3巻47p『広く狭い』より

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(柊家お茶の間)



「そういえばこの前、ご飯食べてる時お父さんがさ。」
シャーペンを止めてこなたが話し出す。
今年の夏の日常的な勉強風景だ。



夏の初め、『今年の夏は宿題を最初から少しずつやる!』
と珍しく電話で意気込んだこなたの決意は、



『というワケで明日、かがみん家(ち)行くんでよろしくー』
と言って手土産持参でやってきた初日から、
何度か場所をわたしの家、こなたの家、みゆきの家と変えつつ奇跡的に継続している。



最初はわたしの解答を写すだけだったこなたも、
こなたの家やみゆきの家でゆたかちゃんやみなみちゃんと一緒に勉強しているうちに、
少しずつ自力で進めるようになった。



今日も朝から蝉の声と扇風機の音をBGMにわたしの家で勉強している。



ちなみにお父さんたちは朝から出掛けていて、今わたしの家にいるのはまだベッドの中で夢を見ているつかさだけだ。
いい加減目を覚ましてもいい時間なのだが…



それにしてもこなたは毎回毎回、思い出したかのように話しかけてくる。
そのタイミングがいつもだいたい同じというのが可愛くて、わたしはついクスリと笑ってしまった。



「かがみナニ笑ってるの?」
「いえいえ、どーぞお話下さい。」
あぶない、あぶない。
これじゃみゆきに萌えもえ言ってるこなたと同レベルじゃないか。
わたしは照れくささを抑えて話をうながした。



「お父さんにさ『受験生だ、受験勉強だーって遊びが少なくてつまんないんだよね。
かがみ達真面目だから。』って話したら、
『まぁ、わかるけどな。こなたはこなたのやりたいようにやればいいさっ。』
って言ってくれたんだ。」



「へー、あんたに三年生としての自覚があるかないかはおいておいて、
本当にあんたのお父さんって理解あるわね。
というか…本当に娘に甘いわね(汗)」



こなたはよくおじさんとの会話をわたしに話してくれる。
アニメなんかの話は(濃すぎたりして)よく分からなかったりするけれど、
いつも嬉しそうに話すこなたを見るのがわたしは好きだ。



別に深い意味はないけど。



「『青春は待ってはくれんのさっ』ってお母さんとの思い出話を聞かせてもらったよ。」
「そっか…」
特にお母さん-こなたがすごく小さい頃に亡くなった-のことを話してくれるときが一番嬉しそうだ。



「でね、私が『じゃあ私も彼氏とか作って思い出作りしようかなー』って言ったら、
『それは絶っ対にダメっっ!カレシなんて認めませんっっ!』って叫びだしてさ。
まるでドズルだったよ。
『やらせはせん!やらせはせんぞぉぉお!!』って。」



「それは何かのアニメネタか?(じと目)
まあ、でもこなたのお父さんの気持ちもわからなくもないわね。」



「なんで?」
不思議そうに首をかしげるこなたにわたしの顔は熱くなる。
「な!なんでって、それは…」



それは-高校最後の夏休みだもの…

「……や、やっぱり抜け駆けはイヤっていうか…ごにょごにょ。
ひゃっ!」
うつむくわたしをニンマリと笑うと、こなたはしゃくとり虫のようにすりよってきた。



「も~素直に言えばいいのにぃ、さびしんぼさんなんだからぁ。
あ、よしよし…」
そうやってわたしの頭をなでる。



「っ!う、うるさい!
暑いんだからくっつかないでよ!」
顔面筋をなんとか制御しようと思ったのだが、
どうやら自分で思う半分以下しか随意筋は働かなかったようだ。



こなたはそんなわたしの顔を見て、悪戯を思いついた子どものような表情を浮かべた。



「ていっ!」
「え?!」



ぱたり。



机から落ちたシャーペンがわたしの顔の横を転がり、
こなたの身体の重みを感じたとき、蝉の声がぱたりと止まった。



「な…」
声が出ない。



「涼しくなった?」
そう言ってこなたはぴとりとわたしの胸に顔をつける。
今日はわたしもこなたも半袖にショートパンツなので腿から下、
そして肩から先がこなたの肌に触れる。



心音が跳ね上がった。



わたしはこなたを突き放すことよりも、汗のにおいがしないかどうかで頭がいっぱいで動けない。



「ネットにね、気温が高い時は人とくっつくといいって書いてあったよ。
汗の気化熱で肌の表面温度が下がるから涼しいんだって。」



「わ、わかったからどきなさいよぉ…」
こなたの髪の香りにどきまぎしながら、わたしは力なく身をよじる。



「なんかかがみの体温きもちいいからヤ。」
それに抗うようにこなたは身体を弛緩させ、体重をあずけてくる。



「馬鹿いってないで、さ、さささ、さっさとどきなさいって。
汗かいちゃうでしょっ!」



「いーじゃん、汗かけばここのおにくも落ちるかもよ~」



むにっ。
いきなりこなたに(少しだけ気にしていた)わき腹をつかまれて、
わたしは声にならない叫びをあげてこなたを突き飛ばした。

みーん、みんみんみんみーん。
蝉の声が戻ってきた。



「まったく、いきなり何するのよ。」
わたしは襟元を直しながらそっぽを向く。
別に…怒ってるわけじゃないけど、今はこなたを見れない。



「ちぇ~、ちょっとふざけただけじょのいこぉ。」
振り向かなくても分かる。
おそらくこなたはいつもの表情で笑っているだけだ。




「まったくもう。
似てないえ○りのマネする余裕あるなら、もう少し思いっきり突き飛ばすべきだったわ。」
呼吸を整えて振り返ると、やっぱりこなたは笑っていた。




「いい?次にあんなことしたら拳で教育だからね。」
半目で軽くにらむとこなたはアヒルの口になった。



「ふん、だってお父さんは高校三年の夏でもお母さんをむりやり連れまわして、
いっぱい思い出作ったって言ってたんだもん。
家の中で勉強ばっかじゃつまんないよ。」
その言葉になぜだか知らないけどわたしはムッとしてしまい、
ついトゲトゲしい口調になる。



「えーえー、どうせあたしとの勉強はつまんないわよね。」
急に何かの異物が出来たみたいに胸の中がちくりと痛んだ。



再びそっぽを向いたわたしに対抗するように、こなたもくるりと後ろを向く。
そしてぽつりとつぶやいた。



「違うもん。」
「何が違うのよ。」
こなたの背中に向かって投げかけたわたしの言葉に、
こなたは小さな声を返した。



「かがみとの勉強なら楽しいもん。」
「!」
「でも高校最後の夏休みだから、もっといっぱい思い出作りたかったんだもん…
(お父…んたちみた…に…)」



最後の蚊のなくような一言は聞き取れなかったけれど、
わたしの中の小さな何かは溶けて消えていた。




「じゃ、じゃあさっきのも?」
「…」
さっきのこなたの声よりは少しだけ大きな声を出すことが出来たが、こなたからの返事はない。
わたしにはこちらに背中を向けたままのこなたが、何を考え、どんな顔をしているのかわからなかった。



それでもどうすればこなたがいつものように笑ってくれるのかはわかる。



「しょ、しょうがないわね。
じゃあもう少しだけ宿題やったら、ご飯食べて、午後はあんたの好きなところに行きましょ。」
勇気を出して(それでもやや斜め上を見ながら)言ったわたしの言葉に、
こなたが返してくれたのは--腰が浮くようなタックルと満面の-。







~おまけ~
(柊家一階・廊下)
どんっ!!
『痛っ!!何すんのよ!!』
『かがみんだーいすき!!』



『HA☆NA☆SE!!』




………どうしよう…入るに入れないよぅ…


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コメント:
  • う〜む、読みながら2828が止まらない -- 七世紀 (2010-04-04 11:35:50)
  • ニヤニヤが止まりませんwww -- 名無し (2010-03-31 07:59:56)
  • こんなに拙い作品にコメントありがとうございます(泣)またそのうち本スレの方にもお邪魔するかもしれませんので、その際にはもっと良い作品をお見せ出来るよう頑張ります。 -- 1-500 (2009-12-06 01:13:57)
  • こなたとくっつきたいなあ -- 名無しさん (2009-12-05 23:28:45)
  • なんかニマニマしながら見てしまったw --   (2009-03-19 12:22:30)

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