うつるもの2

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「お、かがみとつかさ、おはよ~」
「おはよ、こなちゃん」
「おはよう……」
こなたがいつも通りに挨拶してきたのに、つかさは元気よく、対照的に、私は疲れたように返した。
「かがみ、どうしたの?なんか元気ないじゃん」
「なんか、寝れなかったんだってさ~。
私なんてまた布団に入ってすぐ寝ちゃうんだけどね~」
「それはつかさが早すぎなだけだよ」
珍しく、こなたが突っ込みをいれる。
あ~、でも、この二人なら珍しくもないのかな……。
「で、かがみは何で寝れなかったの?もしかして、男かぁ~!?」
ニヤニヤとオヤジみたいな下品丸出しの顔で、こなたは私を見る。
……相手がいないのを知ってて言うか、コイツは……。
「アンタのせいよ……」
私は皮肉の意味を込めて、そう返した。
でも実際、あながちウソではないからね……。
「え?私なんかしたっけ?」
こなたがきょとんとしている。
まぁ、わかるわけないわ……。
「もしかして、私と離れてるのが辛くなっちゃったとか?」
離れてるのが辛い、かぁ……。
でも昨日だって、一緒にいた時だってこなたのこと考えてたのよね……。
って、何で私は真面目に考察してるんだ!
「そんなわけないでしょ」
「何かな~?今の微妙な間は~?」
こなたがにへら~と笑いながら顔を近づけてくる。
その距離、多分10cmくらい。
う、真面目に考えてた、なんて恥ずかしくて言えないわ……!!
ど、どうしよう、何かドキドキしてきた……!何焦ってるのよ、私……!
「き、今日は寝てないから、頭のキレが悪いのよ!」
顔をこなたからそらして、斜め下を向きながら絞り出すように言う。
苦し紛れの言い訳で、逃げ切れる相手ではないけれど、
とりあえず何か言わなきゃ、と頭の中で勝手に考えていたらしい。
「かがみ、照れちゃって、かっわい~♪」
そう言って、こなたは私の頭をなで始めた。
顔が熱くなるのを感じる。
自分で思ってる以上に、恥ずかしいと思ってるらしい。
「かがみはホント淋しがり屋さんだねぇ~~」
やっぱり、結局こなたにからかわれるのね……。
「あはは、お姉ちゃん、面白~い」
うう、つかさにまで笑われて、すっごい恥ずかしい……。
何か返さないと……。でもどうしよう……。なんか今は少し変……。
頭がぼーっとするわ……。
でも、心は反対に何かに慌てるように、凄い早さで動いてるし……。
寝てないから、ちょっと身体がおかしくなってるのかな……。
そんな状況だけど、何とか言葉を見つけて、二人に返す。
「う、うるさいッ!急がないと、遅刻になっちゃっうわよ!」
またもや苦しい言い逃れだけど、つかさが私の言葉で携帯の時計を見て、
ホントだ!、と言うと、こなたはむむっ、と顔をしかめて、私を撫でるのをやめた。
「またアンタのせいで遅刻寸前なんてのは嫌だから、さっさと行くわよ」
ふぅ、こなたの手が離れて、少し落ち着けたわね……。
って、この二人は時間がヤバいってわかってるのに、どうして動かないのよ!
「ほ、ほら、早く!」
何となくこなたの顔を直視できず、
かといってつかさの方だけをみるのも気が引けて、二人の前を歩き出した。
「わ、お姉ちゃん、待って~」
「かがみ、おいてくなんて酷いよ~」
まったく、世話がやけるのが二人もいるって、大変ね……。
双子の私達がまだ小さかった頃のお母さんの苦労が、偲ばれるわね……。
私は、いつもより速い鼓動を感じながら、努めてそう考えようと心がけた。

結局この日は、変な気持ちのまま1日が過ぎちゃったわけで……。

でも夜は、疲れとか睡眠不足とか体調が悪かった?とかですぐ寝れた。
多分、つかさくらい寝たわね……。
我ながら、凄い……でも、つかさはこれが毎日なんだからね……
寝過ぎよ、まったく。

でも――――。
そんなにいっぱい寝た日でさえ――。
やっぱり、なんか気持ちが落ち着かない……。
その翌日も、またその翌日も、
その落ち着かない状態がおさまることはなくて……。
どころか、日増しに大きくなってるような………。
流石に、この頃になると、私も薄々感じ始めていた。
これは、私が今まで思ってたような気持ちではないと―――。


私は、周りにこなたとつかさがいない、そんなタイミングを狙って、
とうとうみゆきに相談してみた。
「ねぇ、みゆき、ちょっと良い?」
「どうかなさったんですか?」
何て言えば良いかな……。率直に言うのはちょっとね……。
「そ、その、なんか落ち着かない気分になることとか、ある?」
ちょっと抽象的過ぎたかも……。
「そうですね…」
みゆきはそう言って、少し考える。
「ある物事について、興味を持ってしまった時でしょうか。
その時は気のすむまで調べないと、落ち着かないですね」
「えっと……そうゆうのじゃなくて……」
やっぱり抽象的過ぎたみたいね……。
う~、何て言えば良いかな……。
「ドキドキしたりする、みたいな感じ」
「あ、それならば、ホラー映画を見てるですね。
怖くて、とてもドキドキします」
「あ~、それともまた違ってね……」
うう~~みゆき、わかってよ……。
「だ、誰かのこと考えたりすると、そうなったりしない……?」
多分、今の私の顔は真っ赤だと思う。
みゆきは、う~ん、と少し困ったように頬に手を当てて考えて、言い辛そうに言った。
「私も経験がないので、何とも言えないのですが……」
意味深長に、みゆきが一呼吸置く。
「恋、ではないでしょうか?」
「えっ……」
思わず呆然としてしまう。
……って、そんなわけあるわけないじゃない。
それこそ、100%ナイナイナイ、よ。
だって、相手はこなたよ?
話す話題っていったら、アニメとかゲームのことばっかり。
いっつもよく分からないことばっかり言ってるような奴。
それになにより――――


女――――だし。

「かがみさん、どうかしました?」
「あっ、えっ!?あ、なんでもない!た、多分それとは違うと思うんだけど」
みゆきの声に我に返り、慌てて返答する。
「そうですか………。そうなると、ちょっと思い当たるものはありませんね……。
すいません、次までに色々調べておきますね」
「そ、そこまでしてもらう程のことじゃないから、いいわよ」
「いえ、お恥ずかしながら、先ほども言ったように、
一度気になると、落ち着かなくなってしまう体質でして……。
かがみさんはお気になさらないでください。私が勝手に調べまさせていただきますので」
漫画のキャラみたいに、キラーンとみゆきの目が光った気がした。
何で今のみゆきになったのか、なんとなくわかった瞬間だった。
「あ、ありがと。それじゃ、私、そろそろ教室戻るね」
「はい、また後で」
廊下に出た私から丁度十数メートル先。そこに見える、小さい背丈に特徴的なアホ毛。
その姿を見ただけで、私はドキッとしてしまう。
しかし、すぐその隣に人がいることに気づいた。
誰だろう……田村さん……かな?
仲良く話す二人。それを、私はぼうっと立ちながら眺めていた。
盛り上がる話。
私といるときにはしないような顔をしているこなた。
……あの二人、確かに話、あうだろうしね……。
それに比べて……。
「お、かがみ、どうしたの~?」
「うひゃぁっ」
「うひひ、かがみ、なんでそんな驚いてるのかな~?」
「な、なんでもないわよっ!」
ああもう、こいつはホントいつも……。
私がそう思っていると、横にいた田村さんが挨拶をしてきた。
「柊先輩、こんにちわっス」
「こんにちは、こなたと一緒にいて、どうしたの?」
私はさりげなく、こなたと一緒にいた理由を聞いてみる。
「いや~、ちょっと泉先輩に持ってきてもらえるよう頼んだブツがありまして……」
「な、なるほどね……」
どうゆう物かは、大体予想がつくわね……。
でも、良かった。それだけの理由だったんだ。
って、何で安心してるのよ、私!?
別にこなたが他の誰かと一緒にいてもいいじゃない。
「私のクラスの前で立っててどうしたのかな~?そんなに私に会いたかったのかな~?」
「ち、違うわよ、みゆきに用があったの」
「またまた、そうやってウソついちゃって~」
「ち、ちょっと、難しい演習問題を聞いてたの!アンタが聞いても、どうせわからないような」
「むぅ、かがみ、直接言われると、私でも傷つくよ」
「そ、そうね、ごめん」
「……かがみ、どうかしたの?」
こなたが、いつになく心配そうな顔をする。
その顔で、また私の心臓の鼓動の速度が加速する。
「な、なによ、突然……」
なんとか、こなたから顔を逸らして言う。
「いつもなら、謝ったりしないからさ」
そういえば、なんで私謝ったんだろう……。
いつもなら、『ならもっと真面目に勉強しなさい!』とか言うのに……。

私の知らないこなたを見たから?
ドキドキしちゃって、まともな思考ができなかったから?
演技だって分かってるのに、悲しそうな顔を見ちゃったから?

ああ、そっか――――


―――――やっぱり、みゆきの予想は間違ってなかったんだ。
そのとき、確信した。


――――こなたのことが好きなんだ。




「ねぇつかさ。もし私が、つかさのこと好きって言ったら、どうする?」
夜、私は何気なくを装って、つかさに聞いてみた。
「え、嬉しいなぁ~。私もお姉ちゃんのこと、大好きだもん!」
えっ………!?つかさは同性愛とかおっけーなの……!?
っていうか、そんなはっきりと大好きとか言われても、私……。
そう思ったのも束の間、私はすぐにお互いの間にある
単語の意味(というより重み?)の違いに気づいた。
「えーっと、それは、よく言う……ライク(like)……よね?」
「うん、そうだよ~」
「そ、そうよね」
ビックリした……。もし違ったらどうしようかと思っちゃったわ。
はぁ、姉妹、しかも双子なんだからそんな心配する必要ないわよね……。
でもそれがもし、友達だったなら――――?
って、何ワケわかんないこと考えてるのよッ!!
「お姉ちゃん……どうしたの?頭なんか抱えちゃって……」
「な、なんでもないわ、あはは」
ああもう、少し落ち着かないと……。
「もし……もしもの話よ。絶対ありえないから、本気にしないでね」
「うん、どうしたの?」
つかさが不思議そうに聞いてくる。
「私の好きが……ラヴ(Love)だったら、どう思う?」
「う~ん……ちょっとビックリしちゃうかな」
つかさは特にこれといって変な反応をせず、普段通りにそう言った。
「それって、私たちが双子だから?」
「それも、う~ん、あるかなぁ」
「な、なら、友達なら?」
「え、えっと……女の子同士だから、やっぱりビックリするかな……」
「やっぱり………そうよね」
「突然そんなこと聞いて、どうかしたの?」
つかさが、心配そうに見てくる。
その顔を見ても、もちろん私はドキドキしたりなんてしない。
「ううん、なんでもないの、ありがとう」
私はそう言って、自分の部屋に戻った。

『女の子同士』。
その言葉が、やけに重く感じられる。

なんでだろう……。

この気持ちの正体が分かった途端、こなたへの思いがどんどん大きくなってる――。

真っ暗な部屋。
入ってくるのは、黒い窓に寂しげに浮かぶ、二十日余月の照らす光だけ。
その月は、まるで私――――。
後少しで、自分自身を見失ってしまいそうな、そんな状態。



やっぱり、おかしいわよね……。私自身だって、そう思う……。
こなただってよく、『俺の嫁!』なんて言ってるけど、
実際に私が、こんな気持ちを抱いてるってしったら、絶対迷惑すると思う。
この前だって、ドジッ娘はリアルでやられたら迷惑だって言ってたし……。




もし気持ちを伝えて、拒絶されたら―――――

―――――今の私にとっての一番幸せな時間までもが、失われる――――


丁度、孤独に照らす月の数日後の姿のように。


それは、絶対に嫌……!
もしそうなったら、多分私、どうにかなっちゃう……。
こなたがいつも私の傍にいてくれたら、それはすごく嬉しい。
けど、もしそれが叶わなかったら……。
そしたらもう、今までのような関係も保っていられない。
私のせいで、私たちみんな、きっとみんなバラバラになっちゃう。


こなたがいて、私がいて、つかさがいて、みゆきがいて。
そんな、今の私にとっての幸せな時間がなくなってしまうくらいなら―――

私はこの、うつり変わった思いに、鍵をかけよう――――。


窓にうつる月はもうすぐなくなり、そして、また新しく生まれ変わる。

私もこの思いをなくして、明日からまた新しい自分になろう。
そう、ガラスを隔てた先にいる自分に誓った。





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