6話 絆の作り方

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「えっと・・・最後にバルサミコ酢を入れてっと。」

バルサミコ酢を手際よくボールの中へ。我ながら料理の腕が上達したな。
もう1年たつんだな。お姉ちゃんと私が一人暮らしを始めて。あ、お姉ちゃんはこなちゃんと二人暮らしだった。

「出来上がり。結構たくさんできたから、お姉ちゃんとこなちゃんに食べさせてあげよっと。」

ピーンポーン・・・
響くピンポンの音。もう7時過ぎているのに。

「およ?誰だろ?はーい!どうぞ?」

ガチャ・・・
無言で開くドア。そこにいたのは見慣れた大事に親友さん。

「あれ?こなちゃん!どーしたの?」
「・・・あの、ふつつか者ですが今晩泊めていたたけないでしょうか?」
「ふぇ?」

頭の中でたくさんの私がフル稼動。こなちゃんはお姉ちゃんと暮らしてて、こなちゃんの家はお姉ちゃんの家。
なのに自分の家に泊まれない?だから私の家に?こなたはかがみの嫁?ということはお姉ちゃんはどうするの?あれ?あれ?あれれ?

「えええっと・・・つまり、どいう事?お姉ちゃんは?」
「・・・かがみなんて知らないもん!」
「ほぇ?」

かがみなんて知らない?お姉ちゃんが分からない?こなちゃん記憶喪失かな?

「あ!分かった!こなちゃん、お姉ちゃんとケンカしたんでしょー?」
「・・・鋭いな、つかさのクセに。」
「なんですとっ!?ま、まぁとにかく上がってよ、夕飯も出来てるし。」
「つかさは優しいね。ごめんね、迷惑かけて。」
「ううん、平気だよぉ。」

お姉ちゃんとこなちゃんがケンカか。お姉ちゃんがケンカする所なんて、想像出来ないな。
それにしても、こなちゃん、元気ない。あからさまに落ち込んでる。

「こなちゃんはお姉ちゃんが大好きなんだね。」
「な、何を急に!?」
「んー、なんとなく。」

だって、こんなこなちゃん初めて。きっとお姉ちゃんに嫌われたって勘違いしてるんだろうな。
お姉ちゃんはこなちゃんの事、大好きなのに。双子だから、分かるのかな?
お姉ちゃんを怒らせて、ケンカしたの、友達ではこなちゃんが最初。
だから、お姉ちゃんにとってこなちゃんは特別。そんな気がするんだ。


‐‐‐‐

「なぁ、あやのー。宿題見せてくれよー?まだ終わってねーんだよ。」
「ダメよ、自分でやらなきゃ。あれ?あそこにいるの柊ちゃんじゃない?」
「あー、ホントだ。珍しいなあいつが一人なの。おーい柊ぃー!」

もう冬は終わる。春の息吹はすぐそこまで来ている。もう1年が終わっちゃうんだな。
1年間通ってきた校門には柊ちゃんの姿。今日は一人だ。
いつもの2人、短い可愛らしい紫の女の子、妹ちゃんと、美しい青色の女の子、泉ちゃんはいない。

「おーっす、柊ぃ!」
「おはよ、柊ちゃん。」
「おはよー、日下部に峰岸。」
「今日は妹とちっこいのはいねーのか?」
「・・・まぁ、ね。」

柊ちゃんの僅かに引きつった頬を私は見逃さない。初めて見る表情だから。

「もしかして泉ちゃん、だよね?同居人のコとケンカしたの?」
「なっ!べ、別に・・・そんなんじゃ・・・」
「おー?図星かぁ?あやの、なかなか鋭いなー。」
「うっ・・・峰岸は何でそう思ったの?」
「なんとなくよ。特に深い意味はないわ。」

簡単よ。
初めて見る表情。中学生の頃に見たことがない、新しい柊ちゃんの顔。
戸惑い?苛立ち?憤り?ううん、きっと違う。もっと単純。

「それにしても柊がケンカとはなー。」
「・・・なによ?日下部、ケンカ売ってる?」
「だってなー。柊って気性荒いけど、誰かとケンカとかしなかったよな?」
「・・・確かに。ケンカした記憶、ないかも。なんで、あいつとケンカしたんだろ・・・」
「ふふっ。」

懐かしい記憶が甦ってくる。昔からたくさんケンカした、私とみさちゃん。
ささいな事で、ぶつかり合った、私とお兄さん。
その影に、柊ちゃんと、泉ちゃんを重ねたら、なんだか可笑しくて。

「峰岸まで・・・何が可笑しいワケ?」

ケンカなんて、単純。それが特に大切な人とのケンカなら尚更。

「内緒。さ、早く教室に行こ?みさちゃんも宿題終わってないんだし。」
「あー、ヤヴぁイ!柊ぃー!あのさー・・・」
「・・・イヤよ。自分でやりなさい。」
「みゅー・・・」

大切だから、大好きだからぶつかる。本当に愛しいからケンカする。
それが分からないから、素直に仲直り出来ないから、ちょっと戸惑ってる。
それだけなんだよ?柊ちゃん?貴女はいつ、その事に気が付くのかな?


‐‐‐‐

「こなちゃん、ゆきちゃん、ご飯食べよー。」
「そうですね。丁度よくお腹も減りましたし。」

同じ営みの繰り返し。ですがその中でも私はお昼時間が楽しみです。

「そうだね。じゃ、いただきます。」
「かがみさんは今日いらっしゃらないのですか?」
「むぐっ・・・ゲホっ・・・」
「大丈夫、こなちゃん?お姉ちゃん、自分のクラスで食べるって。」

ちょっとした、違和感。かがみさんがいない。それもですが、違和感の正体は、きっと泉さん。

「泉さん、どこか調子が悪いんですか?」
「え?あ、いや・・・」
「こなちゃんとお姉ちゃん、ケンカしちゃったんだって・・・」
「あら・・・そうだったのですか。」

成る程。だから今日は朝、2人で登校していたのですね。
そしてもう1つ合点。違和感。やはりそれは泉さんでした。

「・・・だってかがみがさ・・・」

いつもの可愛らしいアホ毛も、心なしか萎れてます。いつもの澄んだ髪の毛が、海底のような暗い青色に見えます。
さらには、いつもの奇麗なエメラルドの目に、影が覆っているように見えます。
仕方ありませんね。本来、このような事はしたくないのですが、他ならぬ、大切な友人の為です。

「そうですよね。かがみさんは意地っ張りな所がありますしね。」
「ゆ、ゆきちゃん?」
「それに、泉さんにはいつも辛く当たりますから、泉さんが怒るのは当然かと、思います。」
「それ違うよ、みゆきさんっ!意地っ張りなのは、ちょっと素直になれないだけだよ!私に辛く当たるのは私を本当に想ってくれてるからだよ!かがみは悪くない!本当は私が悪・・・」
「はい、知っていますよ。今丁度その台詞を言おうと思っていました。」
「・・・ふぇ?」

計算・・・もとい思惑通りに事が運びました。それにしても、泉さんを見てると感慨深いです。

「泉さんはもう、何をするべきか分かっていらっしゃるようですね。」
「・・・みゆきさんには勝てないな。うん、帰りに謝らなきゃ。ありがとー、みゆきさん!つかさも、昨日はありがとね。」

初めて見た時のクールな泉さん、大声でかがみさんを擁護した泉さん。
人間ってこんなに変われるのだと、驚きと感動で満たされます。
人間の、かがみさんと泉さんの力は素晴らしいな、そんな風に思います。
きっと、このケンカと仲直りを通して、もっと変わるのだと思います。もちろん良い方向へ。


‐‐‐‐

キーンコーン・・・カーンコーン・・・
よっしゃ!やっと昼休みだぜ。授業分からない、早く部活したい。でも時間はそんなに早く過ぎない。

「あやの、早くメシ食べよーぜ!腹減った。」
「うん。柊ちゃん、今日はどうするの?」
「うっ・・・えーとじゃ今日は一緒に食べていいかな?」
「もちろんだぜ!じゃ早く柊も準備しろ!」

今日は珍しい事ばっか。柊が私とあやのと食べるのは久しぶりだ。
最近はあのちびっこや妹やメガネさんの所で食べてるから。だからちょっと寂しいのは言うまでもない。
でも、今日の柊を見てる方がもっと寂しい。いつもの柊じゃない。

「なぁ、柊ぃ?」
「何?ミートボールはあげないわよ?」
「・・・最近太ったか?」
「ち、ちょっとみさちゃん?」
「・・・そうかもね。ダイエット、しなきゃ。」

あー、絶対違う。こんなんじゃねーもん。私の知ってる柊はもっと、こう、言葉に表せないけど、もっとすげーのに。

「ポッキーばっか食べてるからだぞー?」
「みさちゃん?」
「うん・・・ちょっと気を付けなきゃ。」

・・・つまんねー。こんな柊、嫌だ。やっぱケンカが原因か。
あのちっこい奴と一緒に暮らすようになってからの柊が、なんとなく悔しいけど、ちっこい奴と仲良い時の柊の方が、いい。

「うあぁぁ!もー、じれってーなー。ウジウジしやがってっ!柊はウサギか?」
「はぁ!?いきなりキレてなによ?」
「・・・あの、みさちゃん、頭大丈夫?」

頭は悪いさ。それがなんだってんだ?
不器用で、ヴぁカでもなんでもいい。ただ、ちょっとちっこいのと、柊の間を繕ってあげたいだけ。
ちびっこと一緒にいる時の、元気で光ってる柊に戻してやりたいだけ。

「あのな、ケンカした事を後悔したってどうにもなんねーだろ?肝心なのは仲直り!いつまでもそのままじゃ、つまんねーだろ?」
「・・・うん。」
「じゃ、私からの宿題。明日までに仲直りしろよ?いいな?約束だからな?」
「・・・日下部って結構良い奴なのね。」
「だろ?」
「ありがと。なんかあんたを見てたらなんとなく元気出た。」
「泉ちゃんと仲直り、できるといいわね。」
「そう、ね。よく考えたら、私が悪いんだし、ちゃんと謝らないと。」
「頑張れよ、柊。」

感謝しろよ、ちびっこ。仲直りできたら、私のおかげだからな。


‐‐‐‐

キーンコーン・・・カーンコーン・・・
私の闘いの幕開けを知らせるチャイム。

「じゃ、つかさ、みゆきさん、行ってくる!」
「大丈夫だって!頑張ってねこなちゃん。」
「ちゃんと4人で帰りましょうね。」

かがみのクラスまで走る。頑張れ、こなた。初めての、ケンカ。だからこそ、早く仲直りしたい。
霧がかかっているように、雨が降っているように、光が差し込まないように。
こんな気持ち、もうたくさんだ。普通に戻りたい。一言、かがみに告げて、光を浴びたい。
そんな事を思っていたら、大きな衝撃と共に床に転ぶ。誰かとぶつかってしまった。

「あいたた・・・ごめんなさい・・・ってかがみ?」
「あ、こなた・・・」

ごめん。ごめんなさい。許して下さい。私が悪かったよ。頭では分かっているのに、言葉にならない。とんだヘタレだ。

「ごめんっ!」
「・・・え?」

不意に私に響く声。かがみの『ごめん』が、風鈴の音のように、私の中で奇麗に響く。

「あ、あのさ、昨日の事!ごめん・・・落ち着いて考えたら、私が悪かったわ・・・ごめんね、こなた。」
「かがみ・・・」
「それに・・・ケ、ケンカしたままじゃ・・・嫌、だしさ・・・」

やっぱり、私の太陽は此処にあった。日差しがとても温かい。霧が、雨が、晴れてゆく。跡形もなく、晴れてゆく。

「ふっふっふ。謝りながらもさりげなくデレるかがみ萌え。」
「うるさいっ!そーやって茶化すから謝りたくなかったんだよ!」

憎まれ口。ちょっと怒ったような台詞。それでも、さりげない笑顔。私の大切な居場所。

「ごめんね、かがみん。」
「いいのよ、私も悪かったんだしさ。」

私も今日初めての笑顔をかがみに贈る。初めてのケンカ。初めての仲直り。今だけを見ると、こういうのも悪くない。

「こなちゃーん!お姉ちゃん!仲直りすんだ?」
「ごめんね、つかさ、みゆき。心配かけちゃって。」
「結局、ケンカの原因は何だったのですか?」

下らない事で笑い、なんてことない事でケンカした。そんな初めてだらけの1年間。次の年は何があるのだろう?

「・・・何だっけ。こなた、覚えてる?」
「・・・てへ。忘れちゃった。」
「ぷっ・・・私達らしいわね。」

親友が出来ました。名前はつかさに、みゆきさん。とてもいい人達です。
同居人が、無くしたくない人になりました。名前はかがみ。私の太陽。
毎日が幸福です。さぁ、明日はどんな幸福があるのかな?


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コメント:
  • 本当周りの人間に恵まれてるよなこの二人。人徳か。 -- 名無しさん (2013-01-12 12:00:32)
  • いい生活送っていますね♪ -- かがみんラブ (2012-09-17 05:18:07)

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