うつるもの3

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「ふあ~、おはよぉ~」
「おはよう、つかさ」
「あれ、お母さん、お姉ちゃんは?」
「先に行ったわよ。何だか、学校で用事があるって言ってたわよ」
「用事?あれぇ、今日ってなんかあったっけなぁ?」
「ところで、つかさ」
「なぁ~に、お母さん?」
「時間、大丈夫なの?」
「えっ?」
てん、てん、てん・・・。
「うわあああっ!!お母さぁぁーん!!何で起こしてくれたなかったのぉぉーーッ!?」

――――朝のHR開始チャイムが鳴り響く。
ふぅ、流石に朝から会いにきたりはしなかったわね…………。
思いを封じるって決めた。
だから気持ちが落ち着くまで、こなたと会うのは少し自粛。
それを決意するつもりで、今日は早く家を出てきた。
つかさのこと、置いてきちゃったけど、大丈夫かな………?
お母さんいるし、流石に遅刻はしないと思うけど、走らせちゃったかも……?
「ふぇぇぇぇ~~~~ん!!鳴り終わらないでぇぇぇぇ~~~~~」
……今、校門のほうから、なんか聞こえてきた気がするけど、多分気のせい………よね。



「日下部、峰岸、今日お昼、一緒にどう?」
「柊から誘ってくるなんて珍しいな~」
「確かにそうだね。どうかしたの、柊ちゃん?」
あ、あのなぁ…………。
「私がアンタ達を誘うのが、そんなおかしいか……?」
「「うん」」
二人の声が寸分の狂いもなく、完全にハモった。
私は思わず呆れる。
「自分達で言ってて、悲しくならない……?」
「えーだってなぁ?」
「そうだよね?」
二人は、お互い頷きあう。
「「私たち、はいけ―――」」
「はいっ!悲しい発言ストーーーップ!!」
私は、反射的に二人の口を塞いでしまった。
「あ、ご、ごめん、ついこなたと同じノリで言っちゃったわ」
私は二人から手を離す。
「柊、ちびっ子たちとばっかりじゃん?」
「ま、まぁそうだけど……」
そ、それは認めざるを得ないわね……。
「柊ちゃんも、泉さんたちといるときのほうが楽しそうだしね」
「そ、そんなことないわよ」
うう、ちゃんとみんな分かってたのね……。
改めてこういわれると、恥ずかしさと申し訳ない気持ちでいっぱいになるわ……。
「だからどうしたんだって思ったんだってヴぁ。どうかしたのか?」
「ケンカでもしたの?」
「もう、だからそんなんじゃないって」
ちゃんと自分のクラスの友達のことも、見直さなきゃいけないわね……。
私は心の中でこっそりとそう思った。






「かがみ~、帰ろ~」
最後の授業が終わったら、こなたが私のクラスまで迎えに来た。
「おぉ~っす、ちびっ子」
「こんにちは、泉ちゃん」
「みさきちに峰岸さん、おひさ~。かがみがいつもお世話になってます」
「私はアンタの子供かなんかか!」
良かった……いつも通りに突っ込めてる。
私は、表情にはださないけど、気持ちだけこっそりと胸をなでおろす。
「え~?言う必要あるの~~?」
「わかった……。わかったからみなまで言うな……」
また、私の気持ちを何にも知らないで、俺の嫁とか言うんだろうな、きっと……。
「それじゃあ日下部、峰岸、また明日」
「おう、また明日な~」
「バイバイ、柊ちゃん」
私は二人に別れを告げて、こなたとともに、教室を出た。


「なんだよあやの、別に柊とちびっ子、ケンカなんかしてね~じゃね~かよ~」
「そうだったみたいね。良かった」
「でも、確かに柊、いつもとなんか違ったな」
「やっぱりみさちゃんも、そう思った?」
「なんか、我慢してるっていうかな……」
「何か悩み事があるのかな?」
「うう~ん、バカな私にはわからん……」
「でもみさちゃん、バカにしかわからないこともあるよ?」
「そ、そうだな!私もここは一つ、気合いを入れるぜ!」
「そのいきだよ、みさちゃん」
「ここで活躍して、背景の汚名を挽回するぜ!」
「みさちゃん、汚名は返上するんだよ……?」
「あれ、そだったな!じゃあ名誉返上か!」
「名誉は挽回するんだよ、みさちゃん……」
「むむ……あやの、水をさすのは禁止だってヴぁ……」
「ご、ごめんね、みさちゃん……」
「なぁ、あやの?」
「何?」
「あやのもやっぱり、私のこと、バカだと思ってるんだな……。
さっき、バカにしか~とか言ったし……」
「う……ち、違うの、そんなつもりじゃ……」





「せっかく一晩もそのアイテム落とすモンスターを張ってたのに、
結局とられちゃってさ~。あの時はホント悔しかったよ」
「それは残念でしたね……」
「こなちゃん、次は頑張ってね」
「アンタは、またそんなバカみたいなことばっかりしてる時間があったら、
少しは宿題とかしなさいよね」
帰り道。いつものみんな。
やっぱり、楽しい。
日下部や峰岸には悪いけど、やっぱり私もみんなと同じ、B組が良かったな……。
ドキドキしてないか、と言われたら、さっきから凄いしてる。
やっぱり、すぐに抑えられるものじゃないみたい……。
でも、これくらいの時間なら大丈夫。
ちゃんと『理想の友達像』を保てる。
「大丈夫、私にはかがみがいる!宿題なんて、イチコロさ~♪」
「言っとくけど、そんな理由を聞いたら、もう貸さないわよ」
ちゃんと自分の気持ちに向き合って、そうするって決めたから、
前より気持ちを抑えられるのかな。
私がそう思った途端、何かが私の身体に触れる。
驚いてそっちを見ると、こなたが私の腕をつかんで、さらに頬擦りしてきた。
「かがみ~そんなこと言わないでよ~~」
な、ななな、ななななななな!?
顔が熱くなってきてる……そ、それより、心臓がまた……音……
こ、こなたに聞かれちゃう……!!
「ちょっ、ちょっと、離しなさいよ」
私はこなたの手から慌てて腕を離れる。
「かがみ……?」
「お、お姉ちゃん……?」
「かがみさん……?」
ちょっと驚いたみんなの顔。
直視出来ず、私は逆方向を向く。
最優先は平常心を取り戻すこと。
「ごめん……」
誰にむけられたのかわからない、そんな言葉を私は呟いた。
「かがみぃ~、何動揺してるのかな~?身体が疼いてきちゃった?」
こなたが突然、そんなことを言い出した。
それはあたかも、私が作ってしまった気まずい雰囲気を壊すようだった。
「ち、違うわよ!!」
落ち着いてないけど、何とか言葉は出た。
「そう言えば、みゆきさん、この前ちょっと気になったんだけど、
何でCDとかって、大体限界の時間が全部同じなの~?」
「あ、それ私も不思議に思ったことある~!」
「それはですね、日本人指揮者である――――」
こなたが、話を変えてくれた。


―――私のために。


……ありがとう、こなた。

私は声に出さず、そう言った。




翌日には、またいつも通りの私に戻れた。
前ほどじゃないけど、私はちゃんとこなた達と一緒にいる。
この前のアレ以降、これと言った問題はない。
ちゃんと、気持ちを抑えられてる。
ちゃんと、友達を演じてられている。




私の名前の由来は鏡―――。
鏡はうつすもの。
鏡にうつるものは、私。
私という役者が、友達という役の演技をしているのを映している。
私という鏡は、ちゃんと理想の友人像を映している。
哀しいことなんて、何もない。むしろ、嬉しいことだ。


なのに―――

どうしてこんなにも、鏡の中の私は辛そうなの?
どうしてこんなにも、鏡の中の私は訴えかけてるの?
どうしてこんなにも、私の中の鏡は割れそうなの?


私の頬を、冷たいものが二つ伝う。
これが私の本心……?


相変わらず、部屋は真っ暗。
誰もいない。
今日は新月。誓いの証人もいない。
そんな今くらい、いいよね……。
本当の気持ちを晒したっていいよね……。


「うぅ……こなたぁ……こな……た…」
何で、私の隣にいてくれないの……?
何で、私を泣かせたままにするの……?
何で、私に何もしてくれないの……?
ねぇ、何で……?どうして……?どうしてなの……?
なにか言ってよ……。
なにか答えてよ……。
私の気持ちを、受け入れて…………。
自分がそうしてくれないことを望んでたってわかってる。
ワガママだってわかってる。
でも、お願い――――。
今だけ……今だけでいいの――――。
素直にならせて―――――。


明かり一つない部屋。
嗚咽と名前を呼ぶ声だけが、響き続ける―――。





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コメント:
  • 辛いな…。 -- 名無し (2010-04-29 20:25:17)
  • 切ねえ… -- 名無しさん (2008-10-03 21:09:10)

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