たとえばこんな日常

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 朝早く、私は最近の日課となっている「二人分のお弁当作り」に今日も励んでいる。
 あれだよ。ほら、良く出来た幼なじみが、うだつの上がらない主人公の為に毎日お弁当を作ってあげてたりするじゃん?
 私もね、色々と目覚めちゃうまでは、「なんでこの手の幼なじみは、こうもまあ甲斐甲斐しいのかね~」と二次元相手に突っ込んだりもしてたけど、今なら、その幼なじみの心境という物も何となく分かるような気がするね。

 うん? この例えだと、私の相方に対して失礼かな?
 いやいや、他の面ならともかく、家事に関しては私の方に分があるんだし、それくらいは胸を張っても良い筈だ。
 ……まぁ、私に胸なんか無いんだけどさ!

 そんな自虐ネタも織り交ぜつつ、私は愛情をたっぷり詰め込んだお弁当箱のフタを閉めた。
 時計を見ると、時刻は間もなく午前7時に差し掛かろうとしていた。
 なんたって今日は腕に揮いをかけて、おかずを全部手作りにしたからねっ!
 かがみ、喜んでくれるかなぁ……?
 とても喜んだ時のかがみの可愛らしい表情を想像して、私は思わず格闘技で培ったパンチとキックを誰も居ない台所相手に披露したのだった。

 ……ふぅ。いつも思うんだけど、徹夜明けってなんてこんなにテンション高いんだろうね?


☆☆☆☆☆


「……ぉ、おはよう、かがみ……」

 それから約一時間後、いつもの駅前の待ち合わせ場所には、すっかり先程までのハイテンションも抜け切って、眠気とダルさで少しばかりボロボロになっていた私がそこに居た。

「なんだ、また徹夜したのか?」
「寝る前に、なんとなくパソコンのフリーゲームを落としてプレイした結果がこれだよー」
「ホント、あんたも懲りないわね」

 先に待っていたかがみは、私の様子を見聞きして、呆れながらもどこか優しげな微笑みで私を迎えた。

「それで、終わった頃にはもう5時過ぎだったからさ、下手に寝るよりいっその事起きてようと思って、気合を入れて今日のお弁当はかがみの好物を手作りしたんだよ~」

 そう言って、私は二人分のお弁当の入った鞄を少し誇らしげに掲げる。

「あっ、そうなんだ……。ありがとう……」

 頬を紅く染めたかがみは、目を伏せながらそう私に呟く。
 昔の私なら、ここで「んー? 食いしん坊のかがみんはもうお腹が空いてるのかなー?」等とニマニマしながらからかっていたのかもしれないけどね……。
 今の私に、このかがみの仕草は致命傷そのものだった。

「あー、かがみんや?」
「な、何よ……?」
「……ここでさ、ぎゅってして良い?」

 私がそうお願いすると、かがみの顔はよりいっそう真っ赤になった。

「こ、ここで!? そ、それはさすがにヤバイって!」
「そんな事言ったって、かがみが可愛すぎるのが行けないんだよー! そんな顔されたら私の理性が幾らあっても足りないんだよ!」

 早朝からだとか、公共の場だとか、そんなのは最早関係無かった。
 有無を言わさず、かがみを抱きしめようとした私の前にかがみの鞄が立ちはだかった。

「待て待て待てっ! そんな事したら今日一日、口聞いてやんないからねっ!」

 さすがにそこまで言われて拒否されると、抱きつくに抱きつけなくて、暴走する私に急ブレーキがかかった。
 それに、一日口を聞かないとなると、私もかがみも寂しすぎて死んじゃう恐れがあるしね……。

「釣れないなーかがみは。ちょっとばかりぎゅーっと抱きしめるだけじゃん……」
「あんたの場合は、“ちょっと”じゃ済まないから言ってるんでしょうが……。もうすぐバスが来るんだし、さすがにここでは自重しなさい」
「むぅ~」

 確かにかがみの言う事には一理あるので、私もここは渋々引いておく事にする。
 一応、朝のラッシュということで大勢の人々が、こちらをチラ見しては通り過ぎていくけれど、今更そんな些細な事を気にするような私達ではない。
 一旦離れたとはいえ、怨めしくかがみを見つめていると、相変わらず顔を真っ赤にしたままのかがみが、

「とりあえず、手ならいつでも握ってあげる。それに、徹夜明けで眠いでしょ? バスの中だけなら肩貸しておいてあげるから」

 と言って、私の方を見つめながら手を差し出して来た。
 ……そういう事を素でしてくるから、気が抜けないんだよね。かがみんは!
 主に理性的な意味でだけど。


☆☆☆☆☆



 かがみの髪はいつも良い匂いがする。
 香水では出せない、世界でかがみしか出す事の出来ない唯一無二の甘い香り。
 二人分の座席に腰掛け、さっきの約束通りに、かがみの肩に頭を乗せ目を閉じてみれば、暖かな手が私の髪を撫でてきた。
 たった、これだけで私の心は幸せ一色に満たされてしまう。

 付き合い始めてから、私とかがみは大きく変わった。
 かがみは一言で言い表すなら――とても優しくなった。
 それまでも、なんだかんだでツンデレキャラだったけど、今では完全に「ツン」と「デレ」の比率が1:9ぐらいに変化しているのだ。(泉こなた調べ)
 まぁ、あくまでも私限定で、だけどね。
 この間、この調査結果を元に本人をからかってみたら「あんたの好きなツンデレ風に説明するなら、『べっ、別に、あんたの為にやってるんじゃないからねっ! 私がそうしたいからそうしてるだけなんだからっ!』って事かしらね。要するに、私がそうなるぐらいこなたを愛してるって事よ」と、さも楽しそうに答えられた。
 無論、その日はかがみを家には帰さなかったんだけどねっ!

 で、素の状態でもオーバーキル気味に愛しいかがみに、こうもデレ全開で来られると、本当に私の理性が持たないんだよねー。
 おかげで、今では「私の方が常に暴走してる~」みたいなレッテルが貼られてて、「どことなくクールなオタク」を標榜していた私にとっては非常に不本意というか、まさにキャラ崩壊の危機的状況な訳ですよ。
 まぁでも、当のかがみは、私のそういう部分も満更では無いみたいで、結局、お互い今の状況に満足してるんだけどね。

「……ホント、かがみとコンビニがあれば生きていけそうな気がするよ」
「はいはい」

 目を閉じたまま私がそう呟くと、苦笑交じりのそんな声が聴こえた。


☆☆☆☆☆



 バスの車内で十二分に傷ついた体と心を癒され、朝の授業を八割近く居眠りで過ごした私は、昼休みにはすっかり再起動して、いつものように屋上にビニールシートを設置して、かがみと二人で特製のお弁当を食べる事にした。
 今頃、中庭のベンチではつかさとみゆきさんが、こちらと似たような雰囲気を醸し出しながらお昼を食べている事だろう。
 それにしても、まさか私達よりも先に、あの二人がフラグを立てていたとは、今でも信じられないよね。
 というか、あの二人は天然過ぎて、逆にそれらしい反応が無かったんだけどね。
 今でこそ、「ああ、ちゃんと好き合ってるんだな~」と分かるぐらいにお互い積極的になった――登下校を別々にしたいと言い出したのもつかさからだったっけ――けど、肝心のかがみは早い段階で気づいていたって言うんだから、やっぱり双子の姉妹って凄いよね。
 ちょっと、ジェラシー感じちゃうなぁ……。

「お~い、急に手が止まったけど、どうしたんだ?」

 おっといけない、お腹を空かせた怪獣かがみんが凶暴化しない内に、お弁当を広げないとね。
 ごめんごめんと笑って謝りながら、私は二人分の料理は余裕で入るぐらいの大きな重箱の蓋を開けた。
 今日のお弁当の中身は、過去にかがみが美味しいと褒めてくれた私の手料理ばかりだ。
 さて、今回も褒めてくれるかな。かがみんは?

「おおー、今日はやけに頑張ったじゃない。いつもは寝坊したとかで、冷凍物のお惣菜ばかり入ってるのに」
「むぅ……後半の一言が余計だよ。かがみん」
「だって、実際問題、毎日お弁当を持ってきてくれてる割に、本当にあんたの手料理を食べる機会が少ないんだもの。酷い時にはコロネ二人分で済まそうとするし。……私はもっとこなたの作った物が食べたいのに……」

 そこまで言って、拗ねたようにそっぽを向いてしまうかがみ。
 うわっ、完全に薮蛇引いちゃったよ……。でも、拗ねたかがみは死ぬほど可愛いなぁ。

「ご、ごめん、かがみ。今度からはもうちょっと頑張るからさ……。今日みたいなのはさすがに毎日は無理だけど」
「……とりあえず、コロネだけってのはやめてくれない? お弁当楽しみにしてるのにあれが出てくると凄くがっかりするんだからね! ……それに、あれだとすぐにお腹が空いちゃうし」

 ……それって、どっちかというと後者の理由の方が大きいんじゃない? と思ったけど、それを口に出すと今度はスネークじゃなくてドラゴンが飛び出してきそうな雰囲気なので、黙っておくことにしよう……。
 だけど、その時の私は、ここでは全く関係の無い――ただ単純にかがみとやってみたくなった――妄想が化けて出てきて、

「あー、でもさ、かがみ。コロネはコロネでポッキーゲームみたいに端と端から食べ合いっコしたら、一つで二度甘いっていう裏技がだね――」
「そういうのは、おやつの時でも出来るから。その時にやりなさいよっ!」
「えっ、じゃ、じゃあ、今度からはおやつ用にチョココロネを持ってくるから、そうしたらそういう事もやってくれるって事だよね!?」
「うん。それなら毎日持って来ても許してあげるわ」

 ひょんな事から私の欲望がみなぎった所で、かがみのお腹が「きゅ~っ」っとなんともまあ萌えな声を上げた。
 途端に顔を真っ赤にして、両手でお腹を押さえるかがみにも萌えたけど。

「色々と話が脱線しちゃったけど、かがみ様のお腹ももう待ちきれないみたいだし、食べよっか?」

 ニヤニヤしながら私がそう聞くと、すっかりしおらしくなったかがみがコクリと首を縦に落とした。


☆☆☆☆☆



 今日の5時間目は体育だ。
 ウチの学校、体育や家庭科はいつもクラス合同でやるから、これだけはかがみと一緒に授業を受ける事が出来るんだよね。
 そんな訳で、「二人組を作れ」という先生からの指示が出ると、いつも私は真っ先にかがみの元に駆け寄る。
 別々のクラスだから、こういう貴重なイベントは全部潰して行かないとね。
 今の私は、かがみとの思い出をフルコンプする事に対して手段を選ばなくなっている。

「位置についてー、よーい!」

 だから、かがみと数百メートル離れたスタート地点から、一秒でも早くかがみの元へ辿り着けるよう、私は風を切るようにしてトラックを駆け抜けた。

「やっぱり、あんたは速いわねー」

 ゴールした後、私のタイムを計っていたかがみがストップウォッチを眺めながら、感心していた。

「前につかさも言ってたけど、ホントに陸上部とか入ったら大活躍出来るのに、勿体無いわね~」
「だって、部活に入るとさ――」

 ――ゴールデンタイムのアニメが見れないじゃん。
 昔の私なら臆面も無くそう答えていただろうね。
 でも、今の私なら、全く別の答えを微笑みと共に用意する。

「四六時中かがみとイチャイチャ出来ないじゃん!」
「なっ! な、何言ってんのよ。バカ、恥ずかしいじゃない……」

 だってさ、こうやって、言葉とは裏腹に満更でもない表情のかがみを見てたら、他のどんなアニメも味気なくなっちゃうんだよ?
 だから、“かつての楽しみを奪った”かがみにはこれからも責任を取って貰わないとね――。




 かがみと共にある日常。
 私はそれだけで毎日が幸せだ。

 週末は久しぶりにかがみをデートに誘おう。
 別に場所はどこでもいい。
 かがみと一緒ならどこだっていい。
 ――そういえば、最近暖かくなってきたし、天気予報が晴れだったら広い公園にでも出掛けようかな?
 私が早起きして、また手作りのお弁当を作って、そのご褒美に膝枕して貰って、またあのかがみの匂いに包まれながらうたた寝をして――。

 まだ相談してもいないのに、それだけで私の心は羽が生えたように軽くなる。
 そうなるぐらい、私はかがみが好きなんだ。

 ……さて、そうと決まれば早速、まだ私の隣で顔が綻んだままの恋人に声を掛けてみよう。
 でも、その前に、今どうしても言いたくなった言葉がある。

「ねぇ、かがみ?」
「なぁに、こなた?」

「――大好きっ!」


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  • おぉう…。何て幸せなこなかが話だ。 -- 名無しさん (2013-02-14 16:43:51)
  • 甘い! 甘すぎるわっ!! -- 名無しさん (2010-04-30 17:04:20)
  • GJっす -- 白夜 (2010-04-08 22:55:48)
  • ホットミルクのようなssですわね。
    あったかくて甘い。 -- 白夜 (2010-04-08 22:55:11)
  • やっぱり、カローラ氏のssは読んだら幸せな気分になれます。
    ありがとう。 -- 名無しさん (2010-03-31 00:45:50)
  • すっかりこなたもリア充だなw w w
    だがそれが良い。 -- 名無しさん (2010-03-29 21:24:18)
  • いいですねぇ…このほのぼので甘々でラヴラヴは。
    そしてみゆつかも幸せそうでGJ!
    きっと学校のどこかではみなゆたが同じような雰囲気を醸し出してるんだろうなぁ…
    こんな陵桜なら学生生活をやり直してみたい… -- こなかがは正義っ! (2010-03-29 12:40:19)
  • (*´Д`*)あ、甘ーい! -- 名無しさん (2010-03-29 03:51:43)
  • うほっカローラ氏の新作キタコレ
    この設定だとみゆつかに先を超されてるのねww
    やっぱりこういうほのぼの甘々が良いと思いますgj -- 名無しさん (2010-03-29 01:27:01)
  • 読んでいて温かい気持ちになりました。gj -- 名無しさん (2010-03-29 00:35:52)
  • ラブラブな日常が伝わってくるな~。読んでてにやけてる俺に気付いた今日この頃。GJです!! -- kk (2010-03-28 20:45:44)


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