こなた×かがみSS保管庫

こんなに好きなのに (4)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 冬の厳しい寒さに手がかじかみ、私は白い息を吹きかける。

 新しい年、別れの年だった。

 神社の境内で私が開いた手帳には、そっと挟んだ写真達。
 気付いたら、こなたばかり集めていた。

 私って馬鹿だな。

 本当にそう思う。
 友達に混じってはしゃぐこなたの姿──

 ──私だけのものならいいのに


 そんな風に思うなんて、本当に、私は馬鹿だ。
「お姉ちゃん?」
 不意にかけられた声に、飛び上がりそうになる。
「おぅわっ?! つかさ、いつからここに?!」
「ついさっきだよー」
「いきなり声かけられたら、びっくりするじゃない!」
「へへ~、ごめん」
 つかさは無邪気に笑う。悩みがなさそうでいいな、なんて思うのは、酷いかな?
 今日は、初?詣の日だった。
 実際には私達は巫女として初詣の日は働いていたので、三が日は過ぎている。
 それでも、一緒に初詣がしたい、とこなたが私達に言ったのだ。
 それだけで変に期待してしまう私は、やはりどうしようもなく愚かなのだった。
「こなちゃん達、おそいねー」
「まーたどうせ、ゲームで寝坊でしょ」
「でもお姉ちゃんさ~、どうしてこなちゃんの写真、そんなに集めてるの?」
「ぶほぅっ!?」
 み、見られていた!?
 これはもう、こ、殺すしか……。
「お姉ちゃん!? 顔が怖いよ!?」
「……べ、別に集めてないわ。たまたま、あいつと一緒が多いから、そうなってるだけよ」
 つかさにも、誰にも、自分の気持ちを知られる訳にはいかない。
 私だけの秘密。
「ふ~ん、でもお姉ちゃん、ほんとこなちゃんのこと好きだよね~」
 これは、いよいよ殺すしか……。
「目!? 目が怖い!? だってさっきもお姉ちゃん、こなちゃんの写真眺めてたから……」
「そ、そんなことないわよ!」
「お姉ちゃん、よくこなちゃんの話をするし……」
「そんなことない! この話、もうおしまい!」
 無理に話を打ち切る。顔が熱い。
 しかもそこへ、話題の主がやってきた。
「おーい、かがみん、つかさ~~」
 こなたがこっちに向かって走ってきて、その背後にはみゆきの姿があった。
「お待たせ~」
「いや、予想よりは早いぞ。みゆきと一緒だし」
 みゆきさんは、うふふ、と笑って私を見る。
「泉さん、かがみさんに早く会いたいと走ってしまわれて、少し汗をかいてしまいました」
「ちょ?! みゆきさん!?」
「なんだか羨ましいです。お二人は仲が良くて」
「も、もう、何してるのよこなた、恥ずかしいじゃない!」
 本当は、嬉しい。
「みゆきさん、バラさないでよ~」
「うふふ、すいません。なんとなく漸く発言できたというか、今まで全く台詞が無かったというか、
 私と二人きりよりかがみさんに会いたいとか酷いんじゃ? なんて全く思いませんが、バラしてしまいました。うふふ」
 出番の無い人間に悲しみは尽きない……!
「「マジすいませんでした……!」」
 出番ありまくりの私達は謝るしかなかった。
「いいんです、それより早くお参りしましょう。私、出番が増えますように、って神様にお願いするんです。うふふ」
 切実過ぎる……!
 私達四人は並んで神社に参拝し、賽銭を投げてお祈りする。
 こなたは、何を願うのかな?
 そして、私は……。
「かがみんは、何をお願いするのカナ~~?」
「ちょ、ひっつくな! あんたこそ、何をお願いするのよ?」
「へへへ」
 こなたは、にこっ、と笑った。
「これからも、みんなと一緒にいられますように、だよ!」
 そういうこなたは真っ直ぐで、私は自分が嫌になる。
「受験とか祈っておかなくていいのかー?」
「うお?! 新年早々思い出したくないことをかがみが言ってくるよー!」
 だって、私の願いは──

 ──こなたと一緒にいれますように、だから。

 新しい年、別れの年が始まる。

 新学期が始まる。

 私達の高校三年間最後の季節。
 私とこなたはまだ、ただの友達だった。
 昼間に会えばふざけあい、軽口を叩き合う『親友』
 それでいいんだ、って自分に言い聞かせようとしても、動揺する心は消えなくて。
 こなた……。
 目を瞑ると、こなたの姿が浮かぶ。
 いつの間にか、ずけずけと私の心に踏み込んで、すっかり居座ってしまったあいつ。
 気付けばこんなにも、好きになってた。
 こなた……
 どうしても声を聞きたくなると、受話器片手に理由考えて、無理矢理に電話してしまう。
「あ、こなたいますか?」
 こなたの家に電話をかけると、ゆたかちゃんがこなたに電話を取り次いでくれる。
「お、どうしたんだい、かがみんや、最近よくかけてくるねー、私の声が恋しいかね?」
「んな訳あるか! 馬鹿!」
「いやいや、かがみんは意外と寂しがりやだからねえ、卒業も近いじゃん?」
「べ、別に、関係ないわよ」
「かがみんは可愛いねー」
「明日会ったら殴る」
 私達はいつものように下らない話をする。
 からかってくるこなたが辛くて、素直な気持ちをぶつけたくなって、でも、それは出来ない。
 こなたはたぶん、私のことを友達としてしか、見ていないから……。
 ねえ、こなた。
「かがみ?」
 不意に訪れる沈黙。
 私、こんなにこなたが好きなんだよ?
 途切れる会話の中でこの気持ちに気付いてよ。
 お願い。
 私の胸が痛みで切り裂かれる前に。
「何でもない」
 と私は笑った。


 私とこなたは、まだ、親友の形から出る事が出来ない。



 伝えたい言葉
 たったひとつ

 私はあの夜を無かった事に出来ない。
 もう、自分の気持ちに気付いてしまったから。
 こなたは、女の子同士とか、気持ち悪いのかな。
 そういうケはないって言ってたこともある。
 望みは絶望的で、私だけがこなたを好きで、どうしようもなくなっていく。

 時間が、止まらない。

 別々の進路を行く私達の時間はもうすぐ終わろうとしている。
 だから私はこの気持ちを忘れなければいけないのだろう。
 駆け足で過ぎていく時間の中で、こなたの姿が眩しく目に焼きつく。
 どうしていいのか分からない。
 私は時間においていかれないように走り出そうとする。
 でもこなたへの想いが大きすぎて、私は、走り出す事が出来ない。
 このままじゃ、卒業なんて無理だよ。
 言わなきゃ後悔する?
 言っても後悔する?
 答えは、見えないままだ。

 それでも、卒業の時は来る。

 いつもの朝、制服に身を包んだ私は、結局、自分の想いを心の奥深くに沈める事にした。
 女の子に告白されたって、きっと、こなたは困るもの。
 だから、我慢するしかない。
「お姉ちゃーん、起きてるー?」
「いま行くー!」
 私は今日、陵桜学園を卒業する。

 時の流れの速さに逆らう事は誰にも出来ない。
 いつもの通学路も、もう通る事のない道だと気付くと違って見える。
 私の高校三年間は、不思議なくらい、こなたが傍に居た。
 戻れない道、戻らない道。
「今日で卒業だね、お姉ちゃん」
「そうね……」
「楽しかったなー、高校生活」
 色んな事があった。
 でも、でもつかさの言う通りだった。
 「うん、本当に楽しかった」
 こなたがいて、私がいて、つかさがいて、みゆきがいた。
 この三年間が本当に楽しい宝物だった事は、絶対絶対揺るがない。
 きっと、永遠に忘れない。
 夢みたいな時間。
「行こ、お姉ちゃん」
「うん……」
 この道の先に、こなたが待っている。
 私の高校生活を誰かに託すとしたら、それは、泉こなたしか居ない。
 泉こなたに始まり、泉こなたに終わる、か。
 何だか笑っちゃう。
 私は、強く一歩を踏み出した。



 卒業式は恙無く終了した。
 長い長いその儀式の間、こなたはウトウトして先生に怒られたり、私達はただ黙々と今までの三年間をかみ締めてそこに居た。
 貰った卒業証書は驚くほど軽いただの筒で、こなたはそれを引き抜いた時になる、ぽん、という軽い音で遊んでいた。
「私達の高校三年間、案外軽いね」
「そういうもんかもね」
 紙一枚だけ入った、ただの筒。
 たぶん、本当の卒業の証は、自分の内にしかないのだろう。
「終わっちゃった……か」
 もう明日から、この校舎に来る必要は無い。
 自分の教室で、桜庭先生の最後のHRを聞いて、それでお仕舞い。
 でも私は何故か、立ち去りがたくて、暫くぼうっとしていた。
 多分、私には、遣り残した事があるから。
 でもそれは、永遠に遣り残すこと。
 私の想像の中で、二人の女の子は想いを伝え合い、誰よりも愛し合い二人で居る。
 現実では、ただの友達。
「こっちのクラスより、こなたのクラスに居た時間の方が長かったりしてね」
 私は席を立ち、こなたのクラスに向かった。
 多分もう、この時間なら誰もいない。
 私だけが、ここで遣り残した事があったから。
 そう思った。
 教室の扉を開ける。

 春の風の匂いがした。
 開けられた窓から入る新緑の風。
 長い長い髪がなびいた。
 窓枠に腰かける少女がこちらを振り返り、照れたような笑みを浮かべる。
 泉こなたが、まだ教室に残ってそこに居て、私を見ていた。
 まるで、私とこなたに与えられた、最後の時間みたいに。
「あれ? かがみ、帰ってなかったんだ」
「あんたこそ……」
 教室には、私達二人しか居なかった。
 中に入って、思わず、鍵をかける。
 この時間に、私達以外の誰も入って来れないように。
「なに? かがみ、感傷に浸っちゃった?」
「あんたは、どうなのよ」
「さすがの私も、制服着るのが最後だからねぇ、制服は萌えの固まりなのだよー」
「あんたはいつもそれだな」
 軽口をたたきながらも、滲む心は隠せない。
 こなたも、遣り残したこと、あるのかな?
 それが、それがもし、私とのことだったら、と夢見ずに居られない。
 私は馬鹿だ。
「かがみんの、最後の制服姿GET!」
「あ、こら、何勝手に写メとってるのよ!」
 携帯を取り上げようと、こなたに近づく。
 すると、こなたがいきなり抱きついてきた。
「おおー、かがみんは柔らかいなー」
 いつもなら、どこ触ってる、と怒って振り払う場面だった。
 でも出来なかった。
 いつも、いつも、こんな風にからかって。
 私が、どんな気持ちだったか……。
「あれ? かがみん?」
 私は、こなたを強く強く抱きしめかえした。
「え?え?」
 最後の機会。
 そう思うと私は、自分をコントロールできなくなっていく。
「覚えてる? こなた、あの、泊まった夜に、私とあんた、キス……したじゃない」
 もう、引き返せなかった。
 あふれ出した思いを、元に戻す事は、誰にも出来ないんだ。
「あれは……」
「ずっと! 忘れられなかった! なのにあんたは、いつもいつも、私をからかって! 私が、どんな気持ちでいたか、あんたには分かんないでしょ!?
 好きになっちゃ駄目だって、ずっと、ずっと思ってたのに!」
 ずっと、思ってた。
 こなただけを、ずっと。
 私達は光差す教室の床に倒れこむ。
「か、かがみ……」
「いつも、こなただけを見てた。一番近くで。優しくされるたびに切なくなって、冷たくされると、なきたくなって、気付いたら、私、こなたのこと……」
 きっと私は、必死な顔をしているだろう。
 でも押し倒されたこなたも、いつもは見せない焦った顔をしている。
 私は、あふれ出した思いに押されるようにして。

  こなたに口づけた。

 こなたは、抵抗しなかった。
「好きなの、誰よりこなたが好きなの、卒業して、全部忘れようと思ってた。でも、あんたが、いつもみたいにからかうから、私……」
 もう、こなたしか考えられない。
「かがみ……私だって、私だって!」
 いきなり、こなたが私をはねのけ、押し倒した。
 驚きに私は固まる。
「私だって、ずっとかがみが好きだった! どんなにからかっても、いつか彼氏が出来て、笑顔でかがみを見送らなきゃいけないんだって思ってた! 
 あの夜、あんな風になっても、何かの間違いだって、そう思い込もうとしてたのに! かがみがそんな風に言ったら、私……! 
 だって、だって女の子同士なんだよ!? みんなに、気持ち悪いって思われちゃう……」
 私はこなたの眼を見た。
 揺れる瞳。
 私は、もう、迷わない。
「関係ないよ」
「え?」
「みんななんか関係ない。私にはこなたしかいないから……!!」
「かがみ……」
「こなた……」
 そして私たちは、それが全く自然なことみたいにキスをした。
 忘れることができないくらい優しく、そっと。
 抱き合ったぬくもりが、強く強く私たちを包んでいたのを覚えている。
「かがみ……!」
 もう、私たちは止まる事ができない。
 求め合うのが自然な事みたいに、互いの体をまさぐり、服を脱がしていく。
「こなた……」
 興奮に眩暈がして、私は何度も何度もこなたに口づけられながら、互いにその体を撫で、服を脱がしていく。
 もう、戻ることはできない。どうしても、できない。
 そして遂に互いに生まれたままの姿となった私たちは、互いに貪るように体を重ねた。
「かがみ……!」
「こなた……こなた!」
 激しく、どこまでも落ちていくように私はこなたを求め、こなたもまた私を求めた。まるで二頭の獣になったように、私たちはただただ互いを求め合った。
 互いの汗で濡れ合い、湿った音を隠しもせず欲情しあう私たちは、際限なく行為に没頭し、名前を呼び合い、口づけた。
 そして遂に上り詰めるそのときに、痙攣するように互いに震えながら口づけあい、強く強く抱きしめあって私たちはその充実した幸福な感覚の中に落ちていった。

  こうして、私達は、結ばれたのだ。





 別々の大学に進学したけど、私達は変わらなかった。
 今でもしょっちゅう会うし、仲も良い。
 特にこなたに関してはその、恋人、同士だし。
「いやー、卒業すると何か終わっちゃう気がしてたけど、そうでもなかったねー」
「まあな、区切りがあると、変に焦っちゃうよな」
 現実なんて、こんなものかも知れない。
「でもそのお陰で、こうしてかがみとラブラブ出来るよー」
「こら、ひっつくな!」
「えー、バカップルになろうよかがみー」
「い・や・よ、もう、油断するとすぐひっついてくるんだから」
 いつものような私達。
 少しだけ違うのは、もう私達の間にはいかなるひずみもなく、恋人という形に納まったこと。
 きっと次にウサギの夢を見るとき、ウサギはキツネと結ばれ、いつまでもいつまでも末永く幸せに暮らすのだろう。
 めでたし、めでたし。
 だって、それが一番じゃないか?
「かがみ、新しいゲーセンがこんな所に!」
「もう、はしゃぐなよな」
「早く早く!」
 私達は変わらない。
 幾多の困難があっても、この先も、きっとずっと変わらない。
 私はこなたの手を握り返して歩き出した。

 今までよりも、ずっと素直な気持ちで。






コメントフォーム

名前:
コメント:
  • GJ!!(´༎ຶོρ༎ຶོ`)b -- 名無しさん (2023-08-24 02:06:44)
  • かがみんこなたと逢い引きですね!この恋続くと良いですね -- かがみんラブ (2012-09-14 22:44:27)
  • 結婚式には呼んでくれー!! -- 名無しさん (2010-06-26 07:56:40)
  • 続きあったんですね!


    幸せになれて良かったよー!! -- 名無しさん (2010-06-25 19:51:37)
  • なんかユメにみたシーンでした!
    すごいドキドキでした!! -- プリン (2010-02-08 20:18:24)
  • 教室のシーンで谷口が再生された俺は負け組 -- 名無しさん (2010-01-22 20:49:16)
  • リリカルで良かったgj! -- 名無しさん (2010-01-10 04:05:37)
  • 作者様、4作にわたる大作ありがとうございます! 涙が止まりませんでした。 -- 名無しさん (2010-01-07 00:52:01)
  • やったーっ、2人に幸あれ。
    作者様、ハッピーエンドで泣ける作品をありがとうございます。GJ -- kk (2010-01-05 00:30:30)




投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー