パーフェクトスター番外編 Interlude:始まり

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気づけば私は映画館にいた。
いや───正確には映画館にいるような、ただ流されている映像をひたすら見せられている感覚だ。
私という器をもった存在はなく、意識だけしかそこにはない。
…ないはずなのに。
あくまでここにいる“私”は傍観者以外の何者でもないはずなのに、
体感できるはずのない気温や湿度もなんとなくわかってしまう不思議な空間だった。
最初は古ぼけた8ミリフィルムのように、ピンボケた不鮮明な映像から始まったそれは徐々に輪郭を持ち始めた。

 * * *

《Interlude:始まり》

時期として例えるなら、秋から冬へ移り変わるときくらいだろうか。
雲も疎らに、高く透き通った空。
それでもどこか乾いた空気を含んでいる蒼は寂寞を覚える。
木枯らしにも似た冷たい風が追い討ちをかけるように、
小さな歩調で進む小さな二人の女の子を追いかけていた。

薄い紫色の髪の毛を持つ幼い二人は、手をしっかりと握り合い、その風から逃げるようにどこかへ向かっていた。
しかし、風に追いつかれてしまったのか──少し後ろを歩いていた比較的短い髪をした少女が立ち止まってしまった。

「かがみぃ…」

若干舌足らずな声が冷たい風に乗って、前を歩いていた少女にも届き、彼女もまた足を止めた。

「おうち、まだつかないの…?」
「つかさ、もうすこし。もうすこしだから…がんばろ」

不安に支配された声に違わず、泣きそうな表情をした髪の毛の短い“つかさ”という少女を
励ます少し長めの髪の“かがみ”という少女。
彼女たちは外見こそは違うけど、心は2人で1つのような存在なのかもしれないと、ふと思った。
現にかがみという少女は、つかさという少女の心を支配した不安が移りつつあるのか、
先程まで明るかった表情を不安へと曇らせていった。

── きっと彼女たちも私が感じた寂寞に、幼き心を飲まれたんだろう。

頬を撫でる冷気に、どこまでも続く高い蒼に飲まれたんだ。
そうだと、何故か私にはわかってしまった。

そして瞼を閉じたように世界が一度ブラックアウトして、すぐに世界が開けた時には空は橙色へと変化していた。
変化したのは空の色だけでなく、彼女たちを包む外気も先程より冷たいものへとなっていた。
変わらなかったのは、少女2人だけ。

「ひぐっ…おかあさぁん、おとうさぁん、おねえちゃん…ひぐっ」
「つかさぁ、ないたら、ないたら駄目だよぉ」

その場に立ち尽くし、つかさに続きかがみも泣きはじめていた。
2人合わせたところで大きさなんて知れていて。
ただ世界が大きすぎた、それだけが涙の理由だった。
かがみの小さな手から、何かが零れ落ち、地面について割れた。
お遣い先でもらった飴玉。彼女たちの心みたいだった。

夕暮れも終りかけたその時。
大きな影2つと中くらいの影が2つが、2人の元へと走り寄っていくところで再び世界はブラックアウトした。
間際、中くらいの影1つが言った。
その言葉が傍観者である私の心に届いた。

『かがみはお姉ちゃんなんだから、しっかりしなきゃ』



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