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七夕の夜に on Mon」(2023/05/10 (水) 15:39:59) の最新版変更点

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寂寞としている、暗い部屋。 そのベッドの上、私は天井をぼんやりと眺める。 さっきまでの喧騒がウソのような寂寥に、違う世界にいるという勘違いさえしそうになる。 喧騒を作り出していた主は、もう電車に乗っている頃だろう。 明日が火曜日じゃなかったなら………。 そんな、仮定法・反実仮想の文章。 つまり、裏返せば明日は火曜日だから………。 憾んでも、その願いが叶うことはない。 頭ではわかっていても、やはり憾んでしまう。 「こなた……」 今はいないその人の名前が、暗がりに響く。 今日は、私とつかさの誕生日。 受験生ということもあり、今年は去年のようなパーティは開かなかった。 みゆきはお昼休みのときに、私とつかさにプレゼントを渡してくれた。 こなたはこの後2人の家いったときに渡すよ~と言って、放課後、家まできてくれた。 家についてから、こなたはつかさにプレゼントを渡した。 去年のこともある。 今年は少しはまともなものにしたのかしら? 気になるわね………。 こなちゃん、ありがとぉ~! いえいえ~。って言っても、対した物じゃないけどねぇ~。 あけてもいい? うん、どうぞどうぞ。 承諾されたつかさは、破れないように包装紙を綺麗に開ける。 わぁー!お料理のレシピだ~!! あの有名な女王ドールのメニューのレシピ本があったから、つかさにいいかな~って思ったんだよね。 ありがと~~、こなちゃん! 喜んでもらえたようでよかったよ。 つかさの喜びように、そのレシピが本当に良いものだっていうのが感じられた。 その満面の笑顔に、自分の分のプレゼントにも期待してしまう。 それじゃ、次はかがみに……。 そう言って、こなたはプレゼントを取り出そうとする。 あっ、邪魔しちゃ悪いし、私は自分の部屋にいくね。 こなたに貰ったレシピを大事に両手で持ったまま、つかさはそう言った。 別に、そんなの気にしなくてもいいわよ。 私の口から出る、本心とは逆の気持ち。 えへへ、私でもちゃんと分かってるよ。誕生日だもん、恋人同士で過ごしたいよね♪ つ、つかさぁっ! 恥ずかしさのあまり、思わず出る変な声。 こなちゃん、お姉ちゃんをよろしくね♪ お~ぉ~、任せてくれたまへ~。 二人して、何いってるのよッ! つかさは真っ赤になっているだろう私を見て破顔一笑する。 こなちゃん、プレゼント、本当にありがとうね~!それじゃね~。 そう言ってつかさは、自分の部屋へと入っていった。 つかさってさ………本当にいい娘だよね。 閉じられた扉に向かって、こなたが言った。 そう……よ。 私のことを考えてくれてる双子の妹。 その妹に向かって、心の中で言った。 ありがとう、と。 それじゃ、愛しのマイハニーへプレゼントを渡すかね~。 恥ずかしい言い方するな、まったく………。 口とは裏腹に、心の中では喜んでる私がいた。 こんなだから、こなたにツンデレって言われちゃうのかな。 こなたは手のひらよりちょっと大きな包装紙と、口が閉じられた紙袋を出す。 誕生日おめでとう、かがみ。 あ、ありがとう……。 真面目な顔と声に、思わず恥ずかしくなる。 つかさにあげたのに勝っても劣ることはないものだよ。かがみが嫉妬しないようにね。 ば、ばか………。 図星をつかれ、驚いてそれ以上何も言えない。 ちゃんと分かってるよ。つかさには悪いけど、一番はかがみだよ。 こなた…。 私はこなたに抱きついた。 あけてもいい? だめぇー。 な、なんで? 恥ずかしいから。 なんじゃそりゃ。 とにかくダメ。私が帰ってからあけてね。 あっ、そっか。こなた、帰るんだよね……。 そんな単純なことを私はすっかりと忘れていた。 そう、明日は平日なんだから、当たり前のこと。 なのに、それは私の頭の中から根絶されていて、再び現れたとき、涙が出そうなくらいの寂しさに襲われた。 うん、わかった。 私は、浮かびかかった涙を隠そうと、こなたから視線を逸らして頷いた。 それからしばらく、こなたと色々の話をした。 ずっとずっと続いて欲しい幸せの時間。 でも、そんな時間にも、終わりは来る。 逆なのかも。 そんな時間だからこそ、終わりは来る。 織姫と彦星だってそう。 時間が来たら、また離れ離れになってしまう。 …………もうこんな時間なんだね。 こなたが静かに言った。 時計の針を見ると、無情にもいい時間を示していた。 ……そうね。 ………私、そろそろ帰るね。 こなたは、そう言って立ち上がった。 うん……。 それ以上何も言えず、私も立ち上がった。 今日、ありがとうね。 いえいえ、次の私の誕生日の時も、期待してるよん~♪ ま、そうね。アンタ次第かしらね。 心の中はぐちゃぐちゃなのに、ちゃんと振舞えているのが不思議だった。 ね、かがみ。 何? ………今日が、土曜日か金曜日だったら、よかったのにね。 寂しそうな顔をして、こなたはそう言った。 ………私も、同じこと思ってたわ。 そのこなたの顔が少し歪んで見えるようになりながら、私はそう返した。 ………それじゃ、また明日。 ………うん、またね。 小さく手を振り合った後、こなたは暗闇の中にその小さな姿を溶かしていった。 「そういえば、こなたからのプレゼント……」 私は明かりをつけないまま、こなたの誕生日プレゼントを大事に開ける。 こなたが最初に出した手のひらサイズの包装紙。 その中身は、写真の入った写真立て。 HAPPY☆ BIRTHDAY かがみ 写真を立てる上半分には、そう書かれていた。 下半分には、私とこなたがピースしてる写真。 「この写真……この前、不自然に学校にデジカメ持ってきたのはこのためだったのね」 数日前のこなたの奇怪な行動にも納得し、それが自分のためだったことを知ると、一層嬉しくなる。 フレームは手作りなのか、少し不恰好に見える。 でも、そこもまた、嬉しく感じる。 そっとそれを立てかけると、もう1つの紙袋を開けてみる。 その中には、ハート型の長い花瓶と、小さめの笹が一本。 その笹には短冊が1つ。 かがみと 結婚できますように 泉こなた 汚い字でそう書いてあった。 「こなた…まったく……」 呆れたように言う私の声は、震えていた。 紙袋の中には、何も書かれていない短冊がもう1枚と、小さな袋がもう1つ入っていた。 袋のほうを開けてみると、そこには、シルバーの指輪が1つと、メモが1枚。 織姫と彦星が私の願いを叶えてくれるまで、ちゃんと大事にとっておいてね♪ 「なるほど、だから恥ずかしいわけね」 小さく笑う私の顔は、涙が溢れていた。 「こなた………ありがとう……」 私はその指輪を両手でぎゅっと抱きしめた。 何もかかれてないもう1枚の短冊には、きっと私の願いを書けってことなんだろう。 どんなことを書こう? 悩む時間は少しもなかった。 こなたといつまでも幸せに 一緒にいられますように        柊かがみ 私は小さな笹に短冊をつるした。 今頃電車に揺られてるあいつは、私がどんなことを祈ったと思っているんだろう。 そんなことを考えながら、小さく笑った。 私は、窓を開けて、空を見上げる。 黒の世界に流れる輝く河と、その周りを彩る光。 そんな星明りに、2つの短冊が照らされた。 「どうか、願いが叶いますように―――」 私はそう祈りを捧げた。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - こんな名作が2年も前に作られていたとは・・・スイマセン見逃してました。 &br()作者様GJです。 -- kk (2010-08-13 07:48:12) - 心が和むめっちゃいい話でした、こなた視点も是非! -- 名無し (2010-08-13 00:44:55) - こなたの &br()誕生日の方も是非! -- 無垢無垢 (2009-03-07 21:56:22) - めっさ良い話です!!! &br() &br()泣けました(ノ△T) -- チハヤ (2008-07-16 22:59:59)
寂寞としている、暗い部屋。 そのベッドの上、私は天井をぼんやりと眺める。 さっきまでの喧騒がウソのような寂寥に、違う世界にいるという勘違いさえしそうになる。 喧騒を作り出していた主は、もう電車に乗っている頃だろう。 明日が火曜日じゃなかったなら………。 そんな、仮定法・反実仮想の文章。 つまり、裏返せば明日は火曜日だから………。 憾んでも、その願いが叶うことはない。 頭ではわかっていても、やはり憾んでしまう。 「こなた……」 今はいないその人の名前が、暗がりに響く。 今日は、私とつかさの誕生日。 受験生ということもあり、今年は去年のようなパーティは開かなかった。 みゆきはお昼休みのときに、私とつかさにプレゼントを渡してくれた。 こなたはこの後2人の家いったときに渡すよ~と言って、放課後、家まできてくれた。 家についてから、こなたはつかさにプレゼントを渡した。 去年のこともある。 今年は少しはまともなものにしたのかしら? 気になるわね………。 こなちゃん、ありがとぉ~! いえいえ~。って言っても、対した物じゃないけどねぇ~。 あけてもいい? うん、どうぞどうぞ。 承諾されたつかさは、破れないように包装紙を綺麗に開ける。 わぁー!お料理のレシピだ~!! あの有名な女王ドールのメニューのレシピ本があったから、つかさにいいかな~って思ったんだよね。 ありがと~~、こなちゃん! 喜んでもらえたようでよかったよ。 つかさの喜びように、そのレシピが本当に良いものだっていうのが感じられた。 その満面の笑顔に、自分の分のプレゼントにも期待してしまう。 それじゃ、次はかがみに……。 そう言って、こなたはプレゼントを取り出そうとする。 あっ、邪魔しちゃ悪いし、私は自分の部屋にいくね。 こなたに貰ったレシピを大事に両手で持ったまま、つかさはそう言った。 別に、そんなの気にしなくてもいいわよ。 私の口から出る、本心とは逆の気持ち。 えへへ、私でもちゃんと分かってるよ。誕生日だもん、恋人同士で過ごしたいよね♪ つ、つかさぁっ! 恥ずかしさのあまり、思わず出る変な声。 こなちゃん、お姉ちゃんをよろしくね♪ お~ぉ~、任せてくれたまへ~。 二人して、何いってるのよッ! つかさは真っ赤になっているだろう私を見て破顔一笑する。 こなちゃん、プレゼント、本当にありがとうね~!それじゃね~。 そう言ってつかさは、自分の部屋へと入っていった。 つかさってさ………本当にいい娘だよね。 閉じられた扉に向かって、こなたが言った。 そう……よ。 私のことを考えてくれてる双子の妹。 その妹に向かって、心の中で言った。 ありがとう、と。 それじゃ、愛しのマイハニーへプレゼントを渡すかね~。 恥ずかしい言い方するな、まったく………。 口とは裏腹に、心の中では喜んでる私がいた。 こんなだから、こなたにツンデレって言われちゃうのかな。 こなたは手のひらよりちょっと大きな包装紙と、口が閉じられた紙袋を出す。 誕生日おめでとう、かがみ。 あ、ありがとう……。 真面目な顔と声に、思わず恥ずかしくなる。 つかさにあげたのに勝っても劣ることはないものだよ。かがみが嫉妬しないようにね。 ば、ばか………。 図星をつかれ、驚いてそれ以上何も言えない。 ちゃんと分かってるよ。つかさには悪いけど、一番はかがみだよ。 こなた…。 私はこなたに抱きついた。 あけてもいい? だめぇー。 な、なんで? 恥ずかしいから。 なんじゃそりゃ。 とにかくダメ。私が帰ってからあけてね。 あっ、そっか。こなた、帰るんだよね……。 そんな単純なことを私はすっかりと忘れていた。 そう、明日は平日なんだから、当たり前のこと。 なのに、それは私の頭の中から根絶されていて、再び現れたとき、涙が出そうなくらいの寂しさに襲われた。 うん、わかった。 私は、浮かびかかった涙を隠そうと、こなたから視線を逸らして頷いた。 それからしばらく、こなたと色々の話をした。 ずっとずっと続いて欲しい幸せの時間。 でも、そんな時間にも、終わりは来る。 逆なのかも。 そんな時間だからこそ、終わりは来る。 織姫と彦星だってそう。 時間が来たら、また離れ離れになってしまう。 …………もうこんな時間なんだね。 こなたが静かに言った。 時計の針を見ると、無情にもいい時間を示していた。 ……そうね。 ………私、そろそろ帰るね。 こなたは、そう言って立ち上がった。 うん……。 それ以上何も言えず、私も立ち上がった。 今日、ありがとうね。 いえいえ、次の私の誕生日の時も、期待してるよん~♪ ま、そうね。アンタ次第かしらね。 心の中はぐちゃぐちゃなのに、ちゃんと振舞えているのが不思議だった。 ね、かがみ。 何? ………今日が、土曜日か金曜日だったら、よかったのにね。 寂しそうな顔をして、こなたはそう言った。 ………私も、同じこと思ってたわ。 そのこなたの顔が少し歪んで見えるようになりながら、私はそう返した。 ………それじゃ、また明日。 ………うん、またね。 小さく手を振り合った後、こなたは暗闇の中にその小さな姿を溶かしていった。 「そういえば、こなたからのプレゼント……」 私は明かりをつけないまま、こなたの誕生日プレゼントを大事に開ける。 こなたが最初に出した手のひらサイズの包装紙。 その中身は、写真の入った写真立て。 HAPPY☆ BIRTHDAY かがみ 写真を立てる上半分には、そう書かれていた。 下半分には、私とこなたがピースしてる写真。 「この写真……この前、不自然に学校にデジカメ持ってきたのはこのためだったのね」 数日前のこなたの奇怪な行動にも納得し、それが自分のためだったことを知ると、一層嬉しくなる。 フレームは手作りなのか、少し不恰好に見える。 でも、そこもまた、嬉しく感じる。 そっとそれを立てかけると、もう1つの紙袋を開けてみる。 その中には、ハート型の長い花瓶と、小さめの笹が一本。 その笹には短冊が1つ。 かがみと 結婚できますように 泉こなた 汚い字でそう書いてあった。 「こなた…まったく……」 呆れたように言う私の声は、震えていた。 紙袋の中には、何も書かれていない短冊がもう1枚と、小さな袋がもう1つ入っていた。 袋のほうを開けてみると、そこには、シルバーの指輪が1つと、メモが1枚。 織姫と彦星が私の願いを叶えてくれるまで、ちゃんと大事にとっておいてね♪ 「なるほど、だから恥ずかしいわけね」 小さく笑う私の顔は、涙が溢れていた。 「こなた………ありがとう……」 私はその指輪を両手でぎゅっと抱きしめた。 何もかかれてないもう1枚の短冊には、きっと私の願いを書けってことなんだろう。 どんなことを書こう? 悩む時間は少しもなかった。 こなたといつまでも幸せに 一緒にいられますように        柊かがみ 私は小さな笹に短冊をつるした。 今頃電車に揺られてるあいつは、私がどんなことを祈ったと思っているんだろう。 そんなことを考えながら、小さく笑った。 私は、窓を開けて、空を見上げる。 黒の世界に流れる輝く河と、その周りを彩る光。 そんな星明りに、2つの短冊が照らされた。 「どうか、願いが叶いますように―――」 私はそう祈りを捧げた。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!( ;∀;)b -- 名無しさん (2023-05-10 15:39:59) - こんな名作が2年も前に作られていたとは・・・スイマセン見逃してました。 &br()作者様GJです。 -- kk (2010-08-13 07:48:12) - 心が和むめっちゃいい話でした、こなた視点も是非! -- 名無し (2010-08-13 00:44:55) - こなたの &br()誕生日の方も是非! -- 無垢無垢 (2009-03-07 21:56:22) - めっさ良い話です!!! &br() &br()泣けました(ノ△T) -- チハヤ (2008-07-16 22:59:59)

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