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誕生日へのカウントダウン(5月23日-5月27日)」(2023/03/11 (土) 10:39:20) の最新版変更点

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&bold(){&u(){2008/05/23(金) 23:33:15}} 鼻歌交じりに、私は、機嫌良く荷物を旅行用のバッグに詰めていく。 ドキドキと、ワクワクそんな週末、5月23日。 明日は、こなたの家に泊まりに行く。 こなたと、一緒に、いられるんだ。 こなたへの恋を自覚した。 自覚したから、何か変わったのだろうか? 何も変わらない。 この想いは、伝えられない。 伝えられないなら、無いも同じ。 ……いや、同じじゃない。 伝えられず、行き場を失った想いは、私の中で膨れ上がる。 こなたを想うと、体が熱くなる。 こなたを想うと、頭がぼぅっとする。 こなたを想うと、こなたを、想うと……。 今日、こなたのためにお弁当を作っていった。 チョココロネばかりじゃ、流石に体に悪い。 だから、作った。 こなたの嫌いなもずくも入れた。 ――これを見たら、アイツ、どんな反応するかな? そう思ったら、クスッと笑いが零れた。 お昼、こなたの隣に腰掛ける。 この距離感が、堪らない。 これが、恋なのかな。 そう思いながら、お弁当をこなたに渡す。 案の定、こなたは驚いていた。 つかさも、みゆきも驚いていたけど、気にならない。 こなたの反応が、見たかったから。 ――あの~、かがみんや? ――何よ? ――もずくは、勘弁してもらえると、嬉しいんだけど。 ――ダーメ。ちゃんと食べなさいよ? 好き嫌いがあるから、そんなに小さいんだから。 ――うぉっ!?さり気に気にしてる事を……ふんだ、かがみは好き嫌い無いから横に大きくなるんだよ。 ――何ですって! 楽しい。 こなたとの会話が、やりとりが、全部が、楽しい。 ねえ、こなたも、そう思うでしょ? ――そだ、かがみ。 ――ん~? ――先週泊めてもらったお礼にさ、明日、泊まりにこない? ドキン……心臓が、跳ねた。 少し、上目遣いに見上げてくるこなたは、可愛くて、可愛くて……。 私は、少しもそれを見逃したりはしたくない。 視界にはこなたしか入らない。 ……恋を、しているから。 くしゃ、と、こなたの頭を乱暴にかき混ぜる。 こなたの髪から、甘い匂いがした。 ――うん。じゃあ、お邪魔しようかな。 ――よし、決定! 熱い、熱いよ……こなた。 頭は、ぼぉっとするし、こなたの髪に触れた指先からは、軽い電気のようなものが流れてる感じ。 それでいて、視界は澄み渡っている。 こなたを、見ているから……。 こなたの事なら、何でも見たい。何でも聞きたい、何でも知りたい。 だからかな、一瞬、こなたの顔が翳った事にも、気がついた。 本当に一瞬。刹那にも満たなかったかもしれない。でも、確かに、翳った。 何で? こなたに、こんな顔をさせるものは何? こなた、教えて? 私なら、きっと、ううん、絶対、力になれるから。 明日、泊まりに行ったら、絶対、聞き出そう。 そう思った。 壁にかけたカレンダーに×印をつけ、その後でバッグに入れる。 こなたの誕生日へのカウントダウン。一日だって、欠かせない。 本人に見られたら恥ずかしいけど。 明日は、2人きり。 つかさも、みゆきも行かせない、来させない。 だって、私は、こなたに、恋をしているんだもの。 こなたが、欲しいんだもの……。 私は、舞い上がっていた。恋という名の言葉の魔力に、酔いしれていた。浮かれていた。 冷静な自分が、本当にこれでいいのか、と訴える。でも、無視した。 恋してるから。その一言で、他の総てに目を瞑った。 恋。その気持ちの、本当の意味すら、見ることは無く、ただ、ひたすらに、こなたに焦がれていた……。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、4個。 ''} &bold(){&u(){2008/05/24(土) 22:47:44}} 頭の中がグルグルする。 明かりを消して、星明りが支配する、こなたの部屋。 私は、隣で静かに寝息を立てるこなたの息遣いをパジャマ越しに感じながら、さっき、ゆたかちゃんに言われた事を、考えていた。 ――友情と恋愛の違い、か。友情と恋愛で同じこと、か。 何だろう……。 今日、こなたの家に泊まりに来た。 昨日交わした約束。 恋に溺れていた私は、地に足がついていない。 何にも不安なんか無くて、何にも心配する事なんか無くて、ただ、ただ、浮かれていた。 ――いらっしゃい、かがみん。 そう言って歓待の意を示してくれたこなたを見たら、顔が、熱くなった。 思わず、頬が緩みそうになる。だけど、そこは自制した。 そんな所を見られたら、なんてからかわれるか、分かったもんじゃない。 ――オッス、来たわよ。 そう言って、片手を上げるに、留めた。 時間は沢山ある。まだまだ、沢山……。 2人並んで、ゲームをした。 レーシングゲーム。 何時だったか、こなたが、こういったゲームってマシンの動きと体の動きがシンクロするって、言ってた。 だったら、不自然じゃないよね? 肩と肩がぶつかっても。 触れ合った所が、熱い。 でも、決して不快じゃない。 勉強だって、もちろん、やった。 こなたが分からなければ、私は、教える準備は出来ていたし、頼って欲しかった。 こなたのために、何かをしたい。 案の定、こなたは、初めて直ぐに唸り声を上げてペンを止めた。 しょうがないな、と首を振って、こなたの傍に寄った。 ふわ、と香るのはこなたの匂い。甘い、甘い匂い……。 ――どこが分からない? そう聞いた私の表情は、きっと緩んでいた。 そっと、こなたの手を握って言った。 ――言ってくれれば、教えるから。 また、こなたの表情が、翳った。 何で? こなたは、迷っているようだった。 何を? こなたにこんな顔をさせるのは、何? こなたが、口を開いた。 ――あのさ、かがみ……。 その時、ドアがノックされ、ゆたかちゃんが顔を覗かせた。 ――かがみ先輩、ちょっと、いいですか? 内心、舌を打った。 行きたくは無い。こなたが心配だから。 でも、そのこなたに目線で促されては行くしかない。 そうして、私達は廊下に出た。 扉を閉めて、こなたに聞こえないようにして、ゆたかちゃんは、言った。 ――かがみ先輩も、私と同じですね。 何が? と思う。 ――私も、あの人の前に出るとそうなっちゃうんです。 奥歯に物が挟まったような言い方。早くこなたの所に帰りたい。イラっとした。 ――恋だなって、思うんです。恋してるから、嬉しいんです。でも、嬉しすぎて、苦しいんです。 ――え? ――時々、思うんです。本当に、恋なのかなって。 その言葉は、楔のように、浮かれていた私の気持ちに罅を入れた。 ――親友だったはずなのに。友情を感じながら、恋をしているんです。私の本当の気持ち、どっちなのかな……。 ゆたかちゃんの言葉は、冷静な自分が語りかけてくる言葉。 ――友情と、恋。この2つって、何が違うんでしょう? 何が同じなんでしょう? そう言って、ゆたかちゃんは、最後に、 ――その答えが分かったら、私にも教えてください。 そう言って、儚げに、微笑んだ。 さっきまで感じた苛立ちは、消えていた。 こなたの部屋へ戻った。 こなたは、私の顔を見て心配そうに言った。 ――大丈夫?かがみ。顔色、悪いよ。 頷いた。でも、こなたは首を振った。 ――無理してる。前に、言ったよね? かがみの言いたいこと、本当に言いたいこと、私は待つって。今のかがみ、焦ってるよ? 言葉を返せない。 ――ねえ、もっと私を信用して。待つから。焦らないで。気持ちに、振り回されないで。 私を見上げてくる瞳は、揺れていた。 薄明かりの中で、そっと、こなたを起こさないよう注意しながら、布団を出る。 持ってきたカレンダーに×印をつける。 5月24日。後、4日。 眠るこなたを見た。 ――その日までに、答え、見つけるから。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、3個。''} &bold(){&u(){2008/05/25(日) 23:21:10}} 私の親友、こなた。 私が恋した、こなた。 私――柊かがみにとって、泉こなたって、どんな人物なのかな。 パタン。 こなたから借りたラノベは、読み終わった。 借りた時は、ありふれた本の一冊と思っていた。 今は……どうかな。 借りた時と、今とでは、こなたに対する私の気持ちは、大きく動いた。 友情、そして、恋。 じゃあ、今は? ――友情と、恋。この2つって、何が違うんでしょう? 何が同じなんでしょう? 昨日、ゆたかちゃんに問われた言葉。 こなたへの恋を自覚してから、私の中で、無視し続けてきた、言葉。 こなたへの想いは、本当に……恋? 心の奥では、自信が無かった。でも、気持ちを浮き足出させることで、無視した。 もし、恋じゃなかったら、友情? ……分からない。 以前の私……友情だと思ってた頃の私より、ずっと、ずっと、こなたを意識している。 友情ではない、気もした。 パラパラ、とページを繰る。内容は、頭に入っている。 ――この本の主人公は、どうだったのかな。自分と同じ、女の子に恋をした、この子は。 挿絵に描かれた、ポニーテールの活発そうな子に、少しだけ、親近感が沸いた。 こなたは、何を思ってこの本を私に貸してくれたのかな……。 私の気持ちは、完全に行く当てを見失っていた。まるで、迷路を歩くように。 迷路……そう、迷路。 私は、気持ちの迷路に、迷い込んだのかもしれない。 恋と、友情。 私の心は、振り子のように、行ったり来たりを繰り返す。 振り子を吊った線の先には、何があるのかな。 その先を見るのが、少し、怖い気がした……。 ベッドに横になって、目を閉じる。 瞼の裏に浮かんできた情景は、こなたの家から帰る時。 こなたと、ゆたかちゃんが、帰る私を見送ってくれた。 夕刻で、やっぱり紅く染まった世界で、こなたの蒼はよく映えていた。 ――じゃね、かがみん。 ――うん。じゃあ。 手を振り合った、私達。こなたの動きに合わせて揺れる蒼が澄み渡っていて、また、ドキリとした。 見上げてくる碧を直視できなくなって目を逸らしたら、儚げに微笑んだ、ゆたかちゃん。 ――その答えが分かったら、私にも教えてください。 昨日、私にそう言ったこの子も、私と同じ悩みを、抱えているのだろうか。 友情と、恋の狭間で、揺れ続ける心を持て余して、舞い上がって、浮き足立って、不安な心を押し潰して、ただ一人の人をこの手に欲する事を。 私の視線に気がついたのか、こなたはニヤッとした。 ――あれあれ?もしかして、かがみ、ゆーちゃんと……フラグ、立っちゃった? ――そ、そんなわけ無いでしょ!! ――ち、違うよぉ、お姉ちゃん! ゆたかちゃんと2人、必死になって、否定した。 ゆたかちゃんは、気がつかなかったみたいだけど、こなたが、一瞬言い澱んで、寂しそうな顔をしたのを、私は見逃さなかった。 チクリ、と胸が痛んだ。こなたにはこんな顔をしていて欲しくない。こなたには、笑っていて欲しい。 この気持ちは、恋でも友情でも、偽らざる、私の真っ直ぐな気持ち。 もし、こなたが寂しそうだと、こっちまで寂しくなる。 もし、こなたが哀しそうだと、こっちまで哀しくなる。 でも、例え私をからかってくる時でも、こなたが笑っていれば、こっちも嬉しくなる。 アイツのオタクな発言や、辛口な毒舌を、まぁ、いいか。と、思えるのはアイツの笑顔が、私にとって、特別だから。 だから、こなたに向かって、言った。 ――また、明日ね。 こなたは、笑った。 ――うん。また明日。 コンコン、扉をノックする音で、私は、目を覚ました。 少しボーっとする。寝ちゃってたかな。 入ってきたのは、つかさだった。 その手に、多分自作の、ホットケーキを持っている。 つかさは、ニコッと笑った。 ――食べる? 頷いた。 おいしい……。 暫く無言で、フォークが皿に当って立てるカチャリと言う音だけが響いた。 つかさが、壁にかかったカレンダーを見て言った。 ――もう直ぐ、こなちゃんの誕生日だね。お姉ちゃん、毎日こうやって、印、つけてるの? しまった、と思ったが、もう、遅い。本当は誰にも知られたくなかったけど……つかさなら、まぁ、いいか。 そのつかさは、また微笑むと、私の方に身を乗り出した。 ――お姉ちゃんにとって、こなちゃん、特別なんだよね? ――え? つかさは、私の頬に手を添えた。 ――もし、こうしてるのが私じゃなくて、こなちゃんだったら、お姉ちゃん、ドキドキしてるでしょ? ……あ。 確かに、そうだ。でも、なんで? なんで知ってるの? ――見てれば、分かるよ。 じゃあ、つかさには、分かるのだろうか? 今の、私の、こなたに対する、気持ちは、恋? それとも、友情? ――ん~……どうかな。そんなに難しく考えなくてもいいと思うよ。 今のつかさは、私以上に大人だった。 ――もっと単純な答えが、あるんじゃない? 今はきっと、それでもいいよ。 その答えって、何? ――だ~め、お姉ちゃんが自分で、見つけて。 そう言って、つかさは、私のカレンダーの今日の日付、5月25日に×印をつけた。 ――でも、一個だけヒント。お姉ちゃんが、私やゆきちゃんに感じてる事と、こなちゃんに感じてること、きっと大元は同じことなんだよ。 そう言って、つかさは出て行った。お皿の片づけを忘れて。 1人残された私は、つかさの言った事を考えていた。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、2個。''} &bold(){&u(){2008/05/26(月) 23:09:32}} パク。 夜も更けたのに、私は、チョココロネに齧りついた。 ――おいしい。 こなたから貰ったそれは、甘くて、柔らかくて……。 あいつを思い出さずにはいられなかった。 一口毎に体が、熱くなる。 一口毎に、こなたを、幻視した。 私を引っ張って、アニメショップを走り回るこなた。 宿題忘れたと、私に泣きついてくるこなた。 徹夜でゲームやって、寝不足気味で、私に凭れ掛かって来るこなた。 ニヤニヤと、私をからかってくるこなた。 私が泣いた時、その小さな体で私を包み込んでくれる、こなた。 私の隣には、いつも、こなたがいた。 親友として、時には恋の対象として。 初めは、戸惑った。この気持ちに。 当たり前にいてくれたからこそ、気がつかなかったこの気持ち。 当たり前だったからこそ、自覚して、戸惑った。 戸惑って、行き場を失った想いは、私から溢れ出して。周りを、傷つけた。 でも、私は、止めなかった。溢れるに任せた。 きっと、そうする事で、こなたは私の中で特別だって、いつだって自覚できたから。 こなたは、私のものだって、思えたから。 私の中でつかさが、微笑む。みゆきが、微笑む。 勿論こなたも、微笑んだ。 私も一緒になって、微笑んだ。 ――お姉ちゃんが、私やゆきちゃんに感じてる事と、こなちゃんに感じてること、きっと大元は同じことなんだよ。 つかさの言葉。 私が、つかさやみゆきに対して感じているのは、友情。 じゃあ、こなたに対しては? 明確に友情じゃない、と言えるのか。 勿論、否。 だって、ずっと、親友だと、思ってきたんだから。 でも私は、こなたに恋をしている。 ――親友だったはずなのに。友情を感じながら、恋をしているんです。私の本当の気持ち、どっちなのかな……。 ゆたかちゃんの言葉。 恋をしているから、友情じゃない? 親友だから、恋をしていない? 違うよね、きっと。 きっと、どっちもあるんだ。私の中に。 ――かがみさんが、泉さんを私達と同じように、親友だと思っても、それを違うと思えるのならば、それだけ、かがみさんの中で泉さんは‘特別’なんです。 今日、みゆきに相談した。その時に聞いた、言葉。 そう。私にとって、こなたは、特別。 最初から、そうだった。 だから、あんなに早く誕生日プレゼント用意して。毎日毎日カレンダーに印をつけて。 ずっと、そう思っていた。当たり前だった。 当たり前だから、気付かなかった。 言葉にしなかった。 だから、友情か、恋か、言葉にしようと、した。 こなたが欲しいと思った。 何で? こなたと一緒にいられて、嬉しかった。 何で? 決まってる。答えは、最初から、私の中にある。 友情と恋の間を行ったり来たりしていた、私の心の振り子に付けられた糸の先、そこにあるのは、もっと単純な事だった。 ――好き、なんだ。 恋も、友情も。好きだから、一緒にいる。好きだから、嬉しい。 大元は同じ。好き――ただ、その一言。 本当の気持ちは、揺れることなく、一本芯が通っていた。 じゃあ、他のみんなとの境は? 他のみんなに感じる、好き、と、こなたに感じる好き、の違いは? ……何だろうね? フッと、笑いが零れた。 分からない。けど、他のみんなに感じる好き、とは確かに違って。 そう、特別な、好き。 多分、一生他の人には感じることの無い、特別な、特別な――好き。 5月26日。こなたの誕生日まで、後2日。 ×印を付けるのも明日まで。 チョココロネを食べ終わった私は、立ち上がった。 もう一つ、最後に残っている不安を解消できたら、私が言いたい事、本当に言いたい事、ちゃんと言うからね、こなた。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、1個。''} &bold(){&u(){2008/05/27(火) 22:20:35}} 電話の発信ボタンにかけた指が震える。 毎週、いや、毎日繰り返していることなのに。 私は、携帯電話を見下ろしながら、溜息をついた。 緊張する。ディスプレイに表示された‘こなた’の文字を通して、アイツの顔がいくつも、浮かんで、消える。 今日のこなた。昨日のこなた。一昨日のこなた。一週間前のこなた。一ヶ月前の……。 浮かんでくる顔は、どれも、笑顔で、私を呼ぶ時のもの。 ――かがみ~。 電話の先に、手を振って待ってる、こなたがいる。 ――よしっ!。 発信ボタンを、押した。 私は、こなたが好き。 それは友情でも、恋でもあって、きっと、ただ一つの言葉には、とてもじゃないけど、できないんだと思う。 でも、敢えて言うなら、好き。大好き。 いつも、いつも、気がついたらアイツがいて、アイツといて。 時々呆れながら、時々起こりながら、時々笑いながら、笑われながら。 何も考えて無いように見えて、実はそうでもなくて、そんなこなたの心内が、私にはとても魅力的で。 離れられないのよ、ね。 トクン、トクン、鼓動が、早くなる。心臓が、耳にあるんじゃないかと思うほど、自分の心音がよく、聞こえる。 Now calling……一秒一秒が、永遠に感じる。 こなたが、私じゃない人と話をしてるのを見るのは、寂しい。 私を、見て欲しい。 クラスが、違っちゃったのは、凄く、堪えた。 私じゃない人が、周りに、沢山、いるじゃない? こなたが、欲しい。 そう、思うときもある。今も、そう思う。思えば思うほど、気持ちは昂ぶって、膨れ上がって、溢れて……。 お腹の奥の方から、甘くて辛い、ザワザワしたものが昇ってきて、胸の辺りで溜まって。 もし、こなたがいたら、この腕に抱きしめていたかも。 でも、それに振り回されると、ダメなの。気持ちが先走ると、見えなくなるの。 好き、が。 気持ちが、言い訳になる。 言い訳になった気持ちは、本来のものとはかけ離れて、何も、生み出さない。 私の机の上に残ってる、割れた鏡は、その欠片は、証明。 気持ちに振り回されて、濡れて、周りを無視して、結果、私自身さえ、見失った。その事の、証明。 プルルル……。 こなた……。 落ち着き無く、部屋を歩き回る。カーテンが開いたままの窓から、こっちでは珍しく、星空が、よく見えていた。 こなた……出て。でも、出ないで……。 不安が、あった。 私は、こなたが好き。そう、好きなの。 じゃあ、こなたは? こなたの気持ちは、どうなの? 人は、1人じゃない。こちらがあれば、あちらもある。でも、こちらから、あちらは見えない。 周りを見失って、気付いた。 じゃあ、相手の気持ちはどうなの? こなたは、私の事、好きでいてくれてる? ベッドの上には、以前借りたMD。 ――同じくらい、同じくらい、好きだったら。こんなにも、苦しくは、ないのかな……。 歌詞の一説。 そう、同じくらい、好きでいてくれたなら、こんなに不安にならない。あちらが見えないから、分からない。 だから、私は踏み出す。後一歩を。 ――大丈夫、ですよ。 ゆたかちゃんが、微笑んだ。 今日の放課後、ゆたかちゃんに、会った。 私が見つけた、答えを、言いに。 そうしたら、儚げに微笑むあの子は、目尻に涙を、溜めた。 ――そうなんですね……そうですね、好き、なんですよね。それで、いいんだ。みなみちゃん……。 肩を震わせて、小さな腕で顔を隠して、嗚咽を漏らして、ゆたかちゃんは、呼んだ。 でも、私には、これ以上、このことに関してかける言葉は、無かった。後は、この子の問題。 でも、同じ悩みを抱えるなら、同じ壁に当る。 私の不安は、呟きになって、漏れた。 ――こなたは、私を、どう、思ってるのかな。 そうしたら、ゆたかちゃんは、顔を上げた。そうして、今度は、私に、答えをくれたのだ。 カレンダーに近づく。 5月27日。×印をつけた。 印をつけるのは、今日まで。明日は、赤い○印に、彩られている。 丁度、マジックのインクが、切れた。 新しい何かが、始まる、気がした。 ――こなちゃんと、お姉ちゃんが一緒に過ごしてきた時間を、信じて。 ……つかさ。 ――泉さんと、かがみさんが過ごされたお時間。考えるより先に、答えはあるのかもしれません。 ……みゆき。 2人とも、ありがとう。 こなたの家に泊まりに行く時、邪魔はさせない、って思った。 ゴメンね。自分勝手、だよね。 でも、見捨てないで、くれたよね。 2人に感じる好き、は、こなたに感じるものとは違うけど……ありがとう。 プツッ。 ――もしもし、かがみ~。 ドキン。 あ……こなた。 肩が強張る。腕に力が入る。ギュ、と、携帯がなった。 どうしよう、何を言おう。 焦る、頭が、霞みがかったように、何も見えない。 その時、視線の先に小さな包みが、写った。 紅い包装紙に包まれたそれは、こなたへの、誕生日、プレゼント。 スーっと、緊張が引いて行くのが分かる。ああ……。 ――もしもし、こなた? 声が、出た。 ――どうしたのよ、中々出なかったじゃない? ――いや~、ゴメンゴメン。携帯鞄の中に入れっぱなしで。 ――はぁ。いい? 携帯は携帯してこそ意味があるの。全く、ちゃんと持ち歩く習慣、身につけなさいよ。 ――む~、でも、これでも以前よりはマシだよ。前なんか、存在すら忘れたんだからね。 ――威張るな! ま、でも確かに、進歩したわね。……ちゃんと出てくれたし。 ――かがみからの電話、だもんね。 ――……え? ――かがみが言ってくれたから、鞄に入れるくらいにはなったし。かがみがかけてくれるから、毎日が楽しみでね~。 ……もう。コイツは。 ――べ、別に……その、なんて言うか、そう、宿題ちゃんとやってるか確認しないと、私に泣きつかれるし、えと……。 ――え~と? ――~~~っ。……私も、楽しい、し。 ――くーっ!!これだよ、コレ!!やっぱかがみだ~♪ ――……もう、何よ。 ――んふふ~? 別に~♪ ――もう……。 ねぇ、こなた。 ――何? ――明日、朝、ちょっと、付き合ってくれない? ――言いたいこと、見つかった? ――……うん。 ――分かった。じゃあ、明日、朝。 ――うん。また、明日。 切れた。 うん……。 こなた……。 &color(#FF0000){×は終わり。残されたのは、赤い○。&br() ○は、こなたの誕生日。5月28日。} -[[Happy Birthday konata>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/623.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3)
&bold(){&u(){2008/05/23(金) 23:33:15}} 鼻歌交じりに、私は、機嫌良く荷物を旅行用のバッグに詰めていく。 ドキドキと、ワクワクそんな週末、5月23日。 明日は、こなたの家に泊まりに行く。 こなたと、一緒に、いられるんだ。 こなたへの恋を自覚した。 自覚したから、何か変わったのだろうか? 何も変わらない。 この想いは、伝えられない。 伝えられないなら、無いも同じ。 ……いや、同じじゃない。 伝えられず、行き場を失った想いは、私の中で膨れ上がる。 こなたを想うと、体が熱くなる。 こなたを想うと、頭がぼぅっとする。 こなたを想うと、こなたを、想うと……。 今日、こなたのためにお弁当を作っていった。 チョココロネばかりじゃ、流石に体に悪い。 だから、作った。 こなたの嫌いなもずくも入れた。 ――これを見たら、アイツ、どんな反応するかな? そう思ったら、クスッと笑いが零れた。 お昼、こなたの隣に腰掛ける。 この距離感が、堪らない。 これが、恋なのかな。 そう思いながら、お弁当をこなたに渡す。 案の定、こなたは驚いていた。 つかさも、みゆきも驚いていたけど、気にならない。 こなたの反応が、見たかったから。 ――あの~、かがみんや? ――何よ? ――もずくは、勘弁してもらえると、嬉しいんだけど。 ――ダーメ。ちゃんと食べなさいよ? 好き嫌いがあるから、そんなに小さいんだから。 ――うぉっ!?さり気に気にしてる事を……ふんだ、かがみは好き嫌い無いから横に大きくなるんだよ。 ――何ですって! 楽しい。 こなたとの会話が、やりとりが、全部が、楽しい。 ねえ、こなたも、そう思うでしょ? ――そだ、かがみ。 ――ん~? ――先週泊めてもらったお礼にさ、明日、泊まりにこない? ドキン……心臓が、跳ねた。 少し、上目遣いに見上げてくるこなたは、可愛くて、可愛くて……。 私は、少しもそれを見逃したりはしたくない。 視界にはこなたしか入らない。 ……恋を、しているから。 くしゃ、と、こなたの頭を乱暴にかき混ぜる。 こなたの髪から、甘い匂いがした。 ――うん。じゃあ、お邪魔しようかな。 ――よし、決定! 熱い、熱いよ……こなた。 頭は、ぼぉっとするし、こなたの髪に触れた指先からは、軽い電気のようなものが流れてる感じ。 それでいて、視界は澄み渡っている。 こなたを、見ているから……。 こなたの事なら、何でも見たい。何でも聞きたい、何でも知りたい。 だからかな、一瞬、こなたの顔が翳った事にも、気がついた。 本当に一瞬。刹那にも満たなかったかもしれない。でも、確かに、翳った。 何で? こなたに、こんな顔をさせるものは何? こなた、教えて? 私なら、きっと、ううん、絶対、力になれるから。 明日、泊まりに行ったら、絶対、聞き出そう。 そう思った。 壁にかけたカレンダーに×印をつけ、その後でバッグに入れる。 こなたの誕生日へのカウントダウン。一日だって、欠かせない。 本人に見られたら恥ずかしいけど。 明日は、2人きり。 つかさも、みゆきも行かせない、来させない。 だって、私は、こなたに、恋をしているんだもの。 こなたが、欲しいんだもの……。 私は、舞い上がっていた。恋という名の言葉の魔力に、酔いしれていた。浮かれていた。 冷静な自分が、本当にこれでいいのか、と訴える。でも、無視した。 恋してるから。その一言で、他の総てに目を瞑った。 恋。その気持ちの、本当の意味すら、見ることは無く、ただ、ひたすらに、こなたに焦がれていた……。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、4個。 ''} &bold(){&u(){2008/05/24(土) 22:47:44}} 頭の中がグルグルする。 明かりを消して、星明りが支配する、こなたの部屋。 私は、隣で静かに寝息を立てるこなたの息遣いをパジャマ越しに感じながら、さっき、ゆたかちゃんに言われた事を、考えていた。 ――友情と恋愛の違い、か。友情と恋愛で同じこと、か。 何だろう……。 今日、こなたの家に泊まりに来た。 昨日交わした約束。 恋に溺れていた私は、地に足がついていない。 何にも不安なんか無くて、何にも心配する事なんか無くて、ただ、ただ、浮かれていた。 ――いらっしゃい、かがみん。 そう言って歓待の意を示してくれたこなたを見たら、顔が、熱くなった。 思わず、頬が緩みそうになる。だけど、そこは自制した。 そんな所を見られたら、なんてからかわれるか、分かったもんじゃない。 ――オッス、来たわよ。 そう言って、片手を上げるに、留めた。 時間は沢山ある。まだまだ、沢山……。 2人並んで、ゲームをした。 レーシングゲーム。 何時だったか、こなたが、こういったゲームってマシンの動きと体の動きがシンクロするって、言ってた。 だったら、不自然じゃないよね? 肩と肩がぶつかっても。 触れ合った所が、熱い。 でも、決して不快じゃない。 勉強だって、もちろん、やった。 こなたが分からなければ、私は、教える準備は出来ていたし、頼って欲しかった。 こなたのために、何かをしたい。 案の定、こなたは、初めて直ぐに唸り声を上げてペンを止めた。 しょうがないな、と首を振って、こなたの傍に寄った。 ふわ、と香るのはこなたの匂い。甘い、甘い匂い……。 ――どこが分からない? そう聞いた私の表情は、きっと緩んでいた。 そっと、こなたの手を握って言った。 ――言ってくれれば、教えるから。 また、こなたの表情が、翳った。 何で? こなたは、迷っているようだった。 何を? こなたにこんな顔をさせるのは、何? こなたが、口を開いた。 ――あのさ、かがみ……。 その時、ドアがノックされ、ゆたかちゃんが顔を覗かせた。 ――かがみ先輩、ちょっと、いいですか? 内心、舌を打った。 行きたくは無い。こなたが心配だから。 でも、そのこなたに目線で促されては行くしかない。 そうして、私達は廊下に出た。 扉を閉めて、こなたに聞こえないようにして、ゆたかちゃんは、言った。 ――かがみ先輩も、私と同じですね。 何が? と思う。 ――私も、あの人の前に出るとそうなっちゃうんです。 奥歯に物が挟まったような言い方。早くこなたの所に帰りたい。イラっとした。 ――恋だなって、思うんです。恋してるから、嬉しいんです。でも、嬉しすぎて、苦しいんです。 ――え? ――時々、思うんです。本当に、恋なのかなって。 その言葉は、楔のように、浮かれていた私の気持ちに罅を入れた。 ――親友だったはずなのに。友情を感じながら、恋をしているんです。私の本当の気持ち、どっちなのかな……。 ゆたかちゃんの言葉は、冷静な自分が語りかけてくる言葉。 ――友情と、恋。この2つって、何が違うんでしょう? 何が同じなんでしょう? そう言って、ゆたかちゃんは、最後に、 ――その答えが分かったら、私にも教えてください。 そう言って、儚げに、微笑んだ。 さっきまで感じた苛立ちは、消えていた。 こなたの部屋へ戻った。 こなたは、私の顔を見て心配そうに言った。 ――大丈夫?かがみ。顔色、悪いよ。 頷いた。でも、こなたは首を振った。 ――無理してる。前に、言ったよね? かがみの言いたいこと、本当に言いたいこと、私は待つって。今のかがみ、焦ってるよ? 言葉を返せない。 ――ねえ、もっと私を信用して。待つから。焦らないで。気持ちに、振り回されないで。 私を見上げてくる瞳は、揺れていた。 薄明かりの中で、そっと、こなたを起こさないよう注意しながら、布団を出る。 持ってきたカレンダーに×印をつける。 5月24日。後、4日。 眠るこなたを見た。 ――その日までに、答え、見つけるから。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、3個。''} &bold(){&u(){2008/05/25(日) 23:21:10}} 私の親友、こなた。 私が恋した、こなた。 私――柊かがみにとって、泉こなたって、どんな人物なのかな。 パタン。 こなたから借りたラノベは、読み終わった。 借りた時は、ありふれた本の一冊と思っていた。 今は……どうかな。 借りた時と、今とでは、こなたに対する私の気持ちは、大きく動いた。 友情、そして、恋。 じゃあ、今は? ――友情と、恋。この2つって、何が違うんでしょう? 何が同じなんでしょう? 昨日、ゆたかちゃんに問われた言葉。 こなたへの恋を自覚してから、私の中で、無視し続けてきた、言葉。 こなたへの想いは、本当に……恋? 心の奥では、自信が無かった。でも、気持ちを浮き足出させることで、無視した。 もし、恋じゃなかったら、友情? ……分からない。 以前の私……友情だと思ってた頃の私より、ずっと、ずっと、こなたを意識している。 友情ではない、気もした。 パラパラ、とページを繰る。内容は、頭に入っている。 ――この本の主人公は、どうだったのかな。自分と同じ、女の子に恋をした、この子は。 挿絵に描かれた、ポニーテールの活発そうな子に、少しだけ、親近感が沸いた。 こなたは、何を思ってこの本を私に貸してくれたのかな……。 私の気持ちは、完全に行く当てを見失っていた。まるで、迷路を歩くように。 迷路……そう、迷路。 私は、気持ちの迷路に、迷い込んだのかもしれない。 恋と、友情。 私の心は、振り子のように、行ったり来たりを繰り返す。 振り子を吊った線の先には、何があるのかな。 その先を見るのが、少し、怖い気がした……。 ベッドに横になって、目を閉じる。 瞼の裏に浮かんできた情景は、こなたの家から帰る時。 こなたと、ゆたかちゃんが、帰る私を見送ってくれた。 夕刻で、やっぱり紅く染まった世界で、こなたの蒼はよく映えていた。 ――じゃね、かがみん。 ――うん。じゃあ。 手を振り合った、私達。こなたの動きに合わせて揺れる蒼が澄み渡っていて、また、ドキリとした。 見上げてくる碧を直視できなくなって目を逸らしたら、儚げに微笑んだ、ゆたかちゃん。 ――その答えが分かったら、私にも教えてください。 昨日、私にそう言ったこの子も、私と同じ悩みを、抱えているのだろうか。 友情と、恋の狭間で、揺れ続ける心を持て余して、舞い上がって、浮き足立って、不安な心を押し潰して、ただ一人の人をこの手に欲する事を。 私の視線に気がついたのか、こなたはニヤッとした。 ――あれあれ?もしかして、かがみ、ゆーちゃんと……フラグ、立っちゃった? ――そ、そんなわけ無いでしょ!! ――ち、違うよぉ、お姉ちゃん! ゆたかちゃんと2人、必死になって、否定した。 ゆたかちゃんは、気がつかなかったみたいだけど、こなたが、一瞬言い澱んで、寂しそうな顔をしたのを、私は見逃さなかった。 チクリ、と胸が痛んだ。こなたにはこんな顔をしていて欲しくない。こなたには、笑っていて欲しい。 この気持ちは、恋でも友情でも、偽らざる、私の真っ直ぐな気持ち。 もし、こなたが寂しそうだと、こっちまで寂しくなる。 もし、こなたが哀しそうだと、こっちまで哀しくなる。 でも、例え私をからかってくる時でも、こなたが笑っていれば、こっちも嬉しくなる。 アイツのオタクな発言や、辛口な毒舌を、まぁ、いいか。と、思えるのはアイツの笑顔が、私にとって、特別だから。 だから、こなたに向かって、言った。 ――また、明日ね。 こなたは、笑った。 ――うん。また明日。 コンコン、扉をノックする音で、私は、目を覚ました。 少しボーっとする。寝ちゃってたかな。 入ってきたのは、つかさだった。 その手に、多分自作の、ホットケーキを持っている。 つかさは、ニコッと笑った。 ――食べる? 頷いた。 おいしい……。 暫く無言で、フォークが皿に当って立てるカチャリと言う音だけが響いた。 つかさが、壁にかかったカレンダーを見て言った。 ――もう直ぐ、こなちゃんの誕生日だね。お姉ちゃん、毎日こうやって、印、つけてるの? しまった、と思ったが、もう、遅い。本当は誰にも知られたくなかったけど……つかさなら、まぁ、いいか。 そのつかさは、また微笑むと、私の方に身を乗り出した。 ――お姉ちゃんにとって、こなちゃん、特別なんだよね? ――え? つかさは、私の頬に手を添えた。 ――もし、こうしてるのが私じゃなくて、こなちゃんだったら、お姉ちゃん、ドキドキしてるでしょ? ……あ。 確かに、そうだ。でも、なんで? なんで知ってるの? ――見てれば、分かるよ。 じゃあ、つかさには、分かるのだろうか? 今の、私の、こなたに対する、気持ちは、恋? それとも、友情? ――ん~……どうかな。そんなに難しく考えなくてもいいと思うよ。 今のつかさは、私以上に大人だった。 ――もっと単純な答えが、あるんじゃない? 今はきっと、それでもいいよ。 その答えって、何? ――だ~め、お姉ちゃんが自分で、見つけて。 そう言って、つかさは、私のカレンダーの今日の日付、5月25日に×印をつけた。 ――でも、一個だけヒント。お姉ちゃんが、私やゆきちゃんに感じてる事と、こなちゃんに感じてること、きっと大元は同じことなんだよ。 そう言って、つかさは出て行った。お皿の片づけを忘れて。 1人残された私は、つかさの言った事を考えていた。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、2個。''} &bold(){&u(){2008/05/26(月) 23:09:32}} パク。 夜も更けたのに、私は、チョココロネに齧りついた。 ――おいしい。 こなたから貰ったそれは、甘くて、柔らかくて……。 あいつを思い出さずにはいられなかった。 一口毎に体が、熱くなる。 一口毎に、こなたを、幻視した。 私を引っ張って、アニメショップを走り回るこなた。 宿題忘れたと、私に泣きついてくるこなた。 徹夜でゲームやって、寝不足気味で、私に凭れ掛かって来るこなた。 ニヤニヤと、私をからかってくるこなた。 私が泣いた時、その小さな体で私を包み込んでくれる、こなた。 私の隣には、いつも、こなたがいた。 親友として、時には恋の対象として。 初めは、戸惑った。この気持ちに。 当たり前にいてくれたからこそ、気がつかなかったこの気持ち。 当たり前だったからこそ、自覚して、戸惑った。 戸惑って、行き場を失った想いは、私から溢れ出して。周りを、傷つけた。 でも、私は、止めなかった。溢れるに任せた。 きっと、そうする事で、こなたは私の中で特別だって、いつだって自覚できたから。 こなたは、私のものだって、思えたから。 私の中でつかさが、微笑む。みゆきが、微笑む。 勿論こなたも、微笑んだ。 私も一緒になって、微笑んだ。 ――お姉ちゃんが、私やゆきちゃんに感じてる事と、こなちゃんに感じてること、きっと大元は同じことなんだよ。 つかさの言葉。 私が、つかさやみゆきに対して感じているのは、友情。 じゃあ、こなたに対しては? 明確に友情じゃない、と言えるのか。 勿論、否。 だって、ずっと、親友だと、思ってきたんだから。 でも私は、こなたに恋をしている。 ――親友だったはずなのに。友情を感じながら、恋をしているんです。私の本当の気持ち、どっちなのかな……。 ゆたかちゃんの言葉。 恋をしているから、友情じゃない? 親友だから、恋をしていない? 違うよね、きっと。 きっと、どっちもあるんだ。私の中に。 ――かがみさんが、泉さんを私達と同じように、親友だと思っても、それを違うと思えるのならば、それだけ、かがみさんの中で泉さんは‘特別’なんです。 今日、みゆきに相談した。その時に聞いた、言葉。 そう。私にとって、こなたは、特別。 最初から、そうだった。 だから、あんなに早く誕生日プレゼント用意して。毎日毎日カレンダーに印をつけて。 ずっと、そう思っていた。当たり前だった。 当たり前だから、気付かなかった。 言葉にしなかった。 だから、友情か、恋か、言葉にしようと、した。 こなたが欲しいと思った。 何で? こなたと一緒にいられて、嬉しかった。 何で? 決まってる。答えは、最初から、私の中にある。 友情と恋の間を行ったり来たりしていた、私の心の振り子に付けられた糸の先、そこにあるのは、もっと単純な事だった。 ――好き、なんだ。 恋も、友情も。好きだから、一緒にいる。好きだから、嬉しい。 大元は同じ。好き――ただ、その一言。 本当の気持ちは、揺れることなく、一本芯が通っていた。 じゃあ、他のみんなとの境は? 他のみんなに感じる、好き、と、こなたに感じる好き、の違いは? ……何だろうね? フッと、笑いが零れた。 分からない。けど、他のみんなに感じる好き、とは確かに違って。 そう、特別な、好き。 多分、一生他の人には感じることの無い、特別な、特別な――好き。 5月26日。こなたの誕生日まで、後2日。 ×印を付けるのも明日まで。 チョココロネを食べ終わった私は、立ち上がった。 もう一つ、最後に残っている不安を解消できたら、私が言いたい事、本当に言いたい事、ちゃんと言うからね、こなた。 &color(#FF0000){''赤い○まで増える×は、後、1個。''} &bold(){&u(){2008/05/27(火) 22:20:35}} 電話の発信ボタンにかけた指が震える。 毎週、いや、毎日繰り返していることなのに。 私は、携帯電話を見下ろしながら、溜息をついた。 緊張する。ディスプレイに表示された‘こなた’の文字を通して、アイツの顔がいくつも、浮かんで、消える。 今日のこなた。昨日のこなた。一昨日のこなた。一週間前のこなた。一ヶ月前の……。 浮かんでくる顔は、どれも、笑顔で、私を呼ぶ時のもの。 ――かがみ~。 電話の先に、手を振って待ってる、こなたがいる。 ――よしっ!。 発信ボタンを、押した。 私は、こなたが好き。 それは友情でも、恋でもあって、きっと、ただ一つの言葉には、とてもじゃないけど、できないんだと思う。 でも、敢えて言うなら、好き。大好き。 いつも、いつも、気がついたらアイツがいて、アイツといて。 時々呆れながら、時々起こりながら、時々笑いながら、笑われながら。 何も考えて無いように見えて、実はそうでもなくて、そんなこなたの心内が、私にはとても魅力的で。 離れられないのよ、ね。 トクン、トクン、鼓動が、早くなる。心臓が、耳にあるんじゃないかと思うほど、自分の心音がよく、聞こえる。 Now calling……一秒一秒が、永遠に感じる。 こなたが、私じゃない人と話をしてるのを見るのは、寂しい。 私を、見て欲しい。 クラスが、違っちゃったのは、凄く、堪えた。 私じゃない人が、周りに、沢山、いるじゃない? こなたが、欲しい。 そう、思うときもある。今も、そう思う。思えば思うほど、気持ちは昂ぶって、膨れ上がって、溢れて……。 お腹の奥の方から、甘くて辛い、ザワザワしたものが昇ってきて、胸の辺りで溜まって。 もし、こなたがいたら、この腕に抱きしめていたかも。 でも、それに振り回されると、ダメなの。気持ちが先走ると、見えなくなるの。 好き、が。 気持ちが、言い訳になる。 言い訳になった気持ちは、本来のものとはかけ離れて、何も、生み出さない。 私の机の上に残ってる、割れた鏡は、その欠片は、証明。 気持ちに振り回されて、濡れて、周りを無視して、結果、私自身さえ、見失った。その事の、証明。 プルルル……。 こなた……。 落ち着き無く、部屋を歩き回る。カーテンが開いたままの窓から、こっちでは珍しく、星空が、よく見えていた。 こなた……出て。でも、出ないで……。 不安が、あった。 私は、こなたが好き。そう、好きなの。 じゃあ、こなたは? こなたの気持ちは、どうなの? 人は、1人じゃない。こちらがあれば、あちらもある。でも、こちらから、あちらは見えない。 周りを見失って、気付いた。 じゃあ、相手の気持ちはどうなの? こなたは、私の事、好きでいてくれてる? ベッドの上には、以前借りたMD。 ――同じくらい、同じくらい、好きだったら。こんなにも、苦しくは、ないのかな……。 歌詞の一説。 そう、同じくらい、好きでいてくれたなら、こんなに不安にならない。あちらが見えないから、分からない。 だから、私は踏み出す。後一歩を。 ――大丈夫、ですよ。 ゆたかちゃんが、微笑んだ。 今日の放課後、ゆたかちゃんに、会った。 私が見つけた、答えを、言いに。 そうしたら、儚げに微笑むあの子は、目尻に涙を、溜めた。 ――そうなんですね……そうですね、好き、なんですよね。それで、いいんだ。みなみちゃん……。 肩を震わせて、小さな腕で顔を隠して、嗚咽を漏らして、ゆたかちゃんは、呼んだ。 でも、私には、これ以上、このことに関してかける言葉は、無かった。後は、この子の問題。 でも、同じ悩みを抱えるなら、同じ壁に当る。 私の不安は、呟きになって、漏れた。 ――こなたは、私を、どう、思ってるのかな。 そうしたら、ゆたかちゃんは、顔を上げた。そうして、今度は、私に、答えをくれたのだ。 カレンダーに近づく。 5月27日。×印をつけた。 印をつけるのは、今日まで。明日は、赤い○印に、彩られている。 丁度、マジックのインクが、切れた。 新しい何かが、始まる、気がした。 ――こなちゃんと、お姉ちゃんが一緒に過ごしてきた時間を、信じて。 ……つかさ。 ――泉さんと、かがみさんが過ごされたお時間。考えるより先に、答えはあるのかもしれません。 ……みゆき。 2人とも、ありがとう。 こなたの家に泊まりに行く時、邪魔はさせない、って思った。 ゴメンね。自分勝手、だよね。 でも、見捨てないで、くれたよね。 2人に感じる好き、は、こなたに感じるものとは違うけど……ありがとう。 プツッ。 ――もしもし、かがみ~。 ドキン。 あ……こなた。 肩が強張る。腕に力が入る。ギュ、と、携帯がなった。 どうしよう、何を言おう。 焦る、頭が、霞みがかったように、何も見えない。 その時、視線の先に小さな包みが、写った。 紅い包装紙に包まれたそれは、こなたへの、誕生日、プレゼント。 スーっと、緊張が引いて行くのが分かる。ああ……。 ――もしもし、こなた? 声が、出た。 ――どうしたのよ、中々出なかったじゃない? ――いや~、ゴメンゴメン。携帯鞄の中に入れっぱなしで。 ――はぁ。いい? 携帯は携帯してこそ意味があるの。全く、ちゃんと持ち歩く習慣、身につけなさいよ。 ――む~、でも、これでも以前よりはマシだよ。前なんか、存在すら忘れたんだからね。 ――威張るな! ま、でも確かに、進歩したわね。……ちゃんと出てくれたし。 ――かがみからの電話、だもんね。 ――……え? ――かがみが言ってくれたから、鞄に入れるくらいにはなったし。かがみがかけてくれるから、毎日が楽しみでね~。 ……もう。コイツは。 ――べ、別に……その、なんて言うか、そう、宿題ちゃんとやってるか確認しないと、私に泣きつかれるし、えと……。 ――え~と? ――~~~っ。……私も、楽しい、し。 ――くーっ!!これだよ、コレ!!やっぱかがみだ~♪ ――……もう、何よ。 ――んふふ~? 別に~♪ ――もう……。 ねぇ、こなた。 ――何? ――明日、朝、ちょっと、付き合ってくれない? ――言いたいこと、見つかった? ――……うん。 ――分かった。じゃあ、明日、朝。 ――うん。また、明日。 切れた。 うん……。 こなた……。 &color(#FF0000){×は終わり。残されたのは、赤い○。&br() ○は、こなたの誕生日。5月28日。} -[[Happy Birthday konata>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/623.html]]へ続く **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-03-11 10:39:20)

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