぁ……なんというかさ。


もし私がいつも通りだったとしたら、こう突っ込んでると思うんだよね、この状況に。


これ、なんてエロゲ?


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コメント:
  • かなたさん! -- かがみんラブ (2012-09-20 08:33:01)
  • うわー これは目が離せません! 続編待ってます!! -- 名無しさん (2010-06-18 07:56:58)
  • これ、なんてエロゲ? -- 名無しさん (2010-04-01 17:30:40)
  • あなたの文章にはいつも引き込まれます。素敵な作品を有難うございます

    私も是非続きが読みたいです^^ -- サスケ (2009-05-27 14:29:07)
  • 続きが早く読みてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー -- O5 (2009-04-21 20:32:47)
  • やべー


    続きが気になる -- ラグ (2009-01-26 16:19:44)
  • 続きが楽しみです!(^^) -- 名無しさん (2009-01-23 17:09:13)
  • えっ?これは一体??
    そうじろう、ただお、みきの真意は??
    続きますよね作者様~ッ!! -- kk (2009-01-23 00:44:38)
  • これからどんな風に
    展開していくか
    楽しみです(^-^) -- 無垢無垢 (2009-01-23 00:41:52)


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