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「また明日」 彼の言葉に私は小さく頷き返すだけだった。 離れていく後ろ姿。ぼんやりと見ていると不意に振り返って笑顔と大きく手を振って。 気付かなければよかったな。決まり悪く小さく手を振り返す。 本当に楽しそうだった。ただ私が一緒にいるだけなのに。 完全に彼の姿は駅のホームへと消える。私はその反対方向へと足を踏み出した。 デートなんてそんな浮つくようなものじゃない。 たまたま休日に予定が入っていなくて、よく出かける場所に一緒に行かないかって誘われて。何となく一人で行くのが寂しいって思っちゃって頷いた。 天気だって微妙だった。秋と言うには肌寒くて冬と言うにはまだ暦的に早い時期。今にも降り出しそうな雨。 ちっとも見栄えのしない服装。今日は珍しく戦利品はなし。 比較的趣味が合う割に物色するような余裕というか空気じゃなくて、私はああこういうのはダメかもしれないと思った。 わかりやすく緊張しっぱなしの彼。男女の体格差は言うまでもなく、小走りに近い私にちっとも気付けない。 ほんの少しの疲労感。白い息。別に全部が嫌だったってことはないけど。 「ため息なんかついてどうしたのよ」 その声の主はいつも私のことをよく見ていて。呆れさせることも多かったけれど、どんな些細なことにも気にかけてくれた。 「かがみ」 振り返りながらゆっくりとその名前を口にする。驚きを悟られないように。 きつくつりあがったその目。怖い印象なんて出会って数日でなくなった。 「珍しいわね、こんなところで会うなんて」 「そうかもね。いつもは待ち合わせてだし、高校生のときは毎日一緒だったから」 少しだけあの楽しかった日々を懐かしむように。 大学生になった今は月に数回会える程度で、ほとんどが電話とメールでのやり取り。 「かがみ」 「なに、こなた」 「このあと、何か用事とかあるの?」 「ないわよ」 その言葉に自然と頬が緩む。 かがみ、心の中で呼んだ。こなた、と呼ばれた気がした。 にこっと微笑んでいる彼女がいる。私の心を何か素敵なもので満たしてくれる、魔法。 行こう。私は言う。どこへ、なんて決まってない。ただ一緒に歩くだけ。 かがみは頷いて微笑んで。歩きだした私の手を取った。 遅すぎず速すぎずちょうどいいテンポ。それはもちろん誰にでもある、自分だけの速度。 みゆきさんはおっとりしているけど身長のせいか、しっかりとした性格からか意外と歩くのは速い。 つかさはぽやぽやふわふわって感じで。ちょっとだけ危なっかしいようなゆったりとしたリズム。 凛とした表情に真っすぐ伸びた背筋。堂々と前を向いて歩く姿は頼もしくもある。 そのくせ、私の微妙に遅れがちな歩く速度に合わせてくれるかがみ。手を繋いでリードして、でも引っ張らない。 寒さに震え急ぎ足な人とか周りが目に入ってない学生とか。いろんな人が行き交うのにスムーズで本当に楽ちん。 「んっ?」 じっと横顔を見つめているとそれに気づいたのか顔が私に向く。 不思議そうに何もわかっていないような目が私を見つめる。いつの間にか足は止まってなぜだか顔が熱くなる。 何か言わなくちゃって焦って。でも横顔に見とれてたなんて事実、どうしたって自爆玉砕の道しか残ってない。 「かっ…みは、変わらないね」 なんでつっかえたんだろう。なんでこんなに心臓が速く動いてるんだろう。 「何が? あ、相変わらずツインテールにしてることか?」 「違うよ。って、そういえば今日はツインテなんだね。たまにポニテにしたり、まとめる位置低くしたりしてるってつかさに聞いたけど」 「まあね。運動するときは一つのほうが楽だし。あとは気分で変えてみたりとか」 「そうだよね。いつまでもツインテだとちょっと子どもっぽいし」 「あんたツンデレはツインテールが基本だ、とか言ってなかったか」 すらすらと言葉が出てくる。選択肢を選ぶ時間とかなく即座に反応がある。 無理に話さなきゃとか考えなくて良くて、たいていのことなら受け入れてくれるし逆にズバッと言ってくれる。 すごく自然体でいられるんだ、かがみの隣は。 「…かがみは相変わらず優しいねって思ったんだよ」 「えっ。こなた何か言った?」 小さく伝えた言葉は届かなくたっていい。ありがとうって心の中で呟いた。 窓の外を流れ続ける無数の線となった雨。殴りつけるような激しさはなく、ただ止む気配が一向にない。 家を出る際空模様を確かめなかった私はもちろん、普段保険として携帯する折り畳み傘が今日に限ってないかがみ。 ちょうど近くにあったファミレスに逃げ込みどうしようもなく外を眺めている私たち。 聞き覚えのないたぶん最近のJ-POPが店内にかかっていて雨の音は聞こえない。寒さか雨に耐えれなくて暖を求めた数組のカップル、学生。 居心地は悪くなかった。まだ止まないのか、と苦々しく思ってるくせにずっとここにいたいとも願う。 一応はと頼んだコーヒーを一口。味は別段感想を述べるほどでもないけど温かさが身にしみた。 「最近本当に寒くなったよね」 「そうね。マフラーしている人も少なくないし」 そう言ってかがみもコーヒーを口にした。コト、と置いたカップの隣にショートケーキ。 まだ手つかずのそれ。かがみらしいねって最初はからかったけど一向に手をつけなくて私も言うのはやめた。 終始言葉少なだった。その空気はのんびりしているときの穏やかで好きなひとときじゃなくて、ちょっとだけ沈んでいるような感じ。 けれどかがみが黙っている理由が全く思いつきはしない。 「あのさ」 降り続ける雨を見ながらかがみが口を開いた。 「こなたはその…えっと…」 でも言葉は続かず、外している視線と一緒で私に向き合うのを躊躇しているみたい。 「どうしたの。久しぶりに会ったんだし、遠慮せずに言ってよ」 「いや、そういうわけじゃ」 「私たち、親友でしょ。言いたいことは何でも言ってほしいし、私も何だって言うよ」 かがみとは何でも話せる間柄でいたい。たぶん、高校生活が半分を過ぎた頃に思ったこと。そして当時はそんな関係でいられたと思っている。 大学生になって毎日会うことはできなくなって。今、交わらないかがみの日常、無意味な想像は悪い方向に進むばかり。 彼氏ができたんじゃないかとか。私みたいな世話の焼ける友人に愛想をつかしたんじゃないかとか。 「ねえ、こなた」 「うん?」 「こなたは、好きな人がいるの…?」 「えっ」 予想外の質問にコーヒーが服にかかってしまった。 「ああもう、何やってるのよ」 身を乗り出してハンカチで染みが広がる前に拭いてくれる。 優しいね、じゃなくて。情けないし恥ずかしい。なんて子どもっぽくて、周りから見たら完全に姉妹みたいで。 ほんの少し、近づいたかがみの顔にどきりとしてしまったことが恥ずかしくてしょうがなかった。 「いないよ」 なんとか落ち着きを取り戻して先の質問に答える。 えっ、と小さく声を上げるかがみ。驚きを隠せない瞳とちょっぴり赤い頬。そこから導き出されるものはなに。 「その反応、ちょっと傷つくな」 「あ、いや。まだいないのって意味じゃなくて、いなかったことが意外だったというか…」 俯いてごにょごにょと何かを言っているかがみ。そういう分かりやすいところが可愛いんだけど、今はちゃんと説明してよ。 「えっと、怒らないで聞いてね、こなた」 「私が何に怒るって言うのさ」 「ほら、今もちょっと怒ってるじゃない」 違うよ。怒ってるんじゃない、焦ってるんだよ。予想もしない質問とこの先の展開が怖くて。 「最初に謝っておくわね、ごめん」 「だから、なにに」 「その、見ちゃったのよね。さっき、こなたが男の子と別れるとこ」 やはり赤い顔のかがみ。好きな人がいるかどうか聞いてきたこと。つい先刻、一人の男友達と私が一緒にいたこと。 私まで赤くなる場面らしい。だけどかがみは勘違いしてる。それを説明するのは、なんだか情けない。 「あー、ごめん、かがみ。違うよ。あれはただの男友達。かがみが想像しているような関係じゃないから」 あの彼はもしかしたら想ってたのかもしれないけれど、私自身はない。と思ったことまではいちいち言いたくない。 「そ、そうなんだ」 ほっと安堵の息をつくかがみ。なにさ、先を越されたとか失礼なこと思ってたのかね。 私が問い詰めかけたとき、かがみはようやくケーキへと手を伸ばした。 口に含んで、その心底嬉しそうな顔に私は何も言えなくなる。 「かがみは、本当に好きなんだね」 「な、なにがよ」 「ケーキ。というか甘いもの全般だね。あ、クリーム口についてるよ」 何に動揺したのか、フォークに掬ったそれは狙いを外してかがみの口の中に収まらず。 仕返しの意味も含めて私は手を伸ばして口についたクリームを拭う。本来ならナプキンなりで拭き取るそれを私は口の中に入れた。 「甘いね、かがみ」 素直に感想を述べるとボンっと発火音が聞こえるくらいに真っ赤になるかがみ。 さっきからかがみがおかしい。何がどう作用したらそんな化学反応が起きるのさ。 「かがみ、大丈夫? あ、もしかして雨に濡れて風邪とかひいてない?」 もう一度伸ばした手。今度はかがみの額へと。ちょっと熱いかもしれない。 「やっぱり。ごめんね、私が付き合わせたせいで。傘は近くのコンビニで買ってくるとして、早く帰ろう」 「待って」 立ち上がろうとした私にかがみの止めが入った。あ、ケーキ残しちゃ悪いもんね。 「違うの。あのさ、なんでも聞いてくれるって言ったわよねこなた」 「あ、うん。かがみと私の間柄なんだから、遠慮とかなしだよ」 「そうよね、私も。だから、言わせてほしい。聞いてほしいの、こなた」 真正面、真剣な眼差しで見つめてくるかがみ。私の体は金縛りのごとく動かない。 それでも動いている、耳に届く大きな鼓動。互いに朱に染まった頬、じわり熱を帯びた私たち。 そして頑なだった唇を開きゆっくりとかがみは、言った── **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - こなた鈍感やねえ〜w -- 名無しさん (2011-01-08 22:46:14) - かがみが何を言ったか・・・読み手は各自脳内補填ですか? &br()オイラは2人は結ばれハッピーエンドに補填済み。 &br() -- kk (2010-11-08 23:42:29) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3(12)
「また明日」 彼の言葉に私は小さく頷き返すだけだった。 離れていく後ろ姿。ぼんやりと見ていると不意に振り返って笑顔と大きく手を振って。 気付かなければよかったな。決まり悪く小さく手を振り返す。 本当に楽しそうだった。ただ私が一緒にいるだけなのに。 完全に彼の姿は駅のホームへと消える。私はその反対方向へと足を踏み出した。 デートなんてそんな浮つくようなものじゃない。 たまたま休日に予定が入っていなくて、よく出かける場所に一緒に行かないかって誘われて。何となく一人で行くのが寂しいって思っちゃって頷いた。 天気だって微妙だった。秋と言うには肌寒くて冬と言うにはまだ暦的に早い時期。今にも降り出しそうな雨。 ちっとも見栄えのしない服装。今日は珍しく戦利品はなし。 比較的趣味が合う割に物色するような余裕というか空気じゃなくて、私はああこういうのはダメかもしれないと思った。 わかりやすく緊張しっぱなしの彼。男女の体格差は言うまでもなく、小走りに近い私にちっとも気付けない。 ほんの少しの疲労感。白い息。別に全部が嫌だったってことはないけど。 「ため息なんかついてどうしたのよ」 その声の主はいつも私のことをよく見ていて。呆れさせることも多かったけれど、どんな些細なことにも気にかけてくれた。 「かがみ」 振り返りながらゆっくりとその名前を口にする。驚きを悟られないように。 きつくつりあがったその目。怖い印象なんて出会って数日でなくなった。 「珍しいわね、こんなところで会うなんて」 「そうかもね。いつもは待ち合わせてだし、高校生のときは毎日一緒だったから」 少しだけあの楽しかった日々を懐かしむように。 大学生になった今は月に数回会える程度で、ほとんどが電話とメールでのやり取り。 「かがみ」 「なに、こなた」 「このあと、何か用事とかあるの?」 「ないわよ」 その言葉に自然と頬が緩む。 かがみ、心の中で呼んだ。こなた、と呼ばれた気がした。 にこっと微笑んでいる彼女がいる。私の心を何か素敵なもので満たしてくれる、魔法。 行こう。私は言う。どこへ、なんて決まってない。ただ一緒に歩くだけ。 かがみは頷いて微笑んで。歩きだした私の手を取った。 遅すぎず速すぎずちょうどいいテンポ。それはもちろん誰にでもある、自分だけの速度。 みゆきさんはおっとりしているけど身長のせいか、しっかりとした性格からか意外と歩くのは速い。 つかさはぽやぽやふわふわって感じで。ちょっとだけ危なっかしいようなゆったりとしたリズム。 凛とした表情に真っすぐ伸びた背筋。堂々と前を向いて歩く姿は頼もしくもある。 そのくせ、私の微妙に遅れがちな歩く速度に合わせてくれるかがみ。手を繋いでリードして、でも引っ張らない。 寒さに震え急ぎ足な人とか周りが目に入ってない学生とか。いろんな人が行き交うのにスムーズで本当に楽ちん。 「んっ?」 じっと横顔を見つめているとそれに気づいたのか顔が私に向く。 不思議そうに何もわかっていないような目が私を見つめる。いつの間にか足は止まってなぜだか顔が熱くなる。 何か言わなくちゃって焦って。でも横顔に見とれてたなんて事実、どうしたって自爆玉砕の道しか残ってない。 「かっ…みは、変わらないね」 なんでつっかえたんだろう。なんでこんなに心臓が速く動いてるんだろう。 「何が? あ、相変わらずツインテールにしてることか?」 「違うよ。って、そういえば今日はツインテなんだね。たまにポニテにしたり、まとめる位置低くしたりしてるってつかさに聞いたけど」 「まあね。運動するときは一つのほうが楽だし。あとは気分で変えてみたりとか」 「そうだよね。いつまでもツインテだとちょっと子どもっぽいし」 「あんたツンデレはツインテールが基本だ、とか言ってなかったか」 すらすらと言葉が出てくる。選択肢を選ぶ時間とかなく即座に反応がある。 無理に話さなきゃとか考えなくて良くて、たいていのことなら受け入れてくれるし逆にズバッと言ってくれる。 すごく自然体でいられるんだ、かがみの隣は。 「…かがみは相変わらず優しいねって思ったんだよ」 「えっ。こなた何か言った?」 小さく伝えた言葉は届かなくたっていい。ありがとうって心の中で呟いた。 窓の外を流れ続ける無数の線となった雨。殴りつけるような激しさはなく、ただ止む気配が一向にない。 家を出る際空模様を確かめなかった私はもちろん、普段保険として携帯する折り畳み傘が今日に限ってないかがみ。 ちょうど近くにあったファミレスに逃げ込みどうしようもなく外を眺めている私たち。 聞き覚えのないたぶん最近のJ-POPが店内にかかっていて雨の音は聞こえない。寒さか雨に耐えれなくて暖を求めた数組のカップル、学生。 居心地は悪くなかった。まだ止まないのか、と苦々しく思ってるくせにずっとここにいたいとも願う。 一応はと頼んだコーヒーを一口。味は別段感想を述べるほどでもないけど温かさが身にしみた。 「最近本当に寒くなったよね」 「そうね。マフラーしている人も少なくないし」 そう言ってかがみもコーヒーを口にした。コト、と置いたカップの隣にショートケーキ。 まだ手つかずのそれ。かがみらしいねって最初はからかったけど一向に手をつけなくて私も言うのはやめた。 終始言葉少なだった。その空気はのんびりしているときの穏やかで好きなひとときじゃなくて、ちょっとだけ沈んでいるような感じ。 けれどかがみが黙っている理由が全く思いつきはしない。 「あのさ」 降り続ける雨を見ながらかがみが口を開いた。 「こなたはその…えっと…」 でも言葉は続かず、外している視線と一緒で私に向き合うのを躊躇しているみたい。 「どうしたの。久しぶりに会ったんだし、遠慮せずに言ってよ」 「いや、そういうわけじゃ」 「私たち、親友でしょ。言いたいことは何でも言ってほしいし、私も何だって言うよ」 かがみとは何でも話せる間柄でいたい。たぶん、高校生活が半分を過ぎた頃に思ったこと。そして当時はそんな関係でいられたと思っている。 大学生になって毎日会うことはできなくなって。今、交わらないかがみの日常、無意味な想像は悪い方向に進むばかり。 彼氏ができたんじゃないかとか。私みたいな世話の焼ける友人に愛想をつかしたんじゃないかとか。 「ねえ、こなた」 「うん?」 「こなたは、好きな人がいるの…?」 「えっ」 予想外の質問にコーヒーが服にかかってしまった。 「ああもう、何やってるのよ」 身を乗り出してハンカチで染みが広がる前に拭いてくれる。 優しいね、じゃなくて。情けないし恥ずかしい。なんて子どもっぽくて、周りから見たら完全に姉妹みたいで。 ほんの少し、近づいたかがみの顔にどきりとしてしまったことが恥ずかしくてしょうがなかった。 「いないよ」 なんとか落ち着きを取り戻して先の質問に答える。 えっ、と小さく声を上げるかがみ。驚きを隠せない瞳とちょっぴり赤い頬。そこから導き出されるものはなに。 「その反応、ちょっと傷つくな」 「あ、いや。まだいないのって意味じゃなくて、いなかったことが意外だったというか…」 俯いてごにょごにょと何かを言っているかがみ。そういう分かりやすいところが可愛いんだけど、今はちゃんと説明してよ。 「えっと、怒らないで聞いてね、こなた」 「私が何に怒るって言うのさ」 「ほら、今もちょっと怒ってるじゃない」 違うよ。怒ってるんじゃない、焦ってるんだよ。予想もしない質問とこの先の展開が怖くて。 「最初に謝っておくわね、ごめん」 「だから、なにに」 「その、見ちゃったのよね。さっき、こなたが男の子と別れるとこ」 やはり赤い顔のかがみ。好きな人がいるかどうか聞いてきたこと。つい先刻、一人の男友達と私が一緒にいたこと。 私まで赤くなる場面らしい。だけどかがみは勘違いしてる。それを説明するのは、なんだか情けない。 「あー、ごめん、かがみ。違うよ。あれはただの男友達。かがみが想像しているような関係じゃないから」 あの彼はもしかしたら想ってたのかもしれないけれど、私自身はない。と思ったことまではいちいち言いたくない。 「そ、そうなんだ」 ほっと安堵の息をつくかがみ。なにさ、先を越されたとか失礼なこと思ってたのかね。 私が問い詰めかけたとき、かがみはようやくケーキへと手を伸ばした。 口に含んで、その心底嬉しそうな顔に私は何も言えなくなる。 「かがみは、本当に好きなんだね」 「な、なにがよ」 「ケーキ。というか甘いもの全般だね。あ、クリーム口についてるよ」 何に動揺したのか、フォークに掬ったそれは狙いを外してかがみの口の中に収まらず。 仕返しの意味も含めて私は手を伸ばして口についたクリームを拭う。本来ならナプキンなりで拭き取るそれを私は口の中に入れた。 「甘いね、かがみ」 素直に感想を述べるとボンっと発火音が聞こえるくらいに真っ赤になるかがみ。 さっきからかがみがおかしい。何がどう作用したらそんな化学反応が起きるのさ。 「かがみ、大丈夫? あ、もしかして雨に濡れて風邪とかひいてない?」 もう一度伸ばした手。今度はかがみの額へと。ちょっと熱いかもしれない。 「やっぱり。ごめんね、私が付き合わせたせいで。傘は近くのコンビニで買ってくるとして、早く帰ろう」 「待って」 立ち上がろうとした私にかがみの止めが入った。あ、ケーキ残しちゃ悪いもんね。 「違うの。あのさ、なんでも聞いてくれるって言ったわよねこなた」 「あ、うん。かがみと私の間柄なんだから、遠慮とかなしだよ」 「そうよね、私も。だから、言わせてほしい。聞いてほしいの、こなた」 真正面、真剣な眼差しで見つめてくるかがみ。私の体は金縛りのごとく動かない。 それでも動いている、耳に届く大きな鼓動。互いに朱に染まった頬、じわり熱を帯びた私たち。 そして頑なだった唇を開きゆっくりとかがみは、言った── **コメントフォーム #comment(below,size=50,nsize=20,vsize=3) - こなた鈍感やねえ〜w -- 名無しさん (2011-01-08 22:46:14) - かがみが何を言ったか・・・読み手は各自脳内補填ですか? &br()オイラは2人は結ばれハッピーエンドに補填済み。 &br() -- kk (2010-11-08 23:42:29) **投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください) #vote3(14)

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