無題(H1-436)

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 残暑も収まってきたある秋の日。
 私はこなたに一つの提案をした。

「勉強会?」
「そう。いい加減あんたも本腰入れないと危ないわよ。わかってる?
 本当は今からだって遅すぎるんだから」
「わかってはいるつもりなんだけどね」
「それじゃダメなのよ。忘れたの?あんた、自分でなんて言ったのか」
「覚えてるよ。忘れるわけないじゃん」

 いくらなんでも『あのこと』を忘れてるわけがないか。
 もしも忘れていたら、さすがに私でも怒るかもしれない。

 高校最後の夏休みが明けたばかりの9月。こなたはこんなことを言った。

 ―――私、かがみと同じ大学に行く―――

 そう言っていた。でも、今現在のこなたの成績では、
 私と同じ大学に入ることは正直難しい。たとえ学部が違うとはいってもだ。
 だから私は、この勉強会の提案をした。
 理由は簡単なことだ。自分の…その、なんだ。
 カノジョが自分と同じところに行きたいと言ってくれたことが素直に嬉しくて、
私自身、もっとこいつと一緒にいたいから。できることなら、この先ずっと…。

「それなら結構。明日からあんたの家行くからね」
「ん…わかった。待ってるね」
「覚悟しておきなさいよ。今回ばかりはスパルタでいくからね」

**************

 翌日。

「さて、始める前に一つだけ」
「どうしたの?」
「今日は、私の言うことに絶対に従ってもらうわ。いいわね」
「うん、いいよ。かがみの言うことだもん。ちゃんと守るよ」
「言ったわね。しっかり聞いたからね」

 勉強会を始めてしばらくは、こなたも集中してやっていたのだが、
だんだんと集中力が切れてきたのか…。

―――かがみ。
―――ねえ、かがみ。
―――あのさ、かがみ。

 本音を言うのであれば、私だって勉強ばかりしていないで、
もっとこなたといろいろなことを話していたい、いろいろなことをしていたい。
 でも、今日の勉強会は「こなたとの今」ではなく、
「こなたとの未来」のために開いたものだ。
 だから私は、今日この日だけは、容赦なくやろうと思う。

「こなた」
「そろそろ休憩?」
「そんなわけないでしょ。まだ全然進んでないのに」
「だってわかんないんだもん…」
「わからないところは教えてあげるから。
 だから、終わるまで休憩はなし。この部屋からも出さないわよ」
「ええ!?それはひどいよ…」
「これもあんたのためよ。私と同じ大学に行ってくれるんでしょ?」
「そうだけど…」
「じゃあ、考え方を変えてみて。自分のためじゃなくて、私のためにがんばって。
 そうすれば、このくらいはやれるはずよ」
「自分じゃなくて、かがみのために…」
「私だって、こなたと一緒に同じ大学…通いたいんだからね」
「かがみ…私、がんばるよ」
「その意気よ」

 そしてまた集中し始めたこなた。
 仮にも進学校である稜桜に受かっているのだ。
 しっかり集中してやれば、絶対にいい結果が出るはずだ。

「かがみ、ここって…?」
「ここはね…」
「なるほど」
「やっぱり飲み込みはいいのよね、あんた」
「かがみの教え方が上手なんだよ」

 やればできるのに、なんで普段はあんななんだか…疑問で仕方ない。
 順調に進んでいってる、再開してしばらく経ったころ。
 どうも、こなたの様子がおかしい。というか妙に落ち着きがない。

「こなた?どうかした?」
「…なんでもない」
「なら、いいんだけど」

 その時はそう言っていたけど、時間が経つにつれ、
ますます落ち着きがなくなってきた。そのうえ、妙に顔が赤くなってきたような…。

 ―――こんなこなたも可愛いわね―――

 そんなことを思っていたら。

「かがみ…あのさ」
「んー?」
「あの、ちょっと…」
「どうしたのよ?」
「いや、だからね…トイレ…行ってきていい?」

 そういうことか。なら、これまでの様子も納得できる。
 さて、どうするか―――よし。

「どこまで進んだの?」
「えっと、ここまで」
「まだまだね…なら、終わるまで我慢しなさい」
「え!?」
「さっきも言ったでしょ。終わるまでここから出さないって」
「かがみの鬼…」
「何とでも言いなさい。 今日は私の言うことに従ってもらう。
 それにこなたも了承したはずよね?」
「そうは言ったけど…」
「なら、我慢しなさい」
「わかったよ…やってやるさ!」

 それからのこなたは正直、凄かった。
 今までのペースが嘘かのような勢いで問題を解いていく。
 そうして2時間弱。

「終わったー!」
「お疲れ様、いつもこのくらいのペースならいいんだけどね」
「それはともかく、いってくる!」

 そして席を立つこなた。しかしまだ行かせるわけにはいかない。
 まだやることが残っている。

「待ちなさい」
「何…?ちゃんと終わらせたよ?」
「そうね。けどまだ答え合わせ、してないでしょ」
「そんなの戻ってきてからでいいじゃん…」
「…こなた」
「う…わかったよ。でも、できるだけ早くしてね」
「わかってるわ」

 一瞬、真っ赤になりながらもじもじとしているこなたをもっと見ていたいと思ったが、
これ以上引き伸ばしちゃ、さすがに可哀想だからね
 さて、結果はどうかな…。

******

「はい、おっけー」
「もちろん!それじゃ…」
「待って」

 急いで立ち上げるこなたを再度呼び止める。
 まだ、やり残したことがある。

「まだあるの?」
「ええ、でも何かさせるわけじゃないから安心して。
 これはちゃんと言ったことを守れたご褒美」
「…できれば急いでほしいんだけど。いい加減限界が…」
「すぐ済むわ」

 そうして、こなたの頬に手を添える。
 そして―――。

「こなた、がんばったわね」
「かがみ?…んっ…」

 ―――キスをした。

 あんなこなたを見てたら我慢ができなくなった、というのも本音。
 がんばってたやり遂げたこなたに、ご褒美をあげたくなったのも本音。

 そっと舌先で唇を突付くと、応えるようにこなたの舌が私のそれに触れてくれた。
 そのまま舌を絡めあい、互いの口内を行き来し続ける。

「かが…み…っ…」
「…んっ…ふぁ…」

 ―――どれくらいそうしていたのだろう。
 実際はいかほども経ってはいないのだろうが、どちらからともなく、体を離す。
 私たちを繋ぐ銀色に輝く細い糸が伸び、そして消えた。

「…はぁっ…ご馳走様、こなた」
「…あっ…」
「こなた?」

 腰が抜けてしまったのか、こなたがぺたんと座り込んでしまった。
 それと同時に先ほどまでとは、少し違う感じに真っ赤になっていく。

「どうしたのよ?」
「……った」

 はっきりは聞き取れなかったが、さっきまでのこなたの状況と、
今の状況を考えてみると、一つの予想が浮かんだ。

「まさか…やっちゃった?」
「そのまさかだよ…かがみの…ばか!」

 そしてこなたは、部屋を出て行ってしまった…。
 そりゃ怒るわよね…失敗しちゃったな。

*********

 シャワーを浴びて戻ってきたこなたは、拗ねた子供のように頬を膨らませていた。
 謝らなきゃ…結果的にとはいえ、怒らせるようなことをしちゃったんだし…。

「こなた、ごめんね…」
「……」
「もうあんなこと言わないから、だから」
「……たら」
「え?」
「もう一度、キスしてくれたら、許してあげる」
「…わかった」

 今度は、キスだけでは済みそうにない気がした。
 済ますつもりもないけどね。
 だって、今日という時間は、まだまだ残っているんだから―――。



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コメント:
  • こなたカワイイ!
    かがみのSっけがなんかいい(*´∇`*) -- ハルヒ@ (2008-07-24 08:47:59)

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