貴女との再会にはホットチョコで(後日談)

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貴女との再会にはホットチョコで(後日談)

私-柊 かがみは、随分とぬるくなってしまった、ホットチョコをほんの少し口にして、こなたに向かって呟いた。ほんの少し意地悪を込めて、不機嫌そうに。
「あんた、キスくらいは彼氏作りまくってたんだったら、うまいもんだと思ったけど・・・」
不機嫌そうに言ってやったのに、こいつときたら、いけしゃあしゃあとまぁ、
「いやー、かがみの事を思い出すとさ、キスなんて、出来なくて。ましてやその先なんて、おかげさまでまだ…むぐっ」
と、危ない発言まで、かましそうになってくれる。
「その先は言うな、いくら個室でも隣に聞こえるから」
私達は、結局ホットチョコをもう二つオーダーして、それが来てから何度も口付けを繰り返した。あれから三年、卒業式の後のしょっぱい口付けが甘い思い出に変わるまで、何度も、何度も…いっそ舌を絡ませてしまいたいくらいだった…が、お互いそこまでは望んではいないのだ。ただ、重ねるだけで良い、それだけで、私達の溝は埋まって行く。
 最も、私は、こなたがもっと、キスが上手いと思ったのだけれど…正直、当てが外れた。こいつときたら…全く、はぁ。私にだってほかの誰かとの経験が無いわけじゃなかったけど、付き合ってきた人数だけを言うなら聞いた話、こなたは、桁が違うわけで。と言っても、私の場合…彼氏じゃなくて、後学のためだって酔った私に、酔ったあの先輩が勢いで教え込むように襲われただけだけど。
「あんたは、バンパイアか…。キスってのは吸い付く事じゃないのよ」
最も、吸い付きたいと言うのは多分、お互いもう二度と離れたくないと言う事だと思うけど、おかげで唇が真っ赤になって少しヒリヒリする。
「いやーかがみエキスを補給したくて、ね!」
「いや、エキスとか表現おかしいから」
こうしていると三年も会っていなかったなんて、嘘みたいだった。
「ふぅ、最初は緊張したけど…かがみが普段通りで良かったよ」
こなたも少しだけホットチョコを飲んで、ふぃ~っと一息ついた。そこを狙って、そのまま唇を奪った。
「か、かがみぃ?」
すぐに離したのだけど、びっくりして驚いているこなたを見るのは少し愉快だった。
「チョコと私とどっちが甘かった?」
なんて事を聞いてみると、顔を真っ赤にしてモジモジしてる。顔が真っ赤なのは私も同じだろうけど…ね。
「か、かがみかな。…というわけで!」
急にこなたが立ち上がってダンとテーブルをたたいた。その行動にあっけに取られているうちに今度は、私が唇を奪われた。こなたの体躯は殆ど変わっていないのだ。体を伸ばしてもテーブル越しでは多分、辛い。
 私は、軽く目を瞑ると、こなたの肩を抱いて少しだけ体を起こす。こなたも私の肩を抱いて、その口付けは長いものになった。
 しばらくそのままで…終わりは名残惜しい。唇にあった温もりが離れて、こなたの体が離れて、私達は再びテーブルを挟んで腰を下ろした。
「チョコと私とどっちが甘かった?かがみんや」
さっきの仕返しだと言わんばかりだったから、はっきり言ってやった。
「こ・な・た」
あぅ、それは…かがみらしくないよ、というかデレ期前線発生中なんだろか、とかモゴモゴと、こなたは真っ赤になって喋っていた。
「そろそろ、待ち合わせに遅れるにしても不味いわね」
私は、こなたの方に笑いかけて、腕時計を見る。本当なら、つかさの家についていないといけない時間。
「で、電話してちょっと遅れるって言えばいいじゃん!」
最初と違って、今度はこなたがここから出たくは無いと言わんばかりに口をアヒル口にして不機嫌そうに言った。
「でも、四人出会うのは久しぶりなのよ。やっぱり、遅れたら二人に悪いでしょ?」
「だって、さぁ…ここから出たら、夢から覚めるみたいになくなっちゃう気がしてサ」
何が…なんて無粋な言葉は要らない。
「そうね。でも、覚めないわよ。夢じゃないから」
残りのホットチョコを飲み干してしまう。こなたは、未だカップを持ったまま、中身をじっと見つめていた。
それは、そのコップの中身が、この世の終わりを告げる希望の残量とでも言わんばかりに虚ろな目をして見つめていた。確かに、そのコップの中身が無くなればここを出なければいけない。
私だって…怖くないわけじゃない。やっぱり、三年という溝を埋めるのは難しい。溝を埋めるには溝が出来たのと同じだけの時間が必要だ…ひょっとしたら倍以上の時間が必要かもしれない。
「ねぇ、こなた。私はさ…こなたとずっと一緒にいたいわ。言葉だけじゃ足りないのはわかる、私だって怖いから。キスだけじゃ怖い、そうね、私も怖いから…どうすればいいと思う?」

私は、答えを持っていなかった。だから、優しく問いかける事しか出来なかった。
 しばらく、虚ろな目でカップを見つめていたこなたは、何を思ったのか、コートを羽織って持ってきていたナップザックを背負った。
 こなたが私を見る。その目は同じ様にここを出る支度をして欲しいと言っているように見えたので、私もコートを羽織る。
「かがみ、一つだけお願いを、きいてくれる?」
「ん、流石にここの外に出てすぐキスとかは、は、恥ずかしいわよ?」
こなたは、違うよ。それだけ言って、もう一度同じ問い掛けを私にする。
「…一つだけ、お願いを聞いてくれる?」
「内容にもよるけど…大抵の事は大丈夫よ、聞くわ」
そういうと、こなたは、私にしがみ付いて、泣き出してしまった。声を出さず、漏れる嗚咽も何とかこらえて。
 こなたは、幾度、こうして泣いてきたのだろう。私には願う事しか出来ない、この涙がどうか、これで終わってくれるようにと。どうか、これ以上こなたの心に傷がつかないようにと。
「あはは、ごめん、かがみん。いやーなんか、かがみんに会ってからずっと、私らしくないや」
「いいのよ。それも…あんたなんだから」
その言葉に頷いて、こなたは、意を決したように口を開く。
「ここを出る前からずっと、つかさの家について、つかさの家に入るまで、ずっと、手を繋いでくれるカナ?」
私は少し拍子抜けしていた。それでも、こなたにしてみれば、三年間前に拒絶された想い人への願いなのだ。肩が震えて、表情も不安が詰まっている。
「いいわよ。絶対離さない」
「本当に?ずっとだよ、皆が見てる中をずっとだよ。途中でやっぱり恥ずかしいってのは無しだからね?わかってる、かがみんや」
「なんなら、接着剤でくっつける?」
「いや、それはいろいろ問題がある気がするというか、かがみん、それどっちかと言うと私がいうべき言葉なんじゃないかと」
「じゃ、繋ぐわよ」
「え、あ、うん」
私達は手を繋いだ。どっちのコートも手首までの長さしかない。ずっと、見られて行くわけだ。でも、離してはいけない…離してしまえば二度とこの手は、恐らく私の手に戻ってはこないのだから。
「あ、お会計のほうは、芹沢さんがバイト代から引いといてって入ってたから大丈夫ですよ」
片手で何とか財布を開いて、お金を出そうとしていたらそう言われた。
 芹沢さんというのは、私の味方になってくれると言ってくれたあの先輩の名前だ。そこまで気を利かせてくれる人には見えないが実はかなりの世話好きで・・・
「あと、お幸せにと伝言を頼まれましたので、ちゃんと伝えましたよ」
お節介焼きだ。レジを担当していた男の人の視線はすでに冷たかった。
 いいんだ。一人じゃ耐えられなくても、二人じゃ耐えられなくても。私には、あの先輩や、みゆきやつかさがいるのだから。
 きっと耐えていける。

 もっとも、この後が大変だったんだけどね。ここからつかさの住んでいるアパートへ向かうにはバスに乗らなくちゃいけなくて、片手で財布を開けるのは大変なのに。
「あ、こなた。あんた、片手開いてるんだから、財布からカード出すの手伝いなさいよ」
「へっ?あ、うん。でも、かがみんや…視線が痛くないかい?」
「う・る・さ・い。手を離せないだから仕方が無いでしょ?それとも、離して欲しいの?」
「かがみんや…覚悟を決めてるね。財布のどの辺にカードあるの?」
多少もたつきながらバスカードを出して、大人二人と運転手に言えば、珍獣でも見るような目で見ていた。後ろで順番を待っている人もだ。
「すいません、大人二人お願いします。後ろ使えてるんで」
「あぁ、はい。えっと大人二人ね」
運転手はささっとボタン操作をする。そしてカードを通して、バスから降りて今はまだ、咲いていない桜並木を歩くとつかさのアパートなんだけど。
「随分遅れちゃったわね」
「いや、それはそうと、かがみんは……本当に覚悟を決めたんだね」
こなたがこっちを見ていた。そのまま、どちらともなく、口づけをする。桜の木にもたれ掛かってだから、道の真ん中ではないし、人通りがそんなに多いわけじゃない。
 男女のカップルが道の往来で口づけをするのを見て、不快に思った事がある。でも、今は私とこなたがそれをしている。男女のカップルが口づけをするのが不快なら、私達の場合はもっと不快だろう。
「お姉ちゃんっ」
「ふふっ、仲が良い様で。でも、人通りの多い場所で口づけをするのはあまり関心しませんよ」
みゆきとつかさが、私達を見ていた…流石に恥ずかしくなって唇を離す。
「いやーかがみんに食べられる所だったよ、助かったよ、つかさにみゆきさん」
「いや、こなた、あんたも結構乗り気だったじゃない……てか、食べるって私は何だ!?」

つかさは真っ赤になっていたし、みゆきは相変わらず柔和な微笑みを浮かべていた。
「あんまり遅いからちょっと散歩がてらにゆきちゃんと歩いてたらお姉ちゃんと、こなちゃんが、えっと、その…」
「お邪魔して申し訳ないですが、悪気は無かったので許してください」
みゆきさーん、つっかさー、おっひさーと元気に飛びつくのはいいんだけど、手を繋いだままの私は、あっちへ揺られ、こっちへ揺られ、たまったものではない。
 でも、楽しそうなこなたを見ているのは、悪くなかった。四人で笑いあう日が帰ってきたんだから。
 そのまま、昔話や最近の話をしながら、私達は、つかさのアパートへと向かい、玄関をくぐった。
「おめでとう、こなちゃん。良かったね」
「おめでとうございます、泉さん」
つかさのアパートの玄関に入った所で、二人はこなたにそう告げた。
 詳細は省くが、ここまでの道のりを手を繋いでやってくる事は、予め計画されていた事らしかった。
 最も、私とこなたが偶然に出会ってしまったという誤算はあったらしいが、結果オーライだよ、お姉ちゃん!とつかさに誤魔化されてしまう始末。
「つまり、計画的だったわけね?」
「えぇ、かがみさんがつかささんに泉さんの事を相談したときから、私とつかささんで一生懸命考えたんですが、お二人が偶然出会ってしまうアクシデントの性で計画の9割は失敗してしまいましたけど、結果的にお二人が結ばれて良かったと思っています」
「えへへっ、ご、ごめんね。お姉ちゃん」
「いやー、かがみんから被害をこうむるのは多分、私だけだと思うから二人は大丈夫だと思うよ……」
そんなに怖いか…私って。こなた、顔色青いし。
「別に誰にも被害なんて行かないわよ。そうね、確かにこなたには被害がいくかもしれないわね……今日は私の傍から離さないから」
「へっ?」
「今日は、ううん。ずーっと、こなたは私専用。誰にもあげないわよ」
言ってて、自分が恥ずかしくなってしまった。ある意味プロポーズみたいなものなのでは。
「それは、一体どういうことなのでしょう、かがみ様?」
「こなたは卒業したら私のアパートに来ること、異論は認めない。その後の事は私の成績しだいね」
「うわー、こなちゃんとお姉ちゃんって……すごいね」
「ここまでくるのに世間の目に触れたと思いますが、大丈夫ですか?」
つかさとみゆきが別々の意味のこもった言葉を口にする。
 みゆきの言葉の意味は良くわかっている。
「みゆきやつかさは、味方になってくれるでしょ?だったら大丈夫よ。私達は背負って行ける。何よりもう、こなたを離したくないから……」
「えぇ、私達は泉さんやかがみさんの味方ですよ」
「何が出来るかわからないけど、私がんばるから!お姉ちゃん」
欲しかった言葉は聞けた。
 だからもう、こなたを離さない、二度と絶対に。今度はうれし泣きなのか、私から手を離してしがみ付いて、泣き出してしまった。
 私も涙が止まらなかった。嬉しくて、嬉しくて。私達は二度と離さない。二度と離れない。想いは永遠に繋がっていられるのだから。
 私達が落ち着いてから、私達は、高校時代の話や、つかさやみゆきの彼氏の話など、四人での同窓会をたっぷりと満喫した。
 最も、私は、相変わらずアルコールには強くなくて、途中でリタイアしてしまったけれど、とても楽しい時間だった。これからは、都合が合えばいつでも“四人”であえる。
 その幸せをかみ締めながら、私は、眠った。

 余談だが、酔ったこなたは私の頬に、こなた専用と水性マジックで書きやがった……ので、朝それを見た後、こなたの頬にかがみ専用と書いてやった。


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コメント:
  • ええ話や -- 名無しさん (2010-02-28 22:51:53)
  • 予断>余談
    いい話でした、GJ -- 名無しさん (2009-07-19 20:56:27)
  • すっごく可愛いお話でした!正直キュンとした!GJ -- 名無しさん (2009-03-08 22:21:19)


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