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「あぁ…神々の与えたもう試練でさえ、この恋の障害にはかなわないのではないでしょうか、かの狼王が月の姫君と手を取り合い、永久の旅路を行こうとしている…私が月に手を伸ばしても、剣の如き牙を携えた顎が邪魔をします…私はかの狼王を討ち取る聖なる剣を得ることなど出来るのでしょうか…」
 「いや、な? お前はそろそろ退いた方がいいぞ?」
 「私に退く事など出来ません、かの永遠の姫君の寵愛は、蜜のような濃厚な甘さをもって私を誘惑してくるのです」
 「まず間違い無く誘惑はされてないと思うけどな」
 「あぁ、なんという事でしょう。 水鏡に映る月は私がいくら手を伸ばしても届く事はなく、東の狼王はその澄み切った心に移しとってしまいました。 もはや私に残された手段は銀の刃を携えて狼の喉笛を引き裂き、美しき月を連れ出すことだけなのでしょう。 かの狼王の鋭敏な感覚を持ってすれば戦いを避けて月を盗み出す事など出来はしないのですから」
 「相変わらず人の話を聞かない…家主の為を思うなら勘違いさせたままの方がいいのかね、いや…どっちにしろコイツは迷惑をかけるな…はぁ」
 ジェイルの言葉を聞き、ミヒャエルは頭を抱える。 どうするば家主の、ひいては自分の為になるのだろうか…と、ただ、同時にそれはジェイルが死ななければ無理なのだろうとも理解してしまっていたため、決して答えは出ないのであった。

 「はぁ」

 ―東区画、ダイナソアオーガン会長室
 「ジェイルには困ったものだね、個人的にはこれ以上カゴに迷惑かけられても困るから、始末をつけたいところだけど」
 「ジェイルが居なくなってくれるのはありがたいけど、これは私の問題だから、手を出さないで」
 「そうは言ってもだね、僕としても結構深刻な問題なんだよ?」
 「仕事は真面目にするよ、今まで通り」
 「今まで通り…? まぁそれは良いんだけどさ、どうやらジェイルは僕がカゴと付き合っていると勘違いしたみたいなんだよね。 最近、彼に付きまとわれているんだが、牡丹がいやがってね、僕としても気分の良いものではないよ」
 「なんでそんな勘違いを…」
 「多分この前の事が原因。 こちらの方でも対処したいんだよね」
 「ごめん、私、頑張るから。 これ以上迷惑かけないように頑張る」
 「君には、僕だけじゃなく、他にも力をかす人は多いだろう? 対処するならためらいなくつかいなよ?」
 「でも」
 「そろそろ選ばないとね、皆心配しているし」

 二人に沈黙が訪れる。

 静かに静かに。いつか答えが出るだろう。

 おわり