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うーん、皆出払ってるとは…現場は久しぶりだねー、デスクワークばかりだったけど、腕は鈍ってないかな?
 そう思いながら宿彌は石壁を掴む指に少し力を込める。石壁は土くれを砕くように簡単に、ぽしゅと気の抜けた音をたてて崩れ落ちた。

 「どうやら力は落ちてないみたいだね、勘はどうだろうか。 どうだと思う? 君たち」

 そう、宿彌は対峙する男たちに告げる。 男たちと言っても、実際に無事に対峙しているのは後一人。 残りは壁や地面に体を埋め込まれ、異様なアートができあがっていた。

 「どうかな、これ結構シュールな映像だと思うんだけど、笑えない?」

 男の顔が強張る。宿彌はにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべる。

 「笑わないなー、また間違ったかな? まぁさ、君たちにも色んな事情があったと思うんだけど。 僕も依頼主は護らなくちゃいけないし」

 男が狂ったように銃を乱射するが、硬気功を練り上げた宿彌の竜鱗を貫く事は出来なかった。
 それらは僅かに宿彌の皮膚に痕をつけると、静かに落下する。

 「ば…化け物め」
 「化け物だよ、東の竜王と言えばそこそこに有名だと思うんだけど。 僕に勝てると思った? 依頼を破棄して逃げるか、もっと強い武器でも持ってくれば良かったのに。 そんなちゃちな豆鉄砲じゃ、僕の鱗は貫けないよ」

 宿彌は静かに男に近づく。

 「い…命だけは…っ」

 「別に構わないよ、というか僕は誰も殺したりなんかしてないけど」

 男が周りを見渡すと、血の一滴たりとも周りに落ちては居なかった。
 壁や地面に埋まった男たちも、開けられた大穴に嵌められて気絶しているだけで、命の危険どころか、怪我の一つも負っていなかった。

 「あんまり格下の人たちに本気を出すのも悪いし、怪我させると牡丹が怒るからねえ」

 宿彌がしたことは悠然と男たちに近づき、胸ぐらをつかみ、地面や壁に叩きつけるフリをして、直撃する直前に自分の気功で穴を開け、そこに突っ込んだ。ただそれだけ。男たちは一切の怪我を負うことなく、世界最小の絶叫マシンに心が耐えられず気絶したのだった。

 複数の銃火器に囲まれながら、避けることなく、怪我を負わず、負わせず勝利する。 その肉体のポテンシャルこそが、彼が学園一の単純戦闘能力を持つと言われる所以である。

 「じゃあ、どうする? 君もはまっとく? もう僕の依頼主を襲わないって約束するなら、もう帰ってもいいけど、まだ立ち向かいたいならはめてあげようか」

 男は首を千切れるかと言うほどに振った。

 「そう、じゃあ約束ね? 破ったら今度はちょっと痛い目にあわせるよ。 約束は守らなきゃね。 あぁ、あと、さ。 一応君たちを差し向けた人にも伝えといて。 『この依頼主殺すわけにはいけないからさ、諦めてよ』ってさ。 うん、じゃあ、ちゃんと仲間連れ帰ってね、それじゃ」

 そう言って宿彌は牡丹に寝転がった。
 牡丹は宿彌が乗るのを確認するとぽてぽてと歩きだす。 後には男が一人取り残された。


 「うん、内外ともに気功の調子は悪くないね。 それにしても、随分と丁寧に心臓と頭を狙ってくれたなぁ。 僕が行って正解だったかも。 ん?他の皆はそもそも避けるかな」
 「ワン」
 「なんで避けなかったか? そりゃ、牡丹、君に当たったら困るじゃん」
 「ワン」
 「弾き返せば良かった? どこ飛ぶかわかんないし、危ないでしょ。 僕、ノーコンだし」
 「ワフ」
 「逃がして良かったのか?て、良いんじゃないかな? 知ってるかい牡丹。 仏の顔でサドンデスだよ。 一回は助けるけど後は知らないよって意味なんだってさ。 次もしきたら、穴は掘ってあげないかなー」
 「クゥン」


 「だからもし次があったら牡丹はお留守番」


 宿彌の笑顔が闇に消える。

オシマイ