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秋の夜の出来事」(2022/12/18 (日) 12:01:04) の最新版変更点

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『……の様に、今や日本製のアニメはこの国の経済にとって欠かせないものとなっているのである。 その反面、少子化による視聴率の低下や作品の粗製濫造による慢性的な人手不足等、深刻な課題も多い。 次章では、その課題について述べようと思う』 「ふわわ、やっと一区切りついた~」 「お疲れ様。 アンタも、やればできるじゃない」  薄く仕切られたアパートの壁に、私たちの声が反射する。  今日は、ようやくカゼが治ったかがみが、私のレポート作成の手伝いに来てくれていた。  わざわざ、泊まりがけで手伝うという条件付で……。   「ま、私もやれば出来るってことでしょ。やっぱ、パソコンに打ち込むと楽だよねぇ」 「それは別にいいんだけどさ。打ち込む度に変な文字変換ばっかして、大変だったじゃないのよ。」    かがみの言っている通り、実際に作業している最中に私の愛機は趣味全開の文字変換を何度も繰り返していた。  ま、こういう所が私のパソコンのかわいい所なんだよね~。  「ちっちっちっ、まだまだ甘いよかがみん。こういう部分があるからこそ、魅力的で萌えるんだよ」 「はぁ~。よくわからんわ、その感覚」   そんなかがみを横目に見ながら、パソコンの電源を落とす。  画面が真っ黒になるのと同時に、私の腹時計が大きく鳴っていた。  それに加えて部屋の中は、眩しい程の夕日に覆われ、夜のとばりが近いという事を知らせてきていた。 「ふあ~、安心したら一気にお腹が空いてきちゃったよ。そろそろ、スーパーに夕飯の買い出しにでも 行こっかな。今日は週末だから、セールとかやってるだろうし」 「そうね、私も付き合うわよ。でも、何作るつもりなの?出来れば、私も手伝いたいんだけど」  むむむ、かがみが手伝っても大丈夫な料理かぁ。  う~ん、簡単な料理にしとかないと、張り切りすぎて怪我しちゃうかも。  仕方がない。 ここは無難なメニューにしておくかな。  「そうだね、ここはシンプルにカレーとサラダでも作る事にするよ。かがみは、食器でも揃えててよ。 後は私だけでどうにかするからさ」 「えっ? でも、野菜の下準備くらいは私にもできるわよ」  しまった。そういえばこの前、絆創膏が何枚も貼れちゃう程、野菜の切り方の練習をしてたんだったっけ。  私は、さんざん考えたあげく、結局手伝ってもらう事にした。 「じゃ、じゃあ手伝ってもらちゃおっかな」 「りょ~かい。それじゃ、バシバシいくわよ~」     「あ。 それとさ、後でお風呂沸かすから、ご飯食べた後に続けて入っちゃってよね」 「はいはい。わかりましたよ~。さ、早くスーパーで買い物済ませちゃいましょ」         何か、かがみの顔が普段より嬉しそうに見えた。  そんなに私と料理するのが楽しいのかな?  極々小さなハテナが私の中に浮かんでいる間に、時間は刻一刻と過ぎていくのであった―― 「あ~。 お腹いっぱいだよ、もう食べらんない」 「食べ過ぎたんじゃないの、こなた?それに、アンタってこんなに大食いだったっけ?」  とっぷりと日も暮れた頃、私たちは今日の夕食を終えていた。  かがみの野菜を切る手つきが意外に上手くなってたのと、メニューをシンプルにしたお陰で、 料理はあっという間に完成した。  ……にしても、調子に乗ってカレーを作りすぎちゃったな、こりゃ。  やっぱり、二人分だったからってちょっと材料を買いすぎたかな。  昔みたいにカビとか生えて来なきゃいいんだけど。   「いやあ、こうやって誰かと夕ご飯食べる機会なんて、めっきり減っちゃったしさぁ。だからついつい、ね」 「あ、そう…… だったんだ」  かがみの表情が一瞬曇ったように見えたのは、気のせいだろうか。  だけど、すぐにいつもの顔に戻っていたので、私は会話を再開した。   「じゃあ私、お風呂沸かしてくるからさ、かがみはそこでゆっくりしててよ」 「う、うん。わかったわよ」 「……? じゃあ、行ってくるね」  再び微妙な反応を見せたかがみを気にしつつ、私は浴室へと向かった。  今思うと、この時のかがみの心境の変化に、もう少し早く気づいてあげるべきだったのかもしれない……。 「これでよし……と」  蛇口から、湯気をまとったお湯が勢いよく流れ出し、湯船を満たしていく。  ホントは、瞬間湯沸かし器が欲しい所だけど、流石にお金が足りない。  やっぱり、もう少しバイトの時間増やそうかな。  まずはコスプレの種類を増やして、新しい客層を呼び込んで、それに……。   「――って、お風呂場でこんな事考えててもしょうがないじゃん。今日はかがみが来てるんだし、 た~っぷり遊んであげなきゃね」  小悪魔の様な笑みを浮かべながら、私はかがみのいる部屋に帰った。  そして、部屋に入った瞬間に私はいつもの調子でまくしたてた。   「かがみ~ん。さ、夜は長いんだよ。お風呂が沸くまで私と一緒にゲームでも……あれ?」  かがみの反応が無い。いつもなら、何かしら突っ込んでくれるのに。  ふと、部屋の中を改めて見渡してみる。六畳間で仕切られた部屋の、ちょうど窓側の隅っこの方に、かがみはいた。  カーテンの側に立ったまま、何か考えごとをしている様だった。 「お~い、かがみさん?」 「あ、こなた。 ごめんね、ちょっと考えごとしてて」 「ほほう、考えごとねぇ。それじゃあ、私に話してごらんよ。何とか生電話並に、びしっと答えてあげるよ」  私がそう言った瞬間、深刻そうな顔をしたかがみが私に視線を合わせてきた。  それこそ、不安と迷いが複雑に入り混じっている様にも見えた。 「ホントに、答えてくれるの?」 「疑り深いなぁ。もう長い付き合いじゃん。ささ、何でも言ってみなさいな」 「じゃあさ、単刀直入に聞くわよ。……こなたはさ、このアパートにずっと独りでいて、 寂しくなった事とかってあるの?」  うわ、こりゃまた直球な質問だね。   さて、どう答えるべきか。ま、嘘ついてもしょうがないし、ここは正直に答えておきますか。  「ん~、あんまりそう思った事はないかな。定期的にお父さんとゆーちゃんの所にも帰ってるし、 今日みたいに、かがみが時々ここに来てくれるしね」 「……そう」  かがみは、そう小さく呟いたのを最後に、顔をうつむかせたまま黙り込んでしまった。  部屋の中を静寂が支配し、秋風が窓を叩く音だけが響く。  そして数分後、かがみは意を決した様に顔を上げると、真っ直ぐに私を見据えたまま、再び口を開いた。 「私は、寂しくなっちゃうかもしれない。もしかしたら、耐えきれなくなっちゃうかも。なによりも、 独りになるのが怖いのよ……」 「かがみ……」 「それに、いつかはみんなバラバラになっちゃうのよ!つかさや、みゆきだってそう。それに、こなたとだって……」  そう言い終えるのとほぼ同時に、かがみは泣き出していた。  頬を伝って流れ出る大粒の涙が畳の上にこぼれ落ち、消えていく。  私は、こういう時どうすればいいんだろう。 どうすれば――  そう思った瞬間、無意識のうちに私は体を動かし始めていた。 「かがみ、ちょっとこっち見てみてよ」 「えっ……?」  次の瞬間、なぜか私は部屋のカーテンを開けていた。  露わになった窓の外には、満天の星と月。  そんな光景を、ぽか~んとしながら見ていたかがみに向かって、私は頭の中に自然と浮かんできた言葉を そのまま口にした。 「ねぇ、かがみ。この星空はね、どこまでも続いてるんだよ。それにさ、どんなに遠くに離れていても、 私たちは同じ空の下にいるじゃない!」   「こなた……」 「だからさ、一人だけで何でも抱え込むのはやめなよ。例え、いつか別れる事になっても、私たちはずっと親友だよ!」 「――――っ!」  そんな私の言葉を聞いた直後、かがみは下を向いたまま、黙り込んでしまった。……柄にも無い事言っちゃったかな。  でも、このままって訳にもいかないし、何か言わなくちゃ。 「て、てな感じのセリフをさ、昨日までやってたギャルゲーの主人公が言ってたんだよね。だからかがみも……」 「こっ、こなたぁ!」 「わわっ、かがみ!?」  私が、下手な言い訳を終える前にかがみが抱きついてきていた。  白くて細長いかがみの両腕が私の背中を包み込み、涙でぐしゃぐしゃになった顔を私の体にうずめていた。   「ううっ、こなた、こなたぁ……」 「よしよし、これからもずっと親友でいようね、かがみ」  私も、かがみをぎゅっと抱き返して離さない様にする。  だけど、この前のお見舞いの時と状況が逆になっちゃったね。  それに、なんなんだろう。 この気持ちって……。      「そろそろ落ち着いた、かがみ?」 「う、うん。もう平気よ」  あれから数十分後、かがみはようやく冷静さを取り戻していた。  ほっと安心したのもつかの間、私はお風呂がそろそろ沸かし終わる時間だという事に気が付いた。   「さてと、それじゃあそろそろお風呂に入って、色々な物、流しちゃおっか」 「そうね、それじゃあ私はこなたの後で……」 「なに言ってんの、かがみ。二人で一緒に入るに決まってるじゃん」 「えっ! そ、そうだったっけ!?」    その時のかがみの顔が、沸かしたてのお風呂場の湯気に負けないくらい蒸気していたのを良く覚えている。  私は、いつもの様に顔をにやつかせながら、かがみにとどめの一言をお見舞いした。 「さあ~て、かがみがどのくらい成長したのか、直にみせてもらいましょうかねぇ」 「どこの変態おやじだ、アンタはっ!……ったく、恥ずかしいったらありゃしないわよ」 「まあまあ、かがみは寂しがりやさんなんだから、一緒に入ってあげなきゃね」 「そっ、それとこれとは話が違うでしょ~!」  ……もしかしたら、本当に寂しがりやなのは私の方なのかな。  寂しさを、言葉と態度で紛らわしているだけかもしれない。  だけどさ。 今はそんな事、全然関係ないんだよね。  だって、私の側には……。  「さあっ、いざゆかん。 お風呂場へ!」 「はいはい、とことん付き合ってあげるわよ。そのかわり、お風呂から上がったらさっきのレポートの続きだからね。 その為に泊まりがけで来てるんだし」 「あ、やっぱし覚えてた?」 「当たり前でしょ~! 全く、大体アンタはいつも……」  ――こうして、私たちの夜は更けていった。  そして、開けっ放しになっているカーテンの切れ間から顔を出した星空が、とりとめのない会話をしながら 浴室に向かう私たちを、やさしく見守っていた―― **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 泣けるぜ… -- 名無しさん (2008-12-24 17:07:48)
『……の様に、今や日本製のアニメはこの国の経済にとって欠かせないものとなっているのである。 その反面、少子化による視聴率の低下や作品の粗製濫造による慢性的な人手不足等、深刻な課題も多い。 次章では、その課題について述べようと思う』 「ふわわ、やっと一区切りついた~」 「お疲れ様。 アンタも、やればできるじゃない」  薄く仕切られたアパートの壁に、私たちの声が反射する。  今日は、ようやくカゼが治ったかがみが、私のレポート作成の手伝いに来てくれていた。  わざわざ、泊まりがけで手伝うという条件付で……。   「ま、私もやれば出来るってことでしょ。やっぱ、パソコンに打ち込むと楽だよねぇ」 「それは別にいいんだけどさ。打ち込む度に変な文字変換ばっかして、大変だったじゃないのよ。」    かがみの言っている通り、実際に作業している最中に私の愛機は趣味全開の文字変換を何度も繰り返していた。  ま、こういう所が私のパソコンのかわいい所なんだよね~。  「ちっちっちっ、まだまだ甘いよかがみん。こういう部分があるからこそ、魅力的で萌えるんだよ」 「はぁ~。よくわからんわ、その感覚」   そんなかがみを横目に見ながら、パソコンの電源を落とす。  画面が真っ黒になるのと同時に、私の腹時計が大きく鳴っていた。  それに加えて部屋の中は、眩しい程の夕日に覆われ、夜のとばりが近いという事を知らせてきていた。 「ふあ~、安心したら一気にお腹が空いてきちゃったよ。そろそろ、スーパーに夕飯の買い出しにでも 行こっかな。今日は週末だから、セールとかやってるだろうし」 「そうね、私も付き合うわよ。でも、何作るつもりなの?出来れば、私も手伝いたいんだけど」  むむむ、かがみが手伝っても大丈夫な料理かぁ。  う~ん、簡単な料理にしとかないと、張り切りすぎて怪我しちゃうかも。  仕方がない。 ここは無難なメニューにしておくかな。  「そうだね、ここはシンプルにカレーとサラダでも作る事にするよ。かがみは、食器でも揃えててよ。 後は私だけでどうにかするからさ」 「えっ? でも、野菜の下準備くらいは私にもできるわよ」  しまった。そういえばこの前、絆創膏が何枚も貼れちゃう程、野菜の切り方の練習をしてたんだったっけ。  私は、さんざん考えたあげく、結局手伝ってもらう事にした。 「じゃ、じゃあ手伝ってもらちゃおっかな」 「りょ~かい。それじゃ、バシバシいくわよ~」     「あ。 それとさ、後でお風呂沸かすから、ご飯食べた後に続けて入っちゃってよね」 「はいはい。わかりましたよ~。さ、早くスーパーで買い物済ませちゃいましょ」         何か、かがみの顔が普段より嬉しそうに見えた。  そんなに私と料理するのが楽しいのかな?  極々小さなハテナが私の中に浮かんでいる間に、時間は刻一刻と過ぎていくのであった―― 「あ~。 お腹いっぱいだよ、もう食べらんない」 「食べ過ぎたんじゃないの、こなた?それに、アンタってこんなに大食いだったっけ?」  とっぷりと日も暮れた頃、私たちは今日の夕食を終えていた。  かがみの野菜を切る手つきが意外に上手くなってたのと、メニューをシンプルにしたお陰で、 料理はあっという間に完成した。  ……にしても、調子に乗ってカレーを作りすぎちゃったな、こりゃ。  やっぱり、二人分だったからってちょっと材料を買いすぎたかな。  昔みたいにカビとか生えて来なきゃいいんだけど。   「いやあ、こうやって誰かと夕ご飯食べる機会なんて、めっきり減っちゃったしさぁ。だからついつい、ね」 「あ、そう…… だったんだ」  かがみの表情が一瞬曇ったように見えたのは、気のせいだろうか。  だけど、すぐにいつもの顔に戻っていたので、私は会話を再開した。   「じゃあ私、お風呂沸かしてくるからさ、かがみはそこでゆっくりしててよ」 「う、うん。わかったわよ」 「……? じゃあ、行ってくるね」  再び微妙な反応を見せたかがみを気にしつつ、私は浴室へと向かった。  今思うと、この時のかがみの心境の変化に、もう少し早く気づいてあげるべきだったのかもしれない……。 「これでよし……と」  蛇口から、湯気をまとったお湯が勢いよく流れ出し、湯船を満たしていく。  ホントは、瞬間湯沸かし器が欲しい所だけど、流石にお金が足りない。  やっぱり、もう少しバイトの時間増やそうかな。  まずはコスプレの種類を増やして、新しい客層を呼び込んで、それに……。   「――って、お風呂場でこんな事考えててもしょうがないじゃん。今日はかがみが来てるんだし、 た~っぷり遊んであげなきゃね」  小悪魔の様な笑みを浮かべながら、私はかがみのいる部屋に帰った。  そして、部屋に入った瞬間に私はいつもの調子でまくしたてた。   「かがみ~ん。さ、夜は長いんだよ。お風呂が沸くまで私と一緒にゲームでも……あれ?」  かがみの反応が無い。いつもなら、何かしら突っ込んでくれるのに。  ふと、部屋の中を改めて見渡してみる。六畳間で仕切られた部屋の、ちょうど窓側の隅っこの方に、かがみはいた。  カーテンの側に立ったまま、何か考えごとをしている様だった。 「お~い、かがみさん?」 「あ、こなた。 ごめんね、ちょっと考えごとしてて」 「ほほう、考えごとねぇ。それじゃあ、私に話してごらんよ。何とか生電話並に、びしっと答えてあげるよ」  私がそう言った瞬間、深刻そうな顔をしたかがみが私に視線を合わせてきた。  それこそ、不安と迷いが複雑に入り混じっている様にも見えた。 「ホントに、答えてくれるの?」 「疑り深いなぁ。もう長い付き合いじゃん。ささ、何でも言ってみなさいな」 「じゃあさ、単刀直入に聞くわよ。……こなたはさ、このアパートにずっと独りでいて、 寂しくなった事とかってあるの?」  うわ、こりゃまた直球な質問だね。   さて、どう答えるべきか。ま、嘘ついてもしょうがないし、ここは正直に答えておきますか。  「ん~、あんまりそう思った事はないかな。定期的にお父さんとゆーちゃんの所にも帰ってるし、 今日みたいに、かがみが時々ここに来てくれるしね」 「……そう」  かがみは、そう小さく呟いたのを最後に、顔をうつむかせたまま黙り込んでしまった。  部屋の中を静寂が支配し、秋風が窓を叩く音だけが響く。  そして数分後、かがみは意を決した様に顔を上げると、真っ直ぐに私を見据えたまま、再び口を開いた。 「私は、寂しくなっちゃうかもしれない。もしかしたら、耐えきれなくなっちゃうかも。なによりも、 独りになるのが怖いのよ……」 「かがみ……」 「それに、いつかはみんなバラバラになっちゃうのよ!つかさや、みゆきだってそう。それに、こなたとだって……」  そう言い終えるのとほぼ同時に、かがみは泣き出していた。  頬を伝って流れ出る大粒の涙が畳の上にこぼれ落ち、消えていく。  私は、こういう時どうすればいいんだろう。 どうすれば――  そう思った瞬間、無意識のうちに私は体を動かし始めていた。 「かがみ、ちょっとこっち見てみてよ」 「えっ……?」  次の瞬間、なぜか私は部屋のカーテンを開けていた。  露わになった窓の外には、満天の星と月。  そんな光景を、ぽか~んとしながら見ていたかがみに向かって、私は頭の中に自然と浮かんできた言葉を そのまま口にした。 「ねぇ、かがみ。この星空はね、どこまでも続いてるんだよ。それにさ、どんなに遠くに離れていても、 私たちは同じ空の下にいるじゃない!」   「こなた……」 「だからさ、一人だけで何でも抱え込むのはやめなよ。例え、いつか別れる事になっても、私たちはずっと親友だよ!」 「――――っ!」  そんな私の言葉を聞いた直後、かがみは下を向いたまま、黙り込んでしまった。……柄にも無い事言っちゃったかな。  でも、このままって訳にもいかないし、何か言わなくちゃ。 「て、てな感じのセリフをさ、昨日までやってたギャルゲーの主人公が言ってたんだよね。だからかがみも……」 「こっ、こなたぁ!」 「わわっ、かがみ!?」  私が、下手な言い訳を終える前にかがみが抱きついてきていた。  白くて細長いかがみの両腕が私の背中を包み込み、涙でぐしゃぐしゃになった顔を私の体にうずめていた。   「ううっ、こなた、こなたぁ……」 「よしよし、これからもずっと親友でいようね、かがみ」  私も、かがみをぎゅっと抱き返して離さない様にする。  だけど、この前のお見舞いの時と状況が逆になっちゃったね。  それに、なんなんだろう。 この気持ちって……。      「そろそろ落ち着いた、かがみ?」 「う、うん。もう平気よ」  あれから数十分後、かがみはようやく冷静さを取り戻していた。  ほっと安心したのもつかの間、私はお風呂がそろそろ沸かし終わる時間だという事に気が付いた。   「さてと、それじゃあそろそろお風呂に入って、色々な物、流しちゃおっか」 「そうね、それじゃあ私はこなたの後で……」 「なに言ってんの、かがみ。二人で一緒に入るに決まってるじゃん」 「えっ! そ、そうだったっけ!?」    その時のかがみの顔が、沸かしたてのお風呂場の湯気に負けないくらい蒸気していたのを良く覚えている。  私は、いつもの様に顔をにやつかせながら、かがみにとどめの一言をお見舞いした。 「さあ~て、かがみがどのくらい成長したのか、直にみせてもらいましょうかねぇ」 「どこの変態おやじだ、アンタはっ!……ったく、恥ずかしいったらありゃしないわよ」 「まあまあ、かがみは寂しがりやさんなんだから、一緒に入ってあげなきゃね」 「そっ、それとこれとは話が違うでしょ~!」  ……もしかしたら、本当に寂しがりやなのは私の方なのかな。  寂しさを、言葉と態度で紛らわしているだけかもしれない。  だけどさ。 今はそんな事、全然関係ないんだよね。  だって、私の側には……。  「さあっ、いざゆかん。 お風呂場へ!」 「はいはい、とことん付き合ってあげるわよ。そのかわり、お風呂から上がったらさっきのレポートの続きだからね。 その為に泊まりがけで来てるんだし」 「あ、やっぱし覚えてた?」 「当たり前でしょ~! 全く、大体アンタはいつも……」  ――こうして、私たちの夜は更けていった。  そして、開けっ放しになっているカーテンの切れ間から顔を出した星空が、とりとめのない会話をしながら 浴室に向かう私たちを、やさしく見守っていた―― **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ! -- 名無しさん (2022-12-18 12:01:04) - 泣けるぜ… -- 名無しさん (2008-12-24 17:07:48)

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