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「はい、かがみの大好きなアイスだよ。  今、食べさせてあげるからね~」 「ちょっ…… そんな事しなくていいってば。  一人で食べられるわよ」  私がこなたのアパートにお見舞いに行ってから一週間後、 今度は私が『たちの悪いカゼ』にかかってしまっていた。  そして今日は、前回のお礼だといわんばかりに、 息を巻いたこなたが、スプーンとアイスの容器を持ちながら、 私の部屋で看病を始めていた。 「ダメダメ、かがみは病人なんだから、  私が色々してあげなくちゃね」 「全く、そういうセリフはもう少し早く聞いてみたかったわよ。  特に、高校生位の時にね」 「まあまあ、こうやってアイスとかたくさん持ってきたんだし、  その位で勘弁してよ~、かがみぃ」  こなたは、髪の毛をぴょこぴょこ揺らしながら言い訳をしていた。  そんなこなたの仕草が、今はたまらなく面白い。  ふと、自分の机に視線を移してみる。  そこには、こなたが持ってきてくれたお見舞いの花である、 赤と白に彩られたバラが飾られていた。 (それにしても、こなたがここまでしてくれるとはね~)   今までとは明らかに考え方が変わったこなたを見ていると、 自然と心が温かくなってくる。 それと同時に私は、 少し前に自分がしていた事を思い返していた―― 『それでは、花などを持って行かれてはどうでしょうか』 「うん。 それいいわね~、どんな花がいいかしら」        話は、十日程前の午後にまでさかのぼる。  その日は、こなたがカゼをひいた事を初めて知った日だった。  数日中にお見舞いに行く、とこなたに約束したものの、 どんなものを持っていけばいいのかいまいちピンとこない。  そこで、みゆきに電話して聞いてみる事にしたのだった。 『そうですね…… では、バラ等はいかかでしょうか。  泉さん、よくバラについての話をされていましたから』  「な、なるほどね~。 そうしようかしら」  いやいや、それは多分違う意味でのバラだと思うんだけど。  こなたの言う事を真に受けちゃう所は、相変わらずね。  ま、そこがみゆきのいい所なんだけどね。 『――以上の様な準備をすれば大丈夫だと思いますよ』 「うん、ありがと。 参考にさせてもらうわね。  そういえば、みゆきもこなたの所へお見舞いに行くの?」 『ええ、近い内に伺おうと思っていますよ。  ただ、講義が多いので合間を縫って行くことになると思いますけど』       ちなみに、みゆきの方はたっての希望通り有名大学の 医学部に進学して、優秀な成績を残しているらしい。  ……と言っても、私たちの通っている大学のすぐそばに、 その有名大学があるもんだから、みゆきともしょっちゅう 会ってるんだけどね。 「うん、わかったわ。 こなたもきっと喜ぶと思うわよ。  それじゃあまたね、みゆき」 『はい。 それではごきげんよう、かがみさん』  通話が終了したのを確認してから、携帯電話を折りたたむ。  そして、携帯電話を机の上に置いてから、ふと窓の外を見てみる。  強烈な日差しが容赦なくアスファルトを照らしだし、 そして空は、一片の陰りのない青に覆われていた。  「こなたの奴、大丈夫かしら。 暑さにやられてなきゃいいけど」    そんな事を呟いた矢先、玄関のドアが開く音がした。  『ただいま~』という声が家の中に響き渡り、 ガサガサッという音と、パタパタという足音がそれに続く。  私は、その足音の主が真っ先に向かうであろうキッチンへ、 そそくさと先回りして出迎える事にした。 「おかえり~、つかさ」 「あっ。 ただいま~、お姉ちゃん」 「頼んでいたもの、ちゃんと買えた?」 「うん、大丈夫。 メールの内容通りに買ってきたよ。    だいこん、にんじん、それにほうれん草……」  つかさは、左手で持っていた買い物袋に手をいれながら、 順番に中身を確認し始めた。 額からは汗がしたたっており、 外がどれだけ暑かったというのが伝わってくる。     「これでよし……と。 大丈夫、全部揃ってるよ~」 「ありがと、助かったわ。 けどごめんね~、  大学からの帰りだったからって、色々頼んじゃって」  「ううん、平気平気。 お姉ちゃんは今日、  講義無い日なんだからゆっくりしてなきゃ、ね」    そういうとつかさは、いつもの様ににっこりと笑っていた。  屈託のない、その笑顔をみるだけで、私はとても幸せな気持ちになる。  そして私は、この溢れ出る気持ちを『あいつ』にも伝えてあげたいと、 思うようになっていた。 その為には、私自身が頑張らなきゃね。 「……さてと、材料も揃った事だし、そろそろ始めよっかな」 「でも、本当にいいの? 手伝わなくて……」    つかさが、いかにも不安そうな顔をして私を見つめていた。   「大丈夫。 一人でも平気よ。  つかさの方こそ、レポートは上手く書けてるの?」 「はうう……。 それはちょっとまだまだかな。  何とか、こなちゃん家に行く時間が出来るように頑張ってみるよ」 「まあ、いざという時はこなたにちゃんと理由を言えば大丈夫よ。  ……それはさておき、いよいよ本題ね」  目の前のキッチンには、戦いに使用する材料が勢揃いしていた。  小鍋に包丁にまな板。 冷やご飯に調味料少々。  そして、つかさが買ってきてくれた野菜がそれに続く。 (見てなさいよね、絶対に美味しい料理を食べさせてあげるんだから!)    心配そうなつかさを横目にして、私は左手に包丁を握った。  そして私は、あまり慣れていない料理の練習を始めた―― 「お……、かが……」 「……」 「お~い、かがみ様~」 「わっ、こなた!?」    不意に、声をかけられて体がびくんと震えた。  そんな中こなたは、アイスを片手に持ちながら、  不思議そうに私を見つめていた。 「全く、どうしちゃったのかと思ったよ。  もしかして、熱がひどくなっちゃったとか?」 「だ、大丈夫。 ちょっと考え事してただけよ」 「……ほっほ~う」  こなたは、顔をにやにやさせながら、スプーンを回し始めていた。  私は、こなたが次にいう言葉がなんとなく分かっていた。 「かがみ! それはずばり、おと……」 「男の事とか考えてないっつ~の!  ていうか、もう少し病人をいたわりなさいよ!」  ついつい、いつもの調子で突っ込んでしまった。  こういう所は、大学生になっても全然変わらないのよね。  「まあまあ、落ち着きなさいって。  時間はたっぷりあるんだからさ」 「何言ってるのよ。 レポートもろくに書いてないくせにさ。  このカゼが治った後で、みっちり面倒みてあげるから、 覚悟しなさいよね!」 「うひゃ~。 ありがたいような、恐ろしいような……」  小さい体を揺らしながら、気のない声を上げている こなたを横目に、久しぶりに窓の外を見てみる。  どこまでも広がる空は、一面のうろこ雲に覆われて 、 青と白とがまんべんなく溶け合っていた。    季節は、一歩ずつ秋へと向かっていた―― **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - ↓その発想は無かった -- 名無しさん (2013-05-03 11:11:06) - 俺はてっきり酒鬼薔)ry -- 名無しさん (2010-01-09 21:36:17) - 馬鹿な考えですが、秋葉原のばらかとおもた -- 名無しさん (2009-09-04 00:37:20) - ベルサイユの薔薇…… いやなんでもない -- 名無しさん (2009-01-06 19:28:09) - こなたの考えるバラは薔薇(隠語)のほうですね。分かります。 -- 名無しさん (2008-07-02 10:49:29)
「はい、かがみの大好きなアイスだよ。  今、食べさせてあげるからね~」 「ちょっ…… そんな事しなくていいってば。  一人で食べられるわよ」  私がこなたのアパートにお見舞いに行ってから一週間後、 今度は私が『たちの悪いカゼ』にかかってしまっていた。  そして今日は、前回のお礼だといわんばかりに、 息を巻いたこなたが、スプーンとアイスの容器を持ちながら、 私の部屋で看病を始めていた。 「ダメダメ、かがみは病人なんだから、  私が色々してあげなくちゃね」 「全く、そういうセリフはもう少し早く聞いてみたかったわよ。  特に、高校生位の時にね」 「まあまあ、こうやってアイスとかたくさん持ってきたんだし、  その位で勘弁してよ~、かがみぃ」  こなたは、髪の毛をぴょこぴょこ揺らしながら言い訳をしていた。  そんなこなたの仕草が、今はたまらなく面白い。  ふと、自分の机に視線を移してみる。  そこには、こなたが持ってきてくれたお見舞いの花である、 赤と白に彩られたバラが飾られていた。 (それにしても、こなたがここまでしてくれるとはね~)   今までとは明らかに考え方が変わったこなたを見ていると、 自然と心が温かくなってくる。 それと同時に私は、 少し前に自分がしていた事を思い返していた―― 『それでは、花などを持って行かれてはどうでしょうか』 「うん。 それいいわね~、どんな花がいいかしら」        話は、十日程前の午後にまでさかのぼる。  その日は、こなたがカゼをひいた事を初めて知った日だった。  数日中にお見舞いに行く、とこなたに約束したものの、 どんなものを持っていけばいいのかいまいちピンとこない。  そこで、みゆきに電話して聞いてみる事にしたのだった。 『そうですね…… では、バラ等はいかかでしょうか。  泉さん、よくバラについての話をされていましたから』  「な、なるほどね~。 そうしようかしら」  いやいや、それは多分違う意味でのバラだと思うんだけど。  こなたの言う事を真に受けちゃう所は、相変わらずね。  ま、そこがみゆきのいい所なんだけどね。 『――以上の様な準備をすれば大丈夫だと思いますよ』 「うん、ありがと。 参考にさせてもらうわね。  そういえば、みゆきもこなたの所へお見舞いに行くの?」 『ええ、近い内に伺おうと思っていますよ。  ただ、講義が多いので合間を縫って行くことになると思いますけど』       ちなみに、みゆきの方はたっての希望通り有名大学の 医学部に進学して、優秀な成績を残しているらしい。  ……と言っても、私たちの通っている大学のすぐそばに、 その有名大学があるもんだから、みゆきともしょっちゅう 会ってるんだけどね。 「うん、わかったわ。 こなたもきっと喜ぶと思うわよ。  それじゃあまたね、みゆき」 『はい。 それではごきげんよう、かがみさん』  通話が終了したのを確認してから、携帯電話を折りたたむ。  そして、携帯電話を机の上に置いてから、ふと窓の外を見てみる。  強烈な日差しが容赦なくアスファルトを照らしだし、 そして空は、一片の陰りのない青に覆われていた。  「こなたの奴、大丈夫かしら。 暑さにやられてなきゃいいけど」    そんな事を呟いた矢先、玄関のドアが開く音がした。  『ただいま~』という声が家の中に響き渡り、 ガサガサッという音と、パタパタという足音がそれに続く。  私は、その足音の主が真っ先に向かうであろうキッチンへ、 そそくさと先回りして出迎える事にした。 「おかえり~、つかさ」 「あっ。 ただいま~、お姉ちゃん」 「頼んでいたもの、ちゃんと買えた?」 「うん、大丈夫。 メールの内容通りに買ってきたよ。    だいこん、にんじん、それにほうれん草……」  つかさは、左手で持っていた買い物袋に手をいれながら、 順番に中身を確認し始めた。 額からは汗がしたたっており、 外がどれだけ暑かったというのが伝わってくる。     「これでよし……と。 大丈夫、全部揃ってるよ~」 「ありがと、助かったわ。 けどごめんね~、  大学からの帰りだったからって、色々頼んじゃって」  「ううん、平気平気。 お姉ちゃんは今日、  講義無い日なんだからゆっくりしてなきゃ、ね」    そういうとつかさは、いつもの様ににっこりと笑っていた。  屈託のない、その笑顔をみるだけで、私はとても幸せな気持ちになる。  そして私は、この溢れ出る気持ちを『あいつ』にも伝えてあげたいと、 思うようになっていた。 その為には、私自身が頑張らなきゃね。 「……さてと、材料も揃った事だし、そろそろ始めよっかな」 「でも、本当にいいの? 手伝わなくて……」    つかさが、いかにも不安そうな顔をして私を見つめていた。   「大丈夫。 一人でも平気よ。  つかさの方こそ、レポートは上手く書けてるの?」 「はうう……。 それはちょっとまだまだかな。  何とか、こなちゃん家に行く時間が出来るように頑張ってみるよ」 「まあ、いざという時はこなたにちゃんと理由を言えば大丈夫よ。  ……それはさておき、いよいよ本題ね」  目の前のキッチンには、戦いに使用する材料が勢揃いしていた。  小鍋に包丁にまな板。 冷やご飯に調味料少々。  そして、つかさが買ってきてくれた野菜がそれに続く。 (見てなさいよね、絶対に美味しい料理を食べさせてあげるんだから!)    心配そうなつかさを横目にして、私は左手に包丁を握った。  そして私は、あまり慣れていない料理の練習を始めた―― 「お……、かが……」 「……」 「お~い、かがみ様~」 「わっ、こなた!?」    不意に、声をかけられて体がびくんと震えた。  そんな中こなたは、アイスを片手に持ちながら、  不思議そうに私を見つめていた。 「全く、どうしちゃったのかと思ったよ。  もしかして、熱がひどくなっちゃったとか?」 「だ、大丈夫。 ちょっと考え事してただけよ」 「……ほっほ~う」  こなたは、顔をにやにやさせながら、スプーンを回し始めていた。  私は、こなたが次にいう言葉がなんとなく分かっていた。 「かがみ! それはずばり、おと……」 「男の事とか考えてないっつ~の!  ていうか、もう少し病人をいたわりなさいよ!」  ついつい、いつもの調子で突っ込んでしまった。  こういう所は、大学生になっても全然変わらないのよね。  「まあまあ、落ち着きなさいって。  時間はたっぷりあるんだからさ」 「何言ってるのよ。 レポートもろくに書いてないくせにさ。  このカゼが治った後で、みっちり面倒みてあげるから、 覚悟しなさいよね!」 「うひゃ~。 ありがたいような、恐ろしいような……」  小さい体を揺らしながら、気のない声を上げている こなたを横目に、久しぶりに窓の外を見てみる。  どこまでも広がる空は、一面のうろこ雲に覆われて 、 青と白とがまんべんなく溶け合っていた。    季節は、一歩ずつ秋へと向かっていた―― **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ! -- 名無しさん (2022-12-16 02:45:21) - ↓その発想は無かった -- 名無しさん (2013-05-03 11:11:06) - 俺はてっきり酒鬼薔)ry -- 名無しさん (2010-01-09 21:36:17) - 馬鹿な考えですが、秋葉原のばらかとおもた -- 名無しさん (2009-09-04 00:37:20) - ベルサイユの薔薇…… いやなんでもない -- 名無しさん (2009-01-06 19:28:09) - こなたの考えるバラは薔薇(隠語)のほうですね。分かります。 -- 名無しさん (2008-07-02 10:49:29)

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