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6話 絆の作り方」(2023/01/04 (水) 16:43:13) の最新版変更点

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「えっと・・・最後にバルサミコ酢を入れてっと。」 バルサミコ酢を手際よくボールの中へ。我ながら料理の腕が上達したな。 もう1年たつんだな。お姉ちゃんと私が一人暮らしを始めて。あ、お姉ちゃんはこなちゃんと二人暮らしだった。 「出来上がり。結構たくさんできたから、お姉ちゃんとこなちゃんに食べさせてあげよっと。」 ピーンポーン・・・ 響くピンポンの音。もう7時過ぎているのに。 「およ?誰だろ?はーい!どうぞ?」 ガチャ・・・ 無言で開くドア。そこにいたのは見慣れた大事に親友さん。 「あれ?こなちゃん!どーしたの?」 「・・・あの、ふつつか者ですが今晩泊めていたたけないでしょうか?」 「ふぇ?」 頭の中でたくさんの私がフル稼動。こなちゃんはお姉ちゃんと暮らしてて、こなちゃんの家はお姉ちゃんの家。 なのに自分の家に泊まれない?だから私の家に?こなたはかがみの嫁?ということはお姉ちゃんはどうするの?あれ?あれ?あれれ? 「えええっと・・・つまり、どいう事?お姉ちゃんは?」 「・・・かがみなんて知らないもん!」 「ほぇ?」 かがみなんて知らない?お姉ちゃんが分からない?こなちゃん記憶喪失かな? 「あ!分かった!こなちゃん、お姉ちゃんとケンカしたんでしょー?」 「・・・鋭いな、つかさのクセに。」 「なんですとっ!?ま、まぁとにかく上がってよ、夕飯も出来てるし。」 「つかさは優しいね。ごめんね、迷惑かけて。」 「ううん、平気だよぉ。」 お姉ちゃんとこなちゃんがケンカか。お姉ちゃんがケンカする所なんて、想像出来ないな。 それにしても、こなちゃん、元気ない。あからさまに落ち込んでる。 「こなちゃんはお姉ちゃんが大好きなんだね。」 「な、何を急に!?」 「んー、なんとなく。」 だって、こんなこなちゃん初めて。きっとお姉ちゃんに嫌われたって勘違いしてるんだろうな。 お姉ちゃんはこなちゃんの事、大好きなのに。双子だから、分かるのかな? お姉ちゃんを怒らせて、ケンカしたの、友達ではこなちゃんが最初。 だから、お姉ちゃんにとってこなちゃんは特別。そんな気がするんだ。 ‐‐‐‐ 「なぁ、あやのー。宿題見せてくれよー?まだ終わってねーんだよ。」 「ダメよ、自分でやらなきゃ。あれ?あそこにいるの柊ちゃんじゃない?」 「あー、ホントだ。珍しいなあいつが一人なの。おーい柊ぃー!」 もう冬は終わる。春の息吹はすぐそこまで来ている。もう1年が終わっちゃうんだな。 1年間通ってきた校門には柊ちゃんの姿。今日は一人だ。 いつもの2人、短い可愛らしい紫の女の子、妹ちゃんと、美しい青色の女の子、泉ちゃんはいない。 「おーっす、柊ぃ!」 「おはよ、柊ちゃん。」 「おはよー、日下部に峰岸。」 「今日は妹とちっこいのはいねーのか?」 「・・・まぁ、ね。」 柊ちゃんの僅かに引きつった頬を私は見逃さない。初めて見る表情だから。 「もしかして泉ちゃん、だよね?同居人のコとケンカしたの?」 「なっ!べ、別に・・・そんなんじゃ・・・」 「おー?図星かぁ?あやの、なかなか鋭いなー。」 「うっ・・・峰岸は何でそう思ったの?」 「なんとなくよ。特に深い意味はないわ。」 簡単よ。 初めて見る表情。中学生の頃に見たことがない、新しい柊ちゃんの顔。 戸惑い?苛立ち?憤り?ううん、きっと違う。もっと単純。 「それにしても柊がケンカとはなー。」 「・・・なによ?日下部、ケンカ売ってる?」 「だってなー。柊って気性荒いけど、誰かとケンカとかしなかったよな?」 「・・・確かに。ケンカした記憶、ないかも。なんで、あいつとケンカしたんだろ・・・」 「ふふっ。」 懐かしい記憶が甦ってくる。昔からたくさんケンカした、私とみさちゃん。 ささいな事で、ぶつかり合った、私とお兄さん。 その影に、柊ちゃんと、泉ちゃんを重ねたら、なんだか可笑しくて。 「峰岸まで・・・何が可笑しいワケ?」 ケンカなんて、単純。それが特に大切な人とのケンカなら尚更。 「内緒。さ、早く教室に行こ?みさちゃんも宿題終わってないんだし。」 「あー、ヤヴぁイ!柊ぃー!あのさー・・・」 「・・・イヤよ。自分でやりなさい。」 「みゅー・・・」 大切だから、大好きだからぶつかる。本当に愛しいからケンカする。 それが分からないから、素直に仲直り出来ないから、ちょっと戸惑ってる。 それだけなんだよ?柊ちゃん?貴女はいつ、その事に気が付くのかな? ‐‐‐‐ 「こなちゃん、ゆきちゃん、ご飯食べよー。」 「そうですね。丁度よくお腹も減りましたし。」 同じ営みの繰り返し。ですがその中でも私はお昼時間が楽しみです。 「そうだね。じゃ、いただきます。」 「かがみさんは今日いらっしゃらないのですか?」 「むぐっ・・・ゲホっ・・・」 「大丈夫、こなちゃん?お姉ちゃん、自分のクラスで食べるって。」 ちょっとした、違和感。かがみさんがいない。それもですが、違和感の正体は、きっと泉さん。 「泉さん、どこか調子が悪いんですか?」 「え?あ、いや・・・」 「こなちゃんとお姉ちゃん、ケンカしちゃったんだって・・・」 「あら・・・そうだったのですか。」 成る程。だから今日は朝、2人で登校していたのですね。 そしてもう1つ合点。違和感。やはりそれは泉さんでした。 「・・・だってかがみがさ・・・」 いつもの可愛らしいアホ毛も、心なしか萎れてます。いつもの澄んだ髪の毛が、海底のような暗い青色に見えます。 さらには、いつもの奇麗なエメラルドの目に、影が覆っているように見えます。 仕方ありませんね。本来、このような事はしたくないのですが、他ならぬ、大切な友人の為です。 「そうですよね。かがみさんは意地っ張りな所がありますしね。」 「ゆ、ゆきちゃん?」 「それに、泉さんにはいつも辛く当たりますから、泉さんが怒るのは当然かと、思います。」 「それ違うよ、みゆきさんっ!意地っ張りなのは、ちょっと素直になれないだけだよ!私に辛く当たるのは私を本当に想ってくれてるからだよ!かがみは悪くない!本当は私が悪・・・」 「はい、知っていますよ。今丁度その台詞を言おうと思っていました。」 「・・・ふぇ?」 計算・・・もとい思惑通りに事が運びました。それにしても、泉さんを見てると感慨深いです。 「泉さんはもう、何をするべきか分かっていらっしゃるようですね。」 「・・・みゆきさんには勝てないな。うん、帰りに謝らなきゃ。ありがとー、みゆきさん!つかさも、昨日はありがとね。」 初めて見た時のクールな泉さん、大声でかがみさんを擁護した泉さん。 人間ってこんなに変われるのだと、驚きと感動で満たされます。 人間の、かがみさんと泉さんの力は素晴らしいな、そんな風に思います。 きっと、このケンカと仲直りを通して、もっと変わるのだと思います。もちろん良い方向へ。 ‐‐‐‐ キーンコーン・・・カーンコーン・・・ よっしゃ!やっと昼休みだぜ。授業分からない、早く部活したい。でも時間はそんなに早く過ぎない。 「あやの、早くメシ食べよーぜ!腹減った。」 「うん。柊ちゃん、今日はどうするの?」 「うっ・・・えーとじゃ今日は一緒に食べていいかな?」 「もちろんだぜ!じゃ早く柊も準備しろ!」 今日は珍しい事ばっか。柊が私とあやのと食べるのは久しぶりだ。 最近はあのちびっこや妹やメガネさんの所で食べてるから。だからちょっと寂しいのは言うまでもない。 でも、今日の柊を見てる方がもっと寂しい。いつもの柊じゃない。 「なぁ、柊ぃ?」 「何?ミートボールはあげないわよ?」 「・・・最近太ったか?」 「ち、ちょっとみさちゃん?」 「・・・そうかもね。ダイエット、しなきゃ。」 あー、絶対違う。こんなんじゃねーもん。私の知ってる柊はもっと、こう、言葉に表せないけど、もっとすげーのに。 「ポッキーばっか食べてるからだぞー?」 「みさちゃん?」 「うん・・・ちょっと気を付けなきゃ。」 ・・・つまんねー。こんな柊、嫌だ。やっぱケンカが原因か。 あのちっこい奴と一緒に暮らすようになってからの柊が、なんとなく悔しいけど、ちっこい奴と仲良い時の柊の方が、いい。 「うあぁぁ!もー、じれってーなー。ウジウジしやがってっ!柊はウサギか?」 「はぁ!?いきなりキレてなによ?」 「・・・あの、みさちゃん、頭大丈夫?」 頭は悪いさ。それがなんだってんだ? 不器用で、ヴぁカでもなんでもいい。ただ、ちょっとちっこいのと、柊の間を繕ってあげたいだけ。 ちびっこと一緒にいる時の、元気で光ってる柊に戻してやりたいだけ。 「あのな、ケンカした事を後悔したってどうにもなんねーだろ?肝心なのは仲直り!いつまでもそのままじゃ、つまんねーだろ?」 「・・・うん。」 「じゃ、私からの宿題。明日までに仲直りしろよ?いいな?約束だからな?」 「・・・日下部って結構良い奴なのね。」 「だろ?」 「ありがと。なんかあんたを見てたらなんとなく元気出た。」 「泉ちゃんと仲直り、できるといいわね。」 「そう、ね。よく考えたら、私が悪いんだし、ちゃんと謝らないと。」 「頑張れよ、柊。」 感謝しろよ、ちびっこ。仲直りできたら、私のおかげだからな。 ‐‐‐‐ キーンコーン・・・カーンコーン・・・ 私の闘いの幕開けを知らせるチャイム。 「じゃ、つかさ、みゆきさん、行ってくる!」 「大丈夫だって!頑張ってねこなちゃん。」 「ちゃんと4人で帰りましょうね。」 かがみのクラスまで走る。頑張れ、こなた。初めての、ケンカ。だからこそ、早く仲直りしたい。 霧がかかっているように、雨が降っているように、光が差し込まないように。 こんな気持ち、もうたくさんだ。普通に戻りたい。一言、かがみに告げて、光を浴びたい。 そんな事を思っていたら、大きな衝撃と共に床に転ぶ。誰かとぶつかってしまった。 「あいたた・・・ごめんなさい・・・ってかがみ?」 「あ、こなた・・・」 ごめん。ごめんなさい。許して下さい。私が悪かったよ。頭では分かっているのに、言葉にならない。とんだヘタレだ。 「ごめんっ!」 「・・・え?」 不意に私に響く声。かがみの『ごめん』が、風鈴の音のように、私の中で奇麗に響く。 「あ、あのさ、昨日の事!ごめん・・・落ち着いて考えたら、私が悪かったわ・・・ごめんね、こなた。」 「かがみ・・・」 「それに・・・ケ、ケンカしたままじゃ・・・嫌、だしさ・・・」 やっぱり、私の太陽は此処にあった。日差しがとても温かい。霧が、雨が、晴れてゆく。跡形もなく、晴れてゆく。 「ふっふっふ。謝りながらもさりげなくデレるかがみ萌え。」 「うるさいっ!そーやって茶化すから謝りたくなかったんだよ!」 憎まれ口。ちょっと怒ったような台詞。それでも、さりげない笑顔。私の大切な居場所。 「ごめんね、かがみん。」 「いいのよ、私も悪かったんだしさ。」 私も今日初めての笑顔をかがみに贈る。初めてのケンカ。初めての仲直り。今だけを見ると、こういうのも悪くない。 「こなちゃーん!お姉ちゃん!仲直りすんだ?」 「ごめんね、つかさ、みゆき。心配かけちゃって。」 「結局、ケンカの原因は何だったのですか?」 下らない事で笑い、なんてことない事でケンカした。そんな初めてだらけの1年間。次の年は何があるのだろう? 「・・・何だっけ。こなた、覚えてる?」 「・・・てへ。忘れちゃった。」 「ぷっ・・・私達らしいわね。」 親友が出来ました。名前はつかさに、みゆきさん。とてもいい人達です。 同居人が、無くしたくない人になりました。名前はかがみ。私の太陽。 毎日が幸福です。さぁ、明日はどんな幸福があるのかな? **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 良いラストですね!GJ!! -- 名無しさん (2021-04-05 00:16:34) - 本当周りの人間に恵まれてるよなこの二人。人徳か。 -- 名無しさん (2013-01-12 12:00:32) - いい生活送っていますね♪ -- かがみんラブ (2012-09-17 05:18:07)
「えっと・・・最後にバルサミコ酢を入れてっと。」 バルサミコ酢を手際よくボールの中へ。我ながら料理の腕が上達したな。 もう1年たつんだな。お姉ちゃんと私が一人暮らしを始めて。あ、お姉ちゃんはこなちゃんと二人暮らしだった。 「出来上がり。結構たくさんできたから、お姉ちゃんとこなちゃんに食べさせてあげよっと。」 ピーンポーン・・・ 響くピンポンの音。もう7時過ぎているのに。 「およ?誰だろ?はーい!どうぞ?」 ガチャ・・・ 無言で開くドア。そこにいたのは見慣れた大事に親友さん。 「あれ?こなちゃん!どーしたの?」 「・・・あの、ふつつか者ですが今晩泊めていたたけないでしょうか?」 「ふぇ?」 頭の中でたくさんの私がフル稼動。こなちゃんはお姉ちゃんと暮らしてて、こなちゃんの家はお姉ちゃんの家。 なのに自分の家に泊まれない?だから私の家に?こなたはかがみの嫁?ということはお姉ちゃんはどうするの?あれ?あれ?あれれ? 「えええっと・・・つまり、どいう事?お姉ちゃんは?」 「・・・かがみなんて知らないもん!」 「ほぇ?」 かがみなんて知らない?お姉ちゃんが分からない?こなちゃん記憶喪失かな? 「あ!分かった!こなちゃん、お姉ちゃんとケンカしたんでしょー?」 「・・・鋭いな、つかさのクセに。」 「なんですとっ!?ま、まぁとにかく上がってよ、夕飯も出来てるし。」 「つかさは優しいね。ごめんね、迷惑かけて。」 「ううん、平気だよぉ。」 お姉ちゃんとこなちゃんがケンカか。お姉ちゃんがケンカする所なんて、想像出来ないな。 それにしても、こなちゃん、元気ない。あからさまに落ち込んでる。 「こなちゃんはお姉ちゃんが大好きなんだね。」 「な、何を急に!?」 「んー、なんとなく。」 だって、こんなこなちゃん初めて。きっとお姉ちゃんに嫌われたって勘違いしてるんだろうな。 お姉ちゃんはこなちゃんの事、大好きなのに。双子だから、分かるのかな? お姉ちゃんを怒らせて、ケンカしたの、友達ではこなちゃんが最初。 だから、お姉ちゃんにとってこなちゃんは特別。そんな気がするんだ。 ‐‐‐‐ 「なぁ、あやのー。宿題見せてくれよー?まだ終わってねーんだよ。」 「ダメよ、自分でやらなきゃ。あれ?あそこにいるの柊ちゃんじゃない?」 「あー、ホントだ。珍しいなあいつが一人なの。おーい柊ぃー!」 もう冬は終わる。春の息吹はすぐそこまで来ている。もう1年が終わっちゃうんだな。 1年間通ってきた校門には柊ちゃんの姿。今日は一人だ。 いつもの2人、短い可愛らしい紫の女の子、妹ちゃんと、美しい青色の女の子、泉ちゃんはいない。 「おーっす、柊ぃ!」 「おはよ、柊ちゃん。」 「おはよー、日下部に峰岸。」 「今日は妹とちっこいのはいねーのか?」 「・・・まぁ、ね。」 柊ちゃんの僅かに引きつった頬を私は見逃さない。初めて見る表情だから。 「もしかして泉ちゃん、だよね?同居人のコとケンカしたの?」 「なっ!べ、別に・・・そんなんじゃ・・・」 「おー?図星かぁ?あやの、なかなか鋭いなー。」 「うっ・・・峰岸は何でそう思ったの?」 「なんとなくよ。特に深い意味はないわ。」 簡単よ。 初めて見る表情。中学生の頃に見たことがない、新しい柊ちゃんの顔。 戸惑い?苛立ち?憤り?ううん、きっと違う。もっと単純。 「それにしても柊がケンカとはなー。」 「・・・なによ?日下部、ケンカ売ってる?」 「だってなー。柊って気性荒いけど、誰かとケンカとかしなかったよな?」 「・・・確かに。ケンカした記憶、ないかも。なんで、あいつとケンカしたんだろ・・・」 「ふふっ。」 懐かしい記憶が甦ってくる。昔からたくさんケンカした、私とみさちゃん。 ささいな事で、ぶつかり合った、私とお兄さん。 その影に、柊ちゃんと、泉ちゃんを重ねたら、なんだか可笑しくて。 「峰岸まで・・・何が可笑しいワケ?」 ケンカなんて、単純。それが特に大切な人とのケンカなら尚更。 「内緒。さ、早く教室に行こ?みさちゃんも宿題終わってないんだし。」 「あー、ヤヴぁイ!柊ぃー!あのさー・・・」 「・・・イヤよ。自分でやりなさい。」 「みゅー・・・」 大切だから、大好きだからぶつかる。本当に愛しいからケンカする。 それが分からないから、素直に仲直り出来ないから、ちょっと戸惑ってる。 それだけなんだよ?柊ちゃん?貴女はいつ、その事に気が付くのかな? ‐‐‐‐ 「こなちゃん、ゆきちゃん、ご飯食べよー。」 「そうですね。丁度よくお腹も減りましたし。」 同じ営みの繰り返し。ですがその中でも私はお昼時間が楽しみです。 「そうだね。じゃ、いただきます。」 「かがみさんは今日いらっしゃらないのですか?」 「むぐっ・・・ゲホっ・・・」 「大丈夫、こなちゃん?お姉ちゃん、自分のクラスで食べるって。」 ちょっとした、違和感。かがみさんがいない。それもですが、違和感の正体は、きっと泉さん。 「泉さん、どこか調子が悪いんですか?」 「え?あ、いや・・・」 「こなちゃんとお姉ちゃん、ケンカしちゃったんだって・・・」 「あら・・・そうだったのですか。」 成る程。だから今日は朝、2人で登校していたのですね。 そしてもう1つ合点。違和感。やはりそれは泉さんでした。 「・・・だってかがみがさ・・・」 いつもの可愛らしいアホ毛も、心なしか萎れてます。いつもの澄んだ髪の毛が、海底のような暗い青色に見えます。 さらには、いつもの奇麗なエメラルドの目に、影が覆っているように見えます。 仕方ありませんね。本来、このような事はしたくないのですが、他ならぬ、大切な友人の為です。 「そうですよね。かがみさんは意地っ張りな所がありますしね。」 「ゆ、ゆきちゃん?」 「それに、泉さんにはいつも辛く当たりますから、泉さんが怒るのは当然かと、思います。」 「それ違うよ、みゆきさんっ!意地っ張りなのは、ちょっと素直になれないだけだよ!私に辛く当たるのは私を本当に想ってくれてるからだよ!かがみは悪くない!本当は私が悪・・・」 「はい、知っていますよ。今丁度その台詞を言おうと思っていました。」 「・・・ふぇ?」 計算・・・もとい思惑通りに事が運びました。それにしても、泉さんを見てると感慨深いです。 「泉さんはもう、何をするべきか分かっていらっしゃるようですね。」 「・・・みゆきさんには勝てないな。うん、帰りに謝らなきゃ。ありがとー、みゆきさん!つかさも、昨日はありがとね。」 初めて見た時のクールな泉さん、大声でかがみさんを擁護した泉さん。 人間ってこんなに変われるのだと、驚きと感動で満たされます。 人間の、かがみさんと泉さんの力は素晴らしいな、そんな風に思います。 きっと、このケンカと仲直りを通して、もっと変わるのだと思います。もちろん良い方向へ。 ‐‐‐‐ キーンコーン・・・カーンコーン・・・ よっしゃ!やっと昼休みだぜ。授業分からない、早く部活したい。でも時間はそんなに早く過ぎない。 「あやの、早くメシ食べよーぜ!腹減った。」 「うん。柊ちゃん、今日はどうするの?」 「うっ・・・えーとじゃ今日は一緒に食べていいかな?」 「もちろんだぜ!じゃ早く柊も準備しろ!」 今日は珍しい事ばっか。柊が私とあやのと食べるのは久しぶりだ。 最近はあのちびっこや妹やメガネさんの所で食べてるから。だからちょっと寂しいのは言うまでもない。 でも、今日の柊を見てる方がもっと寂しい。いつもの柊じゃない。 「なぁ、柊ぃ?」 「何?ミートボールはあげないわよ?」 「・・・最近太ったか?」 「ち、ちょっとみさちゃん?」 「・・・そうかもね。ダイエット、しなきゃ。」 あー、絶対違う。こんなんじゃねーもん。私の知ってる柊はもっと、こう、言葉に表せないけど、もっとすげーのに。 「ポッキーばっか食べてるからだぞー?」 「みさちゃん?」 「うん・・・ちょっと気を付けなきゃ。」 ・・・つまんねー。こんな柊、嫌だ。やっぱケンカが原因か。 あのちっこい奴と一緒に暮らすようになってからの柊が、なんとなく悔しいけど、ちっこい奴と仲良い時の柊の方が、いい。 「うあぁぁ!もー、じれってーなー。ウジウジしやがってっ!柊はウサギか?」 「はぁ!?いきなりキレてなによ?」 「・・・あの、みさちゃん、頭大丈夫?」 頭は悪いさ。それがなんだってんだ? 不器用で、ヴぁカでもなんでもいい。ただ、ちょっとちっこいのと、柊の間を繕ってあげたいだけ。 ちびっこと一緒にいる時の、元気で光ってる柊に戻してやりたいだけ。 「あのな、ケンカした事を後悔したってどうにもなんねーだろ?肝心なのは仲直り!いつまでもそのままじゃ、つまんねーだろ?」 「・・・うん。」 「じゃ、私からの宿題。明日までに仲直りしろよ?いいな?約束だからな?」 「・・・日下部って結構良い奴なのね。」 「だろ?」 「ありがと。なんかあんたを見てたらなんとなく元気出た。」 「泉ちゃんと仲直り、できるといいわね。」 「そう、ね。よく考えたら、私が悪いんだし、ちゃんと謝らないと。」 「頑張れよ、柊。」 感謝しろよ、ちびっこ。仲直りできたら、私のおかげだからな。 ‐‐‐‐ キーンコーン・・・カーンコーン・・・ 私の闘いの幕開けを知らせるチャイム。 「じゃ、つかさ、みゆきさん、行ってくる!」 「大丈夫だって!頑張ってねこなちゃん。」 「ちゃんと4人で帰りましょうね。」 かがみのクラスまで走る。頑張れ、こなた。初めての、ケンカ。だからこそ、早く仲直りしたい。 霧がかかっているように、雨が降っているように、光が差し込まないように。 こんな気持ち、もうたくさんだ。普通に戻りたい。一言、かがみに告げて、光を浴びたい。 そんな事を思っていたら、大きな衝撃と共に床に転ぶ。誰かとぶつかってしまった。 「あいたた・・・ごめんなさい・・・ってかがみ?」 「あ、こなた・・・」 ごめん。ごめんなさい。許して下さい。私が悪かったよ。頭では分かっているのに、言葉にならない。とんだヘタレだ。 「ごめんっ!」 「・・・え?」 不意に私に響く声。かがみの『ごめん』が、風鈴の音のように、私の中で奇麗に響く。 「あ、あのさ、昨日の事!ごめん・・・落ち着いて考えたら、私が悪かったわ・・・ごめんね、こなた。」 「かがみ・・・」 「それに・・・ケ、ケンカしたままじゃ・・・嫌、だしさ・・・」 やっぱり、私の太陽は此処にあった。日差しがとても温かい。霧が、雨が、晴れてゆく。跡形もなく、晴れてゆく。 「ふっふっふ。謝りながらもさりげなくデレるかがみ萌え。」 「うるさいっ!そーやって茶化すから謝りたくなかったんだよ!」 憎まれ口。ちょっと怒ったような台詞。それでも、さりげない笑顔。私の大切な居場所。 「ごめんね、かがみん。」 「いいのよ、私も悪かったんだしさ。」 私も今日初めての笑顔をかがみに贈る。初めてのケンカ。初めての仲直り。今だけを見ると、こういうのも悪くない。 「こなちゃーん!お姉ちゃん!仲直りすんだ?」 「ごめんね、つかさ、みゆき。心配かけちゃって。」 「結局、ケンカの原因は何だったのですか?」 下らない事で笑い、なんてことない事でケンカした。そんな初めてだらけの1年間。次の年は何があるのだろう? 「・・・何だっけ。こなた、覚えてる?」 「・・・てへ。忘れちゃった。」 「ぷっ・・・私達らしいわね。」 親友が出来ました。名前はつかさに、みゆきさん。とてもいい人達です。 同居人が、無くしたくない人になりました。名前はかがみ。私の太陽。 毎日が幸福です。さぁ、明日はどんな幸福があるのかな? **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-01-04 16:43:13) - 良いラストですね!GJ!! -- 名無しさん (2021-04-05 00:16:34) - 本当周りの人間に恵まれてるよなこの二人。人徳か。 -- 名無しさん (2013-01-12 12:00:32) - いい生活送っていますね♪ -- かがみんラブ (2012-09-17 05:18:07)

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