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Happy Birthday konata」(2023/03/11 (土) 10:44:31) の最新版変更点

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ザアッ……一陣の風が、吹き抜けた。 今はもう花を散らし、新緑を芽吹かせた桜並木を、私とこなたは、歩く。 私がこなたの手を引いて、こなたは私に手を引かれて。 ふと、桜を見上げた。桜の葉、その碧は、こなたの碧。葉を透かして見える空の蒼は、こなたの蒼。 陵桜学園には、一本だけ、名前のついた桜の樹がある。 ――星桜の樹。 名前の由来は、知らない。 何でここに来たのかも、分からない。 でも、そんな事はどうでも良かった。こなたと、朝の僅かな時間、こうやって、一緒に、いられるのだから。 星桜の樹の前に、2人で並んだ。手は、繋いだまま。 また、風が吹いた。私から、こなたに向かって、流れる風。 トクン……トクン……こなたと一緒にいる事で、高鳴ってしまっている私の心音も、こなたへと、流れているのだろうか。 そう思うと、いても立ってもいられない。 急かされて、いるのだろうか。 私は、こなたから手を離すと、前に出て、桜の樹を背後にこなたと向かい合った。 「こな――」 こなたが、少し、首を振る。 焦らないで……微笑みが、語っていた。 息を、一つ、二つ……よし! 「こなた」 今度は、止められなかった。こなたは落ち着いて、微笑んでいた。 「何? かがみ」 「えっと……随分、待たせちゃった、わね」 「言いたい事。かがみが本当に言いたい事、見つかったんでしょ?」 「うん……ゴメンね、本当に、待たせた」 「気にしないでいいよ。かがみが言いたい事。本当のかがみを、私は受け止めたいから。どんなに時間が掛かっても」 こなた……やっぱり、アンタって、凄いよ。 私をこんなに嬉しくしてくれる、私をこんなに楽しくしてくれる、今だって、私を、その小さな体で包み込もうと、してくれてるよね。 「ありがと、こなた」 「うん……」 2人で、ふと、空を見上げた。真っ青な、雲一つ無い、快晴。 「こなた……」 「うん……?」 落ち着け、落ち着け。でも、ドクドクと早鐘のように打つ心臓が、痛い! 気持ちが、加速しそう!! こなたの顔へと、視線を戻した。 ハッとした。 いつだったか、紅い、黄昏の世界で見つめた、見惚れた、笑顔が、そこにあった。 スッと、体中から力が抜けた。気持ちを縛る焦りも、鎖だった緊張も、解きほぐれていった。 こなたに、微笑み返した。 「……好き」 「……え?」 「こなたの事が、大好き」 たった、それだけの、告白。 でも、それが、私の本当に言いたい事。 その時、呆然としていたこなたの顔が、一気に紅くなった。 ボッと擬音が聞こえるんじゃないかというくらい、それはもう、見事なまでに、真っ赤になった。 こなたは、俯いて、肩を震わせている。 「えと……それが、かがみの、言いたい、事?」 「そ、そうよ? 悪い?」 「えと、えと、え~……悪くないよ。うん。全然。でも、えっと……」 さっきまでの落ち着きぶりはどこへやら、妙に歯切れが悪くなったこなたは、時折私を見上げては、視線が会うと、慌てて、視線を落とす。そんな事を、繰り返した。 もしかして……。 「こなた、照れてる?」 「! ~~~っ!!」 これ以上紅く成り様が無い、と思っていたのに。まるで湯気でも噴出しそうな勢いのこなたに、つい、笑みが零れてしまう。 「クスッ……」 「う~、笑うな~」 「だって、まさか、こなたが、こんなに照れるなんて」 「だっ……~~っ、あ~、もうっ」 頬を膨らませて、横を向いたこなた。でも、その頬は、やっぱり紅くて。 私は、そんなこなたの表情を見れるのが、嬉しくて。 「私は本気、だよ。こなた」 「かがみ……」 「恋なのかもしれないし、友情なのかもしれない。分からない。でもね、こなたが好きって気持ちは、確かに私の中に、あるんだ」 「……」 「こなた。ありがとう」 「え、な、何が?」 「私、ずっと、この気持ちに振り回されてきた。焦って、周りが見えなくなって、でもこなたは、そんな私に気がついてくれたよね。 焦らないでって、言ってくれたよね。 信じてって、言ってくれたよね。 いつでも、見ていてくれたよね」 私がそう言うと、こなたはお腹の前辺りで両手を組みながらもじもじとして、 「だって、かがみが、心配、だったんだもん。かがみには笑っていて欲しかったし、私を頼って欲しかったし、何より……私も、かがみが、好きだから」 ちょっと唇を尖らせて、言った。 「ありがとう、こなた」 「……うん」 桜の樹に凭れて、2人で、肩を並べた。 触れ合った所から伝わる体温が、心地良くて。 これ以上無いほど、安心できた。 「ねえ、こなた」 「な~に」 「今日、何の日か、覚えてる?」 「……なんだっけ?」 ガクっとした。コイツは……さっきみたいに、私を包み込んでくれる大きな存在だと思えば、妙に抜けていて。 クスッと笑いながら、こなたの頬を突付く。ぷにっとして、柔らかかった。 「アンタの誕生日でしょ?」 「? え、あ、あ~あ~、そだね~」 「そだね~、じゃないわよ。全く。ハイこれ」 差し出したのは、ずっと前に用意したプレゼント。紅い包装紙で装飾した、小さな包み。 受け取ったこなたの顔は、また、うっすらと色づいていた。 「あ、ありがと……開けていい?」 ニヤッとした。 「ダメ」 「え~!」 「家に帰ってからにしなさい」 「そんな~、ひどいよかがみ様」 「かがみ様はやめんか。アンタ、前に全プレの楽しみ方、言ってたでしょ?」 急な話題の転換についていけず、キョトンとするこなた。 「一度で二度おいしい。もう一個、あげるプレゼントがあるんだから、今は、そっちを楽しんで」 そう言って、私は、髪を留めていたリボンを解いた。パサ、と広がる私の菫。手にしているのは紅いリボン。 それを、こうやって、結んで。 「小指、出して」 「こう?」 小指に巻いて……私の小指にも。 「出来上がり」 「ちょ、かがみ!?」 私達を結ぶ、紅いリボン……ううん、紅い糸。 「気に入らない?」 こなたが赤面するのは、今日で何度目だろう? この顔が見られただけでも、この瞬間を迎える価値はある。 紅く染まったこなたは、ポソリと一言、 「気に入った」 呟いた。 「良かった」 キーンコーン……予鈴だ。そろそろ授業が始まっちゃう。 私とこなたは、繋がったまま、立ち上がる。 この時間が終わることに、寂しさを覚えていた。 何か、まだ、何か、こなたと、この時間を……。 そう思ったら、体が、勝手に動いていた。 こなたの膝裏に左腕を、腰に右腕を廻す。そうして、持ち上げた。所謂、お姫様抱っこ。 「うぉっ!?」 そのまま、校舎に向かって、歩き出す。 「か、かがみ、誰かに見られちゃうよ!?」 「構わないわよ」 「え?」 「だって、私はアンタのことが好き、なんだからね」 「……も~、今日のかがみ、反則だよぉ」 ふふっ、と笑って返す。 そうして、こなたの耳元に、唇を、近づけた。 5月28日。 ――ハッピーバースデー。こなた。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - この作品の、こなた視点も読んでみたいですね! -- クローバー (2013-02-20 21:25:53) - ハッピーバースデー -- 名無しさん (2010-08-13 18:36:39) - すごい、文章すっごい上手い… -- 名無しさん (2009-04-26 18:02:53) - な、なぜか涙が… &br() -- こて (2009-01-30 09:01:31) - かがみが自分の気持ちや感情に振り回されて、葛藤したり苦しんだりと、前半は読んでいる自分までも、もどかしい気持ちになりました! &br()最終的には2人の気持ちが通じ合って、読んでいた自分もうれしくなりました! -- チハヤ (2008-09-11 12:05:59) - GJでした -- 名無しさん (2008-05-29 00:08:04) - 赤くなって照れるこなたがかわいい!!w毎日ほんとうにおつかれさまでした!とても心理描写が丁寧で心惹かれる作品にGJです。おもしろかったです。 -- 名無しさん (2008-05-29 00:06:35)
ザアッ……一陣の風が、吹き抜けた。 今はもう花を散らし、新緑を芽吹かせた桜並木を、私とこなたは、歩く。 私がこなたの手を引いて、こなたは私に手を引かれて。 ふと、桜を見上げた。桜の葉、その碧は、こなたの碧。葉を透かして見える空の蒼は、こなたの蒼。 陵桜学園には、一本だけ、名前のついた桜の樹がある。 ――星桜の樹。 名前の由来は、知らない。 何でここに来たのかも、分からない。 でも、そんな事はどうでも良かった。こなたと、朝の僅かな時間、こうやって、一緒に、いられるのだから。 星桜の樹の前に、2人で並んだ。手は、繋いだまま。 また、風が吹いた。私から、こなたに向かって、流れる風。 トクン……トクン……こなたと一緒にいる事で、高鳴ってしまっている私の心音も、こなたへと、流れているのだろうか。 そう思うと、いても立ってもいられない。 急かされて、いるのだろうか。 私は、こなたから手を離すと、前に出て、桜の樹を背後にこなたと向かい合った。 「こな――」 こなたが、少し、首を振る。 焦らないで……微笑みが、語っていた。 息を、一つ、二つ……よし! 「こなた」 今度は、止められなかった。こなたは落ち着いて、微笑んでいた。 「何? かがみ」 「えっと……随分、待たせちゃった、わね」 「言いたい事。かがみが本当に言いたい事、見つかったんでしょ?」 「うん……ゴメンね、本当に、待たせた」 「気にしないでいいよ。かがみが言いたい事。本当のかがみを、私は受け止めたいから。どんなに時間が掛かっても」 こなた……やっぱり、アンタって、凄いよ。 私をこんなに嬉しくしてくれる、私をこんなに楽しくしてくれる、今だって、私を、その小さな体で包み込もうと、してくれてるよね。 「ありがと、こなた」 「うん……」 2人で、ふと、空を見上げた。真っ青な、雲一つ無い、快晴。 「こなた……」 「うん……?」 落ち着け、落ち着け。でも、ドクドクと早鐘のように打つ心臓が、痛い! 気持ちが、加速しそう!! こなたの顔へと、視線を戻した。 ハッとした。 いつだったか、紅い、黄昏の世界で見つめた、見惚れた、笑顔が、そこにあった。 スッと、体中から力が抜けた。気持ちを縛る焦りも、鎖だった緊張も、解きほぐれていった。 こなたに、微笑み返した。 「……好き」 「……え?」 「こなたの事が、大好き」 たった、それだけの、告白。 でも、それが、私の本当に言いたい事。 その時、呆然としていたこなたの顔が、一気に紅くなった。 ボッと擬音が聞こえるんじゃないかというくらい、それはもう、見事なまでに、真っ赤になった。 こなたは、俯いて、肩を震わせている。 「えと……それが、かがみの、言いたい、事?」 「そ、そうよ? 悪い?」 「えと、えと、え~……悪くないよ。うん。全然。でも、えっと……」 さっきまでの落ち着きぶりはどこへやら、妙に歯切れが悪くなったこなたは、時折私を見上げては、視線が会うと、慌てて、視線を落とす。そんな事を、繰り返した。 もしかして……。 「こなた、照れてる?」 「! ~~~っ!!」 これ以上紅く成り様が無い、と思っていたのに。まるで湯気でも噴出しそうな勢いのこなたに、つい、笑みが零れてしまう。 「クスッ……」 「う~、笑うな~」 「だって、まさか、こなたが、こんなに照れるなんて」 「だっ……~~っ、あ~、もうっ」 頬を膨らませて、横を向いたこなた。でも、その頬は、やっぱり紅くて。 私は、そんなこなたの表情を見れるのが、嬉しくて。 「私は本気、だよ。こなた」 「かがみ……」 「恋なのかもしれないし、友情なのかもしれない。分からない。でもね、こなたが好きって気持ちは、確かに私の中に、あるんだ」 「……」 「こなた。ありがとう」 「え、な、何が?」 「私、ずっと、この気持ちに振り回されてきた。焦って、周りが見えなくなって、でもこなたは、そんな私に気がついてくれたよね。 焦らないでって、言ってくれたよね。 信じてって、言ってくれたよね。 いつでも、見ていてくれたよね」 私がそう言うと、こなたはお腹の前辺りで両手を組みながらもじもじとして、 「だって、かがみが、心配、だったんだもん。かがみには笑っていて欲しかったし、私を頼って欲しかったし、何より……私も、かがみが、好きだから」 ちょっと唇を尖らせて、言った。 「ありがとう、こなた」 「……うん」 桜の樹に凭れて、2人で、肩を並べた。 触れ合った所から伝わる体温が、心地良くて。 これ以上無いほど、安心できた。 「ねえ、こなた」 「な~に」 「今日、何の日か、覚えてる?」 「……なんだっけ?」 ガクっとした。コイツは……さっきみたいに、私を包み込んでくれる大きな存在だと思えば、妙に抜けていて。 クスッと笑いながら、こなたの頬を突付く。ぷにっとして、柔らかかった。 「アンタの誕生日でしょ?」 「? え、あ、あ~あ~、そだね~」 「そだね~、じゃないわよ。全く。ハイこれ」 差し出したのは、ずっと前に用意したプレゼント。紅い包装紙で装飾した、小さな包み。 受け取ったこなたの顔は、また、うっすらと色づいていた。 「あ、ありがと……開けていい?」 ニヤッとした。 「ダメ」 「え~!」 「家に帰ってからにしなさい」 「そんな~、ひどいよかがみ様」 「かがみ様はやめんか。アンタ、前に全プレの楽しみ方、言ってたでしょ?」 急な話題の転換についていけず、キョトンとするこなた。 「一度で二度おいしい。もう一個、あげるプレゼントがあるんだから、今は、そっちを楽しんで」 そう言って、私は、髪を留めていたリボンを解いた。パサ、と広がる私の菫。手にしているのは紅いリボン。 それを、こうやって、結んで。 「小指、出して」 「こう?」 小指に巻いて……私の小指にも。 「出来上がり」 「ちょ、かがみ!?」 私達を結ぶ、紅いリボン……ううん、紅い糸。 「気に入らない?」 こなたが赤面するのは、今日で何度目だろう? この顔が見られただけでも、この瞬間を迎える価値はある。 紅く染まったこなたは、ポソリと一言、 「気に入った」 呟いた。 「良かった」 キーンコーン……予鈴だ。そろそろ授業が始まっちゃう。 私とこなたは、繋がったまま、立ち上がる。 この時間が終わることに、寂しさを覚えていた。 何か、まだ、何か、こなたと、この時間を……。 そう思ったら、体が、勝手に動いていた。 こなたの膝裏に左腕を、腰に右腕を廻す。そうして、持ち上げた。所謂、お姫様抱っこ。 「うぉっ!?」 そのまま、校舎に向かって、歩き出す。 「か、かがみ、誰かに見られちゃうよ!?」 「構わないわよ」 「え?」 「だって、私はアンタのことが好き、なんだからね」 「……も~、今日のかがみ、反則だよぉ」 ふふっ、と笑って返す。 そうして、こなたの耳元に、唇を、近づけた。 5月28日。 ――ハッピーバースデー。こなた。 **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!!泣( ;∀;)b -- 名無しさん (2023-03-11 10:44:31) - この作品の、こなた視点も読んでみたいですね! -- クローバー (2013-02-20 21:25:53) - ハッピーバースデー -- 名無しさん (2010-08-13 18:36:39) - すごい、文章すっごい上手い… -- 名無しさん (2009-04-26 18:02:53) - な、なぜか涙が… &br() -- こて (2009-01-30 09:01:31) - かがみが自分の気持ちや感情に振り回されて、葛藤したり苦しんだりと、前半は読んでいる自分までも、もどかしい気持ちになりました! &br()最終的には2人の気持ちが通じ合って、読んでいた自分もうれしくなりました! -- チハヤ (2008-09-11 12:05:59) - GJでした -- 名無しさん (2008-05-29 00:08:04) - 赤くなって照れるこなたがかわいい!!w毎日ほんとうにおつかれさまでした!とても心理描写が丁寧で心惹かれる作品にGJです。おもしろかったです。 -- 名無しさん (2008-05-29 00:06:35)

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