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プロジェクト・こなかが ゼロ」(2023/01/09 (月) 01:49:15) の最新版変更点

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 お昼休みに色々あったおかげで、こなたとかがみの仲の良さは学校内でも有名になりつつあり、何時だったかみゆきが言った‘外堀を埋める’という意味での2人の垣根は低くなってきたのではないだろうか。  とはいえ、あの2人仲が良いね~、で済まされてる辺り、陵桜学園には強者が多すぎると思わざるを得ないのだが。    さて、今回の話の大元はひより発案、みゆき編集による‘こなたとかがみにラブレターを書かせよう’という作戦。  で、素直に書くはず無いものをアニ研、文芸部合同の機関紙の一部、として書かせる流れになっていた。  だが、機関紙となれば公に書くもの。故に念密な打ち合わせと検討、的確な時間指定が必要。  そこで、こなた、かがみ、みゆきの3人はアニ研部室にて、担当者と打ち合わせをすることになったのだが、 「八坂さん、遅いわね」 「そだね~」  現在放課後。打ち合わせ担当者であるアニ研部長・八坂こう、未だ現れず。 「まったく、アンタといい八坂さんといい、オタクって皆時間にルーズなのかしらね」 「いやぁ、かがみん?会って間もない人をオタクと決め付けるのはどうかと……」 「う、なんか、こなたといると、こういった方面の人達って皆オタクって言う変なバイアスが」 「偏見だ~、横暴だ~!」 「でも、こなたはオタクじゃない」 「む、如何にも。そしてかがみんもオタクと」 「わ、私は違うわよ!」  聞いてて飽きの来ない2人のやり取り。その傍でみゆきは、ただ緩やかに微笑んでいる。 (お昼の出来事は、尾を引かなかったみたいですね)  変に尾を引いてギクシャクするよりも、この方が良い。恐らく2人の間にあの流れでも自然であるという、仲の良さを証明する様な認識があるのだろう。 (でも、ちょっとは尾を引いて意識してくださると助かるのですが……)  微笑みに苦笑を若干混ぜながら、みゆきはまだまだ続いている2人のやり取り、もといじゃれあいを飽きることなく眺めている。と、 「遅れてすんませんッス!先輩方!」  謝辞の言葉と共に、八坂こうが入ってきた。といっても、入り口付近で止まっているけどね。何でだろう? 「遅い!」  開口一番、かがみ。 「ホントすんませんッス!色々手間取って……」  平身低頭、こう。そして、こなたたちから見えない位置、つまり廊下の方を向いて、 「今回スペシャルゲストを呼ぼうと思って、そしたら説得に時間かかって」 「ゲスト……ですか?」  と、みゆき。ほう、これは予想外。もし、今のこなたとかがみの状況を詰め将棋に例えると、みゆき達は盤上の駒。じゃあゲストとやらはさしずめ相手陣から取って控えにおいてある駒(正式名、不明)だろう。  どこでその駒を置くか。 「そうそう!ほら、やまと入って」  と、こうが殆ど無理矢理引っ張り込んできたのは、 「……はじめまして。永森やまと」 「むぉっ!」  こなたのアホ毛がピンと立つ。ついでに電話。 「父さん、萌えアンテナが!」 『何!どういうことだ、こな太郎?』 「ポニテ、猫目、クール、三大要素を併せ持つ強力な萌えが傍にいます!」 『そりゃいかん!是非写真を撮って送るんだ!』 「ラジャッ!」 「……こう。帰っていい?」 「わ~!待って待って!泉先輩もちょっと控えてください」  慌てるこう。引き気味のやまと。当然、初見でこなたのテンションについていける人は少ない。ついていけたのは天然なつかさと、天然(?)みゆき。こなたのラヴァーガール、かがみぐらいだ。後ひより。 「え~とッスね。彼女は永森やまと。学校は違うけど私の親友!今回の機関紙に一筆お願いしました!よろしく!」 「……ま、短い付き合いになると思うけどね」  どうでもよさそうに頭の後ろで腕を組み、遠くを見る目つきでやまと。  注意深く、みゆきは人となりを観察する。さて、この要素はプラスか、マイナスか?  また、みゆきとは違った意味でこなたもやまとを観察、もとい尋問していた。 「ねえねえ、そのポニーテール、中々GJだよ!もしかして、狙ってる?」 「……別に」 「むぅ、クールな所も中々」  顎に手を当て考え込む風情のこなた。そこにこうがそっと耳打ちをする。 「でも先輩、実はッスね。こう見えて、やまとって結構人付き合いいいんですよ」 「ほほう?」 「今回の機関紙も、私がお願いって言ったら、直ぐにOKくれましたし」  ちなみに、こうは隠し事に向いてないのか、丸聞こえ。 「べ、別に……あれはこうがどうしてもって言うから、仕方なく」  そう言って、フイとそっぽを向くやまと。その頬はほんのりと上気していて、それを見たこなたが、 「クーデレktkr!ポニテ、クーデレ、いい友達を持ったね~」  こうに向かって、ビッと親指を立てる。と、ここでかがみがようやく話に割り込んできた。 「……こなたは、ポニーテールの方が好きなの?」  ふぇ、と首を傾げて考えること数秒。 「萌えるよね」  実直な答えだ。聞いたかがみは何かを決意した表情で、 「ちょっとトイレ!」  飛び出していった。  頭に?マークを浮かべるこなた。だけど、みゆきにはかがみの取ろうとしている行動が分かったようで。 「泉さん、心の準備、しておいた方がいいかもしれませんよ?」 「え、何で?」  ?の数が3つに増えた。そして、その答えは程なく明らかとなる。 「お待たせ」 「か、かがみん!?」  戻ってきたかがみ。さて、行く前と後では違いがあるのだが、間違い探しを文章に求めるのは酷だろう。 「何で、ポニテ……?」 「き、気分転換よ!悪い?」 「いや、悪くは無いけど……」  そう、ポニーテール。髪型チェンジ。  こうがみゆきの傍に寄ると、 「いやぁ、生ツンデレ。お2人の仲、聞いた通りですね!」 「……こう、聞こえてるわよ」 「大丈夫です。泉さん、かがみさん。お2人には聞こえてませんから」  まさに、こなたはかがみの姿に戸惑うばかりで、かがみはこなたの反応を気にするばかりで、聞こえてはいないだろうね。この分じゃ。 「泉さんが永森さんの髪型に対して、萌え、と言ったのが気に入らなかったのでしょうね。対抗心を燃やして自分も、というわけです」  解説みゆき。 「かがみさん本来の髪型でも良かったのでしょうが、ポニーテール萌え。これが泉さんに関する最新の情報です。  以前、峰岸さんが彼氏さんの好みに合わせて髪を伸ばしていると聞きました。かがみさんもそれと同じで、好きな人の好みに合わせる。そのように自分を更新したのです」 「成る程ぉ」  と、こう。やまとは興味深げに2人を見ている。 「さて、そろそろ私も行きませんと」 「へ?」 「お2人だけでは、まだ少し心配ですからね」  微笑半、苦笑半でみゆき。 「どうせ、前みたく、武士みたいで男前って言うんでしょ!」 「え、いや、そんなことは……」 「分かってるわよ、どうせ私にはポニーテール――」 「男前ということは褒め言葉ですよね、泉さん?」  半ば自棄になって、今にも泣き出しそうなかがみ。おろおろするこなた。その間にみゆきは緩やかに割って入った。 「「え……?」」  二重奏。変な所で息が合う。みゆきの苦笑の割合が7割に増加した。 「男前、ということは格好よかった。確かに、今のかがみさんは格好いいです。頼り甲斐がありそうで」  ハッとしたようにかがみがこなたを見る。こなたは驚いた表情。 「良く似合っていらっしゃる。そんな意味で言ったのでしょう?ね、泉さん?」  問われ、こなたは改めてかがみの様子を見て、成る程、格好いいと思ったのか、ポッと頬を染めて視線を逸らし、でも、チラチラと盗み見る。  かがみは、 「でも、私だって女の子だし、本当は……可愛いって、言ってほしかった」  そっと呟く。するとこなたが、 「あ、え、えっと、だ、大丈夫!今でもかがみは充分可愛いよ」  と言って、かぁっとなって、 「……え~と、そう、萌え要素が一杯あるんだよ!かがみん萌え~」  取って付けた様に加えた。 「ホント……?」  と、かがみ。自分より身長が下の人物を上目遣いに見ると言う器用な真似を披露する。 「ホント、ホント、私が言うんだから間違いないよ~」 「……うん」 「ふぅ、まずは落ち着きましたね」  と、みゆき。 「……器用なことするのね、あなたも」  とは、やまとの弁。みゆきは微笑しながら、 「私は切欠を与えてるだけです。その証拠に今のやり取りもお2人で解決なさいましたからね」 「ふ~ん」 「素直になれない、そんな時、誰かが後ろを支えてあげる。それだけで前に進めるものです。私は、お2人の親友として、その役に誇りを持っています」 「……お人好しね」 「かもしれません」 さて、ちょっとアクシデントがあったが本題も忘れてはならない。 「それで、八坂さん。機関紙のほうは分量をどの位?」  みゆきの問いに、こうは、うー、と唸りながら、 「書く人は一杯いるんだけどね。製本までやってくれる人がいなくて、各自分担すると、大分短い方がいいかな、と」 「文芸部のみなみちゃん達は?」  と、こなた。 「そっちはひよりんが今話をつけてますね。どうやらそのみなみちゃんって子の友達も何か書きたいらしくて」 「あ~、ゆーちゃんだね。みなみちゃんが書くなら私もって昨日言ってたし」  こなたの言葉に、こうは、はぁっと溜息。 「どっかにいませんかね、製本、編集、その他諸々の雑用やってくれる人」 「いますよ」  みゆきはそう言うと指をパチンと鳴らし、 「セバスチャン」  と言った。すると、扉が開いて、 「WAWAWA、どうも、白石です」  樹海から生還。君は覚えているか?白石みのるを! 「彼が今回、色々な雑用を引き受けてくださる、セバスチャンです」  にっこりとみゆき。白石は二歩後ずさって、 「お、俺、何役こなせばいいんですか?そんなに出来ませんよ!」  みゆきは見ているこちらが見惚れてしまう優雅な所作で、且つ、限りなく零に近い時間で白石に歩み寄ると、その肩をガシと掴んだ。 「何かご不満でも?」  笑顔が怖い。 「だって樹海から帰ってきたばっかなんすよ、コロネ一個で、死んじゃいますって!!」  みゆきは、その言葉に微かに力を緩めると、 「いいですか。あなたのような存在は貴重なんです。一人で何役もこなせる方が。例えば私達のように恋愛ミステリや恋愛小説を書く人は代わりを用意できるでしょう。  ですが、あなたのように、何でもやってくれる方は、そうはいません。  つまりあなたが頼りなんです。私達の機関紙はあなたにかかっているんです。あなたのように何でもやってくれる方に」  力説した。これが演技だとしたら、まさに役者として食っていける程、完璧な演説だった。  そしてこれは、演技だった。  白石はその細い目から、涙を滝のように流すと、 「う……み、みゆきさんにここまで言ってもらえるなんて……俺、やります!」  そう言ってみゆきの手を握ろうとするが、さり気なく、みゆきはその場を離れる。 「問題解決ですね」 「っていうか、パシリに丁度いいって事なんじゃないのか?何でもやってくれる人って事は」 「かがみん、突っ込んじゃダメだよ。本人は幸せそうだから」 「いやぁ、高良先輩、役者で食っていけますね~」 「……セバスチャン?君主執事俺?」 さて、雑用問題が解決した所で。 「八坂さん、永森さんは何を書くんですか?」 「え?私達ッスか?やまと、なに書く?」 「……こうが決めて」 「恋愛物は食傷気味なので、別の物を、お願いできませんか?」  う~んと唸るこうを尻目に、 「小早川さんは何を書くのか、泉さん知ってますか?」 「あ~、ゆーちゃんは童話って言ってた」 「じゃあ、みなみちゃんは幻想ホラーね」  と、かがみ。こなたはキョトンとして、 「何で?」  これはかがみにも意外だったらしく、逆に驚きながら、 「え?だって、ハ○ヒネタで……」 「あ~、私アニメしか見てないし」 「嘘っ!?だってこの前、機関紙についてハ○ヒのパクリとか何とか……」  口をパクパクとさせるかがみ。こなたはちょっと頬を染めながら、 「それは、かがみが前に貸してくれたじゃん?原作。まだちょっとしか読んでないけど似たような話だったなって」 「うぅ……そっか」  ガクリと肩を落とすかがみ。すると、こなたは慌てたように両手を振りながら、 「で、でもさ。ラノベとか読んでも殆ど頭に残らないのに、覚えてられたのは、かがみが貸してくれたから……なんだよ」 「え?」 「……かがみと同じ話、したくて」  身長が上の人物を上目遣いで見上げるのは極自然なこと、でも、好きな人、しかも可愛い女の子からそれをやられたら同性でも、こうかは ばつぐんだ! 「こなた……」  瞳を潤ませるかがみ。  良い雰囲気だなぁ。と、この場の誰もが思う。もう、このまま告白しちゃうんじゃない?そんな展開だ。  ところで、あらゆる困難が科学で解決するこの平成の時代、科学の力ではどうしようも出来ない良い雰囲気に立ち向かう神妙不可思議にて、空気を読まない男が一人…… 「ところで、俺は最初に何をやったらいいんですか!!」  その名は、白石みのる。  ハッと離れるこなたとかがみ。 「そ、それにアニメ二期に備えて、予習しておかなくちゃね」 「そ、そうよ!ちゃんと読みなさいよ!」 「みゆきさん、俺は何をやったらいいんすか!」  笑顔で白石。 「辞世の句と戒名を用意して、サンタモニカに逝って下さい」  笑顔でみゆき。  オチが以前と同じなのは、白石が話しに絡んでくると必定なのか。  兎も角、編集してくれる人がいないと困るので、この後、ちょっとしたお仕置きで済みましたよ。今回は、ね。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - こな太郎w -- ブレイブ (2013-02-11 11:42:41) - たいがいにしろよ白石… -- 名無しさん (2013-01-28 17:30:35) - 逝ってらっしゃいwww &br()もうちゅーしちゃえよ! -- ぷにゃねこ (2013-01-22 18:02:25) - 白石君〜!? -- かがみんラブ (2012-09-17 07:21:22) - 白石…不憫な男だwww -- 名無しさん (2010-03-04 22:09:47)
 お昼休みに色々あったおかげで、こなたとかがみの仲の良さは学校内でも有名になりつつあり、何時だったかみゆきが言った‘外堀を埋める’という意味での2人の垣根は低くなってきたのではないだろうか。  とはいえ、あの2人仲が良いね~、で済まされてる辺り、陵桜学園には強者が多すぎると思わざるを得ないのだが。    さて、今回の話の大元はひより発案、みゆき編集による‘こなたとかがみにラブレターを書かせよう’という作戦。  で、素直に書くはず無いものをアニ研、文芸部合同の機関紙の一部、として書かせる流れになっていた。  だが、機関紙となれば公に書くもの。故に念密な打ち合わせと検討、的確な時間指定が必要。  そこで、こなた、かがみ、みゆきの3人はアニ研部室にて、担当者と打ち合わせをすることになったのだが、 「八坂さん、遅いわね」 「そだね~」  現在放課後。打ち合わせ担当者であるアニ研部長・八坂こう、未だ現れず。 「まったく、アンタといい八坂さんといい、オタクって皆時間にルーズなのかしらね」 「いやぁ、かがみん?会って間もない人をオタクと決め付けるのはどうかと……」 「う、なんか、こなたといると、こういった方面の人達って皆オタクって言う変なバイアスが」 「偏見だ~、横暴だ~!」 「でも、こなたはオタクじゃない」 「む、如何にも。そしてかがみんもオタクと」 「わ、私は違うわよ!」  聞いてて飽きの来ない2人のやり取り。その傍でみゆきは、ただ緩やかに微笑んでいる。 (お昼の出来事は、尾を引かなかったみたいですね)  変に尾を引いてギクシャクするよりも、この方が良い。恐らく2人の間にあの流れでも自然であるという、仲の良さを証明する様な認識があるのだろう。 (でも、ちょっとは尾を引いて意識してくださると助かるのですが……)  微笑みに苦笑を若干混ぜながら、みゆきはまだまだ続いている2人のやり取り、もといじゃれあいを飽きることなく眺めている。と、 「遅れてすんませんッス!先輩方!」  謝辞の言葉と共に、八坂こうが入ってきた。といっても、入り口付近で止まっているけどね。何でだろう? 「遅い!」  開口一番、かがみ。 「ホントすんませんッス!色々手間取って……」  平身低頭、こう。そして、こなたたちから見えない位置、つまり廊下の方を向いて、 「今回スペシャルゲストを呼ぼうと思って、そしたら説得に時間かかって」 「ゲスト……ですか?」  と、みゆき。ほう、これは予想外。もし、今のこなたとかがみの状況を詰め将棋に例えると、みゆき達は盤上の駒。じゃあゲストとやらはさしずめ相手陣から取って控えにおいてある駒(正式名、不明)だろう。  どこでその駒を置くか。 「そうそう!ほら、やまと入って」  と、こうが殆ど無理矢理引っ張り込んできたのは、 「……はじめまして。永森やまと」 「むぉっ!」  こなたのアホ毛がピンと立つ。ついでに電話。 「父さん、萌えアンテナが!」 『何!どういうことだ、こな太郎?』 「ポニテ、猫目、クール、三大要素を併せ持つ強力な萌えが傍にいます!」 『そりゃいかん!是非写真を撮って送るんだ!』 「ラジャッ!」 「……こう。帰っていい?」 「わ~!待って待って!泉先輩もちょっと控えてください」  慌てるこう。引き気味のやまと。当然、初見でこなたのテンションについていける人は少ない。ついていけたのは天然なつかさと、天然(?)みゆき。こなたのラヴァーガール、かがみぐらいだ。後ひより。 「え~とッスね。彼女は永森やまと。学校は違うけど私の親友!今回の機関紙に一筆お願いしました!よろしく!」 「……ま、短い付き合いになると思うけどね」  どうでもよさそうに頭の後ろで腕を組み、遠くを見る目つきでやまと。  注意深く、みゆきは人となりを観察する。さて、この要素はプラスか、マイナスか?  また、みゆきとは違った意味でこなたもやまとを観察、もとい尋問していた。 「ねえねえ、そのポニーテール、中々GJだよ!もしかして、狙ってる?」 「……別に」 「むぅ、クールな所も中々」  顎に手を当て考え込む風情のこなた。そこにこうがそっと耳打ちをする。 「でも先輩、実はッスね。こう見えて、やまとって結構人付き合いいいんですよ」 「ほほう?」 「今回の機関紙も、私がお願いって言ったら、直ぐにOKくれましたし」  ちなみに、こうは隠し事に向いてないのか、丸聞こえ。 「べ、別に……あれはこうがどうしてもって言うから、仕方なく」  そう言って、フイとそっぽを向くやまと。その頬はほんのりと上気していて、それを見たこなたが、 「クーデレktkr!ポニテ、クーデレ、いい友達を持ったね~」  こうに向かって、ビッと親指を立てる。と、ここでかがみがようやく話に割り込んできた。 「……こなたは、ポニーテールの方が好きなの?」  ふぇ、と首を傾げて考えること数秒。 「萌えるよね」  実直な答えだ。聞いたかがみは何かを決意した表情で、 「ちょっとトイレ!」  飛び出していった。  頭に?マークを浮かべるこなた。だけど、みゆきにはかがみの取ろうとしている行動が分かったようで。 「泉さん、心の準備、しておいた方がいいかもしれませんよ?」 「え、何で?」  ?の数が3つに増えた。そして、その答えは程なく明らかとなる。 「お待たせ」 「か、かがみん!?」  戻ってきたかがみ。さて、行く前と後では違いがあるのだが、間違い探しを文章に求めるのは酷だろう。 「何で、ポニテ……?」 「き、気分転換よ!悪い?」 「いや、悪くは無いけど……」  そう、ポニーテール。髪型チェンジ。  こうがみゆきの傍に寄ると、 「いやぁ、生ツンデレ。お2人の仲、聞いた通りですね!」 「……こう、聞こえてるわよ」 「大丈夫です。泉さん、かがみさん。お2人には聞こえてませんから」  まさに、こなたはかがみの姿に戸惑うばかりで、かがみはこなたの反応を気にするばかりで、聞こえてはいないだろうね。この分じゃ。 「泉さんが永森さんの髪型に対して、萌え、と言ったのが気に入らなかったのでしょうね。対抗心を燃やして自分も、というわけです」  解説みゆき。 「かがみさん本来の髪型でも良かったのでしょうが、ポニーテール萌え。これが泉さんに関する最新の情報です。  以前、峰岸さんが彼氏さんの好みに合わせて髪を伸ばしていると聞きました。かがみさんもそれと同じで、好きな人の好みに合わせる。そのように自分を更新したのです」 「成る程ぉ」  と、こう。やまとは興味深げに2人を見ている。 「さて、そろそろ私も行きませんと」 「へ?」 「お2人だけでは、まだ少し心配ですからね」  微笑半、苦笑半でみゆき。 「どうせ、前みたく、武士みたいで男前って言うんでしょ!」 「え、いや、そんなことは……」 「分かってるわよ、どうせ私にはポニーテール――」 「男前ということは褒め言葉ですよね、泉さん?」  半ば自棄になって、今にも泣き出しそうなかがみ。おろおろするこなた。その間にみゆきは緩やかに割って入った。 「「え……?」」  二重奏。変な所で息が合う。みゆきの苦笑の割合が7割に増加した。 「男前、ということは格好よかった。確かに、今のかがみさんは格好いいです。頼り甲斐がありそうで」  ハッとしたようにかがみがこなたを見る。こなたは驚いた表情。 「良く似合っていらっしゃる。そんな意味で言ったのでしょう?ね、泉さん?」  問われ、こなたは改めてかがみの様子を見て、成る程、格好いいと思ったのか、ポッと頬を染めて視線を逸らし、でも、チラチラと盗み見る。  かがみは、 「でも、私だって女の子だし、本当は……可愛いって、言ってほしかった」  そっと呟く。するとこなたが、 「あ、え、えっと、だ、大丈夫!今でもかがみは充分可愛いよ」  と言って、かぁっとなって、 「……え~と、そう、萌え要素が一杯あるんだよ!かがみん萌え~」  取って付けた様に加えた。 「ホント……?」  と、かがみ。自分より身長が下の人物を上目遣いに見ると言う器用な真似を披露する。 「ホント、ホント、私が言うんだから間違いないよ~」 「……うん」 「ふぅ、まずは落ち着きましたね」  と、みゆき。 「……器用なことするのね、あなたも」  とは、やまとの弁。みゆきは微笑しながら、 「私は切欠を与えてるだけです。その証拠に今のやり取りもお2人で解決なさいましたからね」 「ふ~ん」 「素直になれない、そんな時、誰かが後ろを支えてあげる。それだけで前に進めるものです。私は、お2人の親友として、その役に誇りを持っています」 「……お人好しね」 「かもしれません」 さて、ちょっとアクシデントがあったが本題も忘れてはならない。 「それで、八坂さん。機関紙のほうは分量をどの位?」  みゆきの問いに、こうは、うー、と唸りながら、 「書く人は一杯いるんだけどね。製本までやってくれる人がいなくて、各自分担すると、大分短い方がいいかな、と」 「文芸部のみなみちゃん達は?」  と、こなた。 「そっちはひよりんが今話をつけてますね。どうやらそのみなみちゃんって子の友達も何か書きたいらしくて」 「あ~、ゆーちゃんだね。みなみちゃんが書くなら私もって昨日言ってたし」  こなたの言葉に、こうは、はぁっと溜息。 「どっかにいませんかね、製本、編集、その他諸々の雑用やってくれる人」 「いますよ」  みゆきはそう言うと指をパチンと鳴らし、 「セバスチャン」  と言った。すると、扉が開いて、 「WAWAWA、どうも、白石です」  樹海から生還。君は覚えているか?白石みのるを! 「彼が今回、色々な雑用を引き受けてくださる、セバスチャンです」  にっこりとみゆき。白石は二歩後ずさって、 「お、俺、何役こなせばいいんですか?そんなに出来ませんよ!」  みゆきは見ているこちらが見惚れてしまう優雅な所作で、且つ、限りなく零に近い時間で白石に歩み寄ると、その肩をガシと掴んだ。 「何かご不満でも?」  笑顔が怖い。 「だって樹海から帰ってきたばっかなんすよ、コロネ一個で、死んじゃいますって!!」  みゆきは、その言葉に微かに力を緩めると、 「いいですか。あなたのような存在は貴重なんです。一人で何役もこなせる方が。例えば私達のように恋愛ミステリや恋愛小説を書く人は代わりを用意できるでしょう。  ですが、あなたのように、何でもやってくれる方は、そうはいません。  つまりあなたが頼りなんです。私達の機関紙はあなたにかかっているんです。あなたのように何でもやってくれる方に」  力説した。これが演技だとしたら、まさに役者として食っていける程、完璧な演説だった。  そしてこれは、演技だった。  白石はその細い目から、涙を滝のように流すと、 「う……み、みゆきさんにここまで言ってもらえるなんて……俺、やります!」  そう言ってみゆきの手を握ろうとするが、さり気なく、みゆきはその場を離れる。 「問題解決ですね」 「っていうか、パシリに丁度いいって事なんじゃないのか?何でもやってくれる人って事は」 「かがみん、突っ込んじゃダメだよ。本人は幸せそうだから」 「いやぁ、高良先輩、役者で食っていけますね~」 「……セバスチャン?君主執事俺?」 さて、雑用問題が解決した所で。 「八坂さん、永森さんは何を書くんですか?」 「え?私達ッスか?やまと、なに書く?」 「……こうが決めて」 「恋愛物は食傷気味なので、別の物を、お願いできませんか?」  う~んと唸るこうを尻目に、 「小早川さんは何を書くのか、泉さん知ってますか?」 「あ~、ゆーちゃんは童話って言ってた」 「じゃあ、みなみちゃんは幻想ホラーね」  と、かがみ。こなたはキョトンとして、 「何で?」  これはかがみにも意外だったらしく、逆に驚きながら、 「え?だって、ハ○ヒネタで……」 「あ~、私アニメしか見てないし」 「嘘っ!?だってこの前、機関紙についてハ○ヒのパクリとか何とか……」  口をパクパクとさせるかがみ。こなたはちょっと頬を染めながら、 「それは、かがみが前に貸してくれたじゃん?原作。まだちょっとしか読んでないけど似たような話だったなって」 「うぅ……そっか」  ガクリと肩を落とすかがみ。すると、こなたは慌てたように両手を振りながら、 「で、でもさ。ラノベとか読んでも殆ど頭に残らないのに、覚えてられたのは、かがみが貸してくれたから……なんだよ」 「え?」 「……かがみと同じ話、したくて」  身長が上の人物を上目遣いで見上げるのは極自然なこと、でも、好きな人、しかも可愛い女の子からそれをやられたら同性でも、こうかは ばつぐんだ! 「こなた……」  瞳を潤ませるかがみ。  良い雰囲気だなぁ。と、この場の誰もが思う。もう、このまま告白しちゃうんじゃない?そんな展開だ。  ところで、あらゆる困難が科学で解決するこの平成の時代、科学の力ではどうしようも出来ない良い雰囲気に立ち向かう神妙不可思議にて、空気を読まない男が一人…… 「ところで、俺は最初に何をやったらいいんですか!!」  その名は、白石みのる。  ハッと離れるこなたとかがみ。 「そ、それにアニメ二期に備えて、予習しておかなくちゃね」 「そ、そうよ!ちゃんと読みなさいよ!」 「みゆきさん、俺は何をやったらいいんすか!」  笑顔で白石。 「辞世の句と戒名を用意して、サンタモニカに逝って下さい」  笑顔でみゆき。  オチが以前と同じなのは、白石が話しに絡んでくると必定なのか。  兎も角、編集してくれる人がいないと困るので、この後、ちょっとしたお仕置きで済みましたよ。今回は、ね。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 笑笑 -- 名無しさん (2023-01-09 01:49:15) - こな太郎w -- ブレイブ (2013-02-11 11:42:41) - たいがいにしろよ白石… -- 名無しさん (2013-01-28 17:30:35) - 逝ってらっしゃいwww &br()もうちゅーしちゃえよ! -- ぷにゃねこ (2013-01-22 18:02:25) - 白石君〜!? -- かがみんラブ (2012-09-17 07:21:22) - 白石…不憫な男だwww -- 名無しさん (2010-03-04 22:09:47)

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