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第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(1)」(2008/11/27 (木) 15:28:26) の最新版変更点

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   第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い  「なんだ、七重じゃないか。どうしたんだ?」  波音に手を引っ張られて応接室までやってきた二重は七重の顔を見るなりそんな気の抜けた言葉を口にした。波音は二重を部屋に押し込むと、仕事は終わったとばかりに踵を返してとてとてと歩き去る。  「なんでって、仕事よ仕事。ホントならあんたの顔なんか見たくもなかったけど、報告がてら寄らせてもらったわ」  「ツンデレ」という言葉が一重の脳裏を掠めたが、あえて彼女は黙っていた。七重はこう見えて面倒見のいい姉貴分なのだが、本人はそれを恥ずかしく思っているのかこうしてツンケンした態度をとりがちである。彼女のパートナーである深重はしばしばそれをからかって半殺しにされている。  「仕事? この学園でか?」  七重の言葉に二重の眉が寄った。  「そうよ? ちょっと暴れることになると思うから、それを伝えておこうと思ったんだけど……」  「【無能】が。暴れるならなおさら来るな。黙っていれば私にも責任は来ないというのに……」  二重は澪漂第六管弦楽団長であると同時に学園都市におけるこの西区画の管理者を任されている。他区画で騒ぎを起こされれば他の区画王――主に北王だが――に嫌な顔をされるのは目に見えていた。  棘のある二重の言葉に七重が噛み付く。  「ふん、【無礼】な奴ね。私だってあんたに迷惑かけて借りを作るようなヘマはしないわよ。……用件は伝えたから、それじゃあね」  七重は少なからず機嫌を損ねたらしく、一方的にそうまくし立てると傍の壁に立てかけてあった二メートル近い杖を手に取り大股で出口へと向かった。  入り口を塞ぐように立っていた二重を強引に押しのけると、戸口で一瞬立ち止まって一重を振り向いた。  「じゃ、またね一重。――あんたも、あんまり一重に寂しい思いさせるんじゃないよ?」  「七重ちゃん……」  一重の言葉を皆まで聴くことなく、七重はドアを乱暴に閉めて立ち去った。七重の姿が見えなくなって、二重は僅かに不安そうな顔を一重に向けた。  「一重?」  「ん……大丈夫だよ。別に寂しがってなんかないし」  そう言って一重はいつもと変わらぬ笑みを浮かべた。――少し硬い表情だったかもしれない、と一重は一瞬不安に思ったが、二重の顔からは不安の色はなくなった。  「そうか。さっきは軽く扱って悪かった。少し急いでいたんでな」  「だから、大丈夫だって。それより、他の区画王に連絡しなくていいの?」  一重の言葉に二重はああ、と頷いた。  「そうだったな――しかし、この学園での仕事というならなぜ私達に下りてこないんだ? そのほうが面倒もなくていいだろうに」  「なんか、嶽夜の人たちとやり合うんだって。千重団長が気を使ったみたい」  「嶽夜? 十三家の嶽夜か? 何でその嶽夜の連中が学園にいるんだ」  「九龍が仕事の邪魔をされたんだって。相変わらず報復主義だね、九龍は」  言いながらも、一重の脳裏には一つの名前が焼きついていた。嶽夜・唐嶽、【サプライズウィンド】のエイリアスを有する、嶽夜きっての使い手。  神妙な表情をする一重には気づかず、二重は衛星携帯電話で区画王の面々に連絡を取り始めた。                   ♪  「ねー、もう帰ろうよ、ライト。早く戻らないと、またお姉に叱られる……っていうか半殺しにされるよ?」  「そうそう、理奈(りな)は怒ると怖いでー? ……あかん、昔の記憶が…………」  学園都市南区画。経済都市として発展しているこの近辺でも特に突出しているのが、飲食店兼ライブハウスである【ロックンロールロックスター】である。  そのカウンターに、三人の男女の姿があった。  一人はカウンターに突っ伏している、少年のような幼さを残した青年だ。別に酔っているわけではなく、ただだらけているだけである。上下とも動きやすそうなジーンズ生地の衣服を纏っていた。  もう一人はそんな青年の肩をばしばしと叩いて――否、殴っている少女。いまどき珍しいセーラー服を着込んでいる。  そしてもう一人、三人の中では一番の年長者と思しき青年が、カウンターの内側でそんな二人を困ったように見ていた。こちらは仕事着か、白のワイシャツにベストとバーテンダーのような格好である。  カウンターに突っ伏している青年は名を相模・雷都(さがみらいと)、隣の少女は真鶴・麻奈(まづるまな)という。それぞれ【ライトニングシューター(稲妻の射撃手)】、【サイキック中学生】のエイリアスを持つトップランカー――しかもトップ五十に食い込む優秀な生徒である。今は仕事中にさぼっている雷都を麻奈が諌めている、という場面であるようだ。  そんな二人を半ば傍観しているのは【キングオブインサニティ(狂気の王)】経世・逆襄(けいせいぎゃくじょう)である。この【ロックンロールロックスター】のオーナーであり、南区画の管理人でもある。  「しかし、雷都がだらけるなんて珍しいな。なんやあったんか?」  「仕事で失敗して遊里さんにめっちゃくちゃ怒られたんだよ」  「うー」とか「あー」しか言わない雷都に代わって麻奈が説明する。  「なんや、そんなん。俺なんかいつだって全戦全敗やで? 少しは元気だせや」  「マゾで変態で【ある意味狂気の王】の逆兄と違って、雷都は意外とメンタル弱いんだよ」  「誰がマゾで変態で【ある意味狂気の王】やねん!? ……ったく、ん?」  そこで逆襄は携帯のバイブレーションに気づいてポケットに手を入れた。着信画面に出ている名前を見てその表情が怪訝そうなものに変わる。  「何や、珍しいな。二重が電話寄越すなんて――あい、経世や」  二人から少し離れて通話ボタンを押した逆襄の顔が、次第に困った色を浮かべ始めた。                    ♪  「こっちが先月の決済で、こっちが次の仕事の資料。ちゃんと目を通してね」  東区画の中央に位置するオフィスビル、その中にあるのが警備保障会社【ダイナソアオーガン】の事務所である。  オフィスの最奥に位置する机の上に広げた書類を一つ一つ部下達に手渡しているのは、【イノセントカルバリア(純白髑髏)】篭森・珠月(かごもりみつき)である。【ダイナソアオーガン】の社長である珠月は基本的には毎日こうして社員の仕事を円滑に進めるための事務仕事に従事していた。  今日は比較的忙しいらしく、珠月の機嫌はあまりよくない。こういうときに限って机の上にある電話が呼び出し音を鳴らせばなおのことである。  断続的な電子音を響かせる受話器を、珠月はやや乱暴に取り上げた。  「はい!? こちら【ダイナソアオーガン】です。今ちょっと取り込んでるので、また後でおかけ直し……」  『本当に客だったらどうするつもりだ、篭森。相変わらず豪放磊落だな』  電話の主が予科程時代からの友人であると分かると、珠月はため息交じりに幾分か緩やかな言葉を吐き出した。  「悪い? ここ数日寝てなくてね。ちょっといらついてるんだよ。それより、珍しいね。あんたがここに電話してくるなんてさ、二重」  『そういうときでも営業はちゃんとこなせ……違う、こんな話をするために電話をしたんじゃない。――宿彌(すくね)はいるか?』  「なんだ、宿彌に用事か。ちょっと待っててね――宿彌、二重から電話」  ちょうどその辺を通りかかった【ダイナソアオーガン】会長にして東区画管理人、【ドラグーンランス(竜騎槍)】狗頭(くとう)・宿彌を呼び止めると、珠月は電話を渡す前に二重に告げる。  「そうそう、この前言ってた集まり、私も行かせてもらうよ? あと今度の休み暇? 久しぶりにお茶でも飲みにいこーぜ」  「かごも、人を呼んだんだったらさっさと電話を渡してくれよ」  傍まで寄ってきた宿彌がさして困っている風でもなくそう言った。  『そうか、そうしてくれると助かる。ついでにお茶の誘いも乗ってやる』  珠月は二重の返答に満足げに――僅かに悪戯っぽく微笑むと、宿彌に受話器を投げて寄越した。周囲の社員から「公私混同」という言葉が聞こえたがそれを軽く黙殺すると、何事もなかったかのように仕事に戻る。  そんな珠月の様子にため息を吐いて、宿彌は電話を耳に付けた。  「どうしたんだい? 何か問題でもあったのか?」  二重が二、三言を告げると、宿彌は無感動なため息を漏らした。  「なるほどね、分かった。含んでおくよ」  通話を切って受話器を机に戻す。珠月がその様子を見て問いかけた。  「何か厄介ごとでも持ち込まれた?」  「いや……問題ないよ。何かあっても、あっちで対処するそうだ」  短くそう告げると、宿彌はさっさと自分の部屋へと戻っていった。  そんな宿彌の様子に僅かに疑問の表情を浮かべた珠月だったが、  「いってきまーす」  元気に仕事に出かけようとした、部下であり友人でもある大豆生田・桜夜楽(おおまめうださやら)に声を掛けた。  「さっき帰ってきた子がその辺で悪徳と残虐のコンビを見たって行ってたから気をつけてね。ま、あいつらならミスティックのあなたを襲うことなんて多分ないと思うけど」  「はーい」  珠月はその後姿を見送って、半分浮かせた腰を再び椅子に戻した。目の前の机には、まだまだ多くの書類が積んである。それを見て、珠月は軽くため息を吐いた。                    ♪  「……ハイ、わざわざありがとうゴザイマシタ。スミマセンネェ、ウチの区画の生徒が迷惑をカケタみたいデ」  「いや、こっちも捕縛できればよかったんだがな。つい力加減を誤って殺してしまった。悪い」  北区画、不夜城。北区画管理人の執務室に、珍しい人物がいた。  「イエイエ、こっちの不始末デモありマスカラ。遥々報告マデしてイタダイテ、感謝しますヨ。スリジャール」  目の前の男――【グレイトフルナイト(偉大なる夜)】の時夜・夜厳(ときややげん)に対して一礼すると、【ティクタリゲーター(時計ワニ)】のスリジャール・フッククローは外していた帽子を被りなおすと踵を返して執務室を後にした。と、ドアを開けようとしたスリジャールの足が電子音によって止められる。  「ン? 電話デスカ……おやおや、あの鋏野郎からデスヨ」  「……そういうことは本人の前でなくても言わない方がいいと思うが」  スリジャールの呆れた声には答えず、夜厳は机の上に置いてあった携帯電話を手に取ると通話ボタンを押した。  「ハイハイ、何の用デスカ? 西区画を俺様に献上スル準備デモできマシタカー?」  『やかましいわ、【無能】が。少し報告しなければならんことができたから電話しただけだ』  電話の主――二重の言葉に夜厳は「フゥン?」と呟いた。  二重の言葉を聴くうちに、夜厳の顔にニヤニヤ笑いが浮かび始める。  「イヤ、分かりマシタ――何、こっちに被害が出テモ、ソレでアンタを脅そうナンテ思ってマセンカラ安心してクダサイ。別に何も企ンデいまセンッテ。ソコマデ融通の利かない夜厳サンじゃアリマセンヨ」  「何かあったのか?」  電話を置いた夜厳に、スリジャールが問う。しかし夜厳はつれない返事を返した。  「別に、北の住民デハナイあなたには関係のナイ事デスヨ。ククク、澪漂の第七管弦楽団デスカ……高みの見物をスルニハ面白そうデスネェ……」  腹黒い笑みを浮かべる夜厳にスリジャールは肩をすくめて、今度こそ執務室を後にした。真夜中の考えなど探るだけ無駄だということくらいは知っている。ただ、と無人の廊下を進みながらスリジャールは呟いた。  「あいつは計算高いからな。さっきは黙認するとか言っていたが……実際被害が出てみたらどう動くことやら……」  まぁ何にせよ俺には関係ないことだ、とスリジャールは小さく笑った。                      ♪  衛星携帯電話を畳んでポケットに仕舞うと、二重はため息を吐いた。  「とりあえず区画王には連絡したが……まぁ何事もないことを祈るばかりだな」  大団長である【コンダクターオリジン(指揮者根源)】の澪漂・千重のことだ。そこまでの被害が出ないことを考慮して七重を送ってきたのだろう。 しかし二重の不安は尽きなかった。例えこちらが巻き込まなくとも、向こうから巻き込まれにやってくる可能性は十分にある。この学園の生徒なら、そのくらいの計算違い平気でやってのけるはずだ。 「賠償責任などということになったら、きっちり請求すればいいか」  二重がそう呟くと、今まで座っていた一重が不意に立ち上がった。  「ねえ、二重。ちょっとでかけてきてもいい?」  「ん? あぁ、今日の仕事はもう終わっているし……別にかまわんが?」  一重は小さく「ありがと」と言うとドアノブに手を掛けた。  「急にどこへ行くんだ?」  その後姿に二重が問うと、一重は小首を傾げて答えた。  「うん、ちょっと中央の方にね。さっちゃんに頼まれてたことがあったの思い出したんだ」  「そうか、気をつけていってらっしゃい」  二重に片手を挙げて答えると、一重は部屋を後にした。  一人残された二重は、先刻の七重の言葉を思い出して唸った。  「一重を寂しがらせるな、か……別にそんなつもりはなかったんだがな」  さっきの会合は不可抗力だ。一重には知られたくない理由があった。  軽くため息を吐きながら自らもまた応接室を出ると、傍の廊下に波音の姿があった。  「ん? どうした波音。戻ってたんじゃなかったのか?」  「あ、悪い人だ」  唐突にそう言う波音に二重は鼻白んだ。  「団長は乙女心が分かってないね。だから悪い人」  「……ふん、放っておけ」  隣をすり抜けて歩き去る二重に、波音はちょこちょこと着いてきた。  「……何だ?」  「副団長に秘密なことって何? 他の人は知ってるのに何で波音には教えてくれないの?」  「お前は寡黙なくせに口が軽いからな。だから教えない」  大方他の団員に訊いて回ったのだが教えてもらえなかったのだろう。にべもない二重に、波音は無表情のままむくれた。そんな彼女の様子に、二重は「仕方ないな」と言って、頭二つ分ほど下にある波音の耳元に顔を寄せると、  「――――」  何事かを囁いた。  途端、波音がニヤリと笑う。  「へー。団長、良い人だね」  「一重には絶対言うなよ」  波音は背伸びをするように胸を張って言った。  「大丈夫。絶対言わない。団長が副団長のt――」  「言うなって言っただろうが」  べし、と比較的勢いを乗せた平手が波音の頭をひっぱたいた。                    ♪  南区画の繁華街から少し離れた通りを、奇妙な一団が歩いていた。共通点といえば和装であるということぐらいで、その個性は見事にばらばらである。  一人は戦国時代であればいわば傾奇者(かぶきもの)とでも言うのだろうか、赤く染めた肩ほどまでの髪に派手な柄の着物、黄色と黒の虎柄の袴を穿いた男。手には二メートルほどの竹槍を携えていた。男はどういうつもりか、首から紐に結んだメガホンをぶら下げている。  その隣を歩いているのは竹槍の男より頭一つ分ほど背の高い青年。こちらは落ち着いた色合いの道着に身を包み、腰には一振りの日本刀を差していた。鋭い三白眼が長い髪の間から見え隠れする。  さらにその背後。花魁のような派手な着物をだらしなく着崩した和風美女が続く。化粧は濃いが決してくどいわけではなく、見るものが息を呑むような美貌をさらに引き立てる形になっていた。  そしてその美女の隣には、これまた随分と対照的な少女が並んで歩いている。可愛らしい桃色の着物に、手には鞠を持っていた。お団子状に結った髪を不釣合いに大きな簪で留めている。  「ろーっこーう、おろーしにー――」  「唐嶽、もう少しおとなしくしてくれ。それでなくとも貴公は目立つのだ、白い目を向けられるのが貴公だけならいいが、それで一緒くたにされる拙者たちの身にもなれ」  往来の真ん中――大通りほどではないがそれでも人通りの多い道で、大声で六甲颪を歌う竹槍の男――【サプライズウィンド】の嶽夜・唐嶽に、日本刀の男がうんざりした顔で苦言を呈する。  「堅いこと言うなよ、嶽満。これは俺の『そうる・そんぐ』だ!」  「勉強しろとは言わないが、この時代なんだからもう少し英語っぽく発音しろ」  苦虫を噛み潰したような顔をする日本刀の男――【アンチカッティングブレイド(無刃の威圧)】嶽夜・嶽満に、背後の美女がからからと笑った。  「無駄だって、そいつは言ったって聴きゃしないよぅ。ねぇ、花火ぃ?」  「鉋木姐さん、姐さんももう少し周りを気にした格好をしたほうがいいんじゃないですか?」  唐嶽とは別のベクトルで――例えばざっくりと開いた胸元や太もも近くまではだけた裾で――目立っている女性、【C.Y.O.(傾国の美女)】の嶽夜・鉋木に、少女――【リミットレスマイン(無制限時限爆弾)】の珠夜・花火は困ったように言った。  彼らは目下――とてもそうは見えないが、身を隠している状況である。先だって九龍の仕事に横槍を入れた彼らは、現在九龍の刺客に追われる身だ。ここに至るまでにも、数度の戦闘を繰り返し、ようやくこの学園に入り込んだ形である。  近くで見れば間違えることなどないほど目立つ集団であるが、総人口一千万人を超えるこの学園都市ならばいい隠れ蓑になると考えてのことである。この学園には数名、彼らの家系の者が生徒として所属しているが、今のところはその助力を受けるつもりはない。あくまで本家からの援助を待つ間の時間稼ぎのようなものである。  「さぁて、しかしここ数日は九龍からの追っ手も来ないしな。ここに逃げ込んだのは正解だったってことか?」  「まだ油断は出来ん。居場所まではばれてはいないだろうが、この学園は九龍の息が掛かった澪漂の第六管弦楽団――【エターナルコンダクター(悠久の指揮者)】澪漂・二重のお膝元だ。遠からずまた刺客がやってこよう。それも、澪漂の使い手がな」  「そうなると流石に厄介だねぇ……それだけの使い手連中、いかに妾らといっても厳しいものがあるよぅ」  「仮に追い返せたとしても、澪漂のことです。次から次へと投入されてくるでしょうね……マッチポンプです」  花火の言葉に、唐嶽は「まっちぽんぷねぇ……」と呟いた。もはや嶽満も何も言わない。  「だけどよ、ここまで来ればあと少しだ。後は叉汚嶽の兄貴の増援を待つばかり――遠からずこんな逃げ隠れする生活ともおさらばだよ」  あくまでポジティブな唐嶽に、しかし残りの三人はしっかりと頷いた。

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