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聖夜は素直に(後編)」(2022/12/28 (水) 09:16:03) の最新版変更点

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「ねぇ、かがみ~、隠さないで言ってよ~」 (どうしよう…。ここまで聞かれたら、話すしかないかな…でも、今はまだ…) そんなとき、今まで敵?だったつかさが助け舟を出してくれた… 「お姉ちゃんね、実はこなちゃんにサプライズがあるんだよ~。だから、さっきからタイミングを掴もうとしてたんだよね、お姉ちゃん?」 …はずだった。 「ちょっと、つかさ!それは言わないって約そk」「へぇ~、なんだったのかなぁ、かがみんや。」 「い、言えるわけないでしょ?!」 「もうバレてるんだし、いいじゃ~ん。ねぇ、かがみ~ん」 困った。非常に困った。さっきからの展開からは逃げられたけど、もっと大きな穴に落ちた感じだ。 再び返答に困っていると、今度はみゆきが助け舟を出してきた。本物の。 「泉さん、まだ分かっていないのですから、待ってみてはいかがでしょうか?私も知らないので、何ともいえませんが、場合によっては驚きようがあるかもしれませんよ?」 「むぅ…」 「それに、もうすぐ夕飯ですし、時間に余裕がある食後でよろしいのではないでしょうか?」 「う、うん、そうするわ、みゆき。ありがとう…」 「いえ、せっかくご用意されたのですから、楽しまないといけませんしね」 説得力のあるみゆきの言葉にこなたも黙り、夕飯を頂くことになった。 食器などの準備をしていると、ゆたかちゃん達がやってきた。どうやら一時的に合流するようだ。 「おぉ、ゆーちゃん達いらっしゃい!」 「えへへ、お姉ちゃん今朝方ぶりだね」 「皆さん、いらっしゃい。丁度、準備が終わるところですよ」 「Oh、ゴージャスですネ!」 「…(コクリ)うん…」 花火大会のときと同じメンバーで夕食をとることになった。 大勢で食べることには慣れている私だけど、友達で集まって食べるのは特別楽しい。 「う~ん、どれも絶品ッスね!」 「本当、どれも凄く美味しいわね。全部みゆきが作ったの?」 「いえ、実はみなみさんにも作っていただいた品もいくつかあるんですよ。このソテーなんかそうですね。先ほど温めなおした物ですが、とても美味しく出来てますよ」 「え、これみなみちゃんが作ったの?!一番初めに食べたけど、すっごく美味しかったよ!」 「そ、そんな…」 みなみちゃんは顔を赤くして俯いている。いつもクールな彼女にしては、珍しい反応かもしれない。 (…それにしても、この中でまともに料理できないのは私だけなのかしら…はぁ…) 「あの、迷惑じゃなかったら、今度私にも教えてくれないかな?」 「…うん、いいよ…。ゆたかのためなら喜んで…」 この二人も実にいいコンビだと思う。 私がこなたに抱くような感情はないと思うけれど、何となくお似合いだ。 素直にお互いの気持ちが伝えれるのが、本当に羨ましい。それに比べて私は…。 「はうっ!だから、この二人はもう最高ッス!」 「ひよりん、ほどほどにね(≡ω≡.;)」 「そうですヨ、ひより。そういうのは1人の時にやるネ!」 「こなちゃん、なんのこと?」 「いや、つかさは知らない方がいいよ…」 夕食が終わり、ゆたかちゃん達も岩崎家に戻ることになった。 それぞれが戻る支度をしたり、みなみちゃんがみゆきから後で食べる用のデザートを貰っていたりしている最中、ゆたかちゃんが私の方に寄って来た。 「かがみ先輩、頑張ってくださいね!私も頑張りますから!」 そう言われて思い浮かぶことは一つしかなかった。 「え、ちょ、ちょっと!何で知ってるの?!」 「す、すいません、…さっきつかさ先輩に聞かれたんですよ。気づいてたの、って」 あの子は本当に余計なことをしてくれる…。 「そ、それに、〈私も〉って…?」 ゆたかちゃんは何も言わない代わりに、チラッとみなみちゃんの方を向いた。…え、まさか? 「ゆたかちゃんも?」 「はい…。せっかくのクリスマスなので…」 「…これを聞くのもあれなんだけど、覚悟はできてるの…?」 自分を今までずっと縛ってきた悩みを聞いてみたが、意外にもゆたかちゃんの答えは明るかった。 「はい!もし駄目だとしても、友達であることは変わらないとみなみちゃんを信じていますから!」 「…そう」 (まさかゆたかちゃんもそういう考えがあったなんて、ね…) 「あ、そろそろ行くみたいなので、失礼しますね。では、頑張ってくださいね♪」 ここにいる中では一番小さいはずの背中が、今は大きく見えた。 (強いわね、ゆたかちゃん…。それに比べて私はなにやってるんだろう。しっかりしないと…!) メンバーが減ったためか、一時的に静寂が家の中に訪れる。静かだ…。 みゆきとつかさはデザートの仕上げをしていて、今はこなたと二人、こたつに入っている。 時間はすでに8時を過ぎていて、時間がいかに早く進むかに改めて気づかされる。 (いつ、言おうかしら…。今じゃあまりにもムードがないし、二人がいつ戻るか分からないし…) 「………」 「ねぇ、かがみん」 突然、こなたの方から声をかけてきた。 「ちょっと外に出ない?私、体が硬くなってきちゃったヨ」 そういって、背伸びをしてみせる。そんなところがまた可愛く…じゃなくて。 確かにずっと座ってばかりで、あまり体を動かしたりしていない。 (…もしかしたら、さっきのサプライズを誘っているのかしら…何かも知らないで…) ただ、それ以上に、向こうからチャンスを作ってくれたのだから、見逃すことは出来ない。 「…そうね、分かったわ。つかさ達に伝えてくるわ」 つかさとみゆきに散歩に行くことを伝えると、笑顔で答えてくれた。頑張ってね♪(ください♪)、と。 二人には自分の気持ちを話しておいて良かったなと、改めて思う。 言っていなければ、二人で散歩に行きたいと聞くだけで相当気まずい思いがあっただろう。 外に出ると、真冬の夜の寒さが体にしみた。 相当着込んだつもりだったが、先ほどまで暖まっていた体はすぐに冷え始めた。 (この寒さなら、雪になるわね…。ホワイトクリスマス、なんて上手くはいかないか…) 「いやぁ、寒いね~。これならこたつの中のほうが良かったかなぁ」 「あんたねぇ…人を誘っておいて、そういうこと言う?」 「むぅー。かがみだって、私と二人にきりになりたかったんじゃないの~?」 こなたがニヤニヤと私のほうを見ながら、主導権は握った!というオーラを出している。 「それは…」 (素直にならないとね。せっかくのチャンス、作ってくれたチャンス、無駄に出来ないわ) ワンテンポおいて、私は話し始める。 「…つかさがさっき、あんたにサプライズがあるって言ってたわよね?…確かにあるわ」 「何々、かがみ~」 「こ、これ…。前にバレンタインの時に渡したのは、失敗作と言うか、自分用だったのよ。あんたに渡そうとしてたのは、作ってる途中で割れちゃったからね…」 「かがみが私だけのために、チョコを一人で!?」 「そ、そうよ」 「よし!受け取ったよ~、かがみの愛~!ありがとね♪」 (えっ?!ちょ、ちょっと!) この反応は、私がこなたに友達として渡したんだと明らかに勘違いしてる。 いつもいじってくるこなたでも、相手が真剣だと知ったら茶化す奴じゃない。 「ま、待って、こなた!違う、違うのっ…。そうじゃないのっ!」 「ほえ?」 これを言ったからには、もう後戻りはできない。 こなたはというと、思いも寄らない私の言葉に驚いたのか、キョトンとしている。 また一つ間が空く。 その間で、私が真剣に話そうとしているのが伝わったのか、こなたの顔が少し強張る。 「…こなた、そのチョコレートの包装、開けてみてくれる?」 「う、うん」 こなたがゆっくりと、丁寧に箱を開ける。ガサガサ…、カタッ。 私たち以外に何もないかのように、箱を開ける音まで聞こえるほど静かだ。 「かがみ、これって…」 「それが私の気持ち、私の本心よ。私はこなたが好き…ううん、大好きよ…」 「……」 「女の子同士なのも、あんたにもそういう趣味がないのも百も承知よ。でも、私は本気で言ってるの。前から好きだった。きっかけなんて無数にあるし、はっきり恋心に変わったタイミングもないわ。でも、あんたが好きだってのは、今ならはっきりと分かるし、あんたに伝えられる…」 ついに言ってしまった。これで失敗したら最悪、私達の関係も終わり、4人の仲も崩れるかもしれない。 こなたは黙ったままで、こちらを見ている。唖然としているのか、困っているのかは分からない。 長く空いた間が重圧となって私を押しつぶしていく。私は顔を伏せた。 もはやネガティブ思考が止まらない私は、涙が流れてしまった。もう耐えられなかった。  「ごめんね、こなた…っ。こんなこと言われても、困るわよね。やっぱ、わs」「かがみっ!」 こなたが急に抱きついてきて、顔を伏せたままだった私の視界に、こなたの顔がドアップで入ってくる。 (え?こなた、もしかして泣いてる?!) 自分の言った言葉のせいで、普段は涙を見せないこなたが泣いているのかと思い、焦る。 (親友だと思っていた相手が、同性趣味で告白してきたら、そりゃ悲しくなるわよね…) でも、それは間違っていて、 「かがみぃ!私もかがみの事が好き、大好き!」 「え?えっ?ほ、本当に?でも、泣いて…」 「だ、だって、まさかかがみが告白してくれるなんて思わなくて。私、嬉しくってさ!ただ、泣いてるの見られたくなくて、それで泣き止むまでごまかそうと思ったんだけど…。でも、それがかがみを不安にさせちゃったよね。ごめん…」 しゅんとなっているこなたを抱きしめる。それに呼応するように、こなたもまた強く抱きしめてくる。 「ばかっ!本当に馬鹿っ!…でも、ありがとう。これからもよろしくね、こなた!」 「うん、うんっ!よろしく、かがみん♪」 そうしてまた、お互いに自然と抱き合った。今度はそれを味わうように長く。 (暖かい…。こなたの体温が伝わってくる…) どれだけ長い時間が経っただろうか。そして、またお互いに自然と、名残惜しくも体を離した。 「そろそろ行かないとね…。つかさ達、待たせちゃってるし」 「そだね…」 手を繋いで、私たちは帰路についた。こなたの暖かさが伝わってくるのがとてつもなく嬉しい。 でも、そんな中で私は一つの疑問を、どうしても聞いておかないといけない事をこなたにぶつけた。 「ねぇ、こなた。今更だけど、本当に私でいいのね?同性趣味はないって、前に言ってたから…。世間の目とかに対する覚悟もあるし、一応確認のためよ」 するとこなたは、ちょっと顔を赤くして、でも真剣にこちらを見て言った。 「かがみが真剣なのに、冗談であんなことを言わないよぉ。それに…」 急に口ごもってしまった。いや、ゴニョゴニョと何か言っているが、全く聞こえない。 「何よ?ちゃんと言わないと、何も聞こえないじゃない」 「ま、前からかがみのことは好きだったんだよ?でも、あそこであるって言ったら、絶対嫌われると思って…だから、今日も始めは信じられなかったんだヨ…」 いつもらしくない、しおらしいこなたに、ちょっとばかりドキッとした。 「そうだったのね…。正直、あの時のあの言葉は結構な壁になったわよ、私にとって」 「うん、そうだよね…ごめん。で、でも、もう世間体のことは一切気にしてないからね!かがみも覚悟してくれたんだし、私もそれに応えるよ!」 そういってくれたことが、私を勇気付けてくれた。私だって、もう不安がないわけじゃない。 でも、こういってくれるこなたがいるなら、一緒に乗り越えられる気がする。 「でも、良かった!断られたらどうしようかと思ったわよ」 「ありがとね、かがみ。本当の気持ち伝えてくれてさ。私には言う勇気がなかったヨ。かがみが言ってくれなかったら、あのまま終わってたよ。本当に、ありがと」 そういうと、こなたはスルッと私の前に踊りだし、 「これはそのお礼と、私からのクリスマスプレゼントだよ、かがみん♪…チュッ!」 と、私の頬や額ではなく、唇に軽くキスをしてきた。頭がボンッと音を立てて、赤くなる。 「~~~っ?!」 「あはっ」 ちょっとばかし再起不能になった頭を再起動させ、赤い顔のまま叫んだ。 「〈あはっ〉じゃないわよ!ファーストキスってのは、もうすこし雰囲気を考えなさいよ!」 「いいじゃん、私たちらしくてさ!それに頬とかじゃありきたりなシチュだし、つまんないじゃん?」 「知らないわよ、そんなの!私の了承ぐらい得なさいよ!」 「ほら、みゆきさんの家についたよ。早く入ろう!寒くて、凍えちゃうヨ」 そうして、ごまかそうとするこなたの腕をこちらに引き寄せた。 そして、キョトンとこちらを向いたこなたの顔と、自分の顔との距離を一気にゼロにした。 「…んっ、ふぁっ…」 「さ、さっきのお返しっ! わ、私からのプレゼントよ」 「チョコも貰ったし、これで2つ目だね。どちらも美味しくいただきました♪」 お互い真っ赤だというのに、こなたはそれでも茶化してくる。 「ば、ばかっ!それに、まだチョコは食べてないだろっ!」 「細かいことは気にしない、気にしない!」 「全く…中に入るわよ!」 「あー、待ってよ、かがみん~」 そうして、こなたが私の腕にしがみつく形で中に入っていった。 『ただいま~!』 「おかえりなさい、泉さん、かがみさん」 タイミング良く帰ってきたのか、大きなケーキを持ったみゆきとつかさが居間に入るところだった。 「ごめんね、二人とも。遅くなっちゃって」 「ううん、大丈夫だよ~。飾り付けに時間がかかって、今終わったところだし」 「それじゃあ、私は飲み物とか持ってくるわね」 「あ、では私も。1人では持ちきれないと思いますので」 「じゃあ、私はコップを取ってくるね~。こなちゃんは座ってていいよ~」 「アイアイサー!」 そう言って、こなたを除いた三人で台所へ向かった。 「…二人とも、ありがとね。私のために、色々と相談に乗ってくれたりしてさ」 台所に入ったところで、私は不意に二人にお礼をした。結果報告も兼ねて。 「そ、それじゃあっ!」 「うん、OKもらったわよ」 「本当に良かったですね、かがみさん。私も安心しました」 そういって、心から喜んでくれてるのが分かる二人を見て、改めて幸せを実感する。 こなたにOKを貰ったことだけでなく、自分を支えてくれる人がこんなにいることにも。 「でも、私達はいつも4人一緒よ?これは変わらないし、変えたくもないから」 「そうですね。泉さんとかがみさんがより仲良くなっただけですからね」 「うんうん!でも、良かった♪あ、そういえb」「ちょっと、遅いわよ!罰金よ罰金!」 つかさの声をさえぎるほどの大声で、奥の居間からこなたの声がした。 …相変わらずあの声は物真似王を取れると思うほど似ている。 「あ、ごめんごめん。今から行くところよ」 「むぅー、早くしてよ~」 それに急かされるように居間に戻って、膨れっ面のこなたをなだめながらケーキを囲んだ。 「ねぇ、何話してたのさ?」 こなたが先ほど私達が何かについて話していたことには気づいていたらしい。 (みゆきとつかさが手伝ってくれたっていうのは内緒にする約束だし、なんて言えばいいかな…) 私が悩んでいると、みゆきが代わりに答えてくれた。 「うふふ、なんでもないですよ。ただ、サプライズが何なのかを聞こうとしていたところです」 「んじゃあ、まだ聞いてないんだね?」 「え?えぇ、まぁ、そういうことになりますね」 こなたが目をキラキラさせながら、私達を交互に見ている。 特に私に向けているのは、何かのサインのようだ。 (ま、まさか、あいつ!ちょ、ちょっ、まっ…!)  私の制止をものともせず、突然こなたがバンッ!とこたつを叩きながら立ち上がり、大声で叫んだ。 「かがみが世界の中心で愛を叫んだのだよ!」 「……」 みゆきとつかさは事情を知っているだけに、どうすればいいのか困惑した顔のまま硬直している。 だが、こなたはそれを理解していないという意味で取ったのか、行動で表してきた。 「あ、あんた勝手に…っ!」 「つまりはこういうことなのだよ!」 そういって、私の言葉を遮って、二人の目の前でキスをしてきた。一瞬混乱したが、すぐに口を離した。 「…んっ?!…こ、こなた~~!!!」 私はもちろん、つかさとみゆきまで顔が真っ赤だ。1人余裕そうな顔をしているのは、こなたで。 「し、幸せそうで、なによりです」 「そ、そうだね、ゆきちゃん」 「あれ?つかさにみゆきさん知ってた?全然驚かないし」 「す、すいません、実は…」 ああ、ばれちゃったか。まぁ、でも隠す必要もないか、OK貰ったんだから。 (それに、こなたのことだから気にしないだろうしね) 「ふ~ん、つまんないの。じゃあ、かがみぃ~?」 「な、何よ?い、言っとくけどチョコはちゃんと私1人で作ったわよ?」 「違うヨ~。そうじゃなくて、もしかして、このパーティとか企画したの全部かがみ?」 「ま、まぁ、そうなるかしら。」 またこなたの顔が一段とニヤついて、小悪魔としか言いようがない顔になった。 「ふぅ~ん。かがみも乙女ですなぁ♪」 「う、うるさーい!」 「やっぱり、お姉ちゃんとこなちゃんだね♪」 「そうですね♪」 小一時間、私がこなたに弄られているのを、つかさとみゆきが和みながら見ている、という構図のまま過ぎていった。この構図は前と変わっていないのだから、不思議だ。 (でも、良かった…。だって、この雰囲気が崩れたら、こなたにフラれるのと同じぐらい嫌だもの) 「ふぅ~、美味しかった。さすがみゆきさんとつかさだね♪」 「本当、甘さが控え目でフルーツの酸味も良く効いてたわ。やわらかくて、食べやすかったしね」 「あ、ありがとうございます。でも、フルーツを乗せようと考案したのはつかささんなんですよ」 「えへへ、ありがとう。でも、ケーキも凄く良く出来てたよ~。お店に負けないぐらいだったよ!」 「いえ、そ、そんな…。照れてしまいます。」 そう言って、俯いて顔を真っ赤にしているのが分かる。少し可愛らしい。 (こなたがいつも言ってる萌え要素とかって、こういうことなのかしら?) 「でも、甘さ控え目でフルーツが乗ってるなんて、かがみ向けのケーキだよね。」 「…なにが言いたいのかな、こなた?」 こなたの言葉に反応して、ギラッとこなたの方をにらみつける。 「うほっ、こわっ!私の防御力が下がっちゃったよ~」 「それで、何か言い残すことはあるかしら?」 「って、か、かがみ様?!顔が恐ろしく怖いですヨ…;;いや、冗談だって、普通に女性向けだって!」 「全く…あんたはいつも一言多いのよ」 「ふふっ。では、そろそろプレゼント交換でもしませんか?もう10時前ですし」 横目で時計の針を確認すると、確かにもう遅い時間になっている。 お風呂やら夜のおしゃべりタイムを考えたら、そろそろ始めた方がいいだろう。 「そうね。そろそろ始めましょうか?」 「では、私からお渡ししますね。どうぞ開けて下さい」 そういって、ラッピングの色が違う小さな箱を三つ取り出し、私たち1人ずつに渡した。 「うわぁ、ネックレスだ~!すっごく、可愛い~」 中身はシルバーアクセサリーというやつだろうか。天使をかたどった部分の中心に宝石がついていた。 「私も同じものを持っているので、4人で揃えてみました。中心部の宝石は誕生石になってますよ」 「でも、いいの?凄く高そうなんだけど」 「気になさらないで下さい。4人そろって何かあるといいなと思いましたので」 「そうなんだ~。ありがとう、ゆきちゃん!」 「うん、ありがとう、みゆき。大切にするわ」 「サンキュー、みゆきさん」 「気に入ってもらえてなによりです」 「じゃあ、次は私だね~」 すると、つかさが後ろを向いて、なにやらごそごそとカバンを探っている。 最初は普通に取り出そうとしていたが、段々と焦りだしていた。 「あれぇ;;ちょ、ちょっと待ってね…確かここに入れたと思うんだけど~;;」 (はぁ、やっぱりそうだったのね。そんなことだろうと思ったわよ) 「ほら、つかさ、これじゃないの?行く時、玄関においてあったわよ」 「あ、それだ~!ありがとう、お姉ちゃん。どうしようかと思ったよ~><」 さっきまで暗かったつかさの顔が、ぱーっと明るくなった。 私も気が付かずに、持ってきていなかったら、おそらく泣き出していただろう。 「ちゃんと行く前に確認しなさいよね」 「まぁ、それがつかさらしいけどね~」 「はうぅ」 「でも、あって良かったですね、つかささん」 「うん!そうだ、はいこれ、ゆきちゃんに。お姉ちゃんとこなちゃんのはこっち。開けてみて♪」 「ありがとうございます」 「私の分までありがとね、つかさ」 「サンキュー♪」 そういって渡してくれたのは、小さめの細長いものだった。 「これは…携帯のストラップ?って、これ私?!」 「おぉー、よく出来てるね~。私そっくりじゃん?」 「これ、ひょっとして手作りですか?」 「うん、ちょっと頑張ってみたんだけど、どうかな?」 えへへ、と笑いながらこちらを見ている。 そう、それは一人一人がモデルの人形がついた携帯ストラップだった。 「そだ、かがみぃ~、私のと交換しようよ♪」 「はぁ?あんた、何を…」 「だって、そうすればいつでもかがみと一緒にいられるじゃん!」 ボンッ! 今日何度目か分からない噴火で、またしても顔は真っ赤に。 「ば、ばかっ!そ、それにつかさに悪いじゃn」「あー、それいいかも~」 つかさの言葉に遮られ、断る理由をなくしてしまった。 「それじゃあ、ゆきちゃんは私のと交換しよっか♪」 「え、つかささんのもあるんですか?」 「うん、本当は4人1組で渡そうと思ったんだけど、間に合わなかったんだ…」 「ほらほらぁ、つかさも良いって言ってるんだし~。それとも…私のは嫌?」  急に潤んだ目で私の方を向いて、上目遣いで訴えかけてきた。 明らかな嘘泣きの演技なのだが、分かっていても敵わない。 「わ、分かったわよ、仕方ないわね。はいっ」 「わーい、やたー。…仕方ないといいながら、私より嬉しそうなかがみ萌え♪」 「んなっ!ち、ちが…わないけど…」 「う~ん、さすがツンデレ!でも、これからはデレが多くなるかな?」 「ツンデレ言うな!ぐうっ、ここで反論できなくなるなんて…」 そう、告白した以上、こういう時に批判・反論をしても無意味なのだ。 主導権を握った方が、相手を弄る事が出来る形になるのだが、私がこなたに敵う時はくるのだろうか。 とりあえず、今までの経験上、滅多にはこなたから主導権を奪うことはできない。 「じゃあ、次は私ね。二人のと比べたら、大した物じゃないんだけど…」 私はカバンを開いて、3つのプレゼントを取り出し、それをそれぞれ渡す。 「ありがとうございます、かがみさん」 「わぁ、お姉ちゃんありがとう!」 「私はもう一個貰ってるけどね♪」 袋を開ける音がして、こなたが一番に言葉を発した。 「かがみん、これもしかしなくても自分とこのおまもり?」 「そうよ。だから大した物じゃないって言ったでしょ?」 「いえ、十分嬉しいですよ。私たちのことを考えてくれたのですから。ありがとうございます」 こなたが若干期待はずれのような答えをしたため、みゆきがフォローを入れた。 すると突然、ここまでずっとおまもりを凝視して黙っていたつかさが口を開いた。 「ねぇ、お姉ちゃん…もしかして、これ、自分で作った?」 『えっ?!』 驚きの声を上げたのは私だけじゃなく、こなたとみゆきも同じ声を上げていた。 (な、なんで分かったの!もしかして、どこか作り方を間違えたかしら…) 「だって、これ注文が入った時にしか作らない、特注の奴でしょ?お父さんから前に聞いたけど」 「うっ…」 (いつもはあまり聞いていないと思ったのに、案外ちゃんと聞いてたのね…恥ずかしいから隠しておくつもりだったのに…) 「つかささん、特注というのは、作るのが難しいのですか?」 「ちょっと複雑だけど、別に難しいわけじゃないよ。ただ、祈りを込めないといけないんだって」 「お祈りというのは、念じながら作るとかそういうものでしょうか?」 「そういう神社もあるみたいだけど、うちの場合は一個につき2時間ぐらい舞を踊るんだけど…」 「ってことは、かがみ、6時間も踊ったの?!」 こなたがさっきと打って変わって、目を輝かせて私のほうを見てきた。しかも、少しニヤついて。 「し、仕方ないでしょ仕来たりだったんだから」 「陰で努力してるのを、さりげなく流そうとするかがみ萌え~♪」 「う、うるさぃ…」 そう、チョコレートを作ったまではいいけど、物足りないと思った私はお父さんに頼んで、特注おまも りの作り方を教えてもらったのだ。みゆきとつかさのプレゼントもこれにしようと思ったのだが、何度 か失敗したりして、全て作るのに数時間かかった。その日は既に遅くなっていて、誰にも舞を見られて はいけないというルールもあったため、次の夜に6時間ぶっ通しで踊ったのだ。 「私も見てみたいな~、巫女さんコスのかがみの舞~」 「だから、あれは人に見せちゃいけないって言ってるでしょ?」 「ぶーぶー。作ってる時以外ならいいでしょ?見せてよ、ねー」 こなたが膨れて、おねだりしてきた。またあの上目遣いの目で…。 「う~~、わ、分かったわよ。でも、すぐには出来ないわよ?」 「やたー!約束だからね、かがみ!大好きだよ~」 「わ、分かったから、離しなさいよ!恥ずかしいじゃない…」 こなたが私に抱きついてきて、まだ慣れない私は、こなたの笑顔に見とれながらまた顔を赤くしていた。 最後にこなたの番になり、こなたは少し厚めの文庫本のようなものを私たちに渡してきた。 「ちょっと、読んで見てよ~」 そこには文字がずらっと書かれていて、所々に私たちの写真が張ってあった。 しかも、よく読んで見ると一つの物語になっているようだった。 「あんた、これどうしたのよ?」 「え、私が書いたのだよ。どう、驚いた?」 「すごーい、高校1年生のときから書いてあるよ~」 そう、私たちが出会ってからの事が一つのストーリーとなって描かれていた。主人公はこなたの視点で。 「これ、凄い内容が細かいですね。一つの文学作品としても成り立ちそうですよ」 「本当だぁ!こなちゃんがどう思ってたのとか、凄い伝わってくるよ~」 「ホント、よく昔のこととか覚えてたわね。それに、あんたにしちゃ手が込んでるし」 「ふふ~ん。楽しい時のことは良く覚えているものなのだヨ」 ちょっと読んでみただけで、自分たちのことなのに引き込まれる。 普段はパソコンやゲームばかりで、本を読んでいないと思ったが、お父さんが小説家なだけある。 意外と難しい言葉や表現が使われていて、でも決して分かりにくいわけじゃない。 「こなちゃん、文章書く才能あるんじゃない?凄く面白いよ、これ」 「おとーさんの真似しただけだし、色々見直しも手伝ってもらってるけどね」 「あんたのことだから、ほとんど書かせたんじゃないでしょうね?」 「むー、それは酷いよかがみん…」 少しばかりこなたがいじけてしまった。ちょっと言い過ぎたかしら。 「ごめん、ごめん。あんたがいつも宿題とか写してるイメージがあるから、ついね。でも、本当に良く出来てるわ。ありがとね、こなた」 「うん、寂しくなったら元気でそうだよ。ありがとう、こなちゃん」 「私も昔が懐かしくなったら、この本を読み返させていただきますね。ありがとうございます」 「でも、いつまで経っても私たちは友達だからね!」 「あんたには似合わない台詞ね。でも、そうね」「はい、私たちはいつまでも…」「親友だね♪」 時間は移って、朝方。皆寝静まっていて、起きるにはまだまだ早い時間だ。 あの後、お風呂に入ることになって、私が入っているとこなたが突然乱入してきたり、夜中のおしゃべりタイムでも私がこなたにいじられたり、騒がしくも楽しい時間が過ぎていった。 何故かふと目が覚めてしまい、時計を見ると5時半ぐらいを指していた。 二度寝する気も起きず、皆を起こさないようにそっと起き上がった。 何故か布団が異様に重く感じたが、気にせずパパッと着替えて外に出てみた。 今朝は一段と冷え込み、残っていた少しの眠気も吹き飛んでしまった。 風はほとんど吹いていないのだが、曇りという天気が一層寒く感じさせる。 昨日の事があまりに夢物語のように上手くいって、楽しくて、未だに夢を見ているような気がする。 でも、確かなぬくもりと感触がまだ残っていて、鮮明に記憶としても覚えてる。 (私は本当にこなたと…夢みたいだけど、現実だったのよね…) 「…わあっ!」 「きゃあああっー!」 私が少し思いにふけっていると、後ろから突然叫ばれ、抱きつかれた。 自分以外に人がいるということを想定していなかったため、思わず悲鳴をあげてしまった。 「…っ!あんたねぇ!一体どういうつもr」「しーっ!まだ皆寝てるんだから…」 そこにはイタズラが大成功して、満足したにやけ顔のこなたがいた。朝っぱらからアホ毛も健在だ。 「って、あんたがいけないんでしょうが!」 「いやぁ、あそこまで驚くとは。それに、私は起こされたんだからね?」 「えっ、もしかして起こしちゃった?」 相当気を使って出てきたつもりだったのだが、どうやら起こしてしまったらしい。 「だって、かがみにこっそり抱きついて寝てたら、普通にどかしていっちゃうんだもん」 「そ、それはあんたが悪いんじゃないの!人の布団に勝手にもぐりこむなんて…」 (ということは、昨日ずっと抱きつかれながら寝てたってこと…?) 「同じ布団で寝てたことに気づいて、喜びながら恥らってるかがみ萌え~」 「そ、それは、嬉しくないわけ、ない、じゃ…な…い…」 「うぉ!?朝っぱらからデレ状態?!」 せっかく素直になろうとしてるのに、この反応はないだろうと思う。 「いいじゃない…今は二人きりなんだから…」 「かがみって、結構ロマンチストだよね。」 「べ、別にいいでしょ。それn」「クシュ」 こなたがくしゃみをしたことで、ようやくこなたが相当薄着で出てきたのに気づく。 寝巻きに一つ羽織ったいるだけで、真冬の朝に外へ出る格好じゃない。 「あんた、なんて格好してるのよ。それじゃ、風邪引くわよ」 そう言って、コートのボタンを外し、こなたを強く抱き寄せ、自分のコートの中に入れる。 「ほら、これであったかいでしょ?」 「ちょ、かがみ…は、恥ずかしいってば…」 珍しく戸惑っているこなたを見て、それがとても可愛らしく見えて、更に抱きしめる力を強めた。 「いいじゃない他に誰もいないんだし。いたとしても離さないわよ」 「む、むぅ~…」 そう言うと、こなたは抵抗を止め、素直に落ち着いたのでちょっと力を緩めた。 こなたの温もりが伝わってきて、本当に暖かい。 それに、自分の体温もこなたに伝わっていると思うと、ちょっと恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい。 昨日も抱き合ったけど、今はそのときと違った暖かさがある。 あの時はこなたに受け入れてもらった嬉しさがあって、そればかり考えていたけど、今は違う。 落ち着いてこなたを感じられる。こなたの匂いがして、こなたの体温が伝わってきて、安心できる…。 「ひゃあ!」 突然こなたが静寂を壊し、素っ頓狂な声をあげた。 「どうしたのよ、突然」 「雪…」 「えっ…?」 目を凝らすと、少しだけど雪が降っているのが分かる。 積もるかはまだ分からないけど、積もって欲しいと願った。 「ホワイトクリスマスになるといいわね」 「…聖夜は過ぎちゃったけどね」 「いいじゃない、少し遅れたって。あんたの遅刻と一緒よ」 「そだね。冷たくてツンツンしてるけど、暖かくするとデレるのはかがみっぽいし」 「どの辺がデレるのよ、全く…。でも、言いたいことは分かるわ。今まで素直じゃなかったしね」 「じゃあやっぱり、私たちっぽいよね」 「そうね、私たちみたいね…」 私たちは、しばらくその雪が舞っているのをただひたすら眺めていた。 「…そろそろ戻ろっか。つかさやみゆきが起きてきて、心配させちゃうと悪いし」 「うん」 そういって、こなたに自分のコートを貸して、中に入ろうと歩みを進めた。 あと1歩でドアに手が届くところで私は止まり、くるっとこなたに向きなおした。 「こなた」 「何?」 「大好きよ、こなた。メリークリスマス」 「私も大好きだヨ~。かがみも、メリークリスマス!」 (来年も再来年もずっと、一緒にクリスマスを迎えられると信じてるからね、こなた) ― Fin ― -[[かがみまもり>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/88.html]](続編)へ **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - 続編nice! -- 名無しさん (2014-08-16 19:56:39)
「ねぇ、かがみ~、隠さないで言ってよ~」 (どうしよう…。ここまで聞かれたら、話すしかないかな…でも、今はまだ…) そんなとき、今まで敵?だったつかさが助け舟を出してくれた… 「お姉ちゃんね、実はこなちゃんにサプライズがあるんだよ~。だから、さっきからタイミングを掴もうとしてたんだよね、お姉ちゃん?」 …はずだった。 「ちょっと、つかさ!それは言わないって約そk」「へぇ~、なんだったのかなぁ、かがみんや。」 「い、言えるわけないでしょ?!」 「もうバレてるんだし、いいじゃ~ん。ねぇ、かがみ~ん」 困った。非常に困った。さっきからの展開からは逃げられたけど、もっと大きな穴に落ちた感じだ。 再び返答に困っていると、今度はみゆきが助け舟を出してきた。本物の。 「泉さん、まだ分かっていないのですから、待ってみてはいかがでしょうか?私も知らないので、何ともいえませんが、場合によっては驚きようがあるかもしれませんよ?」 「むぅ…」 「それに、もうすぐ夕飯ですし、時間に余裕がある食後でよろしいのではないでしょうか?」 「う、うん、そうするわ、みゆき。ありがとう…」 「いえ、せっかくご用意されたのですから、楽しまないといけませんしね」 説得力のあるみゆきの言葉にこなたも黙り、夕飯を頂くことになった。 食器などの準備をしていると、ゆたかちゃん達がやってきた。どうやら一時的に合流するようだ。 「おぉ、ゆーちゃん達いらっしゃい!」 「えへへ、お姉ちゃん今朝方ぶりだね」 「皆さん、いらっしゃい。丁度、準備が終わるところですよ」 「Oh、ゴージャスですネ!」 「…(コクリ)うん…」 花火大会のときと同じメンバーで夕食をとることになった。 大勢で食べることには慣れている私だけど、友達で集まって食べるのは特別楽しい。 「う~ん、どれも絶品ッスね!」 「本当、どれも凄く美味しいわね。全部みゆきが作ったの?」 「いえ、実はみなみさんにも作っていただいた品もいくつかあるんですよ。このソテーなんかそうですね。先ほど温めなおした物ですが、とても美味しく出来てますよ」 「え、これみなみちゃんが作ったの?!一番初めに食べたけど、すっごく美味しかったよ!」 「そ、そんな…」 みなみちゃんは顔を赤くして俯いている。いつもクールな彼女にしては、珍しい反応かもしれない。 (…それにしても、この中でまともに料理できないのは私だけなのかしら…はぁ…) 「あの、迷惑じゃなかったら、今度私にも教えてくれないかな?」 「…うん、いいよ…。ゆたかのためなら喜んで…」 この二人も実にいいコンビだと思う。 私がこなたに抱くような感情はないと思うけれど、何となくお似合いだ。 素直にお互いの気持ちが伝えれるのが、本当に羨ましい。それに比べて私は…。 「はうっ!だから、この二人はもう最高ッス!」 「ひよりん、ほどほどにね(≡ω≡.;)」 「そうですヨ、ひより。そういうのは1人の時にやるネ!」 「こなちゃん、なんのこと?」 「いや、つかさは知らない方がいいよ…」 夕食が終わり、ゆたかちゃん達も岩崎家に戻ることになった。 それぞれが戻る支度をしたり、みなみちゃんがみゆきから後で食べる用のデザートを貰っていたりしている最中、ゆたかちゃんが私の方に寄って来た。 「かがみ先輩、頑張ってくださいね!私も頑張りますから!」 そう言われて思い浮かぶことは一つしかなかった。 「え、ちょ、ちょっと!何で知ってるの?!」 「す、すいません、…さっきつかさ先輩に聞かれたんですよ。気づいてたの、って」 あの子は本当に余計なことをしてくれる…。 「そ、それに、〈私も〉って…?」 ゆたかちゃんは何も言わない代わりに、チラッとみなみちゃんの方を向いた。…え、まさか? 「ゆたかちゃんも?」 「はい…。せっかくのクリスマスなので…」 「…これを聞くのもあれなんだけど、覚悟はできてるの…?」 自分を今までずっと縛ってきた悩みを聞いてみたが、意外にもゆたかちゃんの答えは明るかった。 「はい!もし駄目だとしても、友達であることは変わらないとみなみちゃんを信じていますから!」 「…そう」 (まさかゆたかちゃんもそういう考えがあったなんて、ね…) 「あ、そろそろ行くみたいなので、失礼しますね。では、頑張ってくださいね♪」 ここにいる中では一番小さいはずの背中が、今は大きく見えた。 (強いわね、ゆたかちゃん…。それに比べて私はなにやってるんだろう。しっかりしないと…!) メンバーが減ったためか、一時的に静寂が家の中に訪れる。静かだ…。 みゆきとつかさはデザートの仕上げをしていて、今はこなたと二人、こたつに入っている。 時間はすでに8時を過ぎていて、時間がいかに早く進むかに改めて気づかされる。 (いつ、言おうかしら…。今じゃあまりにもムードがないし、二人がいつ戻るか分からないし…) 「………」 「ねぇ、かがみん」 突然、こなたの方から声をかけてきた。 「ちょっと外に出ない?私、体が硬くなってきちゃったヨ」 そういって、背伸びをしてみせる。そんなところがまた可愛く…じゃなくて。 確かにずっと座ってばかりで、あまり体を動かしたりしていない。 (…もしかしたら、さっきのサプライズを誘っているのかしら…何かも知らないで…) ただ、それ以上に、向こうからチャンスを作ってくれたのだから、見逃すことは出来ない。 「…そうね、分かったわ。つかさ達に伝えてくるわ」 つかさとみゆきに散歩に行くことを伝えると、笑顔で答えてくれた。頑張ってね♪(ください♪)、と。 二人には自分の気持ちを話しておいて良かったなと、改めて思う。 言っていなければ、二人で散歩に行きたいと聞くだけで相当気まずい思いがあっただろう。 外に出ると、真冬の夜の寒さが体にしみた。 相当着込んだつもりだったが、先ほどまで暖まっていた体はすぐに冷え始めた。 (この寒さなら、雪になるわね…。ホワイトクリスマス、なんて上手くはいかないか…) 「いやぁ、寒いね~。これならこたつの中のほうが良かったかなぁ」 「あんたねぇ…人を誘っておいて、そういうこと言う?」 「むぅー。かがみだって、私と二人にきりになりたかったんじゃないの~?」 こなたがニヤニヤと私のほうを見ながら、主導権は握った!というオーラを出している。 「それは…」 (素直にならないとね。せっかくのチャンス、作ってくれたチャンス、無駄に出来ないわ) ワンテンポおいて、私は話し始める。 「…つかさがさっき、あんたにサプライズがあるって言ってたわよね?…確かにあるわ」 「何々、かがみ~」 「こ、これ…。前にバレンタインの時に渡したのは、失敗作と言うか、自分用だったのよ。あんたに渡そうとしてたのは、作ってる途中で割れちゃったからね…」 「かがみが私だけのために、チョコを一人で!?」 「そ、そうよ」 「よし!受け取ったよ~、かがみの愛~!ありがとね♪」 (えっ?!ちょ、ちょっと!) この反応は、私がこなたに友達として渡したんだと明らかに勘違いしてる。 いつもいじってくるこなたでも、相手が真剣だと知ったら茶化す奴じゃない。 「ま、待って、こなた!違う、違うのっ…。そうじゃないのっ!」 「ほえ?」 これを言ったからには、もう後戻りはできない。 こなたはというと、思いも寄らない私の言葉に驚いたのか、キョトンとしている。 また一つ間が空く。 その間で、私が真剣に話そうとしているのが伝わったのか、こなたの顔が少し強張る。 「…こなた、そのチョコレートの包装、開けてみてくれる?」 「う、うん」 こなたがゆっくりと、丁寧に箱を開ける。ガサガサ…、カタッ。 私たち以外に何もないかのように、箱を開ける音まで聞こえるほど静かだ。 「かがみ、これって…」 「それが私の気持ち、私の本心よ。私はこなたが好き…ううん、大好きよ…」 「……」 「女の子同士なのも、あんたにもそういう趣味がないのも百も承知よ。でも、私は本気で言ってるの。前から好きだった。きっかけなんて無数にあるし、はっきり恋心に変わったタイミングもないわ。でも、あんたが好きだってのは、今ならはっきりと分かるし、あんたに伝えられる…」 ついに言ってしまった。これで失敗したら最悪、私達の関係も終わり、4人の仲も崩れるかもしれない。 こなたは黙ったままで、こちらを見ている。唖然としているのか、困っているのかは分からない。 長く空いた間が重圧となって私を押しつぶしていく。私は顔を伏せた。 もはやネガティブ思考が止まらない私は、涙が流れてしまった。もう耐えられなかった。  「ごめんね、こなた…っ。こんなこと言われても、困るわよね。やっぱ、わs」「かがみっ!」 こなたが急に抱きついてきて、顔を伏せたままだった私の視界に、こなたの顔がドアップで入ってくる。 (え?こなた、もしかして泣いてる?!) 自分の言った言葉のせいで、普段は涙を見せないこなたが泣いているのかと思い、焦る。 (親友だと思っていた相手が、同性趣味で告白してきたら、そりゃ悲しくなるわよね…) でも、それは間違っていて、 「かがみぃ!私もかがみの事が好き、大好き!」 「え?えっ?ほ、本当に?でも、泣いて…」 「だ、だって、まさかかがみが告白してくれるなんて思わなくて。私、嬉しくってさ!ただ、泣いてるの見られたくなくて、それで泣き止むまでごまかそうと思ったんだけど…。でも、それがかがみを不安にさせちゃったよね。ごめん…」 しゅんとなっているこなたを抱きしめる。それに呼応するように、こなたもまた強く抱きしめてくる。 「ばかっ!本当に馬鹿っ!…でも、ありがとう。これからもよろしくね、こなた!」 「うん、うんっ!よろしく、かがみん♪」 そうしてまた、お互いに自然と抱き合った。今度はそれを味わうように長く。 (暖かい…。こなたの体温が伝わってくる…) どれだけ長い時間が経っただろうか。そして、またお互いに自然と、名残惜しくも体を離した。 「そろそろ行かないとね…。つかさ達、待たせちゃってるし」 「そだね…」 手を繋いで、私たちは帰路についた。こなたの暖かさが伝わってくるのがとてつもなく嬉しい。 でも、そんな中で私は一つの疑問を、どうしても聞いておかないといけない事をこなたにぶつけた。 「ねぇ、こなた。今更だけど、本当に私でいいのね?同性趣味はないって、前に言ってたから…。世間の目とかに対する覚悟もあるし、一応確認のためよ」 するとこなたは、ちょっと顔を赤くして、でも真剣にこちらを見て言った。 「かがみが真剣なのに、冗談であんなことを言わないよぉ。それに…」 急に口ごもってしまった。いや、ゴニョゴニョと何か言っているが、全く聞こえない。 「何よ?ちゃんと言わないと、何も聞こえないじゃない」 「ま、前からかがみのことは好きだったんだよ?でも、あそこであるって言ったら、絶対嫌われると思って…だから、今日も始めは信じられなかったんだヨ…」 いつもらしくない、しおらしいこなたに、ちょっとばかりドキッとした。 「そうだったのね…。正直、あの時のあの言葉は結構な壁になったわよ、私にとって」 「うん、そうだよね…ごめん。で、でも、もう世間体のことは一切気にしてないからね!かがみも覚悟してくれたんだし、私もそれに応えるよ!」 そういってくれたことが、私を勇気付けてくれた。私だって、もう不安がないわけじゃない。 でも、こういってくれるこなたがいるなら、一緒に乗り越えられる気がする。 「でも、良かった!断られたらどうしようかと思ったわよ」 「ありがとね、かがみ。本当の気持ち伝えてくれてさ。私には言う勇気がなかったヨ。かがみが言ってくれなかったら、あのまま終わってたよ。本当に、ありがと」 そういうと、こなたはスルッと私の前に踊りだし、 「これはそのお礼と、私からのクリスマスプレゼントだよ、かがみん♪…チュッ!」 と、私の頬や額ではなく、唇に軽くキスをしてきた。頭がボンッと音を立てて、赤くなる。 「~~~っ?!」 「あはっ」 ちょっとばかし再起不能になった頭を再起動させ、赤い顔のまま叫んだ。 「〈あはっ〉じゃないわよ!ファーストキスってのは、もうすこし雰囲気を考えなさいよ!」 「いいじゃん、私たちらしくてさ!それに頬とかじゃありきたりなシチュだし、つまんないじゃん?」 「知らないわよ、そんなの!私の了承ぐらい得なさいよ!」 「ほら、みゆきさんの家についたよ。早く入ろう!寒くて、凍えちゃうヨ」 そうして、ごまかそうとするこなたの腕をこちらに引き寄せた。 そして、キョトンとこちらを向いたこなたの顔と、自分の顔との距離を一気にゼロにした。 「…んっ、ふぁっ…」 「さ、さっきのお返しっ! わ、私からのプレゼントよ」 「チョコも貰ったし、これで2つ目だね。どちらも美味しくいただきました♪」 お互い真っ赤だというのに、こなたはそれでも茶化してくる。 「ば、ばかっ!それに、まだチョコは食べてないだろっ!」 「細かいことは気にしない、気にしない!」 「全く…中に入るわよ!」 「あー、待ってよ、かがみん~」 そうして、こなたが私の腕にしがみつく形で中に入っていった。 『ただいま~!』 「おかえりなさい、泉さん、かがみさん」 タイミング良く帰ってきたのか、大きなケーキを持ったみゆきとつかさが居間に入るところだった。 「ごめんね、二人とも。遅くなっちゃって」 「ううん、大丈夫だよ~。飾り付けに時間がかかって、今終わったところだし」 「それじゃあ、私は飲み物とか持ってくるわね」 「あ、では私も。1人では持ちきれないと思いますので」 「じゃあ、私はコップを取ってくるね~。こなちゃんは座ってていいよ~」 「アイアイサー!」 そう言って、こなたを除いた三人で台所へ向かった。 「…二人とも、ありがとね。私のために、色々と相談に乗ってくれたりしてさ」 台所に入ったところで、私は不意に二人にお礼をした。結果報告も兼ねて。 「そ、それじゃあっ!」 「うん、OKもらったわよ」 「本当に良かったですね、かがみさん。私も安心しました」 そういって、心から喜んでくれてるのが分かる二人を見て、改めて幸せを実感する。 こなたにOKを貰ったことだけでなく、自分を支えてくれる人がこんなにいることにも。 「でも、私達はいつも4人一緒よ?これは変わらないし、変えたくもないから」 「そうですね。泉さんとかがみさんがより仲良くなっただけですからね」 「うんうん!でも、良かった♪あ、そういえb」「ちょっと、遅いわよ!罰金よ罰金!」 つかさの声をさえぎるほどの大声で、奥の居間からこなたの声がした。 …相変わらずあの声は物真似王を取れると思うほど似ている。 「あ、ごめんごめん。今から行くところよ」 「むぅー、早くしてよ~」 それに急かされるように居間に戻って、膨れっ面のこなたをなだめながらケーキを囲んだ。 「ねぇ、何話してたのさ?」 こなたが先ほど私達が何かについて話していたことには気づいていたらしい。 (みゆきとつかさが手伝ってくれたっていうのは内緒にする約束だし、なんて言えばいいかな…) 私が悩んでいると、みゆきが代わりに答えてくれた。 「うふふ、なんでもないですよ。ただ、サプライズが何なのかを聞こうとしていたところです」 「んじゃあ、まだ聞いてないんだね?」 「え?えぇ、まぁ、そういうことになりますね」 こなたが目をキラキラさせながら、私達を交互に見ている。 特に私に向けているのは、何かのサインのようだ。 (ま、まさか、あいつ!ちょ、ちょっ、まっ…!)  私の制止をものともせず、突然こなたがバンッ!とこたつを叩きながら立ち上がり、大声で叫んだ。 「かがみが世界の中心で愛を叫んだのだよ!」 「……」 みゆきとつかさは事情を知っているだけに、どうすればいいのか困惑した顔のまま硬直している。 だが、こなたはそれを理解していないという意味で取ったのか、行動で表してきた。 「あ、あんた勝手に…っ!」 「つまりはこういうことなのだよ!」 そういって、私の言葉を遮って、二人の目の前でキスをしてきた。一瞬混乱したが、すぐに口を離した。 「…んっ?!…こ、こなた~~!!!」 私はもちろん、つかさとみゆきまで顔が真っ赤だ。1人余裕そうな顔をしているのは、こなたで。 「し、幸せそうで、なによりです」 「そ、そうだね、ゆきちゃん」 「あれ?つかさにみゆきさん知ってた?全然驚かないし」 「す、すいません、実は…」 ああ、ばれちゃったか。まぁ、でも隠す必要もないか、OK貰ったんだから。 (それに、こなたのことだから気にしないだろうしね) 「ふ~ん、つまんないの。じゃあ、かがみぃ~?」 「な、何よ?い、言っとくけどチョコはちゃんと私1人で作ったわよ?」 「違うヨ~。そうじゃなくて、もしかして、このパーティとか企画したの全部かがみ?」 「ま、まぁ、そうなるかしら。」 またこなたの顔が一段とニヤついて、小悪魔としか言いようがない顔になった。 「ふぅ~ん。かがみも乙女ですなぁ♪」 「う、うるさーい!」 「やっぱり、お姉ちゃんとこなちゃんだね♪」 「そうですね♪」 小一時間、私がこなたに弄られているのを、つかさとみゆきが和みながら見ている、という構図のまま過ぎていった。この構図は前と変わっていないのだから、不思議だ。 (でも、良かった…。だって、この雰囲気が崩れたら、こなたにフラれるのと同じぐらい嫌だもの) 「ふぅ~、美味しかった。さすがみゆきさんとつかさだね♪」 「本当、甘さが控え目でフルーツの酸味も良く効いてたわ。やわらかくて、食べやすかったしね」 「あ、ありがとうございます。でも、フルーツを乗せようと考案したのはつかささんなんですよ」 「えへへ、ありがとう。でも、ケーキも凄く良く出来てたよ~。お店に負けないぐらいだったよ!」 「いえ、そ、そんな…。照れてしまいます。」 そう言って、俯いて顔を真っ赤にしているのが分かる。少し可愛らしい。 (こなたがいつも言ってる萌え要素とかって、こういうことなのかしら?) 「でも、甘さ控え目でフルーツが乗ってるなんて、かがみ向けのケーキだよね。」 「…なにが言いたいのかな、こなた?」 こなたの言葉に反応して、ギラッとこなたの方をにらみつける。 「うほっ、こわっ!私の防御力が下がっちゃったよ~」 「それで、何か言い残すことはあるかしら?」 「って、か、かがみ様?!顔が恐ろしく怖いですヨ…;;いや、冗談だって、普通に女性向けだって!」 「全く…あんたはいつも一言多いのよ」 「ふふっ。では、そろそろプレゼント交換でもしませんか?もう10時前ですし」 横目で時計の針を確認すると、確かにもう遅い時間になっている。 お風呂やら夜のおしゃべりタイムを考えたら、そろそろ始めた方がいいだろう。 「そうね。そろそろ始めましょうか?」 「では、私からお渡ししますね。どうぞ開けて下さい」 そういって、ラッピングの色が違う小さな箱を三つ取り出し、私たち1人ずつに渡した。 「うわぁ、ネックレスだ~!すっごく、可愛い~」 中身はシルバーアクセサリーというやつだろうか。天使をかたどった部分の中心に宝石がついていた。 「私も同じものを持っているので、4人で揃えてみました。中心部の宝石は誕生石になってますよ」 「でも、いいの?凄く高そうなんだけど」 「気になさらないで下さい。4人そろって何かあるといいなと思いましたので」 「そうなんだ~。ありがとう、ゆきちゃん!」 「うん、ありがとう、みゆき。大切にするわ」 「サンキュー、みゆきさん」 「気に入ってもらえてなによりです」 「じゃあ、次は私だね~」 すると、つかさが後ろを向いて、なにやらごそごそとカバンを探っている。 最初は普通に取り出そうとしていたが、段々と焦りだしていた。 「あれぇ;;ちょ、ちょっと待ってね…確かここに入れたと思うんだけど~;;」 (はぁ、やっぱりそうだったのね。そんなことだろうと思ったわよ) 「ほら、つかさ、これじゃないの?行く時、玄関においてあったわよ」 「あ、それだ~!ありがとう、お姉ちゃん。どうしようかと思ったよ~><」 さっきまで暗かったつかさの顔が、ぱーっと明るくなった。 私も気が付かずに、持ってきていなかったら、おそらく泣き出していただろう。 「ちゃんと行く前に確認しなさいよね」 「まぁ、それがつかさらしいけどね~」 「はうぅ」 「でも、あって良かったですね、つかささん」 「うん!そうだ、はいこれ、ゆきちゃんに。お姉ちゃんとこなちゃんのはこっち。開けてみて♪」 「ありがとうございます」 「私の分までありがとね、つかさ」 「サンキュー♪」 そういって渡してくれたのは、小さめの細長いものだった。 「これは…携帯のストラップ?って、これ私?!」 「おぉー、よく出来てるね~。私そっくりじゃん?」 「これ、ひょっとして手作りですか?」 「うん、ちょっと頑張ってみたんだけど、どうかな?」 えへへ、と笑いながらこちらを見ている。 そう、それは一人一人がモデルの人形がついた携帯ストラップだった。 「そだ、かがみぃ~、私のと交換しようよ♪」 「はぁ?あんた、何を…」 「だって、そうすればいつでもかがみと一緒にいられるじゃん!」 ボンッ! 今日何度目か分からない噴火で、またしても顔は真っ赤に。 「ば、ばかっ!そ、それにつかさに悪いじゃn」「あー、それいいかも~」 つかさの言葉に遮られ、断る理由をなくしてしまった。 「それじゃあ、ゆきちゃんは私のと交換しよっか♪」 「え、つかささんのもあるんですか?」 「うん、本当は4人1組で渡そうと思ったんだけど、間に合わなかったんだ…」 「ほらほらぁ、つかさも良いって言ってるんだし~。それとも…私のは嫌?」  急に潤んだ目で私の方を向いて、上目遣いで訴えかけてきた。 明らかな嘘泣きの演技なのだが、分かっていても敵わない。 「わ、分かったわよ、仕方ないわね。はいっ」 「わーい、やたー。…仕方ないといいながら、私より嬉しそうなかがみ萌え♪」 「んなっ!ち、ちが…わないけど…」 「う~ん、さすがツンデレ!でも、これからはデレが多くなるかな?」 「ツンデレ言うな!ぐうっ、ここで反論できなくなるなんて…」 そう、告白した以上、こういう時に批判・反論をしても無意味なのだ。 主導権を握った方が、相手を弄る事が出来る形になるのだが、私がこなたに敵う時はくるのだろうか。 とりあえず、今までの経験上、滅多にはこなたから主導権を奪うことはできない。 「じゃあ、次は私ね。二人のと比べたら、大した物じゃないんだけど…」 私はカバンを開いて、3つのプレゼントを取り出し、それをそれぞれ渡す。 「ありがとうございます、かがみさん」 「わぁ、お姉ちゃんありがとう!」 「私はもう一個貰ってるけどね♪」 袋を開ける音がして、こなたが一番に言葉を発した。 「かがみん、これもしかしなくても自分とこのおまもり?」 「そうよ。だから大した物じゃないって言ったでしょ?」 「いえ、十分嬉しいですよ。私たちのことを考えてくれたのですから。ありがとうございます」 こなたが若干期待はずれのような答えをしたため、みゆきがフォローを入れた。 すると突然、ここまでずっとおまもりを凝視して黙っていたつかさが口を開いた。 「ねぇ、お姉ちゃん…もしかして、これ、自分で作った?」 『えっ?!』 驚きの声を上げたのは私だけじゃなく、こなたとみゆきも同じ声を上げていた。 (な、なんで分かったの!もしかして、どこか作り方を間違えたかしら…) 「だって、これ注文が入った時にしか作らない、特注の奴でしょ?お父さんから前に聞いたけど」 「うっ…」 (いつもはあまり聞いていないと思ったのに、案外ちゃんと聞いてたのね…恥ずかしいから隠しておくつもりだったのに…) 「つかささん、特注というのは、作るのが難しいのですか?」 「ちょっと複雑だけど、別に難しいわけじゃないよ。ただ、祈りを込めないといけないんだって」 「お祈りというのは、念じながら作るとかそういうものでしょうか?」 「そういう神社もあるみたいだけど、うちの場合は一個につき2時間ぐらい舞を踊るんだけど…」 「ってことは、かがみ、6時間も踊ったの?!」 こなたがさっきと打って変わって、目を輝かせて私のほうを見てきた。しかも、少しニヤついて。 「し、仕方ないでしょ仕来たりだったんだから」 「陰で努力してるのを、さりげなく流そうとするかがみ萌え~♪」 「う、うるさぃ…」 そう、チョコレートを作ったまではいいけど、物足りないと思った私はお父さんに頼んで、特注おまも りの作り方を教えてもらったのだ。みゆきとつかさのプレゼントもこれにしようと思ったのだが、何度 か失敗したりして、全て作るのに数時間かかった。その日は既に遅くなっていて、誰にも舞を見られて はいけないというルールもあったため、次の夜に6時間ぶっ通しで踊ったのだ。 「私も見てみたいな~、巫女さんコスのかがみの舞~」 「だから、あれは人に見せちゃいけないって言ってるでしょ?」 「ぶーぶー。作ってる時以外ならいいでしょ?見せてよ、ねー」 こなたが膨れて、おねだりしてきた。またあの上目遣いの目で…。 「う~~、わ、分かったわよ。でも、すぐには出来ないわよ?」 「やたー!約束だからね、かがみ!大好きだよ~」 「わ、分かったから、離しなさいよ!恥ずかしいじゃない…」 こなたが私に抱きついてきて、まだ慣れない私は、こなたの笑顔に見とれながらまた顔を赤くしていた。 最後にこなたの番になり、こなたは少し厚めの文庫本のようなものを私たちに渡してきた。 「ちょっと、読んで見てよ~」 そこには文字がずらっと書かれていて、所々に私たちの写真が張ってあった。 しかも、よく読んで見ると一つの物語になっているようだった。 「あんた、これどうしたのよ?」 「え、私が書いたのだよ。どう、驚いた?」 「すごーい、高校1年生のときから書いてあるよ~」 そう、私たちが出会ってからの事が一つのストーリーとなって描かれていた。主人公はこなたの視点で。 「これ、凄い内容が細かいですね。一つの文学作品としても成り立ちそうですよ」 「本当だぁ!こなちゃんがどう思ってたのとか、凄い伝わってくるよ~」 「ホント、よく昔のこととか覚えてたわね。それに、あんたにしちゃ手が込んでるし」 「ふふ~ん。楽しい時のことは良く覚えているものなのだヨ」 ちょっと読んでみただけで、自分たちのことなのに引き込まれる。 普段はパソコンやゲームばかりで、本を読んでいないと思ったが、お父さんが小説家なだけある。 意外と難しい言葉や表現が使われていて、でも決して分かりにくいわけじゃない。 「こなちゃん、文章書く才能あるんじゃない?凄く面白いよ、これ」 「おとーさんの真似しただけだし、色々見直しも手伝ってもらってるけどね」 「あんたのことだから、ほとんど書かせたんじゃないでしょうね?」 「むー、それは酷いよかがみん…」 少しばかりこなたがいじけてしまった。ちょっと言い過ぎたかしら。 「ごめん、ごめん。あんたがいつも宿題とか写してるイメージがあるから、ついね。でも、本当に良く出来てるわ。ありがとね、こなた」 「うん、寂しくなったら元気でそうだよ。ありがとう、こなちゃん」 「私も昔が懐かしくなったら、この本を読み返させていただきますね。ありがとうございます」 「でも、いつまで経っても私たちは友達だからね!」 「あんたには似合わない台詞ね。でも、そうね」「はい、私たちはいつまでも…」「親友だね♪」 時間は移って、朝方。皆寝静まっていて、起きるにはまだまだ早い時間だ。 あの後、お風呂に入ることになって、私が入っているとこなたが突然乱入してきたり、夜中のおしゃべりタイムでも私がこなたにいじられたり、騒がしくも楽しい時間が過ぎていった。 何故かふと目が覚めてしまい、時計を見ると5時半ぐらいを指していた。 二度寝する気も起きず、皆を起こさないようにそっと起き上がった。 何故か布団が異様に重く感じたが、気にせずパパッと着替えて外に出てみた。 今朝は一段と冷え込み、残っていた少しの眠気も吹き飛んでしまった。 風はほとんど吹いていないのだが、曇りという天気が一層寒く感じさせる。 昨日の事があまりに夢物語のように上手くいって、楽しくて、未だに夢を見ているような気がする。 でも、確かなぬくもりと感触がまだ残っていて、鮮明に記憶としても覚えてる。 (私は本当にこなたと…夢みたいだけど、現実だったのよね…) 「…わあっ!」 「きゃあああっー!」 私が少し思いにふけっていると、後ろから突然叫ばれ、抱きつかれた。 自分以外に人がいるということを想定していなかったため、思わず悲鳴をあげてしまった。 「…っ!あんたねぇ!一体どういうつもr」「しーっ!まだ皆寝てるんだから…」 そこにはイタズラが大成功して、満足したにやけ顔のこなたがいた。朝っぱらからアホ毛も健在だ。 「って、あんたがいけないんでしょうが!」 「いやぁ、あそこまで驚くとは。それに、私は起こされたんだからね?」 「えっ、もしかして起こしちゃった?」 相当気を使って出てきたつもりだったのだが、どうやら起こしてしまったらしい。 「だって、かがみにこっそり抱きついて寝てたら、普通にどかしていっちゃうんだもん」 「そ、それはあんたが悪いんじゃないの!人の布団に勝手にもぐりこむなんて…」 (ということは、昨日ずっと抱きつかれながら寝てたってこと…?) 「同じ布団で寝てたことに気づいて、喜びながら恥らってるかがみ萌え~」 「そ、それは、嬉しくないわけ、ない、じゃ…な…い…」 「うぉ!?朝っぱらからデレ状態?!」 せっかく素直になろうとしてるのに、この反応はないだろうと思う。 「いいじゃない…今は二人きりなんだから…」 「かがみって、結構ロマンチストだよね。」 「べ、別にいいでしょ。それn」「クシュ」 こなたがくしゃみをしたことで、ようやくこなたが相当薄着で出てきたのに気づく。 寝巻きに一つ羽織ったいるだけで、真冬の朝に外へ出る格好じゃない。 「あんた、なんて格好してるのよ。それじゃ、風邪引くわよ」 そう言って、コートのボタンを外し、こなたを強く抱き寄せ、自分のコートの中に入れる。 「ほら、これであったかいでしょ?」 「ちょ、かがみ…は、恥ずかしいってば…」 珍しく戸惑っているこなたを見て、それがとても可愛らしく見えて、更に抱きしめる力を強めた。 「いいじゃない他に誰もいないんだし。いたとしても離さないわよ」 「む、むぅ~…」 そう言うと、こなたは抵抗を止め、素直に落ち着いたのでちょっと力を緩めた。 こなたの温もりが伝わってきて、本当に暖かい。 それに、自分の体温もこなたに伝わっていると思うと、ちょっと恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい。 昨日も抱き合ったけど、今はそのときと違った暖かさがある。 あの時はこなたに受け入れてもらった嬉しさがあって、そればかり考えていたけど、今は違う。 落ち着いてこなたを感じられる。こなたの匂いがして、こなたの体温が伝わってきて、安心できる…。 「ひゃあ!」 突然こなたが静寂を壊し、素っ頓狂な声をあげた。 「どうしたのよ、突然」 「雪…」 「えっ…?」 目を凝らすと、少しだけど雪が降っているのが分かる。 積もるかはまだ分からないけど、積もって欲しいと願った。 「ホワイトクリスマスになるといいわね」 「…聖夜は過ぎちゃったけどね」 「いいじゃない、少し遅れたって。あんたの遅刻と一緒よ」 「そだね。冷たくてツンツンしてるけど、暖かくするとデレるのはかがみっぽいし」 「どの辺がデレるのよ、全く…。でも、言いたいことは分かるわ。今まで素直じゃなかったしね」 「じゃあやっぱり、私たちっぽいよね」 「そうね、私たちみたいね…」 私たちは、しばらくその雪が舞っているのをただひたすら眺めていた。 「…そろそろ戻ろっか。つかさやみゆきが起きてきて、心配させちゃうと悪いし」 「うん」 そういって、こなたに自分のコートを貸して、中に入ろうと歩みを進めた。 あと1歩でドアに手が届くところで私は止まり、くるっとこなたに向きなおした。 「こなた」 「何?」 「大好きよ、こなた。メリークリスマス」 「私も大好きだヨ~。かがみも、メリークリスマス!」 (来年も再来年もずっと、一緒にクリスマスを迎えられると信じてるからね、こなた) ― Fin ― -[[かがみまもり>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/88.html]](続編)へ **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - GJ!! -- 名無しさん (2022-12-28 09:16:03) - 続編nice! -- 名無しさん (2014-08-16 19:56:39)

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