二人の時間 1話

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「ふぅ…」
レポートを書き終えた私は一息つくと、カップのミルクティーを飲み干した。
「後はプリントアウトして、表紙を貼り付けて…あ、保存しとかないと」

何故だろう、最近独り言が増えた気がする。
別に、大学生活に嫌気が差したというわけではない。
アルバイトやサークル活動、インターンシップなど、色々な事に参加した結果、友人もそれなりに出来た。
しかし…最近どういうわけか、自分の心の中に隙間が出来てしまったような気がする。
飲み会に行っても、学校で友達と世間話をしても、自分は心から楽しんでいない。

ふと本棚に目をやると、高校の卒業アルバムが目に入った。
『陵桜学園高等学校 ××年度卒業生』
何気なく手に取り、ぱらぱらとめくる。そこにはまだ10代だった私たちが笑顔で写っている。
就職活動や卒論などでバタバタしていたせいか、ゆっくりアルバムを眺めるような余裕もなかった事に気づいた。

私も数年前までは、セーラー服に身を包み、花の女子高生と言われる身分だった。
物知りなお嬢様のみゆき、ドジで天然入ってる妹のつかさ、アニメやゲームがあれば生きていけそうなオタク少女のこなた、そして、私。
この四人で、いつも一緒に行動していた。特にこなたとは、家が近いこともあり、学校の外でもよく遊んでいた。
そして、気がつけば受験シーズンに入り、クラスの雰囲気も変わった。誰もが最後の追い込みと言わんばかりに勉強に打ち込んでいた。
私も例外ではなかったが、驚いたのはこなたの変わり様だった。
今までは勉強に対して完全に無気力だったこなたが、別人のように受験勉強を始めた。一年生の教科書からやり直し、わからない所は職員室で聞き、休み時間は単語カードをめくり、
近寄りがたいオーラを放つほど真面目に頑張っていた。
家に帰っても夜中まで机に向かっていたらしい。
その結果、四月の学力ではとても受かりそうになかった大学に見事合格したのだ。これにはクラス中が驚き、ほとんど口も利いたことがなかった生徒まで、「どんな勉強したの」と聞きに来るほどだった。
「ネトゲで鍛えたからね」などと言って笑っていたのを覚えている。
私は郊外の大学に合格したため、一人暮らしせざるを得なくなった。最初は不安でいっぱいだったが、そのうち炊事、洗濯など、一通りの家事をこなせるようになり、今ではこの生活も気に入っている。
「こなた…元気にしてるかな」
ふとそんな事をつぶやいた。
高校卒業後、私たちは全員違う大学へ進学した。一年の時は時々集まっていたが、徐々に大学の方が居心地がよくなり、気がつけば電話やメールも全くしなくなっていた。
「今、何してるのかな。あいつ…」

「ただいまー!んあー、いい匂い」
「おう、お帰り!今日は照り焼きチキンを作ったぞ」
お父さんの元気な声が玄関まで聞こえてくる。
洗面所で手洗い、うがいを済ませると、駆け足で台所へ駆け込んだ。
台所ではゆーちゃんが、せっせと皿を並べている。
「あ、お姉ちゃん、お帰り。早かったねー」
「あぁ、ゆーちゃん、今日は走って帰ってきたんだよ」
「え…そんなに照り焼き好きなの?」
「…まぁね。最近外で食べること多かったから。家庭料理の味が恋しくてさ…」

食事の後、自室に戻り、PCの電源を入れてぼんやりしていた。
ゲームでもやろうかと思ったが、なぜかあまり気分が乗らない。
最近、時間の流れがとても早く感じる。
今日は久々に大学が早く終わったので、家族と一緒に食事することが出来た。
多くの学生はこの時期、残り少ない大学生活を満喫するために遊びほうけているそうだが、私はあまり単位を取っていなかったので、毎日遅くまで学校に残っている。
今考えると、かなり学業を疎かにしていた。よく学校をさぼってアキバのアニメショップやゲームセンターを回っていた、
しかも、自由な時間が増えたためか、朝寝してしまうこともあり、学校へ着くころには夜になっている事もあった。
必修科目を落とさなかっただけでも奇跡だと友達から言われた。
大学ではサークルに入ったり、辞めたりを繰り返した。特にやりたいことも見つからず、結構だらだらと過ごしてきた。仮装喫茶のアルバイトは、受験直前に休職願いを出して、それっきりになっている。
別に仕事が嫌になったわけではないが、高校の時ほど欲しいものが無くなったので、
時々短期のアルバイトをする程度で十分だった。
あの頃は同じ同人誌を三冊も買っていたのだから、お金が早くなくなるのも仕方ないだろう。
就職はお父さんのコネを使って、何とか大手の出版社から内定を貰えた。
後は単位さえ落とさなければ、春から社会人となる。
「はぁ~」
柄にもなく、ため息をついてしまった。なぜだろう。別に不満はないはずなのに。

「う~~ん…」
ふと、かがみのことを思い出した。
いつも私と一緒に遊んで、冗談言い合ったり、ふざけあったり、宿題写させてもらったり、色々な思い出が頭の中を駆け巡った。
最後に会ったのはいつだったか…そうだ。二年前の夏。
かがみが久々に帰ってきたので、四人で海へ行こうということになったが、直前につかさが夏風邪をひき、みゆきさんは親戚が急に亡くなったので、中止になった。
あれ以来、全く会っていない。みんな、自分の事で精一杯の生活が続いていたから。
「(今何してるんだろう…元気かな。ちょっと電話してみようかな)」

ピピピピピッ!
呼び出し音が鳴った。以前は着メロを入れていたが、最近は面倒になったので、全員同じ音。
「はい、もしもし」
「ハロー、か~がみん」
「え、こ…こなた?」
相手を確認せずに出てしまったので、うろたえてしまった。
「どっどっ、どうしたの?な、何かあったの」
「どもりすぎだよ。いやね、最近全然会ってなかったから、元気してるのかなって」
「あ、う、うん。元気元気。あんたはどうなのよ」
「ん~、まぁ、それなりに」
こなたからの電話。久々に胸が高鳴るのを感じた。


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