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「ある夏休みの日常の風景」(2014/07/25 (金) 00:46:45) の最新版変更点
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ある夏休みの日常の風景
今、まさに夏真っ盛りだった。もっとも、家を離れて安いアパートに引っ越したので、私の部屋にはエアコン等はなく、暑いことこの上ない。あ、でもかがみの部屋にはあったような……そういえば、つかさの部屋にも……はぁ、ならばみゆきの部屋には絶対あるはずだよね?だってみゆきさんだもん。
かがみがいたら、心の中では頷いていてもとりあえず、“一体どんな理屈よ!”と突っ込んでくれるに違いない、きっとそうに違いない。
私―泉こなたは、とりあえず、夏で夏真っ盛りでその上夏休みという学生には時間としてはあまり余った時間を力の限り謳歌しているはずだった。
まぁ、その、現実は、三角巾にエプロンをして、はたき掛けやら箒やらもって部屋の掃除にいそしんでいるわけだけどさ。エアコンはないけど、風通しのいい部屋を選んでたのが幸いしてか、扇風機でも十二分に涼しい。
どうして、私がこうしてせっせと部屋の掃除に勤しんでいるかといえば理由なんて一つしかない。つかさが遊ぼうといえば、つかさの家にいくし、みゆきさんが遊ぼうといえば、つかさの家で集まるわけで、この部屋を訪れる人はたった一人だけ。私の嫁!……でも、かがみにはタキシードが似合いそうだから、私が嫁かなぁ?と、そんな風に気持ちがすぐに逸れてしまう、今日のお昼過ぎにかがみが来るので一生懸命、昨日から少しずつ色々と準備をしているわけなのだけど、いや、まぁ、ハルヒを見て、またか……などど思ったりしているあたりそこそこにしか進んでいないのが現実って奴さぁ。
最後にかがみに会えたのは、もう二週間ほど前になる。夏休み開始よりちょっと前に二人して都合があったので軽くデートをしたのだよ!誕生日プレゼントに私がヘマした指輪の事もあったし、楽しかったなぁ、かがみに夏休みの予定を聞くまでは。
もちろん、私のオタク度って奴はそうそう簡単に直るわけがない。もちろん今年も夏コミに行く予定だったのだけどね~、今年は行かないかもしれない。
かがみが夏休みを私と謳歌できるのは、その辺りしかないからなんだけどね。夏コミにいくのとかがみと一緒にいるのとを天秤にはかけられないからさ?
だって天秤にかけたところで傾くのはかがみの方に何だから意味ないでしょ?
う、何か自分で考えておいてアレだけど、すごい恥ずかしい事考えてるなぁ、私。
「夕飯の準備には万全だし、ハルヒはまたか、だったし……掃除も終わったしどうしたものかな?」
恥ずかしさを少しでも打ち消すための独り言。非常に空しい……思わずうなだれてしまうヨ。
正直言うとあまり心中穏やかな気分じゃない。かがみから、“ごめん、こなた。やっぱりいけそうにないかも”と、電話がなるのではないかと不安だったりする。
本当は会うのは三日ほど前のはずだったんだよね。でも、かがみのレポートの進み具合が芳しくなくて結局その日は無理になって、今日までには必ず遊べるくらいに仕上げるからと、非常に強い意気込みをつげられたので、私も一応は気合を入れて準備をしている。夕飯の下ごしらえだって完璧なのだ。後は調理するだけだし、ワインもいいのを買ってあるし、ワインばっかりじゃなんだから色々用意してある。
さすがにお神酒を口にしているだけあるのか、弱い割りにかがみは日本酒にはうるさいからその辺はつかさにこそっと聞いて調査済み。
まぁ、そんなに飲めないから小瓶を一つ用意しただけなんだけどさ。
しかし、かがみがやってきたら、ちょっと試してみたい事がある。ちょっとした悪戯に近いけど、言ってみたい。
“いらっしゃい、かがみん!さぁ、ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?”
言ってみたいのだけど、すごい呆れた目を向けられそうなきもする。真っ赤になって上ずった声で突っ込んでくれるとすごいうれしいんだけど、はてさて、どうなるかな?
ふと、時計に目が言ってしまうのはやっぱり待ち遠しいからだろう。胸がそわそわして、心臓が高鳴って、少しだけ落胆の気持ち。自分に尻尾があったらきっと、千切れんばかりに振られていながら、時折不安で止まってしまう、そんな状態に間違いないと思うヨ。恥ずかしいけど、それくらいかがみに会いたいわけでして。
まぁ、まだかがみが来る予定の時間にはちょっと早い。アニメでもみて時間をつぶすべきか、ネトゲでもやっているべきか。
どっちも集中できそうにない気がする。ため息をつきたくなるくらい待ち遠しいから、胸がそわそわして心臓がいつもより早く動いてる。
昔、かがみの事を兎なんて言って、私は自分のことを狐なんて言ったけど、これじゃあ、どっちが兎かわからない。それくらい、かがみに会えない時間はふと寂しくなる。
ずっと寂しいわけじゃないヨ?大学の友人だっているし、つかさやみゆきさんと会うことは私のほうがかがみより多いくらいだしね。
でも、その、はっきり言うと……それとかがみと会うっていうのはやっぱり少し違う。だから、たまにふと寂しいと思ってしまう。
そんな事を考えていると駄目だ、頬が熱くなってくるのがよくわかる。赤面するのはかがみの専売特許で十分なのになぁ。
で、また私の目は時計に向けられる。まだ、あれから十分も立ってなかったので、さらに胸がそわそわして、心臓が緩やかに高鳴りの速度を上げていき、軽い落胆もやっぱりついてくる。要するに、私はいても立ってもいられない子どもみたいなもんだねぇ。ちょっとへこむかも。
よし!と一人意気込んでこのそわそわや高鳴りは、かがみが来たときに思いっきりからかうエネルギーにしようと決めてしまう。
「ん~、はやくかがみ来ないかなぁ」
口に出してしまう辺りもう、末期症状な気がしなくもないネ。私ってこんな性格だったっけ……?
立っていても仕方がないので、私はベッドに横になってクッションを抱きしめる。なんか私らしくないなぁ、とため息が漏れてしまうし、この熱いのに何でクッションなんか抱きしめるのか正気を疑ってしまいそうだヨ。
しばらくすると、今度は昨日から気合を入れすぎていたのか、瞼が重くなってきていた。かがみには合鍵を渡してあるから万が一寝ちゃっても大丈夫ではあるけど、寝ちゃったらあの台詞を芝居がかった口調で言えないじゃん?
でも、なんだかまぶたの重さには逆らえない。そんな状態なのに私の目はまた、時計を見つめる。時間がたってないのは当たり前だが、そわそわと高鳴りに混じって相変わらず落胆の気持ちが入り混じる。
だから、もうまぶたの重さに逆らわない。少し眠れば……かがみがやってくる時間なんてすぐにやってくるのだから。
◆
眠たい。正直、体が重くてこなたの部屋のあるアパートへ行くのが億劫だったりする。もっとも、それは身体的な問題で、気持ちのほうではこなたに会いたいというほうが強かったのでこうして歩いているのだけど、頭の中はこなたで一杯というより、ついさっきまで解いていた事例問題やレポートの事がうろうろしている。
流石に無理はするものじゃないと身にしみて思った。先輩に説き方を懇願し、対価として散々こなたとの事についてから変われる羽目になったが、その先輩のおかげでなんとか今こなたの部屋へと歩いていられるというのもある。
こなたに断りの電話を入れてから三日。睡眠時間はたったの三時間だから、顔色は悪いし目の下にクマはあるし、こんなボロボロな状態をこなたに見せたくはないのだけど、それだけがんばった分時間に余裕ができた。
三~四日はこなたの家に泊まっても残りのレポートを仕上げるには時間的余裕ができたのだ。だから、ボストンバックに着替えをつめてきたのだけど。
“柊ぃ~?勝負下着は入れておかなくていいのかなぁ~?”という先輩のからかいの言葉に思わずのけぞって強かに頭をぶつけた辺り、私はこなたにもこの先輩にも勝てそうにないなぁとため息混じりに思った。柊ぃ~と舌ったらずな呼び方する親友の事を思い出すと先輩も憎めないなぁと思ってしまう。
そういえば、随分と日下部と連絡とってないわね。今度電話でもかけてみようかな?と思ったくらいだしね。
バスを降りればすぐのこなたの部屋がすごく遠く感じる。足が鉛のように重いし、まぶたは気を抜くと道端でも閉じてしまいそうだし、今日はこなたの部屋に行ってもただ寝るだけになりそうなきがするわね。
それでも、重い足を何とか動かして、やっとの事でこなたの部屋に着いた。呼び鈴を押しても全く変化がないので、合鍵で中に入る。
どうせ、ネトゲか、ゲームか、アニメに没頭しているんだろうなぁと思いつつも、ため息すらでなかった。いや、ため息を吐くのもちょっと億劫だったのだ。
こなたの部屋は、アパートにしては広く、家賃の割りに環境はいい。バスもトイレも共同ではないし、キッチンとリビングに小さい寝室があるくらい。
マンションならまだしも、家賃もそこそこでこれだけの設備が揃っているのだから、間違いなく大当たりの物件だと思う。
リビングを見渡してもこなたの姿はなかった。いや、こなたがいたならすぐによってきてからかってくるだろうから、寝室においてあるパソコンでネトゲに熱中してるのだろうか。
ここで、もしや夏休みの宿題をやっているのではないかと思わないのは、こなたはもう終わっているからだ。半分は大学の友人が早めにやっていたのを写したらしいのだが、もう半分は自力でやったらしい。
夏休みはたっぷり、夏休みらしい事を(あくまでもこなたの定義でだけど)私と一緒にしたかった(つかさやみゆきも一部入っていたけどわりと今思えばあからさま言葉だったな)のでがんばったらしいのだけど、私といえば夏休みの前半は夏期講習、それから大量ではないにしろ一つ一つ、片付けていくのに時間のかかる課題の為、こなたの努力も空しくほとんど会えなかったわけなのよね。
寝室のほうに入ると窓があけてあり、前にあったときにあげた風鈴が窓辺で鳴っている。扇風機も回しっぱなしで、当のこなたはクッションを抱いてベッドの上で丸くなって眠っていた。
私は、ボストンバックを置いて、そんな無防備なこなたに忍び寄る。別に酷い事をしようと思っているわけじゃないのよ?こっちが眠いのに、そっちは寝ていていいご身分だとか思ってはいないんだから。
ただ、丸まって寝息を立てていたこなたがとても……その、可愛らしくて大学生にはとても見えないというのはほめ言葉にならないわね。
でも、可愛らしいとは本当に思った。
それから私のとった行動は自分でもちょっと驚きだった。ただ、たぶん十人いたら十人やっただろうなとは思う。
無防備に丸まって眠っているこなたの横顔を見てから、ほっぺたを軽く指でぷにぷにとつついていた。さっきまでの疲労感はどこへやら、それが楽しくて仕方がなかった。
「ん……かがみ……」
軽く目を開けて、私のほうに手を伸ばしてくる。おきたのかと思ったけど手をつかんだ瞬間、また目を閉じて寝息を立て始めてしまった。
起こそうかと思ったのだけど、こんなにも安心した寝顔を見て起こすのも無粋よね?と思い、私は手をつないだまま、座ってベッドに体を少し乗せる。
こなたの顔が目の前に来るように、そのままキスの一つでもしようと思ったけど、それはこなたがおきてからでいい気がした。
私も目を閉じる。こなたの寝息を聞いていると、気持ちが安らいで瞼が鉛のように重くて、それなのにとても心地よかった。
ここが私の居場所なのよね、きっと。そんな事を思いながら目を閉じる。
何もしていなくても、こなたの手は暖かくて、心地がよくて、それだけでなんだか物凄く幸せな夏休みを味わえた様な気がした。
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- いい作品ですね~☆ &br()GJ! -- 鏡ちゃん (2009-09-23 19:17:58)
- たいしたことが起きているわけでもないのに、繰り広げられる甘々な空間にあてられましたw GJ! -- 名無しさん (2009-08-02 23:02:07)
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ある夏休みの日常の風景
今、まさに夏真っ盛りだった。もっとも、家を離れて安いアパートに引っ越したので、私の部屋にはエアコン等はなく、暑いことこの上ない。あ、でもかがみの部屋にはあったような……そういえば、つかさの部屋にも……はぁ、ならばみゆきの部屋には絶対あるはずだよね?だってみゆきさんだもん。
かがみがいたら、心の中では頷いていてもとりあえず、“一体どんな理屈よ!”と突っ込んでくれるに違いない、きっとそうに違いない。
私―泉こなたは、とりあえず、夏で夏真っ盛りでその上夏休みという学生には時間としてはあまり余った時間を力の限り謳歌しているはずだった。
まぁ、その、現実は、三角巾にエプロンをして、はたき掛けやら箒やらもって部屋の掃除にいそしんでいるわけだけどさ。エアコンはないけど、風通しのいい部屋を選んでたのが幸いしてか、扇風機でも十二分に涼しい。
どうして、私がこうしてせっせと部屋の掃除に勤しんでいるかといえば理由なんて一つしかない。つかさが遊ぼうといえば、つかさの家にいくし、みゆきさんが遊ぼうといえば、つかさの家で集まるわけで、この部屋を訪れる人はたった一人だけ。私の嫁!……でも、かがみにはタキシードが似合いそうだから、私が嫁かなぁ?と、そんな風に気持ちがすぐに逸れてしまう、今日のお昼過ぎにかがみが来るので一生懸命、昨日から少しずつ色々と準備をしているわけなのだけど、いや、まぁ、ハルヒを見て、またか……などど思ったりしているあたりそこそこにしか進んでいないのが現実って奴さぁ。
最後にかがみに会えたのは、もう二週間ほど前になる。夏休み開始よりちょっと前に二人して都合があったので軽くデートをしたのだよ!誕生日プレゼントに私がヘマした指輪の事もあったし、楽しかったなぁ、かがみに夏休みの予定を聞くまでは。
もちろん、私のオタク度って奴はそうそう簡単に直るわけがない。もちろん今年も夏コミに行く予定だったのだけどね~、今年は行かないかもしれない。
かがみが夏休みを私と謳歌できるのは、その辺りしかないからなんだけどね。夏コミにいくのとかがみと一緒にいるのとを天秤にはかけられないからさ?
だって天秤にかけたところで傾くのはかがみの方に何だから意味ないでしょ?
う、何か自分で考えておいてアレだけど、すごい恥ずかしい事考えてるなぁ、私。
「夕飯の準備には万全だし、ハルヒはまたか、だったし……掃除も終わったしどうしたものかな?」
恥ずかしさを少しでも打ち消すための独り言。非常に空しい……思わずうなだれてしまうヨ。
正直言うとあまり心中穏やかな気分じゃない。かがみから、“ごめん、こなた。やっぱりいけそうにないかも”と、電話がなるのではないかと不安だったりする。
本当は会うのは三日ほど前のはずだったんだよね。でも、かがみのレポートの進み具合が芳しくなくて結局その日は無理になって、今日までには必ず遊べるくらいに仕上げるからと、非常に強い意気込みをつげられたので、私も一応は気合を入れて準備をしている。夕飯の下ごしらえだって完璧なのだ。後は調理するだけだし、ワインもいいのを買ってあるし、ワインばっかりじゃなんだから色々用意してある。
さすがにお神酒を口にしているだけあるのか、弱い割りにかがみは日本酒にはうるさいからその辺はつかさにこそっと聞いて調査済み。
まぁ、そんなに飲めないから小瓶を一つ用意しただけなんだけどさ。
しかし、かがみがやってきたら、ちょっと試してみたい事がある。ちょっとした悪戯に近いけど、言ってみたい。
“いらっしゃい、かがみん!さぁ、ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?”
言ってみたいのだけど、すごい呆れた目を向けられそうなきもする。真っ赤になって上ずった声で突っ込んでくれるとすごいうれしいんだけど、はてさて、どうなるかな?
ふと、時計に目が言ってしまうのはやっぱり待ち遠しいからだろう。胸がそわそわして、心臓が高鳴って、少しだけ落胆の気持ち。自分に尻尾があったらきっと、千切れんばかりに振られていながら、時折不安で止まってしまう、そんな状態に間違いないと思うヨ。恥ずかしいけど、それくらいかがみに会いたいわけでして。
まぁ、まだかがみが来る予定の時間にはちょっと早い。アニメでもみて時間をつぶすべきか、ネトゲでもやっているべきか。
どっちも集中できそうにない気がする。ため息をつきたくなるくらい待ち遠しいから、胸がそわそわして心臓がいつもより早く動いてる。
昔、かがみの事を兎なんて言って、私は自分のことを狐なんて言ったけど、これじゃあ、どっちが兎かわからない。それくらい、かがみに会えない時間はふと寂しくなる。
ずっと寂しいわけじゃないヨ?大学の友人だっているし、つかさやみゆきさんと会うことは私のほうがかがみより多いくらいだしね。
でも、その、はっきり言うと……それとかがみと会うっていうのはやっぱり少し違う。だから、たまにふと寂しいと思ってしまう。
そんな事を考えていると駄目だ、頬が熱くなってくるのがよくわかる。赤面するのはかがみの専売特許で十分なのになぁ。
で、また私の目は時計に向けられる。まだ、あれから十分も立ってなかったので、さらに胸がそわそわして、心臓が緩やかに高鳴りの速度を上げていき、軽い落胆もやっぱりついてくる。要するに、私はいても立ってもいられない子どもみたいなもんだねぇ。ちょっとへこむかも。
よし!と一人意気込んでこのそわそわや高鳴りは、かがみが来たときに思いっきりからかうエネルギーにしようと決めてしまう。
「ん~、はやくかがみ来ないかなぁ」
口に出してしまう辺りもう、末期症状な気がしなくもないネ。私ってこんな性格だったっけ……?
立っていても仕方がないので、私はベッドに横になってクッションを抱きしめる。なんか私らしくないなぁ、とため息が漏れてしまうし、この熱いのに何でクッションなんか抱きしめるのか正気を疑ってしまいそうだヨ。
しばらくすると、今度は昨日から気合を入れすぎていたのか、瞼が重くなってきていた。かがみには合鍵を渡してあるから万が一寝ちゃっても大丈夫ではあるけど、寝ちゃったらあの台詞を芝居がかった口調で言えないじゃん?
でも、なんだかまぶたの重さには逆らえない。そんな状態なのに私の目はまた、時計を見つめる。時間がたってないのは当たり前だが、そわそわと高鳴りに混じって相変わらず落胆の気持ちが入り混じる。
だから、もうまぶたの重さに逆らわない。少し眠れば……かがみがやってくる時間なんてすぐにやってくるのだから。
◆
眠たい。正直、体が重くてこなたの部屋のあるアパートへ行くのが億劫だったりする。もっとも、それは身体的な問題で、気持ちのほうではこなたに会いたいというほうが強かったのでこうして歩いているのだけど、頭の中はこなたで一杯というより、ついさっきまで解いていた事例問題やレポートの事がうろうろしている。
流石に無理はするものじゃないと身にしみて思った。先輩に説き方を懇願し、対価として散々こなたとの事についてから変われる羽目になったが、その先輩のおかげでなんとか今こなたの部屋へと歩いていられるというのもある。
こなたに断りの電話を入れてから三日。睡眠時間はたったの三時間だから、顔色は悪いし目の下にクマはあるし、こんなボロボロな状態をこなたに見せたくはないのだけど、それだけがんばった分時間に余裕ができた。
三~四日はこなたの家に泊まっても残りのレポートを仕上げるには時間的余裕ができたのだ。だから、ボストンバックに着替えをつめてきたのだけど。
“柊ぃ~?勝負下着は入れておかなくていいのかなぁ~?”という先輩のからかいの言葉に思わずのけぞって強かに頭をぶつけた辺り、私はこなたにもこの先輩にも勝てそうにないなぁとため息混じりに思った。柊ぃ~と舌ったらずな呼び方する親友の事を思い出すと先輩も憎めないなぁと思ってしまう。
そういえば、随分と日下部と連絡とってないわね。今度電話でもかけてみようかな?と思ったくらいだしね。
バスを降りればすぐのこなたの部屋がすごく遠く感じる。足が鉛のように重いし、まぶたは気を抜くと道端でも閉じてしまいそうだし、今日はこなたの部屋に行ってもただ寝るだけになりそうなきがするわね。
それでも、重い足を何とか動かして、やっとの事でこなたの部屋に着いた。呼び鈴を押しても全く変化がないので、合鍵で中に入る。
どうせ、ネトゲか、ゲームか、アニメに没頭しているんだろうなぁと思いつつも、ため息すらでなかった。いや、ため息を吐くのもちょっと億劫だったのだ。
こなたの部屋は、アパートにしては広く、家賃の割りに環境はいい。バスもトイレも共同ではないし、キッチンとリビングに小さい寝室があるくらい。
マンションならまだしも、家賃もそこそこでこれだけの設備が揃っているのだから、間違いなく大当たりの物件だと思う。
リビングを見渡してもこなたの姿はなかった。いや、こなたがいたならすぐによってきてからかってくるだろうから、寝室においてあるパソコンでネトゲに熱中してるのだろうか。
ここで、もしや夏休みの宿題をやっているのではないかと思わないのは、こなたはもう終わっているからだ。半分は大学の友人が早めにやっていたのを写したらしいのだが、もう半分は自力でやったらしい。
夏休みはたっぷり、夏休みらしい事を(あくまでもこなたの定義でだけど)私と一緒にしたかった(つかさやみゆきも一部入っていたけどわりと今思えばあからさま言葉だったな)のでがんばったらしいのだけど、私といえば夏休みの前半は夏期講習、それから大量ではないにしろ一つ一つ、片付けていくのに時間のかかる課題の為、こなたの努力も空しくほとんど会えなかったわけなのよね。
寝室のほうに入ると窓があけてあり、前にあったときにあげた風鈴が窓辺で鳴っている。扇風機も回しっぱなしで、当のこなたはクッションを抱いてベッドの上で丸くなって眠っていた。
私は、ボストンバックを置いて、そんな無防備なこなたに忍び寄る。別に酷い事をしようと思っているわけじゃないのよ?こっちが眠いのに、そっちは寝ていていいご身分だとか思ってはいないんだから。
ただ、丸まって寝息を立てていたこなたがとても……その、可愛らしくて大学生にはとても見えないというのはほめ言葉にならないわね。
でも、可愛らしいとは本当に思った。
それから私のとった行動は自分でもちょっと驚きだった。ただ、たぶん十人いたら十人やっただろうなとは思う。
無防備に丸まって眠っているこなたの横顔を見てから、ほっぺたを軽く指でぷにぷにとつついていた。さっきまでの疲労感はどこへやら、それが楽しくて仕方がなかった。
「ん……かがみ……」
軽く目を開けて、私のほうに手を伸ばしてくる。おきたのかと思ったけど手をつかんだ瞬間、また目を閉じて寝息を立て始めてしまった。
起こそうかと思ったのだけど、こんなにも安心した寝顔を見て起こすのも無粋よね?と思い、私は手をつないだまま、座ってベッドに体を少し乗せる。
こなたの顔が目の前に来るように、そのままキスの一つでもしようと思ったけど、それはこなたがおきてからでいい気がした。
私も目を閉じる。こなたの寝息を聞いていると、気持ちが安らいで瞼が鉛のように重くて、それなのにとても心地よかった。
ここが私の居場所なのよね、きっと。そんな事を思いながら目を閉じる。
何もしていなくても、こなたの手は暖かくて、心地がよくて、それだけでなんだか物凄く幸せな夏休みを味わえた様な気がした。
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- 『ここが私の居場所なのよね、きっと』になんか知らんけど感動した。GJ &br() -- kk (2010-02-11 23:17:15)
- いい作品ですね~☆ &br()GJ! -- 鏡ちゃん (2009-09-23 19:17:58)
- たいしたことが起きているわけでもないのに、繰り広げられる甘々な空間にあてられましたw GJ! -- 名無しさん (2009-08-02 23:02:07)
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