Wonderwall(5)

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「綺麗だよね。」

 私の右耳朶に残ったそれを、まじまじと見つめるこなた。
 そして、自分の左耳朶の片割れと見比べようと一生懸命水晶体を左端に寄せたり、手で引っ張ったり。

 …さっき長いこと見てただろうに。


「半年も箱の中じゃ、劣化しないか、とか、不安になるよ。」

 ちょっと物惜しそうに。 ―って言ってもなぁ。片方だけだと… まぁいいか。


「いきなり同性愛者だって公表したいなら、付けてもいいけど。」

 しつこいながらに、感染症も気になるしね。 その辺は当然、本人も弁えてはいるだろうが。


「は、話が飛ぶなぁ… とりあえず『社会性』学ぼうとしてる人間ですんで、もうちぃと待っとって。」

「待ってなんかない。」


「… え?」

 途端に表情を曇らすこなた。少し突き放すような言い草だったか。
 …その裏に秘めたものの存在が、実は嬉しくて仕方ないが。


「あんたの前途、危うくするような要求はしないわよ。」

 屈辱を強いる関係など、友情ですらないから。



「あんたが、思ったように生きられれば、それでいい。 私も …嬉しいから。」


 只、あんたが居てくれれば。



「私のワガママは、それだけ。 その、ピアス、だけ。」


 あんたに、忘れられたくない。

 あんたの活き活きしてる姿が、私の明日を保証してくれるから。

 あんたに振り回されんのが、高校時代からの、私の「生き甲斐」だから。



 あんたの幸せが、私の『趣味』だから。



――



「…かがみ。」

「ん?」

「お母さんみたい。」

「…えぁ?」

「本当に。」


 表情から伺うに、演技や冗談は勿論、何の演繹でも比喩でも修飾でもないらしい。 …いや、形容ではあるか。

 しかし、言われた側としては違和感しか出てこない。 名誉ではあるが、身に余る。
 ―この子の好きなファンタジー風に言えばそんなとこか。


 言葉を待つと、沈黙に耐えられなくなったのか、はたまた自分の発言の意図が今頃になって汲めたのか。
 こなたは、へへ、と唇を舐める。照れ隠しのように。


「… 私からは一番縁遠い立場が出てきたな。 実を言うと、半分頭からも消えかかってたけどね。」


 それは、嘘だ。 こなたが髪を伸ばしている理由を聞いた時から、
 この子は母親… かなたさんの後姿を生涯追い続けるだろうって事を、何となくではあるが、実感している。

 詰問の代わりに眉根に皺を寄せたら、観念したように掌を見せ、話し出した。


「母さん。憧れてた、本当は。

 写真の中でしか会えないし、会ったことないから、“どんな人か”、正確には知らない。 …だけど、だからこそ、かな。

 優しそうで、背ぇ小っちゃいけど、包容力あって、綺麗で… お蔭であの馬鹿親父は、過去にしか目が行かなくなったけど。

 …無理もない、か。それ位の。」


 ― 矢張り、私の直感は当たっている。


 記憶のカオスから「あれ」の一言を見出した創造神の受け売り、という表現がまさに相応しい、至極穏やかな、満ち足りた、表情。

 目尻を窄め、一言一言から快の成分を抽出するような素振りに、“安堵”に近い心境が読み取れる。

 故人という断絶はあれど、肉親として、20の娘からここまで慕われる存在は、地球規模でも相当希少なのではなかろうか。

 正直に明かせば、身の程知らずながらに、敵愾心に近い感覚が早くも意識の表層に上ってくる。それ程までの。


「でも、現実の、三次元の私にとって、実際の教育者に、保護者に …

 支えに、なってくれた人は。 もっとずっと身近にいた。」


 しかしこの感情は、刹那のもとに掻き消える事となった。



「かがみは、私の『お母さん』 ―育ての母、なのかな。今でも。」



――



「いつだって傍に居てくれて。危なっかしい、ガキのまんま、さっぱり成長できてないような小娘を、しっかりリードしてくれた。」


 心底… とはいえ一方で確かに喜んでるんだからそうでもないか、兎も角、当惑する。

「な、何言ってんのよ… あんたの親って、そんなに出来た人間に思う?

 あんたのパターンすら把握し切れてなかったってのに…」


 結局、私のこの子への行いは、さっき当の本人が貶めた『汚いもの』とどんな差異もない。

 全てが見返りを、望んでの事。

 この子が心から楽しめるような、そんな日々への布石を敷く切欠になり、そのお裾分けを想定しての…

 まさに例示の通りの“下品なact”。 算盤ずくで、『肩口に溜まった垢を掻き出す』類の自慰行為に違いなかった。

 なのに、この子は… それを知ってか知らずか。


「第一、要求してんのはこっちでしょ? 何で私が、あんたを“守れる立場”なんかに、繰り上がってんのよ。

 それにさっきも言ったように、逆に、生きてく為に必要なことは、全部あんたから教わった。
 同じように、あんたの“役に立てた”事なんか一つもない。

 今だって、大した実績も誇りも人間性もない、たかが学生なんかに、何が出来るっての。
 迷惑、って程じゃないけど、正直荷が重いわ。」


 老後の面倒を見て貰う為に、子に出資する肉親は、恐らくいない。

 居るとしたって実際にそんな存在に成り下がるのは、人として、真の身体性共有者として、私ならまっぴら御免だ。


「だから、それも含めて、だよ。 …かがみが言うように、私に何か出来てるんなら、ね。」


 ―だが、血の契りのない、求める側が自我をある程度肉付けている過程でのそうした関係では、どうなのか。

 慕われる事、見上げられる事を、求められる側が望みさえしなければ、あるいは。



「私だって、かがみだけはしっかり『見てた』から。かがみが『見て』くれたみたいに。

 “かがみだから”。かがみにしか出せないペースだから、雰囲気だから、私はそう思った訳で。」


 矢張り、この子は、私の総体を見ていてくれた。 “私性”を。“私らしさ”を。
 そして、その変容の様をも、愉悦と喜びと、期待を持って。

 何を否定するでもなく、唯、あるがままを、受け容れて。
 私の、この子への態度における目標の段階など、とうに達成している。 ―やっぱり、あんたは凄い。



「一番はさ、『目』だよ。私を見ててくれる『目』。 何というかね、“母さん”なんだよ、上手く言えないけど。

 私の… そうだな、後ろの ―背後の方まで、心配してくれてる、っていう。」


 立ち上がり、空を見上げながら、相変わらず虫が大合唱を続けている芝生の中へ、歩を進めるこなた。

 目、か。 意識したことはない。というか、本人にとって一番気付きにくい部位だ。

 正しようのない部分に顕れくるのが本性、という一般認識もある。


 ―そうか。それに従えば。今先刻までの私は、己の身体性も弁えず、夕食時家族に披露していた過ちの下敷きとなる視点で ―
 即ち、見下ろす立場でこなたを見ていた、という事になる。

 無論つかさにもだが、我ながら、馬鹿みたいに失敬で無防備な真似をしていたもんだ。
 この子に、さっきの視点から何かを正確に読み取られたりしていたら、正真正銘、末代までの恥だ。


「私が、このまま生きてても良い、って、ちゃんと教えてくれる。 そんなの、“母さん”だけだよ。」


 言うなれば、高校時代以降の私の目標は、この子の親友、或いはそれ以降の座。

 あの、ある意味で破天荒な考え方や振る舞いに興味を覚え、その仲を深めたくて、世間一般のいう欲望のやり取りに応じてきた。
 初めから狙いは明確で、もっと低次元を向いていたのだ。

 だからそんな中で、この子を、見上げることはあっても、
 見下ろす視点は ―やっとそのレベルか、というような『待ち受ける』立場の視点も含めて―
 少なくともそれまでの私の中にはなかった筈だ。

 呆れたり言葉を選んだり、荒げたりしたことはある。だが、それは対等の地平に立ってこそ出来る事。
 この子は、常に私の隣をキープしていた。してくれていた。


 何よりの望みは、願いは。 あの頃に同じ。 この子と共に、生きていられる事。
 それが叶わなくとも、この地球のどこかで、この子が、つつがなく日々を暮らしてゆける事。

 だからと言って、それでは自分の欲望が満たされるだけだ。何も母性とは言えまい。


「一番身近に居てくれた人、ってこと。 私も、かがみが私に感じてくれてたのと同じ。かがみが、一番安心できる人。

 つかさやみゆきさん達も、勿論身近な友達。 だけど、何ていうか… かがみはさ、私の欠点、見ててくれたんだ。

 苦手なとこはそれでいいから、一緒に頑張ろう、って、そこ補ってくれる、みたいな、そういう目線で付き合ってくてれた。」


 さっきの『目』に関わる話か。 …心当たりは、ない訳ではない。
 でもそれも、結局自己の安定っていう目的があっての事。“下品なact”の一。

 この子の好きな、二次元世界の住人ならあるいは存在しうるだろう。表も裏もない勧善懲悪の聖人君子が。
 しかし、そんな登場人物の織り成す限りなく薄っぺらなファンタジーに、果たしてニーズはあるのか?
 ―そう、考えれば。

 あんたの思うように、カントでは… 理想的ではいられない。 私だって、奥行きのある人間だから。あんたと同じ。


「だから… 甘えちゃったのかな。」


 この行動にはこう対応して、こう言われたらこう言い返してやろう…
 “作り物”につきもののそんな平面状のシミュレーション意識とは別次元の、1000%の自分で付き合える関係。
 私が望んだのはそれで、かくの如く、こなただってそうだ。

 だからこそ、常日頃からさりげなく私に目を掛けて、どんなに些細な変化も見逃さないでいてくれた。
 そのすました友情に、単独じゃまともな生活すらままならないうさぎが、どんなに助けられたことか。


「かがみにとっては、分かるよ。迷惑なんだろうって。 結局、私にかまわれてる、って、気付いてるもんね。」

 それがあったからこそ、一層有難かったのに。
 意図としては、場の空気を和らげる為の… 自分が大したことないのを、本気ではない事を、アピールする為の方策だったんだって。
 ―結局、大学に上るまで気付けずじまいだったけど。


「でも …」


 そして。


 ― 全く、回りくどい事この上ないが、先程披露したように、自分もその体質の例に漏れない為、非難はすまい。

 兎も角。 この子の結論は、至って単純で。




「出来ることなら、最期まで腐れ縁でいたいな。」



 綻ぶ、桜色。


「一生に、一度だから。 …誰かと、知り合えるって事は。仲良くなれるって事は。」




 ―



 そうか。 だったら。


 戸籍上の母親は、一人の人間の生涯にとって、有限の存在だ。
 いずれは、親元を離れる時が、誰にでも訪れる。 そして、ゆくゆくは立場を入れ替える、そういう時期が。

 しかし、それが“他”同士の認識上の概念… 言葉は悪いが、一緒に居る「口実」が主題のものなら。

 この子がそう言うなら… それを望むなら。


 私は、喜んでこの子の保護者役を… 『母親役』を ―精神年齢的には、本来“妹”辺りが妥当だろうが― 買って出る。



「そうね。」


 或いは、そんな作為は端から無意味なのかもしれないが。


 論拠は薄い。むしろ、客観的には、無い。でも、「何となく。」、直感の部分で確かに感じる。
 違う進路を選んでも、この子と私の運命は、どこかで必ず、交差する。

 現実問題としたって、方向は違おうと、終着点が「未来」っていう同じ漠然としたものへ向かっている限り、可能性はゼロの筈がない。

 だったら、その可能性を意図して育ててゆくのが、そこを「より良く」歩むことを望むものの義務であり、権利。
 ちょっと姑息かも判らないけど、今出来るのは、これ位の、些細な働き掛け。


 この子との「縁」をこの先も維持してゆきたい。
 私の本心がそう願うのだから、そのものを発露するのが、人が人である為のガイドライン、『道』というもの、らしい。

 こなたが望むなら、友情のその先でも、どこへでもどこまででも進んでゆきたい。そういう心境に、今の私はある。
 場の空気に流され過ぎだ、というのなら、それでもいい。
 恐らくは、私の潜在意識に長らく身を伏していたものだ。この子と、出会って以来。

 前途を覆う闇など、最早恐るるに足らない。
 『可能性』は“切り拓くもの”。「死」とは“留まること”。 運命を「なるようにしてゆく」のは、畢竟はその主体、人間自身だ。

 砦の構築なら、既に終わっている。戦って済むことなら、だが。


 でも、足並みは揃えたい。
 こなたの言うよう、嗜好とか意地とか見栄とかプライドとか、かねてから大概の人間は、そういったくだらない概念に囚われてきたものだ。

 最早その存在が自分の感性の一翼を担うまでに、惹き込まれた相手が苦しむ様を、心から望む人間が、果たして居るだろうか。

 『要求だけなら赤ん坊でも出来る』か。つくづく、先人は偉大だ。
 言ってみれば、無闇に蟻を踏み潰し、蜻蛉の羽を毟り取る幼少期の思い出に憑かれた裸の猿…
 “社会性を乱す側”の一部は、そうかも分からない。

 何より、優劣を競い合う関係など、一時の気休めしか齎さない。しかも一方にだけ。
 そんなものをこの子は望むまい。無論、私もだ。



 こなたは、私には背を向け、淵を朧げに空に滲ませた半月を見上げている。

 その面に、何を映し出し、見出そうとしているのか。


 結局私は、この名の通り、あんたの鏡に… は、なってやれなかった。

 中途半端な働き掛けと、自分の欲望の処理との兼ね合いばかりに気を回していて。
 気が付いたら、現実から目を遠ざけさせてばかりいた。

 言うなれば、換気扇のないガスコンロの傍に数ヶ月置かれ、油染みで使い物にならなくなった、置き鏡。


 だが、こんな出来損ないに、まだ使い道を考えていてくれるなら、私は自ら、面から染みをこそぎ取る事にする。

 一度感情移入した相手の役に、もう一度立てるというのなら、これ程嬉しく、名誉なことはない。




「なんかさ、笑っちゃうよね。」

「ん?」


 振り向く。 さては疲れてきたか。

 『いつものように』、呆けた声音に馬鹿を見る視線―


「全部受け止めるよー、とか言い出した方が、実は『受け止められたがってる』なんて。」


 どころか。 翡翠色が例の揺らめきを湛えている。


 下瞼には、溜めた池に月を浮かべて。



 ― これか。

 この子に関する不鮮明だった部分の繋がりが、一挙に見えてきた。



 でも、今更我慢してもね。




「大して変わりゃしないわよ。」


 私は両腕を差し出す。


 ― その証拠は、あんたの身近にも展開していた筈だ。

   ここでわざわざ言葉にするのは、あんたへの侮辱に取られても止むを得ない、が。



「私だって、そんなもんだった。 何かにつけて切欠作って… いつだって、あんたを頼ってた。」


 …物凄く恥ずかしい。 きっと顔は、さっきまで食卓でご飯に摺り込んでいた梅干みたいな色か。
 だが、体面なんかに構ってられない。

 こなたは、目の前に居るんだから。



 生のままの、らしくない私の言葉に、先述の儚げな笑みで応えるこなた。


「… 優しいよね。 今日も。 ほんとに。」


 引きつった喉の奥から紡がれる、音節のないハーモニー。 いわゆる“鼻声”だ。

 とうとう鼻が潤ってきたらしい。 尻の痣の位置も知り合ってるような親友が相手なんだから、かめばいいのに。


「私はさ、こういう身分になっちゃったから、っ。

 … これ以上、先のある人に… これからだ、って、人に、甘えられない … だけどっ…」


 否、辛そうだ。 ―違いない。

 今の今まで、そのか細い二本の足を支える踏み台を、自分の「感情」と「誇り」を“ジャンク材”に、何とか組み上げてきたのだろう。

 そうした骨身を晒す日々の果てに訪れた孤独は、不可視の足でその張りぼてを踏み躙り、けし潰した。

 煙草の吸殻への仕打と寸分違わず。


 かつて絶対だった拠所を失ったこなたは、今や、こんなにも小さい。



「… 今日だけ。 今日だけだ、から。」


 だのにこなたは相変わらずの笑顔だ。不器用な、“距離”を感じる作り笑い。 ― だけど、どうなんだろう。

 眉は八の字に開き、頬はぴくぴく震えている。 よく見たら、飴色の筋が一本




 … 嗚呼。




 こなたが、泣いている。 人前で、雫を落として。





 他でもない、私が、決壊させてしまった。


 無論、初めてだ。 この子が、「ただの友達」の一線を踏み越えて、私に、自分をここまで開いて見せたのは。

 無防備に、自分の“弱み”を曝け出すのは勿論のこと。
 身近な人間を題材に、自らが拵えた精神面におけるヒエラルキーの概念それ自体を叩き壊し、
 『喉に浮かんだありのまま』を訴え出たのは。


 そして、長年気掛かりだった現象の由来が、これで一気に解明した。
 当人には余りに似つかわしくなく、独り善がりな前提の刷り込まれた無意識が、
 今の今まで、正確な認知を拒んでいたらしい。

 時たまそのニヒリスティクな視線の陰方に、ほんの僅かに伺えた、翡翠色の穏やかな揺らめきは、


 この子の、涙だったのだと。



 2chや哲学系(ぶった)ブログの類に溢れる『名言』で前頭葉を武装して。

 道士みたいな心境を常日頃身辺に漂わせてみせて。

 近場のどんな悲劇、どんな事件に対しても、「そんなもんだよ。」と鼻で笑える人格を「装って」。

 そうして、あんたはいつだって、感情を抑えていた。 涙を堪えた、泣き笑いを続けてきた。 だけど。


 幕が下りても厚化粧を取らないピエロは、ただの狂人に違いない事を、あんたは、漸く悟ったのだ。

 恐らくは、受験の失敗… 人類学の言う、「通過儀礼」の中で。



 …っ。



 ― ―



 唇を、締まりなく引き伸ばす。



 「何つったっけ。『ツンデレ』?」



 今となっては、例えるなら昭和の香りすら漂い出しかねない、
 かつては始点も向けられていたベクトルも真逆だった私の言葉に、こなたは漸く破顔した。

 目尻を下げ、口端を引き上げ、涙の跡を煌かせて。



 思い返してみれば、さっきこなたの挙げた“使い古された台詞”の類は腐るほどある。
 ラノベやコミックをランダムに数冊開けば、既にその傾向が見て取れる程に。

 例えば、「時間が止まる」感覚。 無粋至極な例えだが、それが客観的な事実だと言うなら、
 唐突に現れたロードローラーの上で吼える輩が後を絶つまい。


 だがこの言葉に、そういった脚色の類は一切含まれていない、という、かつてのこの子の説が、

 今、私の中で、こうして証明されている。

 経験者にしか、決して実感できない、論理屈とは一線を画した、感覚。

 ―あくまで論理に徹するなら、傲慢以外の何のもでもない、のかも知れないが。




 竜胆色した毛並みのロップイヤーが、一直線に私の胸を目掛けてきたから、


 私はその放物線の終点で、この子の全身がなるべく納まり易いよう、腕を、胸控を一層広げ、


 その香りを、力一杯、抱き止めた。





 高校時代には、いっそ縁のなかった感覚だが。


 “対等”の存在を腕に抱き留める、という行為が、

 愛おしく思う存在の、髪を撫でるという行為が、どんなに心地良いものなのか。

 教えてくれたのは。


 やっぱり、こなただった。 私にとっては。
                                     タカネノハナ
 変わり映えはしたが、他でもない、私の、生涯唯一つの竜胆、こなただった。



 こなた …




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