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【はっぴーばーすでぃ2月組さま】

2月半ば。まだまだ寒く、温かい布団にくるまっていたい時期なのだけど。
「はっ、お店っ!!」
牙裂紅はガバッと布団からでた。勢いで掛け布団がすみに飛んでいく。
一瞬それを見送ってから慌てて布団を取りに行き、几帳面に畳んで部屋の角におしやる。また布団のなかにもぞもぞと潜っていきたいのを我慢して、身支度を整え外に出て鍵をしめる。

「よし、今日も余裕を持って、全力疾走しよう。」

カイザーストリートは恐ろしい所なのだと、葉桜に弟子入り志願したときに聞いたことが未だに頭に残っていた。そのせいなのか、いつも店まで走って行くので予定よりも大分早く着いてしまい、師匠である 序列280位【ミューテーション(自家不和合成)】の桐ヶ谷桜花が毎度起こされていた。

今日も無地に早く着いた。いつもより一時間早いのはけして牙裂紅が時計を見間違えたからではなく、意図してのことだ。
今日こそ誕生日のお祝いをしようと早く来た。別にいつも通りの時間でもまったく問題はないはずなのだが、大体料理の時間と桜花を起こすので時間を費やすため考慮にいれての行動だ。が、流石に早朝というより早早朝な感じの時間帯はいくら何でも一時間以上前行動なので、今桜花を起こしても不機嫌になると思う。
「あ、そうだ。特訓っ」
これが早くきた理由で、自分の家だと怖いのでこうなった。
今日行くのに今日特訓してもあまり変わらないと思うのだが、気にしない。気づいてもいない。
牙裂紅は店の隅で小一時間程度の特訓を開始した。

よろっといつもの出勤時間だ。
牙裂紅は特訓を止めて店の奥で寝ている桜花をおこしに向かった。
「師匠、師匠。起きて下さいっ!朝ですよー」
桜花の眉間に皺が寄る。毎度のことだ。
初めて起こしたときは本当に怒られると思って焦ったが、最近は申し訳ないとは思いつつきっちり起こすようになってきた。
「煩い。もう少し穏やかに起こせないの?」
「すみません…って穏やかに起こしたら師匠起きないじゃないですか…!」
実際に穏やかに起こしたときは布団を頭から被って起きなかった。
「こんな朝早くに起こされて、僕に隈ができたらどうする。」
いつもより起こすのが早かったらしい。むぅっとしてもそもそと体を起こす。
「師匠はいつもばっちり寝てるので大丈夫だと思います…。」
「何?」
にっこりと笑いかけられたので慌てて頭を下げる。
「す、すみませんっ!!何でもないですっ」
そのまま走って朝食を作りに行くといい、その場から逃げた。

「あぁ、そうえば。お前今朝一人で何してたんだ?」
「はい?あ。えっと…今日は勇太郎さんと、狗刀さんと、東華さんのお誕生日のお祝いをしにいきたいので、
 地下で何があっても大丈夫なように特訓をしていたんです」
それを聞いて桜花ははぁ?と言うような顔をする。
仕事が終わったら祝いに行くらしい。
しかもまだカイザーストリートがおそろしいというのを未だに信じているらしい。
なんでこんなに馬鹿なのかと嘆く真似をしてやる。
「あのねぇ…今日行くんだったら今日特訓してもあまり変わらないと思うけど?」
桜花のことばでようやく気付いたらしく、牙裂紅ははっとした顔をしていた。
「で、でもでもっ、やらないよりはましですよねっ!!」
そして慌てて言ってみる。

そんなこんなで店番と掃除をこなし、いってきますと挨拶をしてでかけた。
出るさいに殺人鬼にあったらよろしくと言うようなことを頼まれた。
「弟子には無理か…」
「不死原さんと不死川さんはいい人ですっ」
カイザーストリートは恐ろしいとは言われたが、最近そんなでもないような気がしてきている。

***

取り敢えず、カイザーストリートを下って下の方に行ってみることにした。
前は伊紗に連れて来てもらったが、今回は違う。自分で探さなければならない。どの辺に居るのかも、いつ頃居るのかもわからないが、皇帝様だ。きっと下の方だろうと願いつつ、どんどん降りていく。
「ううーん、とは思ったけど…。いらっしゃらなかったらどうしよう…降りてるうちは大丈夫だったけど、戻るの怖くなってきた」
時々最後まで考えずに動くのでこういうことが起こる。

そろそろ上に戻った方が良いかと思い始めた頃、少し遠くで歩く人影が見えた。それが見たことのある背丈と格好だったので、やっと見つかったと内心嬉しく思いながら走って行き声を掛けた。
「あのっ!すみませんっ!!」
「は?…ぶむー」
人影が振り返った。探していた人物----序列13位【ナイトメアNo.Ⅶ(悪夢7号)】の蔡麻勇太郎で間違いなさそうだ。
「こんにちは。お誕生日のお祝いをしに来ました。」
牙裂紅はペコリと頭を下げて挨拶をしたあとに、ごそごそとカバンから風呂敷包みのものを取り出す。取り出されたそれは30cmと少しくらいの大きさで、厚みがあった。取り出したときに若干崩れた形を慌てて整え、勢いよく勇太郎に渡す。
勇太郎はぽふっと来る感触で大体は予想をつけた。
「……枕?」
「はいっ。良い夢が見られますように。」
予想通り枕だった。それにしてもなぜ枕……?とは思ったが、きっと大した意味はないんだろうと、聞いたままの意味しかないだろうなと思いなおし、聞くのはやめることにした。
それよりも気になるのは、和装からしてもうこの辺にいるのが不似合いな人間が、何故居るのかだ。
「ん。ありがと。それよか、なんで 牙裂紅っちゃんがこんなとこに居るわけ? 」
率直に聞いてみると、 牙裂紅ははっとした顔になって慌てる。
「えっとえっと、すみませんっ!勇太郎さんを探してここまで来たんですが、あの……ここから上まで遠いですか?」
…知ってて降りてきたんじゃないのか。一瞬呆気にとられる勇太郎。
「んーどうだろ。ちょっと遠いかな。」
それを聞いて牙裂紅はさらに焦る。
「はわわわっじゃあ急がないとっ!間に合わなくなっちゃいますっ!!」
そっちか、と突っ込みたいのを食い止める。
「すみません、ありがとうございます。それでは、お誕生日おめでとうございました!良い一日をっ」
牙裂紅は一礼してくるっと向きを変えて走っていった。

「悪夢見せるがわに良い夢見れるように枕って……。」

***

東区画ダイナソアオーガンの前までやって来てみた。
 広い、おっきい…
前にも来たことはあるのだが、その度に感動していた。 牙裂紅には縁のなさそうな大きさ、広さである。感動に足を止めていると、前の方から声がかかった。
「何の御用事ですか?」
はっとして声のした方を振りかえる。見たところダイナソアオーガンの関係者のようだ。
「こ、こんにちはっ」
緊張して背筋が伸びる。
「あのっ、狗刀宿禰さんにお会いしたいのですが…」
「あの人に面会ですか…」
少し考える素振りをする関係者さん。何か悪いことを言ったかと焦る牙裂紅。考えていた関係者はなにか納得したようで、今呼んできますというような事を言い残して建物の中に戻っていった。牙裂紅は、待っている間に渡すものを用意しておこうとカバンの中をごそごそと探る。が、なかなか見当たらない。出てくるものは書類と少しばかりの救急セットとハンカチやらポケットティッシュやら…違う人のプレゼントやら。
「あれ……あっ、あったぁぁっ!」
探すところを変えると意外とすぐに見つかった。安心してそのプレゼントをギューっと抱きしめた辺りで、聞き覚えのある声がした。
「やあ、僕に用事?どうしたの」
「うわあぁ!?」
驚いた拍子に二つに結んだ髪が跳ねた。その様子をみてはてと考え込む宿禰。見覚えのある背格好ではあるが、中々思い出せない。
「えぇと…地下のこだよね?」
「はい、巫牙裂紅と申します」
「ああ、そうそう。きー坊だ。」
思い出して早々に渾名をつける宿禰。牙裂紅は一瞬誰のことを言われているのか解らずきょとんとした顔をしていたが、自分の事だとわかると勢い良く首を立てに振った。
「は、はいっ、そうです。きーぼう?です」
宿禰はにこにこと牙裂紅の頭を撫でて、そうそうきー坊きー坊と繰り返している。牙裂紅は暫くあたふたしていたが、誕生日のお祝いを思い出して焦りつつ本題を口にした。
「あのあのっ、少し遅れてしまっていますがお誕生日のお祝いにと思って。これ、プレゼントです」
「お祝い?ありがとう」
宿禰は意外そうな顔をして牙裂紅から渡された包みを受け取る。少し厚みがあって、何回か折りたたまれているらしいそれは、包みの上からでも解るくらいのふんわりとした素材らしかった。何となく、所々に隙間らしいものがある。
「んー…。マフラー?」
中身を考えてみて、それを口に出してみる。当たりらしい。 牙裂紅が少しだけ気恥ずかしそうに笑っていた。
「あまり綺麗ではないかもしれませんが…。」
牙裂紅は店番や掃除の空き時間にちまちまと密かにマフラーを編んでいた。桜花にばれると誰にやるのかと楽しまれそうだったので ほんとうにひっそりと編んでいた。
綺麗かどうかは別として、時間と手間と心はこもっている。
「祝ってくれるだけで嬉しいものだよ。ありがとう。」
無事に本人に届けることができた。
「それでは、お誕生日おめでとうございました。良い一日をっ」
牙裂紅は一礼してから宿禰に背を向けて、もう二人の誕生日を祝いにいった。


***

序列48位【ホムンクルスアソート(適正型人造人間)】の風花直の運営する万具堂に来た。大体ここにレイヴンズワンダーのメンバーは集まっているため、何かあればここにくればあらかた用事は片付いた。
「こんにちは。」
声をかけると直が振り返って笑顔を見せてくれる。
「あ、こんにちは。」
「お誕生日のお祝いに、直さんと、東華さんに用事なのですが」
「お誕生日のお祝い…ですか?」
意外そうな顔をされた。直はすぐに笑顔に戻って嬉しいといってくれて、今つれてきますねと序列14位【B&B(熊を纏った狂戦士)】の小泉東華を呼びにいった。
「直さん……いい人です…!」
半ば感動している牙裂紅。レイヴンズのメンバーには良くして貰っていると思うのだが、直は本当に優しくて、癒しの人だ。
「お、牙裂紅ちゃん?いらっしゃい、珍しいね」
「こんにちは」
暫くしてから直が東華をつれて戻ってきた。珍しいといわれるほどご無沙汰していたのかと心配になる。最近会議に出席したばかりだとは思うが、こっちに来るのは久しぶりなのかもしれない。万具堂が嫌いなわけでも、レイヴンズが嫌いなわけでもない決して。ただ、中々中央にこれないだけなのだ。恐れ多くて。
「遅れてしまっていますが、お誕生日のお祝いに来ました」
中々こないくせに、何故だか万具堂はとても安心感があるというか、落ち着く。
牙裂紅はカバンからプレゼントを出して直と東華に渡す。直には幅が40cm程度で、厚みが10cmくらいのふわっとした包みを、東華には小さめだが少し重たい包みを。
あけても?と言うような表情を二人ともほぼ同時に牙裂紅へと向ける。牙裂紅はどうぞと笑ってみせる。
「うわぁ、ありがとうございます!」
直が嬉しそうに笑ってくれている。
「直さんいつもお忙しそうですので…、少しでも疲れが取れたらいいなと思って。気に入らなかったらすみません」
いつも直は店でくるくると忙しそうに働いている。本人はいつも笑顔でいるし、それでいて楽しそうだが、何も疲れていないとは思えない。牙裂紅なりの考えでそのプレゼントにいたった。直の包みの中身はふわりとしたクッションで、淡い桃色の間に白が挟まっているというようなデザインのものだ。抱き心地は実際に試したので良いと自信を持っていえる。
「ありがとうございます、お祝いしてくれるだけでも嬉しいのに…」
喜んでくれるだけで嬉しいのにと返したい。このプレゼントでゆっくりできるかどうかは本人以外知らないが、枕にするでもいいし腰にあてるでもいいし、使い道はさまざまだ。
直といえば、牙裂紅は毎回直に会うたびにしっかりしてるなぁ…と思う。見習わなければ成らない所もたくさんある。が、直の良いところは直にだけあってほしいとも思うので、会ってぽやーっと眺めてぽやーっと考えるだけで止めにしている。そういえば、地下にいてもたまにファンクラブが云々と聞いたりする。牙裂紅は残念ながらそういうのに疎いのだけど、直にファンがいてもおかしくはないと思った。
「お、すげー!ありがとね」
嬉しさに顔をほころばせていると続いて東華が声をあげた。東華の包みの中身は指まで覆わないタイプの手袋----所謂オープンフィンガーグローブというものと、普通の暖を取るための手袋が一組ずつ入っていた。
オープンフィンガータイプのグローブは丈夫に出来ているようで、簡単な刃物になら切れたりしないように出来ているし、普通の手袋は本当にただの手袋で、もこもこふわふわしていて暖かい。
「東華さんの手が痛くならないようになればいいなと思ったのですが…」
牙裂紅は少し苦笑した。手の大きさは知らなかったので、大体の予想で決めたのだ。内心入らなかったらどうしようかとか、逆にブカブカだったらどうしようかとか心配で仕方ない。
喧嘩とか、仕事で手を使ったときに痛くないようにと考えた結果がこのオープンフィンガーグローブだったのだが、それだけだと失礼なのかなでもマフラーだと引っ掛かった時に危ないし…と考えているうちに普通の手袋を編み上げてしまったので、それも包みに入れたら見事に手袋二つという不思議なプレゼントが出来上がったわけだが…それでも東華は喜んでくれているようなので、良かったと思う。
「ありがとねー嬉しいよ」
これで無事全員に誕生日プレゼントを届けられた。
「それでは、お二人ともお誕生日おめでとうございました!良い一日を」
牙裂紅は一礼してから自宅の方に向かった。
 今日はちゃんと届けられたし、皆さん嬉しそうだったし。本当によかった。


◇◆◇◆◇◆

2月生まれの方々にお祝いです!
一人一人にかこうと思ったんですが、間に合わなかったのでまとめて書かせていただきました…。
ちょっと長いかもしれないんですが…、文がもういろいろとおかしいですがっ!気にしないで下さいっ!!

それでは改めて、ハッピーバースディでした!
これから一年幸せな日になりますように。