二人の時間 3話

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『二人の時間』

車は高速道路を走り続けている。
神奈川県に入りましたというナビの声が聞こえた。

座席の座り心地の良さ、快適な空調、静かなエンジン音。
(うーん、高級車を操るかがみは凛々しくてかっこいいなぁ)
そんなことを考えていると、眠くなってきた。
「ねぇー、かがみーん」
「何」
「どうやって背もたれ倒すの?」
「何、眠いの?」
「実は…早起きしちゃったものだから今になって眠気が…」
「相変わらずマイペースなのね…そこのボタン押して」
「え、コレ電動?おわぁ!」
思わず叫んでしまった。
衝撃的だ…ゲームで裏面を見つけたようだ。この世にこんな物があったなんて…。
(あぁ…なんかベッドみたいだなこの座席…私のベッドより大きいんじゃないかな…)
私は少しずつ、心地よい睡魔に身を委ねていった。

目を閉じたかと思ったら、本当に寝てしまった。
CDでも持って来れば良かった。そうすればこなたはずっと起きていて、色々と話せたかもしれない。
すやすやと寝息を立てるこなた。かわいい…。
身長も少し伸びて、胸も少しだけ大きくなっている気がする。今になって成長期が始まったのだろうか。
いけない。運転に集中しなくては。車がスクラップになるより、こなたに怪我をされるほうが困る。
少しサービスエリアで休憩しよう。

サービスエリアに車を入れると、どうにか駐車スペースを見つけることができた。
車体が大きいので、慎重に操作しないとすぐにぶつけてしまうそうになる。
狭い道路で、無理して高級車に乗る必要は無いのかもしれない。良い雰囲気は出るのだけど。
自販機で缶コーヒーを二本買った私は、駆け足で車に戻り、こなたの頬に缶を押し当てた。
「うあー、熱い~~…」
「こなたー、コーヒー買って来たよー」
「ん…あとどのくらいで着くのー」
「もうちょっとだから、そろそろ起きて」
「うー…」
猫のような仕草で顔をこすると、伸びをするこなた。あくびの声が可愛らしい。

缶を空けると、こくんこくんと音を立てて飲み始めた。余程のどが渇いていたのだろうか。
私もコーヒーの缶を開けて、少し口に入れた。
「ねぇ、かがみん」
「何よ」
「なんでまた、こんな車用意したわけ」
「んー、ちょっと山奥のほうに行くから、電車だと駅からかなり歩くのよ。車で行ったほうが楽なのよね」
「でもこんな高そうな車貸してくれるなんて、太っ腹な人がいるもんだねぇ」
「んー、お金があるところにはあるってことよ」
「どんな人なの」
「…そこそこ大きい会社の社長息子よ。将来は親の後を継ぐらしいけど、
あんなちゃらんぽらんな人間に経営者なんて勤まるのかしらね」
「え…まさか、彼氏?」
「ん、そういう頃もあったなー。でも別れたわ。今は友達みたいなものだけど、アメリカに留学するって言ってたし、
卒業したらもう会わないでしょうね」
「なんで付き合ったのさ?」
「たまたま大学のサークルで一緒になったのよ。それで、コクられたってわけ」
「ふんふん、それからどしたの?」
「…軽い気持ちで付き合ってみたんだけどね、金持ってるって自慢するくせに、デートはいつも割り勘だったし、
ブランド物見せびらかすかと思えば、パチスロで負けたから金貸してって言って来たり…」
「うわ、なんかそれ間違ってる」

「ま、結構過保護に育ったみたいで、自分の思い通りにならないと怒り出すこともあったわ。
そういうところに嫌気が差して、冷めるのも結構早かったわね」
「でもこうやって車貸してくれるってことは、まだかがみんに気があるんじゃ…」
「こ、これは、あいつが、留年しそうだから助けてー、って、学校の食堂で土下座までするから、
仕方なくレポートを手伝ってやったお礼よ。もう一回コクられても、よりを戻す気はないから」
「ふーん…」
「な、何よ?」
「かがみんって優しいんだねー」
何かを企んでいる悪戯っ子のような顔で私を見つめるこなた。
恥ずかしいような照れくさいような、妙な気分になった私は、慌ててこなたから目をそらした。
「もう行くわよ、トイレはいいの?」
「あ、一応行っとく」
「あっちにあるから。迷わないでよ」
「んもー、心配性だなかがみは」
こなたは無邪気に笑うと、トイレのほうへ走っていった。足の速さは相変わらずだ。

何だろう、このもやもやした気分は。
車酔いだろうか。
窓を開けて冷たい空気を浴びても、気分は変わらない。
何だろう、私、どうかしてる…。



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コメント:
  • 車体が大きいんだから・・・
    ロールスロイスかな? -- 名無しさん (2012-01-29 14:59:22)

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