こなた×かがみSS保管庫

リミテッド エイト

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匿名ユーザー

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「あ、そういえばもう17日だ」

私は剣を振りつつ――もとい右手でパソコンのマウスをクリックし続けながら、左手で携帯を開いた。
8月17日、1時13分。
そう携帯の画面には表示されている。
ネトゲの中ではまだ昼間だが、リアルではとうに深夜だ。
本当は画面を見ずとも、昨晩の(感覚としては『今日』なのだが)夕方に送り火をしたことから、その次の日が17日であることは分かりきっていた。
ついでを言えば、あの熱い暑い『三日間』が終わったのも16日なのだから当然である。
「……ぐぬぬ」
何がぐぬぬだ。
と、ツッコミをセルフサービス。
きっと『彼女』がいれば、そんなことをせずともすんだのだが、悲しいかな今部屋にいるのは自分だけだった。
少しばかりおセンチな私の呟きは反響することなく宙に消える。
誰かとパーティーを組んでいたのなら、チャットに書き込むこともできるのだが、残念ながら画面でモンスターを殴り続けているのは私のキャラクターだけだ。

――侘しい青春ね。
終業式から随分とご無沙汰している『彼女』のツッコミ。
頭の中で自動的に再生された『それ』をすかさずリフレクで反射する。
ふっふっふ、私は既にリフレクトリングを装備しているのだよ。
「そんなこといったって、かがみだってゴロゴロしながらラノベでも読んでいるんじゃないの?」

――……
もちろん、リフレクが反射するのは一回だけで、返答などあるはずがない。
「……むー」
やっぱりナマかがみんじゃないと詰まらない。
かがみはもう寝てしまったのだろうか。

はふー、とため息を一つついたところで、画面の中の私がモンスターに止めを刺した。
「今日はもう止めよ」
ソロ狩りのせいかなんだか気乗りがしなくって、サクサクっとログアウトをしてパソコンの電源を落とす。
そのまま携帯と一緒にベッドにゴロリと寝転がって天井を見上げた。

「……夏ももう終わりか」
そうぽつりと呟く。
あれ?
この台詞、どこかで聞いたことがある。
既視感(デジャヴュ)ってやつだ。
「おおっ!!『アレ』か!!!」
ベッドに俯せのまま、匍匐前進でリモコンに手を伸ばし、テレビとHDレコーダーを起動する。
するとテレビには何度となく――正確には8回も繰り返してみた画面が映り、何度となく聞いたモノローグが流れる。
これで私が『17日』という日付に反応したことにも納得がいった。

「まさにあと二週間な訳だ」
たしか二学期の開始は9月の1日。
残念ながら私の周りに宇宙人も未来人も超能力者もいないので、ループが発生することはないだろう。
まあ未来人並のスタイルを持つ完璧超人たる友達はいるが……
「ひょっとして、私には自分でも気づかない隠された能力を持っていたりしたりしなかったり!!」

――……はぁぁぁ。
ですよねーwww
呆れたようなかがみのため息と表情が脳内で再生される。
それはそうだ。
少なくとも過去10回、そんな奇跡は起こらなかった。
まさか今年の夏だけ限定で、ということはないだろう。
奇跡は起きます!起こしてみせます!!
などと言ったところでガッツも精神ポイントも足りない。

もし――もしも『この夏』がもう一度やってくるのなら、私はいつまでもそれを待ち続けるだろう。
でもそんなことはあり得ない。
『終わらない8月』なんてアニメ以外にはあり得ないのだ。

――夏は夏らしく、夏じみたことをしないといけないの!!

テレビの中で、かがみと同じツンデレキャラが叫んでいる。

――失った時間は決して取り戻すことは出来ないのよ!

そうだ。
誰であろうと過去に戻ることなど出来ない。

――だから、今やるの!!

後悔しないように。
友達と、そして大好きな人と一緒に過ごすのだ。

――このたった一度きりの……
「……の夏休みに」

そこで私はHDの再生を止めた。
そして携帯電話を開く。
時間は1時半少し前。
かがみはもう寝てしまったのだろうか。
「ううん、きっと起きてる」
そんな予感がする。
それどころか、きっと――という私の考えを肯定するかのように携帯が振動した。
思わず嬉しくて息がはずむ。

着信の相手が誰かなんて見なくても分かる。

大きく深呼吸をして、速くなった動悸をなんとかして静める。
私は頭の中で、以前買った水着をどこにしまったかを思い出しながら通話ボタンを押した。



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  • GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-23 08:50:52)
  • おねえちゃんでんわー -- 名無しさん (2010-10-07 21:17:05)

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