ひー壊し編

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――――お姉ちゃんを助けてあげてください。

私は、本殿に向かってお祈りをしていた。
「あれ……?」
長いお祈りの後に目を開くと、眼前に赤と白のお守りが2つ。
いつの間にかあったそれを、なんだろ、と眺める。
「もしかして……」
もう一度本殿をじっと見つめていると、漆黒の中で何かが光った気がした。
「神様、ありがとうございます」
私はお辞儀をして、再びお祈りをした。



「お姉ちゃん、これあげるよ~」
「え?突然どうしたの?」
私の急なプレゼントに、お姉ちゃんは驚いたように聞く。
「私からの応援だよ」
「応援……?ま、まさか、つかさ……」
お姉ちゃんの顔が少し赤くなった。
やっぱり、お姉ちゃんはかわいいな~♪
「えへへ、おまじないがかかったお守り……だと思う」
「お守りってだいたいはおまじないがかかってるものでしょ」
「はぅぁっ!」
その言葉に、何も言い返せない。
うう……お姉ちゃん鋭いよぉ~……。
何と返そうか考えてると、お姉ちゃんはにっこり微笑んだ。
「ま、でもありがと。大切にさせてもらうわね」
「う、うん!」
私は嬉しくて、つい何度も頷いた。
「やふ~、かがみにつかさ」
後ろから挨拶が聞こえる。
もちろん、その相手は私たちのよく知る人。
「おっす、こなた」
「こなちゃん、おはよ~」
私とお姉ちゃんが挨拶を返したその人は、私たちの親友。
そして―――お姉ちゃんの意中の相手。
でも、男の子じゃないよ。
だから、お姉ちゃんは悩んでるんだ。
女の子が女の子を好きになるのは悪いことじゃないはず。
なのに、みんなそれを許してくれない。変な目を向ける。
でも、そんなことないって私は思うんだ。
神様だってそう思ってるよ。
だから、このお守りをくれたんだよね。


「こなちゃん」
「ん~、なに、つかさ」
「これあげるよ」
こなちゃんに、お姉ちゃんにあげたのと色違いのそれを渡した。
「これ、なに?」
「お守り。きっといいこと起こるよ」

きっと、こなちゃんもお姉ちゃんのことが好きになってくれるよ。
だって、神様お墨付きのお守りだもんね。

「ありがと、つかさ」
「あ、つ、つかさ、こなたにもあげたの……!?」
お姉ちゃんが急に驚いたように言った。
「かがみん、どうしたのかな~?あれ、それ、これと同じやつ?
やったね、ペアルックだ!支援効果で命中とか上がっちゃうかも」

「あがるか!私もつかさからもらったのよ」
「へぇ~。つかさ、なんでいきなり私たちにお守りくれたの?」
うぇ~ん、お姉ちゃんがすごい睨み付けてきてるよぉ……。
うう、何て言おう………。
「そ、その…お煎餅占いの結果で、自分と親しい二人にお守りをプレゼントすると運気があがるって…」
「何ソレ…?」
私の言葉にこなちゃんがいぶかしげな顔をする。
「えとね……」
「つかさがいつかにやった占いよ。効果あるのかはわからないけど」
私が困ってるのを見て、お姉ちゃんが助け船を出してくれた。
お姉ちゃん、いつもありがとう…………。
「太占より信憑性なさそうだね。どうやったらお守りをあげれば運勢アップなんて出るんだか」
「………確かにね……」
「―――!!」
こなちゃんのくせにぃ~~~っ!




「こなちゃん、どうしたの?」
休み時間。
こなちゃんが少しそわそわしてる。
「い、いや……何でもない……」
「本当に大丈夫?」
「うん……ごめん、ちょっと」
こなちゃんはそう言うと、教室から出ていった。
「泉さん……どうかされたのですか?」
ゆきちゃんが、心配そうに聞いてきた。
「わかんない……。大丈夫って言ってたけど……」
「そうですか……」

結局こなちゃんは、次の授業開始ギリギリに帰ってきたかと思うと、
授業が終了するとまたすぐにどこかに行ってしまった。
休み時間の度にいなくなるって、どこかで聞いたような……?
お姉ちゃんとこなちゃんがアニメについての話をしてたときだっけ?
気のせいかもだけど………。


そして、お昼の休み時間。
いなくなってたこなちゃんが、すぐ帰ってきた。

―――お姉ちゃんにしがみつきながら。

「かがみん~~もう離れたくないよ~~」
「だあ~~、どうしたのよ、っていうか何なのよ~~!」
「私、かがみと一緒じゃなきゃ、生きていけないヨ」
「わかったから、大声で言うなッ!」
私とゆきちゃんは呆然とその光景を眺めていた。
お姉ちゃんは教室の中にいる私たちの姿を見ると、こなちゃんをひきずりながら向かってくる。
「ちょっと、つかさ、みゆき、コイツどうしちゃったのよ!!」
混乱してるお姉ちゃん。
「どうもしてないよ。嫁のところにいくのは間違ってないでしょ~?」
「誰が嫁だ!さっきからわけのわからんことを……」
お姉ちゃんはまた私たちの方を向く。
「休み時間の度にこっちの教室に来ては、私にすりよってきてるんだけど!!」
どこ行ってるんだろって思ったら、お姉ちゃんのところだったんだ……。
「い、泉さん、かがみさんも困っていますし、一度離れてあげてはどうでしょうか……?」


「授業中離れてて、もう我慢出来ないよ!」
こなちゃんはそう言って、もっとぎゅっとお姉ちゃんにしがみついた。
「もう、わかった!わかったから、ご飯食べるわよ!こなただってお腹へってるでしょ」
その言葉に、こなちゃんは絡ませていた腕をはなし、自分の席に戻った。
お姉ちゃんもほっとしたように、開いている席に座って、お弁当を広げた。
「いただきま―――」
言い終わる前に、お姉ちゃんの首にはまた腕が回っていた。
お姉ちゃん顔のすぐ横にはこなちゃんの顔。
「んも~かがみも正直に言ってくれればよかったのに~~」
「え?な、なによ!?」
「私にお弁当食べさせて欲しいんでしょ?ほら、あ~ん♪」
「ば、ひ、一人で食べれるわよ!」
「流石ツンデレだね~♪素直になりなよ~♪」
「ツンデレ言うな!しかも本心よ!」
「萌え~♪」
「萌えとか言うなぁ!!」
結局、次の授業の始まりまでこんなのが続いて……。
私とゆきちゃんはそんな二人をぼんやり眺めてただけだった……。


帰り道もお昼と変わらず、お姉ちゃんにべったりなこなちゃん。
私たちと分かれるところにきたら、
「かがみと離れたくない!」
って言ってついて来ちゃって、仕方なくそのまま帰ってるけど……。
「つかさ……こなたに、何か言ったりしてないわよね?」
「うん………」
「かがみ、つかさとはいつでも話せるんだから、私と話そうよ~~」
「あんたとはさっきから十分に話してるでしょ!」
「え~~、あんなの、1割にも満たないよ~~」
こなちゃんの言葉を無視して、お姉ちゃんは私に言った。
「なら何で急にこんな風になっちゃったのか全くわからないわね……」
「うん………」


しばらく歩いてると、うちの神社が見えてくる。
「そういえば……ねぇ、つかさ」
こなちゃんと色々話してた姉ちゃんは思い出したように聞いてきた。
「今朝のお守り……あれ、どこでもらったの?うちのじゃないわよね。あんなの見たことないし」
「え………?」
お守り………あっ、そっか!そうだったんだ!
「お姉ちゃん、お守りの効果だよ!こなちゃんもお姉ちゃんのこと、好きになったんだよ!」
お守りをつけた2人はきっと結ばれるんだよ!!
やっぱり神様は助けてくれたんだ!
それなのに、お姉ちゃんは少し困ったような顔になる。
「やっぱり……あのお守りなのね……。信じられないけど………」
神社の娘なのに、そんなこと言っちゃだめだよ、お姉ちゃん……。
「でも、原因が分かったなら……!こなた、お守りはどこよ!」
「お守り?ああ、これ?」
こなちゃんがかばんにつけたお守りを見せる。
「今、助けてあげるからね」
お姉ちゃんはそう言うと、お守りを外そうとする。
なのに、お守りはまるで魔法みたいに外れない。
「な、なによ、これ……」
「かがみ、このお守りが欲しいの?」
「違うわよ。こなたを助けるためよ」
「え?どういうこと?」
「気にしなくていいの。―――く、なにこれ全然取れない……!」
お姉ちゃんは今度は自分のお守りをとろうと必死になる。


――――………なんで?

私には、その行動が理解出来なかった。
「私のカバンの方もダメね……。つかさも手伝ってくれない?」
お姉ちゃんは私の方を向いて言った。
「なんで…………?」
「え?」
私の口からでた言葉に、お姉ちゃんは呆然とした顔になる。
でも、私も不思議だよ?
だって―――――。

「せっかくこなちゃんもお姉ちゃんのことを好きになってくれたのに、どうして外そうとするの?
お姉ちゃん、言ってたよね?こなちゃんがお姉ちゃんのこと好きでいてくれてたら良いのにって。
そうすれば、勇気出せるのにって。あんなに悩んでて、せっかく神様がお願いを叶えてくれたのに……。
なのに、どうして自分から望んでいた世界を壊そうとするの?」
「つかさ………」
私の言葉に、お姉ちゃんは少し驚いていた。

私は、お姉ちゃんの言葉を待つ。
こなちゃんも、私たちの異様な雰囲気を感じたのか、何も言わない。

「つかさ、あのさ……」
お姉ちゃんはしばらく考えてから、そう言って切り出した。
「確かに、こなたが私のことを好きでいてくれてたら嬉しいわ」
「なら、どうして!?」
お姉ちゃんは、子供のころに私を諭した時と同じ顔をする。
「でも、これってこなたの気持ちを完全に無視して、弄んでるじゃない」
「え………?」
「こなたが私のことをどう思ってくれてるかはわからない。でも、もしこなたが他の人が好きだったらどうなるか、わかるわよね?」

……もし、他人に自分の気持ちを勝手に変えられちゃったら――――。

私、そんなこと全然考えてなかった……。

「こなたのことが好きだからこそ、本当に好きな人と幸せになってもらいたいの。その相手が私じゃなくても、ね」

お姉ちゃん……こなちゃんのこと、ただ好きなだけじゃなかったんだ……。
そんなに色々考えてたんだね……。

「それに、こんな力で好きになられても、所詮は偽の感情。好きって言われても、少しも嬉しくないわ」
そうだよね……これじゃこなちゃん、からくり人形と同じだもんね……。
「私にも譲れないものってあって。こうゆう気持ちは、やっぱり自分の力だけで得たいんだ」

私……間違ってた………。
「う………うっ…ごめんね、お姉ちゃん………」
歪んで見えるお姉ちゃんの顔が、優しく微笑みかけてきてくれる。
「つかさ………。お守り取るの、手伝ってくれる?」
「ひっく……うんっ」
気合いを入れるため、気持ちを入れるかえるため、視界を歪ませてるそれを拭う。
「つかさは私のかばんについてる方をお願い」
「うん、わかった」
さっきのお姉ちゃんを見てたけど、普通にやっても取れそうにないよね……。
……そうだ、ハサミ!
私は自分のカバンの中からハサミを出す。
紐を切るようのじゃないけど、これくらいなら……。
「わっ!」
紐を切ろうとすると、バチッという音の後、突然ハサミが弾かれた。
「つかさ、大丈夫!?」
「う、うん」
「よかった…。でも、やっぱりそっちもダメみたいね………」

お姉ちゃんがしょんぼりしたように言った。
「うん…ごめんね………」
2人とも沈んだままじゃまずいって思ったのか、お姉ちゃんは気持ちを入れ替えるように元気に言う。
「まだまだ諦めないわよ!こなたを助けるまでは、絶対に!」
「う、うん!」
お姉ちゃんは思い付いたように言った。
「2つを同時に取ろうとしたらいけるかも。そうゆうのよくあるし」
「わ、わかったよ、じゃあせーの、で」
「「せーのっ!」」
指先に力を込める。
……それでも、やっぱり取れない。
でも諦めちゃいけない。
こなちゃんのためにも、お姉ちゃんのためにも!


神様、お願いします―――!


「わわっ」「な、なにっ!?」
一瞬お守りが光ったかと思ったら、すっと勝手に外れていく。
「と、とれた………っ!?」
それが完全に外れて地面に落ちるのと同時に、どさっと倒れる音が響いた。
「こなた!!」
その音の主であるこなちゃんに、お姉ちゃんが駆け寄って介抱する。

「……よかった、息はしてる」
お姉ちゃんが安堵の息をついた。
「お姉ちゃん………本当にごめんなさい」
安心したら、また瞼が熱くきた。
「ううっ、勝手なことして……結局いつもみたいに……ひっく、ううん、いつも以上に迷惑かけちゃって……」
「ううん……。私のためを思ってしてくれたんだもん、迷惑なんかに思うわけないじゃない。むしろ、嬉しいくらいよ」
「でもっ、でも……」
「それに、悪いのはつかさだけじゃない」

―――……私も、だから……―――。

お姉ちゃんが、こなちゃんを見つめながらポツリと言った言葉。
悲しい表情を浮かべたそれに、どんな意味が込められていたのか、私にはわからなかった。
「………謝るなら、こなたに謝ってあげて……っ」
眠ったままのこなちゃんをぎゅっと抱き締めながら、お姉ちゃんは言った。
「………うん」
涙が、こぼれた。



「うぅ……あれ……かがみ?」
「よかった……!こなた、目覚ましてくれたのね……」
「こなちゃん!!よかった……よかったよぉ………!」
「私、どうして……?」
こなちゃんは不思議そうに周りを見渡す。
お守りの効果が利いてた時のことは覚えてないみたいだった。
「いいの……何も思い出さなくていいの……」
お姉ちゃんが、またぎゅっとこなちゃんを抱き締める。
「か、かがみ、痛いよ……」
こなちゃんはそう言いながらも、抵抗しようとしなかった。

お姉ちゃんの抱擁がとけるのを待って、私はこなちゃんに近づいた。
「こなちゃん………本当にごめんなさい……。私が勝手なことしちゃって、こなちゃんに酷いことしちゃって…………」
「つかさ……?」
歪んだこなちゃんが、不思議そうに私を見つめる。
「あんなことしちゃって、赦してもらおうっていうのが、図々しいってわかるよ……。でも、謝らせて欲しいんだ……」

―――ごめんなさい―――。

私は、震える声で、でもしっかりと伝えた。
「覚えてないと思うけど……お姉ちゃんを悪く思わないでね……。私が一人で勝手にやったことだから……。だからお願い―――」
「つかさ」


私の言葉は、途中で遮られた。
―――こなちゃんによって。
それはつまり、要求どころか謝罪すら受け入れてもらえない、ということを意味していた。


けど、こなちゃんの言葉は予想とは違うものだった。
「何で謝るの?私にはわからないよ」
「覚えてないと思うけど……私はこなちゃんに酷いことしちゃったんだ……」
「えっ……?なんのこと?私が倒れてから、何かしたの?」
「ううん……ってあれ……?」
今、こなちゃん――――。
私はこなちゃんの言葉に妙な引っ掛かりを感じた。
その違和感を、おそるおそる、こなちゃんにたずねる。
「こなちゃん、お守りあげてからのこと、覚えてるの……?」
「うん、ばっちり覚えてるよ~」
「「ええーーーっ!?」」
私とお姉ちゃんは、一緒に驚いた。
「じゃあ、さっきなんで『私、どうして……?』なんて言ったのよ!」
「どうしてかがみに抱きつかれてるのかな~って」
困ったように頭を掻く仕草をするこなちゃん。
お姉ちゃんは呆れたような顔になる。
「アンタねぇ………」

「でさ、つかさ」
こなちゃんは、私のほうを向く。
「私は、むしろ感謝したいくらいだよ」
「え……なんで?」
覚えていたなら、余計に怒らせちゃうと思うのにどうして………?
「だってさ………」
こなちゃんはそういって、お姉ちゃんのほうをまた向く。
そして、次の瞬間、こなちゃんはお姉ちゃんに抱きついた。
「かがみが、私のことをあんな風に思ってくれてるってわかったからネ♪」
お姉ちゃんは、顔を真っ赤にしながらこなちゃんを見る。
「おわっ、こ、こなた、まだお守りの効果続いてる!?」
「違うよ~、私もかがみのこと、大好きだったんだよ~♪」
あれぇ…………?
「こ、こなた、それ本当なの……!?」
「本当だよ。でも、かがみに迷惑かかるって思ってずっと隠してたんだ」
その後、まるでドラマのようなラブラブ展開を蚊帳の外で、ぽーっと眺めていた。


お守り……やっぱり、二人を幸せにしてくれたんだ………。


少し前まで恨めしく思っていたそれに、対極の感情を抱いていた。



――――神様は全部わかってたんだね。


あ、そういえばお守りはどうなっちゃったんだろう……?

さっきお守りが落ちたところを見る。
けれど、そこには数分前まであったそれはなくなっていた。
どこいっちゃったんだろう…………?強い風も吹いてないから、飛ばされるわけもないし………。


でも、答えはすぐにわかった。


別の人たちを幸せにするために、また誰かのお願いするところにいったのかな………。

菫と蒼が、幸せそうにお互いを見て微笑んでいる。

そんな二人を見てると、私も幸せな気分になれる。

ホント、よかったよ――。
二人が幸せになってくれて――。


――――神様、本当にありがとうございました。
欲張りだけど、これからの2人のことも見守ってあげてください――――。


……そのとき、本殿のほうで何かが一瞬光った気がした――――。



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  • これは斬新な作品だ とにかく結ばれてよかったです!! -- 名無しさん (2010-04-25 21:03:08)

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