『You gotta be』

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「受験の時期も近いのに悪いわね、かがみ」
「別にいいわよ、母さん。私しか手が空いているのがいないからね。」

受験の時期が近い、高校3年の11月初頭。
私こと柊かがみは、私を含めた4人姉妹の内たまたま家にいるのが私だけの為、
急きょ実家である鷹宮神社のお手伝いをすることとなった。

私の分の白衣(はくい)と襦袢(じゅばん)、緋袴(ひばかま)つまり巫女装束は
クリーニングに出していることと、境内の掃除のことも考え作務衣に着替る。


外へ出ると、11月の頭にも関わらず秋の涼しさを通り越した冬の寒さに身震いしつつ、
秋らしい澄みきった空気を感じた。

神社の境内には黄色く色着いたいちょうや、葉が紅色に変わったもみじが西に沈みかけた日の光に当たり、
秋の澄みきった空気とあいまってきらきらと美しく輝き、いちょうやもみじの落ち葉が作り出す黄色と赤色
が混じった紅葉(こうよう)の絨毯が秋の情景を作り出していた。

平日で人気の少ない神社の境内にて私は拝殿近くの石畳の脇にある売店で店番をしている。

そうしていると、遠くから毎日の見かけている小さい影が挙動不審気味に近づいてきた。

「ぴちょん、ぴちょん。」

洞穴か洞窟を進んでいるつもりだろうか、ランプを持つジェスチャーをしつつ、
水滴の音を口ずさみながら、忍び足で神社の境内へと忍び寄る。

「きゃーきゃきゃきゃ(体をそらして、よける動作をする)」

あいつの頭の中で、蝙蝠(こうもり)が斜め上から襲ってきたらしく、大股で体全体でよける動作する。
・・・セーラー服着た、見た目小学生ぐらいに見える女の子が、そんなアクションしているとえらく
目立つわよこなた。実際さっきから遠目でちらちら見られているし。
そして私の前まで来て、両手で取ってらしきものをつかむ動作をし、

「ゴゴゴゴ・・・ぱあぁぁぁ(強い光に対して顔を覆う動作をする)」


扉を開いて


「おじゃましま~す。」


斜め45度であいさつしてきた


・・・って

「何大冒険の末、私んち来てるのよ!普通にすっと来いよ!(ぺちんとはたく)」

「う~~痛いよかがみん・・え!うんしょ、ゴゴゴゴ(再び扉を閉じる動作をする)。」
「おい待て、どうして扉を閉じる動作をする?」
「え~だって、今日つかさからかがみの出勤日だって聞いていたから、かがみの巫女服姿拝めると
期待して学校から直に来たのにさ、お父さんのコスプレしてるから…正直見なかったことにしたかったんだよ。」
「出勤日言うな。一体何処のキャバ嬢だ!あと巫女装束じゃなくって悪かったな。
それとお前のお父さんのコスプレっていうな!作務衣と言え、作務衣と!!」
「え~~~」
「え~じゃない、それと『巫女装束じゃなくて悪かったな』って日本語何だ?初めて使ったわ!!」
「・・・・・」
「な、何よ。何か言いなさいよ。(ムギュ)おい、何で抱きついて来た?」
「今、改めてかがみのツッコミクオリティにキュンとなったんで抱きついた。う~ん、ラブ・・・」
「うざい、いいから離れろ。」

「で、どうしてそんなツッコミ所満載なことをしながら来た?」
「いや~~修学旅行、文化祭と学校行事が終わって、もう受験を過ぎたら卒業だからさ、
『初心忘れるべからず』ってことで、初めてかがみん家に来たことを思い出しながら来たんだよ。」
「ふ~ん。で、それがなんで大冒険につながる。」
「かがみん家って、ぶっちゃけ辺境の地じゃん。」
「ほっとけ。地理的にあんたん家も同じようなもんじゃない。」
「それとね、武術の達人は危機がせまるとその場所に辿り着かないように
厳つい門や氾濫した川などの幻覚が見えてだね。」
「どこのハンマー野郎よ。
・・・おい、『やっぱり何気に立派なオタクだよね~』って目線で作務衣の袖口をチョンと摘むな。
何気にどうにかかわいく見せようって態度がなんかムカツク。
で、その危機の元が私だって言うんじゃないだろうな。」
「違うよ~かがみんのお父さんに結婚のあいさつしにいくつもりで行っていたからだよ。十分勝負所だよ~。」
「わけわからん。女のあんたが女の私をくださいって…アホか!」
「だって『かがみんは私の嫁』だもん。でね真剣なまなざしで言う訳なんだよ。
お父さん娘さんを紹介してくださいって。」
「駄目じゃねえかよ。てか会ってもすらいなかったのかよ。」
「であと、これお父さんがもってけって。」
「手土産持参かよ。」
「実家で採れた、たんぽぽです。」
「オマエん家馬鹿だろ。」
「合わせて12ぽぽ。」
「いやたんぽぽ、1ぽぽ2ぽぽって数えないから。」
「ぽぽぽぽって、かがみん鳩かよ!」
「私がつっこまれるっておかしいよね!!」

ホント、相変わらず投げたボールがまともに返ってこないやりとりだわ、ホント。

「てなわけで、邪魔しちゃ悪いから何か手伝うよ。」
「良いわよ別に。」
「いやいや気にしなくていいから。」
「それじゃ、落ち葉の掃除をお願い。」
「ラジャ。」

こなたが手伝おうかって珍しい。どうしたのかしら。
そんなこんなで小1時間が過ぎ、私達は休憩を取ることにした。

「お疲れ~。今境内の屋台で今川焼き買ってきたよ、一緒に食べよ。」
「おお、サンキュ。」

珍しい、この子がこんな風におごってくれるなんて。しかも私が何か食べようとしたところで、
特に弄りもしない。ちょっとこなたの態度に疑問を持ちつつも、受け取った今川焼を食べた。
・・・あっ、チョコ味だ。まさかこなた私の好きな味をあえて選んできたのかしら。まさかねぇ。

「おぉ~かがみ選手、良い食べっぷりですな~。食いつき悪かった、
修学旅行時の奈良公園での鹿せんべいとは全く違う反応だ」
「悪かったな、てか鹿せんべいって鹿用の餌じゃないの。無茶言うな。」

いや、気のせいだった。こいつの好意って、いっつもその先に罠があるのよね。
ホントいつもと通りで何も変わらず。私の気にし過ぎだったみたい。
でも私って今に限らず、こなたの態度いつも気にしているわね。

「かがみ、そろそろ七五三だからさ結構子供連れとか結構来ない?
今日は平日だからそんなには見ないけど。」
「そうね、土日は結構来るわね。だからこの時期も年末年始程じゃないけどそれなりに忙しいわね。」
「あとさ、子供たちきてると結構大変じゃない?こんな感じで騒ぐし、わーわー。」
「うぁ、ほんとすごい再現度。見た目からして、まんま子供だわ。」
「(プシューといって電車のドアが閉まるジェスチャーをする)わー、腕が挟まれた―」
「それ、当たり前の反応だよ。無邪気に騒いでいるって感じじゃないわよ。
しかもどこのシチュだよ。神社の境内から電車内に変わっているじゃない。」

「まあ実際、母さんやいのり姉さんがうまくやっているわね。扱いうまいし。」
「で、かがみは恐れられて黙りこむと・・・」
「うっさい、黙れ!」
「ひっ、すいませんでした~www」

冗談半分で驚いたふりをしつつこなたは黙る。そんなこなたを横目に、再び今川焼をパクつき始めた。

ふぅ‥・。
食べ終えて、買ったお茶を一口飲み一心地つく。
そういえばもう11月か。
10月は修学旅行、文化祭と学校行事があって忙しかったから、
こうやって放課後の時間帯に、こいつとこういったやりとりをするのって久しぶり。

こなたと放課後こうやって過ごすのは、ホントに楽しい。
こなた自身いつもふにふにとした表情をし、ちっちゃな容姿で子供っぽい仕草も相まって何処か愛らしく、
まどろむような空気作り出している。そんな空気に絶えず私は影響され、気持ちが緩み、
すごく心地良かったりする。それが幾分楽しくもあり、自分でも過剰ではないかと思うくらい
彼女を気にするし、構ってしまう。

こんな風に感じているので、周りを置いてけぼりにするアニメネタや
突拍子のない狙ったボケに呆れかえったり、突っ込んだりしていても
最終的にはこなたを受け入れ、素直に楽しんでいる私がいる。

だから暇つぶしでも、こなたがこうやって遊びに来てくれたことが密かに嬉しかったりする。

冷え始めた空気に少し身震いする。空には長細く青白い月が見え、
遠くでしているのであろう焚火の匂いがした。

ふと夕暮れ時の西日が当たり反射している、黄色く色づいたいちょうの木を見上げてみる。
こないだまで青々と茂っていた気がしたのに、気が付いたら色づいている。
その色づいた葉も最早すべて落ちそうだ。

本当に時間が経つのはあっという間ね・・・
こちらの都合なんてお構いなしに過ぎてゆく。

高校生活もあと4か月。受験期も含めるともうそんなにも無い。
こなたとこうして過ごせられるのも、あとどれくらいだろう。
そう考えると寂しさが急に襲ってきて、私の中でこなたの存在が大きくなっているのに改めて実感した。

「ねえ、かがみ?」
「・・・え、な、何?こなた?」

いけない、考え込過ぎて周りが見えてなかった。

「ご、ごめんこなた。」
「ホントに大丈夫?でさ、かがみ。いきなり来ていろいろひっかきまわす私だけどさ、
出来ればこれからも友達でいてほしいな。かがみの理想形の彼氏とは程遠いけどさ。
強くて、クールでこんな時間ここで飲んでない男って感じのさ。」
「なんだよ、そのたとえ。」
「うぅ~なんでかがみん、私と付き合わないんだよ?」
「何で絡み酒?」
「うあぁぁ(泣)、ハハハハ(笑)、こら~(怒)。」
「酒癖すべて混じってる!」
「と言う風にしなさそうな優等生っぽい人とこないだ話していたじゃない。すっごいノリノリだったよ。」

彼氏?ノリノリに話してた~??
あ~あれか~あれ見られていたんだ~。

「あ~彼は同じ委員会だった人よ。別に彼氏じゃないわよ。」
「でも、どうしてノリノリだったの?私以外の前でそんなに砕けてるかがみ見たことないよ。」
「いやね話していたらi-pod(アイポッド)の新型を購入して、今日持ってきてるってことでね。
試しに聞いてみたら音がすごく良くて、つい口ずさんだり片足をトントンしながら
リズム取ったりしてたのよ・・・(カァァと顔を赤らめる)。」
「で、夢中になって、ノリノリになっていたということでいいのかな?」
「う・・・うん。」

「あぁ泉こなた、一生の不覚。彼氏が出来たんじゃなくて、隠れ天然を発揮していただけだったとは、
この泉こなたにも読めなかった。さすがつかさと一緒に生まれて初めて飛行機に乗った時、
雲を突き抜けた瞬間に『わぁ、ここは天国か~。』とつかさと一緒にハモった女。侮りがたし!
是非とも現場をしっかり見たかった!!」

ボフッと顔が赤くなり、体温が上がる。
つ、つかさぁ~そうやって人の恥ずかしい話で盛り上がるのやめろ~。

「う、うるさいな~良いでしょ別に~もう!!」
「私今、彼氏の子供の頃のアルバムを見て『私が写って無いから、悔しい。』と言っている彼女の心境だよ~。」
「だからなんなんだよ、その例え。」
「あ~もうこんな悔しい思いをしたくないから、ずっとかがみの傍にいる~。迷惑かけてしまう彼氏も居ないし。
受験前だって、合格祈願にやけくそ守りを買いに来るからね!かがみん!!」
「うっさい来るな。私が迷惑だ。それと受験は神頼みしないで、独立独歩で頑張れ!!」

いつの間にか、普段のまったりとゆるゆるした空気に戻り、
先ほどまでの寂しさはどこかに行ってしまった。
なんだかんだで、いつもこなたは私を元気づけてくれるわね。

「進路別になるけど、かがみと同じ目線・歩幅でいたいからガンバル~。」
「え、同じ目線・歩幅でいたいって?」
「つかさから聞いたよ~『お姉ちゃんね、こなちゃんと同じ目線・歩幅でいたいんだって。
だからこなちゃんにいろいろかまっちゃうし、頑張って欲しいって。お姉ちゃんにすごく
好かれてるね、こなちゃん。』ってさ。さすがにかがみと同じ進路は難しいから、今出来る
ことをして、胸張ってかがみの前に立てるようにするよ。」
「それも伝えたのか、つかさぁ~。」

つかさったら口が軽いんだから、恥ずかしいったらありゃしない。

「かがみ~ん、ダイスキダヨー。」
「あ~も~お前、すっげえ大嫌い!」

ううん、ほんとは大好き。一番ホッとできるし、大事な人なんだ。
けれど一度無くしてしまうと、2度と手に入らないものは
この世にあるって、私は知っている。

だから手放さないし、目の前のことにも立ち向かってゆく。
こなただってなんだかんだでやろうって気持になっているのに、
私が頑張れなくてどうするの?やってやるわよ!!

そう心に誓いながら、遠く映えるオレンジを見つめていた。

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  • 流れ星のコント・・・今までの作品でも結構使っています(・・;)
    こなかがのやりとりとして、なんとなく合うかな~と試した
    ところ、自分の中ですごくマッチしたので使ってました。 -- H5-912 (2010-11-24 07:46:39)
  • 流れ星のコントww -- 名無しさん (2010-11-24 00:01:14)
  • 久しぶりに世界に引き付けられるほどの読み応えを味わったよ
    あなたの作品をもっと読みたい -- kkyui (2010-11-17 08:33:38)
  • あなたの作品はもうっ! いっつも読んだ後に何というか、
    ホンワカした気分になるんです。これ何て罠? -- kk (2010-11-15 23:01:47)





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