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季節は移ろう。 それが辛い事であっても、たとえ楽しい事であったとしても いつかは終わり、また新しい何かが始まる。 「――――ぁ……」 引越しの準備のために、部屋の掃除と整理をしていたら 懐かしいものが出て来た。 ――卒業アルバム。 一度も開いていないそれは真新しく折目一つ付いていない。 蘇るのはあの日の記憶。 まるで昨日の事のように思い出す事ができる。 『私、こなたの事がずっと好きだったの』 『え………?』 『卒業してからも、ずっと一緒に居たい、って思ってる』 卒業式の日、式典が終わりクラスの皆が記念撮影や 卒業アルバムへメッセージを書き合う中、私は かがみに呼び出され校舎裏に来ていた。 そして言われたのは紛れも無く“愛の告白”というやつで。 混乱と驚きの中、私が言ったのは 『……ちょっと考えさせて』 この一言だった。 今にして思えば相当バカな返答だったと思う。 次の日からもうかがみは、遠くに行ってしまうのに…。 そんなバカな私の返事にかがみは少しだけ寂しそうな笑顔で答えた。 『そっか……わかった。じゃあ、私―――』 そのあとに続いた言葉も私は未だにはっきりと覚えている。 あれからその事はうやむやになってしまって、翌日かがみは 東京近郊にある大学に通うために家を出て、私はと言うと 自宅から通える距離の大学だったから、そのまま家に居続けた。 何となく気まずくて、ろくに連絡もとらないまま、四年。 ―そう、四年が経ってしまった。 「ちょっと待って」と言うには長すぎる歳月。 文学部に進学した私は、お父さんのコネもあって 都内の、それなりの出版社に内定をもらう事ができた。 来週からは住み慣れた我が家じゃなく、 新しい環境で生きて行かなければならない。 ぺらり、何となく今まで見てこなかったアルバムをめくる。 興味が無かったんじゃなくて、怖かったのかもしれない。 あの時のかがみを思い出すのが? もう戻れない日々を、もう一度欲してしまうのが? どちらなのかはよく解らなかったけれど。 ページを開く度に、鮮やかに浮かび上がってくる思い出たち。 なんでもない日常から、体育祭、修学旅行、文化祭…。 そのどれもに付随するのは、みゆきさんでもつかさでもなくて かがみとの記憶だった。 ――あ。なんだ。そんなに簡単な事だったんだ。 私は、かがみとだから楽しかったのか。 私は、かがみと一緒に過ごした時間が好きだったのか。 私はかがみが――好きなんだ。 高校の時も、離ればなれになった今ですら。 ぽたり、ぽたり、と涙が落ちて視界が滲む。 こんなに大切な事に今まで気付かなかったなんて。 こうしちゃいられない。 ぐいっと零れる雫をぬぐって、鞄に入っている携帯を取り出す。 電話帳の一番上の名前を押すと、コール音が鳴り始める。 いまさら告白の返事をしたらなんて言うかな? …やっぱり怒らせちゃうかな、遅すぎる!って。 まさか彼氏なんて出来てないよね? あの日最後に言った言葉、忘れたなんて言わせないよ? 『そっか……わかった。じゃあ、私待ってるから。 何年でも……こなたの事、待ってるから…』 三度目のコールの後、懐かしい声がする。 「もしもし?」 四年越しの想いを伝えよう。 私とかがみの新しい関係を始めるために。 「あ、かがみ?わかったよ。私、かがみの事――…」  → [[かがみ視点の物語>これからを、君と]] **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 続き書いてくれwww -- 名無しさん (2009-11-07 17:26:36) - 切ないけど好きだわー -- 名無しさん (2009-08-11 18:05:36) - 切ないなぁ… -- 名無しさん (2009-04-28 04:12:51)
季節は移ろう。 それが辛い事であっても、たとえ楽しい事であったとしても いつかは終わり、また新しい何かが始まる。 「――――ぁ……」 引越しの準備のために、部屋の掃除と整理をしていたら 懐かしいものが出て来た。 ――卒業アルバム。 一度も開いていないそれは真新しく折目一つ付いていない。 蘇るのはあの日の記憶。 まるで昨日の事のように思い出す事ができる。 『私、こなたの事がずっと好きだったの』 『え………?』 『卒業してからも、ずっと一緒に居たい、って思ってる』 卒業式の日、式典が終わりクラスの皆が記念撮影や 卒業アルバムへメッセージを書き合う中、私は かがみに呼び出され校舎裏に来ていた。 そして言われたのは紛れも無く“愛の告白”というやつで。 混乱と驚きの中、私が言ったのは 『……ちょっと考えさせて』 この一言だった。 今にして思えば相当バカな返答だったと思う。 次の日からもうかがみは、遠くに行ってしまうのに…。 そんなバカな私の返事にかがみは少しだけ寂しそうな笑顔で答えた。 『そっか……わかった。じゃあ、私―――』 そのあとに続いた言葉も私は未だにはっきりと覚えている。 あれからその事はうやむやになってしまって、翌日かがみは 東京近郊にある大学に通うために家を出て、私はと言うと 自宅から通える距離の大学だったから、そのまま家に居続けた。 何となく気まずくて、ろくに連絡もとらないまま、四年。 ―そう、四年が経ってしまった。 「ちょっと待って」と言うには長すぎる歳月。 文学部に進学した私は、お父さんのコネもあって 都内の、それなりの出版社に内定をもらう事ができた。 来週からは住み慣れた我が家じゃなく、 新しい環境で生きて行かなければならない。 ぺらり、何となく今まで見てこなかったアルバムをめくる。 興味が無かったんじゃなくて、怖かったのかもしれない。 あの時のかがみを思い出すのが? もう戻れない日々を、もう一度欲してしまうのが? どちらなのかはよく解らなかったけれど。 ページを開く度に、鮮やかに浮かび上がってくる思い出たち。 なんでもない日常から、体育祭、修学旅行、文化祭…。 そのどれもに付随するのは、みゆきさんでもつかさでもなくて かがみとの記憶だった。 ――あ。なんだ。そんなに簡単な事だったんだ。 私は、かがみとだから楽しかったのか。 私は、かがみと一緒に過ごした時間が好きだったのか。 私はかがみが――好きなんだ。 高校の時も、離ればなれになった今ですら。 ぽたり、ぽたり、と涙が落ちて視界が滲む。 こんなに大切な事に今まで気付かなかったなんて。 こうしちゃいられない。 ぐいっと零れる雫をぬぐって、鞄に入っている携帯を取り出す。 電話帳の一番上の名前を押すと、コール音が鳴り始める。 いまさら告白の返事をしたらなんて言うかな? …やっぱり怒らせちゃうかな、遅すぎる!って。 まさか彼氏なんて出来てないよね? あの日最後に言った言葉、忘れたなんて言わせないよ? 『そっか……わかった。じゃあ、私待ってるから。 何年でも……こなたの事、待ってるから…』 三度目のコールの後、懐かしい声がする。 「もしもし?」 四年越しの想いを伝えよう。 私とかがみの新しい関係を始めるために。 「あ、かがみ?わかったよ。私、かがみの事――…」  → [[かがみ視点の物語>これからを、君と]] **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!泣 -- 名無しさん (2022-12-18 22:26:55) - 続き書いてくれwww -- 名無しさん (2009-11-07 17:26:36) - 切ないけど好きだわー -- 名無しさん (2009-08-11 18:05:36) - 切ないなぁ… -- 名無しさん (2009-04-28 04:12:51)

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