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 キャシー・クラウンのピーチハウス襲撃事件。 ブラックシープ商会社員の一斉襲撃と死者の発生。及び責任をとっての一部幹部の辞職。 フォックスグレーシアのテロ事件。 ウエストヤードでの銃殺死体発見。 一連のブラックシープ商会襲撃事件の犯人捕殺。  一日で起こった事件に学園は一時騒然となった。しかし、ブラックシープ商会の事件の犯人が捕まり、さらに幹部が責任をとったということで、その騒ぎもやがては沈静化した。 フォックスグレーシアに関しては、色々と恨みを買っていたリンクだったということもあり、恨みある何者かによる犯行として処理された。見事に全滅していたために、訴え出るものがいなかったせいもある。二つの事件を繋げて考えたものもいたことはいたが、証拠が出ない以上憶測の域を出ず、すぐに彼らも沈黙した。  数日後には、校内は完全にいつも通りの平穏さを取り戻したように見えた。  ブラックシープ商会本社。  ほどよく陽が差し込む南向きの応接間に一人の少年が座っていた。少年といっても十代後半。もう大人の顔に近い。  小さなノックとともに扉が開いて、エドワードが入ってくる。 「お待たせして申し訳ありません。少々帰宅が遅れまして」 「構わないよ。それに敬語もいい。敬意は言葉遣いに宿るものじゃない」 「いえ。私のほうが落ち着きませんので、どうかこのままで」  エドワードは、彼が持ちえる最大の敬意を込めて頭を下げた。少年は表情を変えない。 「まあいい。それより、先日は大変だったみたいだね」 「ありがとう御座います。私事で、ご足労煩わして申し訳ありません」 「いや。僕が勝手に来たんだ」  少年――学園のイーストヤードの頂点に君臨する東王、序列9位【ドラグーンランス(竜騎槍)】狗刀宿彌は軽く首を横にふった。エドワードはもう一度頭を垂れる。 「エドワード、君の腕はよく知っている。今回のこともうまくやったようだね」 「はい、ありがとう御座います」  宿彌とエドワードの視線が交わる。  宿彌は真相に気づいている。そして、エドワードも宿彌が気づいていることに気づいた。だが、ふたりともそのことには触れずに会話を続ける。 「僕としては君たちが今まで通りにいてくれるのが、一番都合がいい。あれこれ咎める気はないし、必要もないだろう。だけど、あまりこういうことが多いと困るからね」 「存じております。二度と起こしません」  万一次に起こったときはもっとうまく処理する。言外にエドワードはそう答える。宿彌は無言で頷いた。 「近くに寄ったからそれだけ伝えようと思っただけだよ。もう失礼する」 「では玄関までお見送りいたします」  黒い羊は深々と王に頭を垂れた。宿彌は返事をせず、エドワードの部下の手で開けられた扉をくぐり外にでる。その三歩前をエドワードが先導する。 「……また来る。次は客として」  正面玄関を出るとき、宿彌はぼそりと呟いた。それは今回の件は不問に処すということでもある。エドワードは、最後にもう一度頭をさげた。 「はい、ご来店お待ち申し上げております」 めえめえ黒い羊さん(ブラックシープ商会) 毛皮のウール(利益と人脈) お持ちだね はいはい 袋に三つ ご主人様(羊飼い)に一つ 奥方様(仲間たち)に一つ もう一つは小道の奥の一人ぼっちの子ども(黒羊のエドワード)のために ≪おわり≫

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