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後日談的な何か (前編)」(2009/01/21 (水) 08:05:04) の最新版変更点

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&br() 朝目覚めると、まだ慣れない新しい自分の部屋。 かがみは泉家の一員として、その新しい部屋に住んでいる。 着替えて、髪を結んで、準備もばっちり。 新しい朝を迎えるからには、最初からきちんとしなきゃね。 そう思いながら部屋を出て、少し緊張しながら居間に向かえばそこには・・・ 誰もいなかった。 「って、まだ寝てるの!?」 思わずこけそうになりながら階段を上り、こなたー!と大声を出しながらこなたの部屋のドアをノックすると、ゾンビみたいな顔したこなたが無防備に寝巻き姿のまま出てきた。 「・・・いやあ、かがみんや、朝早いねえ」 「早くねえよ!あんたが遅すぎんの!遅刻しちゃうわよ!大体、他の人は?!」 「お父さんは昨日徹夜だったんじゃないかなあ。ゆーちゃんはなんか用事あるとかで早く出たよ」 「じゃあ、あんたは何で遅いのよ」 「いや~、ネトゲが思った以上に盛り上がって盛り上がって、ついつい眠る時を失うのは、デフォだよ、デフォ」 「そんなデフォはお前だけだ!」  なんて生活リズムがバラバラな家族なのか、そうじろうさんは小説家だから仕方ないとは言え、もう少し考えて欲しいものだ。  朝ご飯とか、一体今までどうしてたんだろ? 「とにかく、朝ごはんくらいは作ってあげるから、さっさと着替えなさい!」 「は~い」  寝ぼけ眼で部屋に戻っていくこなた。  それを見送るかがみだったが、 ふと気になってこなたが入っていった部屋をノックしてみると、反応がない。仕方なくあけると、そこにはベッドで眠るこなたの姿があった。すやすやと完全に熟睡しております。 「寝るな!!」 「うお!?こういう時、二度寝もデフォだよね!?」 「デフォじゃねえ!そんなに寝ようとするなら、私が着替えさせるわよ」 「え、それは、勘弁してください」 いやそうなこなたの顔を見て、ふとかがみは悪戯心が湧き、こなたの服の袖を持った。 「はーい、万歳しましょうねー」 「ちょ!?かがみん、恥ずかしいって!」 「そっちが起きないのが悪いんでしょ、はい、脱いだ脱いだ」 「自分で出来るって!子供じゃないんだから!」  こなたの言葉を無視し、服を脱がせようとして悶着する、恥ずかしがるこなたが珍しくて、余計にかがみはこなたを着替えさせようと躍起になった。そのはずみで揉み合い、二人で抱き合うようにベッドの下へ落ち、かがみの唇がこなたの頬に触れる。  そして2人は至近距離で見つめあい、なんとなく気恥ずかしくなって離れた。 「もう、素直に起きないからこんな事になるのよ」 「かがみんや、顔が赤いよ」 「べ、別にそんな事ないわよ」 「朝から私の服を脱がそうとケダモノのように襲ってくるなんて、かがみんのえっち」 「違うっつの!起こそうとしただけでしょ!」 「もう・・・朝からかがみがそんなにしたいなら・・・いいよ?」 「違うっつってんだろがああああ!!」  結局、2人は少し遅刻しました。   ・・・・・・・ 「あ~、こなちゃん、お姉ちゃん、おはよ~」  いつものように休み時間になって、自然と集まる四人組。  ただつかさだけが、少し妙な、はわ~、という感じで目が点になった表情をしています。 「どったの?つかさ」 「え、こなちゃん、何でもないと言えば、何でもないんだけど・・・」  いつも一緒に住んでいた姉が、別の家に住むようになったけど学校では会う、という状況が、なんだか珍しくてはわはわしてしまうつかさなのでした。 「もう聞いてよつかさ、こいつ、朝から全然起きなくってさ~」  と、かがみが迂闊な発言をした瞬間、みゆきさんが不思議そうな顔をしました。 「あら?昨日は、泉さんの家に泊まられたんですか、そういえば、ここ数日はお2人ともお休みだったようですけど・・・・」 「え、あ、うんまあ、昨日はちょっと、こなたんちに泊まったのよね。あはは」 「かがみんったらほんと迂闊なんだから~。そういうところも萌え~」 「殴るぞ、お前」  その会話を聞いていたつかさが、不意に真剣な表情になってかがみの袖を引き、耳打ちした。 「ねえ、お姉ちゃん」 「なによ、つかさ、急に小声になって」 「ゆきちゃんには、教えないの?」  かがみはつかさのその問いに、不意を突かれた気持ちになって押し黙った。正直に言えば、これ以上誰にも自分達の秘密を打ち明けたくないような、そういう気持ちはある。みゆきを信用していない訳ではなかったが、誰彼構わず説明しなきゃいけないようなものでもないと、かがみは思っていたのだ。 「ゆきちゃんなら、大丈夫だよ」  とつかさは、なぜか確信し切った口調で言い、みゆきに打ち明けて欲しそうに、言葉ではなく、子犬のようなきらきらしたその目で懇願した。 「な、なんで、そんなに打ち明けたがるのよ」  ちょっと弱気にかがみは言う。まるで、みゆきを信用していないみたいに思われるのが、嫌だったからだ。 「だってね。どうせゆきちゃんには隠せないと思うの。これからもずっと一緒なんだし・・・そういう時に、ずっと自分だけ秘密にされてて、たまたま何かの拍子で分かっちゃったりしたら、とっても寂しいと思うから・・・」 「う・・・それは、そうね」  つかさって、なんていうか、そういう所、鋭い・・・とかがみは、妹の意外に理知的な側面を見たような気がした。 「お姉ちゃん。ゆきちゃんは絶対、こなちゃんとお姉ちゃんのことを、変な目で見たりしないよ」  何でそんなに他人を信じられるんだろう・・・とかがみは妹の事をうらやましく思う。つかさみたいに他人を信じられたら、きっと先日みたいな騒ぎを起こさずに済んだのに、と。 「分かったわよ。でも教室じゃ無理だから、お昼休みにでも屋上行こ」  姉のその言葉に、つかさは満面の笑みを浮かべて 「うん!」  と頷いたのだった。  ・・・・・・・・ 「ってな訳なんだけど、こなたは、いい?」 いざ、屋上に行く前に、こなたの了解だけは絶対にとっておく必要がある。これは自分だけの問題ではないのだから・・・ 「異議なーし、っていうか、みゆきさんにはその内話すつもりだったよ。ほんとは、小出し小出しに様子を伺って、同性愛ってどう思う?とかそういう感じで探り探りやっていく気だったけど」  具体的にはおたくジャンルの話と絡め、百合ものやBLものについて話題を振り・・・とか細かく考えていたこなたなのだった。 「あんたはあんたで考えてんのね」  自分だけが何も考えていなかったみたいで、ちょっとかがみは凹んだ。 「いやー、かがみんの事だから、誰にも話したがらないだろうなー、とは思ってたよ」 「なんでよ」 「いやほらツンデレだから、素直に話すとか出来ないタイプ?」 「ツンデレ言うな!」  2人で話しながら階段を上る、みゆきとつかさは、先に屋上で待っている筈だった。歩きながら、かがみはふと階段で立ち止まり、心中の不安を隠すため、ことさら軽い口調で言った。 「もし・・・みゆきが、私達のことやだ、って言ったらどうする?」  ん~、とこなたは、いつものように感情の分からない(≡ω≡.)みたいな顔で言う。 「それはそれで仕方ないじゃん。性格の不一致で友達付き合いはお仕舞いってことで。私とかがみの関係を認められない人と、友達付き合いしてもしょうがないよ」 「まあ、そうだけど・・・」 私だったら、今までみゆきと友達だった時間、楽しかった時間を思い出して、悲しくなっちゃうな。きっと、裏切られたみたいに思っちゃう。こなたはそういうので傷つかないんだろうか? 「みゆきが認めてくれないと、私はなんか、悲しいな」  それは、とても寂しい。 「しょうがないよ。そういうのって、無理に認めさせるもんじゃないと思うし。友達付き合いとかって、無理矢理するもんじゃないもの」 こなたってドライだ、とかがみは思う。そういえば初めて会った時は、こなたはもうちょっとクールな感じだった気がする。おたくってまあ、大体そうなんだけど、他人との関係より自分の趣味ばかり大事にして、ドライなところがある・・・ような気がする。 「みゆきは・・・」  私は、みゆきと友達じゃなくなっちゃったら、寂しいんだけどな。こなたは多分、寂しくないのか、その寂しさが平気なのか、どっちかなんだろうな。 「どったの?かがみん?」 「ううん、なんでもない」  ちょっともやもやしながらも、2人で階段を上っていく。 「あのさ、大丈夫だよ、かがみ」 「何がよ」 「みゆきさんは多分、私達を拒否したりしないよ」  つかさもそう言っていた。  こなたもそう言う。  そして、実は私も、みゆきなら私達を拒否しないと思っているのだ。 「うん、私も、そう思うよ」 「あ、やっと笑った」 「何が?」 「いや、かがみ、ずっと難しい顔してたからさ。やっぱりかがみの笑顔はいいねえ、萌えるねえ~」 「萌えるとか言うな!」  恥ずかしくなって顔を赤くしながら、足早に屋上に出る。そこでは、つかさとみゆきが先にフェンスの辺りで待っていた。二人は振り返り、とりあえずの笑顔を見せた。その笑顔に留保があるのは、みゆきの少し緊張した様子ですぐに分かる。 「なんだか、秘密のお話があるとか・・・」  みゆきは、そぅ言って私達三人を見回した。 「私から言おうか?」  とそれに答えて、こなたがすすんで前へ出た。なんとなくこなたに任せてしまいたい、甘えた気持ちが一瞬浮かんで、それを心の中で打ち消す。私はあえて何も考えず、えいやっと口から放り出すみたいに言った。 「あのね、みゆき、私とこなた、付き合ってるの」  心の奥底から勇気を振り絞って、眩暈さえ起こしそうな気持ちで、私はみゆきに目で訴えかける。みゆきはぱあっと笑顔を浮かべて、いつものように頬に手を当て、まあ、と小さく声をあげた。 「お2人とも、おめでとうございます、うふふ」  拍子抜けするくらい簡単に、みゆきは私達を祝福した。それが余りに簡単だったので、私はつい、言ってしまう。 「あの・・・みゆきは、その、私達のこと・・・変に思わないの?」 「変、ですか?」 「いやその、何ていうか・・・」 たずねた私の方がしどろもどろになってしまう。みゆきはまた、うふふ、と笑って言った。 「かがみさん。私は、知識を蓄えるのを良しとする人間なんですよ。知識は正しく使えば、概ね変な偏見を持たないで済むようになる力がある、と私は信じているんです。色々なものを見て回れば、世の中には様々な方がいる事が分かりますし、その方々の立場や意見も、ある程度は分かるようになります。日本にも同性愛の方々のコミュニティと言うのはありますし、かがみさんも、よろしければ一度、そういう方々のホームページなども見てみてはどうでしょうか?」  不意にそう言われ、私は動揺した。 「え、いや、私は別に同性愛って訳じゃ、その、こなたが、好きなだけで・・・って何言ってるんだ私は!?」  自分で言った台詞で真っ赤になるのを、みゆきは少し微妙な表情で眺め、こなたはにやにや笑った。 「可愛いこと言うねえ、かがみん。私のことが、なんだって?ん?ん?」  べったべたとまとわりつき、抱きつくこなたに私は恥ずかしくなり、ついでにさっきの余りにも恥ずかしい台詞を思い出し、逆切れするしかなかった。 「うるさーい!もう!ひっつくな!!」 「ツンデレなんだからかがみったら~、嬉しいくせに~」  もう、殴るしかなかった。だからがつんと行かせてもらいましたよ。グーで。 「いた~い、かがみったらきょ~ぼ~」 「うるさい!離れろと言ったのに離れないからだ」  しかし、そんな様子を何故かみゆきさんは、少し真顔でじっと、何か言いたそうに見ていて、それに何かを察したこなたがすばやく言った。 「私は、同性愛者ってことでもいいよ。かがみの事好きだから」 「ちょ!?おま!?」  みんなの前で恥ずかしいこと言うなよ!? 「うふふ、泉さんったら・・・本当にかがみさんのこと、好きなんですね」 「そりゃそうだよ~。かがみんは俺の嫁、ってなもんだよ」 「ちょっとこなた!」  自分でも顔が赤くなっているのが分かる。なんだこれ、新手の拷問か? 「うふふ、末永くお幸せに」 「なんかやめてよ!?その結婚を祝福するみたいなの!」 「あ、そんでね、みゆきさん、かがみはいま、私と暮らしてるんだ」  その言い方だと、二人だけで同棲してるみたいに聞こえるだろ?!わざとか!?わざとなのか!? 「あら~、そうだったんですか」  スルー!?聞かないの詳しく!? 「あ、お姉ちゃん、そろそろチャイム鳴りそうだね。降りよう」 「誤解を解く機会無し!?」  なんだかみゆきが誤解をしてそうな気が、ひしひしとする。いいのかこれで?  みんなで階段を降りる時に、何故かみゆきは、私にこう尋ねた。 「女性しか好きになれない女性の同性愛者の方のこと、かがみさんは、どう思いますか?」  その問いに、私はみゆきだけにしか聞こえないように気をつけて、こう答えたのだった。 「いや、ほんと、私は、こなたの事が好きなだけだから」  と・・・。   ・・・・・・・・・・・・・   「よ~う、ひぃらぎ~、お前何日も休んで何してたんだよ~う」 日下部が肩をバシン、と叩いて私に言ってくる。そういえば、峰岸や日下部にはどうしようか・・・でも打ち明けはじめると切りがないし、こなたの意見も聞いてないし・・・私は2人にはこなたとの事は秘密にすることにした。 「ちょっと風邪よ、長引いちゃったの」 まるっきり嘘でもない。湖に落ちたら風邪くらいは引く。 「風邪~、この時期にすげえな~。私、あんまり風邪引いたことないぜぇ~」 確かに日下部は風邪を引かなそうだ。 「あ、ひぃらぎ、いま私のこと馬鹿だと思ったろ!?」 「まさか」  よく分かったな、日下部。そう思っていると、峰岸が言った。 「でも、柊ちゃんが元気になってよかったわ。みさちゃん、とっても心配していたのよ。携帯でも連絡つかないし」  その携帯は電源オフのまま湖の底へお亡くなりになりました。環境破壊への第一歩だ。 「あ、携帯、壊れちゃって。もうすぐ、新しい携帯買うから、そしたらまた登録しなおしになると思う。ごめんね」 「ん~~」  日下部が腕を組んでうなりだした。なんだろう、まさか考えごとって事はありえないから、新手の体操だろうか。 「なんか、柊、変だぞ」 「何がよ」 「なんつーか、なんか、なんか変なんだってヴァ!」 「変な事言ってるのはお前だろ・・・」  ちょっと呆れて私が言うと、峰岸が助け船を出した。 「柊ちゃん、何か、私達に隠してない?急に何日も学校休むし、携帯は壊れたっていうし、今日のお昼も、いつも行かない屋上に行ってたみたいだし・・・ってことを、みさちゃんは言いたいんだと思うの」 「そう!あやの!まさにそれだってヴぁ!」 「峰岸は日下部の通訳かよ・・・」 力の無い突っ込みをしながらも、峰岸や日下部が、私の変化に敏感に反応していることだけは、間違いなく分かった。いつまで誤魔化せるだろう・・・一瞬、2人に打ち明けたい誘惑に私はかられた、だがこなたの許可もとっていないし、みゆきの時のように、2人は絶対大丈夫と太鼓判を押してくれる誰かも居なかったのだ。 「学校休んだのは風邪だし、携帯は洗濯しちゃったの。屋上に行ったのは、たまたまそういう気分だっただけよ」 「ん~~なーんか納得いかねー、なーんか腑におちねー」 じろ~、と横目で見てくる日下部に、峰岸がやんわり注意した。 「みさちゃん、柊ちゃん困ってるじゃない。あんまりしつこくするんじゃないの」 「え~、だってあやの~、ひぃらぎ冷たいぜ~、私らとは付き合い長い筈なのに、ちびっこ達との方を大事にしてる気がするじゃんか~」 う・・・日下部はなんだか鋭い。最近は、妹や日下部の鋭さを再発見して驚くばかりだ、なんていうか、バカだけどバカじゃない。でもつかさは日下部と一緒にしたら怒るかな?日下部のバカさは、筋金入りだから。そういうバカさも、なんというか、私から見ると羨ましいというか、愛せるというか、まあ、要は友達ってことだ。  しかし、日下部より、こなたの方を大事にしてる、と来たか・・・。 「別に、そんな事ないわよ。あんたらの事だって大事な友達だと思ってる・・・」 言いながら、胸が痛い。そんな事を言いながら、隠し事をしている自分を意識せざるを得ないから・・・こなたと相談して、峰岸や日下部に打ち明けていいかどうか決めなきゃ・・・。  でもこうやって、打ち明ける相手を広げているうちに、いずれは不特定多数に私達のことがバレていくのかも知れない。特に日下部なんかバカだから、つい誰かに喋っちゃいそう。 「柊ちゃん、何か困った事があるのなら、いつでも言ってね」  そう言って峰岸が話を打ち切り、話題は全く別の事へ移っていった。しかし休憩時間の終わりに、日下部は念を押すように私に、珍しくまじめな顔で、少し不満そうに言うのだった。 「私は柊のこと、大親友だと思ってるかんね!そっちがどう思ってるか知んないけど!」  私だってそう思ってるわよ。バカ。   ・・・・・・・・・・・・・・・ 「ねえ、日下部達に、打ち明けていいかな?」 いつもの四人で下校中に、私はこなたに相談した。やっぱり峰岸や日下部は親友だから・・・。 「別にいいよ。かがみが打ち明けたいなら」 こなたは軽い調子で、まるで興味がないみたいに言う。なんだか、こなたは時々クールだな、と思う。 「でもそうやって打ち明けていくうちに、いろんな人に広まっていくのよ?日下部なんかバカだから、誰かに喋っちゃうかも知れないし」 「みさきちは、多分誰にも言わないよ」 不思議と、こなたは静かにそう断言した。 「何で分かるのよ」 「勘。それにね、かがみん、隠しおおせなくてもしょうがないよ。学校中にバレたとしても、それはそれ、だよ。学校中にバレたら、みゆきさんやつかさは、私達と距離を置く?」 「そんな筈ないよ!」 と予想外な強さでつかさが言い、みゆきさんもまじめな顔で、「泉さんもかがみさんも、何があっても大事なお友達ですよ」と言った。 「ほらね、問題ないよ」 「でも・・・」  バレたらきっと、影でこそこそ色々言われるんだろうな。興味本位で不愉快な事をいっぱい言われるかも知れない。男子なんか特に無遠慮だから、無神経なこと、いっぱい言われそうで・・・ 「他人の目、やっぱり気になる?かがみん?」 「そりゃあね・・・」  でも・・・前ほどじゃない。分かってくれる人がいるって事、今は知ってるから。 「かがみの事は絶対私が守るからさ。辛い事とか、あったら私に言うといいよ」  とこなたは、珍しく真剣な顔で言う。 「バカね。平気よ。そんな弱くないわよ、私」  もし、こなたとの関係が学校の噂として流れたら・・・つまり、柊はレズで、泉と付き合ってるんだぜ、などという噂として、口さがない連中が話題として弄ぶなら・・・私はそれをただ無視するだろう。そういう話題を喜ぶのは恐らく私の知らない人たちで、親友や近しい人、日下部、峰岸、つかさ、みゆき・・・私の大事な友達であれば、むしろ何も言わずとも理解してくれる気がした。  でも一体、誰かが同性愛であるとかないとか、そんな事がどうして口さがない噂として喜ばれるのだろう。人々は一体、そんな噂で何を求め、何を得たというのだろうか。  ともあれ、私は明日には、日下部達に打ち明けようと思った。 &br() [[後日談的な何か (後編)>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/981.html]]へ &br()
&br() 朝目覚めると、まだ慣れない新しい自分の部屋。 かがみは泉家の一員として、その新しい部屋に住んでいる。 着替えて、髪を結んで、準備もばっちり。 新しい朝を迎えるからには、最初からきちんとしなきゃね。 そう思いながら部屋を出て、少し緊張しながら居間に向かえばそこには・・・ 誰もいなかった。 「って、まだ寝てるの!?」 思わずこけそうになりながら階段を上り、こなたー!と大声を出しながらこなたの部屋のドアをノックすると、ゾンビみたいな顔したこなたが無防備に寝巻き姿のまま出てきた。 「・・・いやあ、かがみんや、朝早いねえ」 「早くねえよ!あんたが遅すぎんの!遅刻しちゃうわよ!大体、他の人は?!」 「お父さんは昨日徹夜だったんじゃないかなあ。ゆーちゃんはなんか用事あるとかで早く出たよ」 「じゃあ、あんたは何で遅いのよ」 「いや~、ネトゲが思った以上に盛り上がって盛り上がって、ついつい眠る時を失うのは、デフォだよ、デフォ」 「そんなデフォはお前だけだ!」  なんて生活リズムがバラバラな家族なのか、そうじろうさんは小説家だから仕方ないとは言え、もう少し考えて欲しいものだ。  朝ご飯とか、一体今までどうしてたんだろ? 「とにかく、朝ごはんくらいは作ってあげるから、さっさと着替えなさい!」 「は~い」  寝ぼけ眼で部屋に戻っていくこなた。  それを見送るかがみだったが、 ふと気になってこなたが入っていった部屋をノックしてみると、反応がない。仕方なくあけると、そこにはベッドで眠るこなたの姿があった。すやすやと完全に熟睡しております。 「寝るな!!」 「うお!?こういう時、二度寝もデフォだよね!?」 「デフォじゃねえ!そんなに寝ようとするなら、私が着替えさせるわよ」 「え、それは、勘弁してください」 いやそうなこなたの顔を見て、ふとかがみは悪戯心が湧き、こなたの服の袖を持った。 「はーい、万歳しましょうねー」 「ちょ!?かがみん、恥ずかしいって!」 「そっちが起きないのが悪いんでしょ、はい、脱いだ脱いだ」 「自分で出来るって!子供じゃないんだから!」  こなたの言葉を無視し、服を脱がせようとして悶着する、恥ずかしがるこなたが珍しくて、余計にかがみはこなたを着替えさせようと躍起になった。そのはずみで揉み合い、二人で抱き合うようにベッドの下へ落ち、かがみの唇がこなたの頬に触れる。  そして2人は至近距離で見つめあい、なんとなく気恥ずかしくなって離れた。 「もう、素直に起きないからこんな事になるのよ」 「かがみんや、顔が赤いよ」 「べ、別にそんな事ないわよ」 「朝から私の服を脱がそうとケダモノのように襲ってくるなんて、かがみんのえっち」 「違うっつの!起こそうとしただけでしょ!」 「もう・・・朝からかがみがそんなにしたいなら・・・いいよ?」 「違うっつってんだろがああああ!!」  結局、2人は少し遅刻しました。   ・・・・・・・ 「あ~、こなちゃん、お姉ちゃん、おはよ~」  いつものように休み時間になって、自然と集まる四人組。  ただつかさだけが、少し妙な、はわ~、という感じで目が点になった表情をしています。 「どったの?つかさ」 「え、こなちゃん、何でもないと言えば、何でもないんだけど・・・」  いつも一緒に住んでいた姉が、別の家に住むようになったけど学校では会う、という状況が、なんだか珍しくてはわはわしてしまうつかさなのでした。 「もう聞いてよつかさ、こいつ、朝から全然起きなくってさ~」  と、かがみが迂闊な発言をした瞬間、みゆきさんが不思議そうな顔をしました。 「あら?昨日は、泉さんの家に泊まられたんですか、そういえば、ここ数日はお2人ともお休みだったようですけど・・・・」 「え、あ、うんまあ、昨日はちょっと、こなたんちに泊まったのよね。あはは」 「かがみんったらほんと迂闊なんだから~。そういうところも萌え~」 「殴るぞ、お前」  その会話を聞いていたつかさが、不意に真剣な表情になってかがみの袖を引き、耳打ちした。 「ねえ、お姉ちゃん」 「なによ、つかさ、急に小声になって」 「ゆきちゃんには、教えないの?」  かがみはつかさのその問いに、不意を突かれた気持ちになって押し黙った。正直に言えば、これ以上誰にも自分達の秘密を打ち明けたくないような、そういう気持ちはある。みゆきを信用していない訳ではなかったが、誰彼構わず説明しなきゃいけないようなものでもないと、かがみは思っていたのだ。 「ゆきちゃんなら、大丈夫だよ」  とつかさは、なぜか確信し切った口調で言い、みゆきに打ち明けて欲しそうに、言葉ではなく、子犬のようなきらきらしたその目で懇願した。 「な、なんで、そんなに打ち明けたがるのよ」  ちょっと弱気にかがみは言う。まるで、みゆきを信用していないみたいに思われるのが、嫌だったからだ。 「だってね。どうせゆきちゃんには隠せないと思うの。これからもずっと一緒なんだし・・・そういう時に、ずっと自分だけ秘密にされてて、たまたま何かの拍子で分かっちゃったりしたら、とっても寂しいと思うから・・・」 「う・・・それは、そうね」  つかさって、なんていうか、そういう所、鋭い・・・とかがみは、妹の意外に理知的な側面を見たような気がした。 「お姉ちゃん。ゆきちゃんは絶対、こなちゃんとお姉ちゃんのことを、変な目で見たりしないよ」  何でそんなに他人を信じられるんだろう・・・とかがみは妹の事をうらやましく思う。つかさみたいに他人を信じられたら、きっと先日みたいな騒ぎを起こさずに済んだのに、と。 「分かったわよ。でも教室じゃ無理だから、お昼休みにでも屋上行こ」  姉のその言葉に、つかさは満面の笑みを浮かべて 「うん!」  と頷いたのだった。  ・・・・・・・・ 「ってな訳なんだけど、こなたは、いい?」 いざ、屋上に行く前に、こなたの了解だけは絶対にとっておく必要がある。これは自分だけの問題ではないのだから・・・ 「異議なーし、っていうか、みゆきさんにはその内話すつもりだったよ。ほんとは、小出し小出しに様子を伺って、同性愛ってどう思う?とかそういう感じで探り探りやっていく気だったけど」  具体的にはおたくジャンルの話と絡め、百合ものやBLものについて話題を振り・・・とか細かく考えていたこなたなのだった。 「あんたはあんたで考えてんのね」  自分だけが何も考えていなかったみたいで、ちょっとかがみは凹んだ。 「いやー、かがみんの事だから、誰にも話したがらないだろうなー、とは思ってたよ」 「なんでよ」 「いやほらツンデレだから、素直に話すとか出来ないタイプ?」 「ツンデレ言うな!」  2人で話しながら階段を上る、みゆきとつかさは、先に屋上で待っている筈だった。歩きながら、かがみはふと階段で立ち止まり、心中の不安を隠すため、ことさら軽い口調で言った。 「もし・・・みゆきが、私達のことやだ、って言ったらどうする?」  ん~、とこなたは、いつものように感情の分からない(≡ω≡.)みたいな顔で言う。 「それはそれで仕方ないじゃん。性格の不一致で友達付き合いはお仕舞いってことで。私とかがみの関係を認められない人と、友達付き合いしてもしょうがないよ」 「まあ、そうだけど・・・」 私だったら、今までみゆきと友達だった時間、楽しかった時間を思い出して、悲しくなっちゃうな。きっと、裏切られたみたいに思っちゃう。こなたはそういうので傷つかないんだろうか? 「みゆきが認めてくれないと、私はなんか、悲しいな」  それは、とても寂しい。 「しょうがないよ。そういうのって、無理に認めさせるもんじゃないと思うし。友達付き合いとかって、無理矢理するもんじゃないもの」 こなたってドライだ、とかがみは思う。そういえば初めて会った時は、こなたはもうちょっとクールな感じだった気がする。おたくってまあ、大体そうなんだけど、他人との関係より自分の趣味ばかり大事にして、ドライなところがある・・・ような気がする。 「みゆきは・・・」  私は、みゆきと友達じゃなくなっちゃったら、寂しいんだけどな。こなたは多分、寂しくないのか、その寂しさが平気なのか、どっちかなんだろうな。 「どったの?かがみん?」 「ううん、なんでもない」  ちょっともやもやしながらも、2人で階段を上っていく。 「あのさ、大丈夫だよ、かがみ」 「何がよ」 「みゆきさんは多分、私達を拒否したりしないよ」  つかさもそう言っていた。  こなたもそう言う。  そして、実は私も、みゆきなら私達を拒否しないと思っているのだ。 「うん、私も、そう思うよ」 「あ、やっと笑った」 「何が?」 「いや、かがみ、ずっと難しい顔してたからさ。やっぱりかがみの笑顔はいいねえ、萌えるねえ~」 「萌えるとか言うな!」  恥ずかしくなって顔を赤くしながら、足早に屋上に出る。そこでは、つかさとみゆきが先にフェンスの辺りで待っていた。二人は振り返り、とりあえずの笑顔を見せた。その笑顔に留保があるのは、みゆきの少し緊張した様子ですぐに分かる。 「なんだか、秘密のお話があるとか・・・」  みゆきは、そぅ言って私達三人を見回した。 「私から言おうか?」  とそれに答えて、こなたがすすんで前へ出た。なんとなくこなたに任せてしまいたい、甘えた気持ちが一瞬浮かんで、それを心の中で打ち消す。私はあえて何も考えず、えいやっと口から放り出すみたいに言った。 「あのね、みゆき、私とこなた、付き合ってるの」  心の奥底から勇気を振り絞って、眩暈さえ起こしそうな気持ちで、私はみゆきに目で訴えかける。みゆきはぱあっと笑顔を浮かべて、いつものように頬に手を当て、まあ、と小さく声をあげた。 「お2人とも、おめでとうございます、うふふ」  拍子抜けするくらい簡単に、みゆきは私達を祝福した。それが余りに簡単だったので、私はつい、言ってしまう。 「あの・・・みゆきは、その、私達のこと・・・変に思わないの?」 「変、ですか?」 「いやその、何ていうか・・・」 たずねた私の方がしどろもどろになってしまう。みゆきはまた、うふふ、と笑って言った。 「かがみさん。私は、知識を蓄えるのを良しとする人間なんですよ。知識は正しく使えば、概ね変な偏見を持たないで済むようになる力がある、と私は信じているんです。色々なものを見て回れば、世の中には様々な方がいる事が分かりますし、その方々の立場や意見も、ある程度は分かるようになります。日本にも同性愛の方々のコミュニティと言うのはありますし、かがみさんも、よろしければ一度、そういう方々のホームページなども見てみてはどうでしょうか?」  不意にそう言われ、私は動揺した。 「え、いや、私は別に同性愛って訳じゃ、その、こなたが、好きなだけで・・・って何言ってるんだ私は!?」  自分で言った台詞で真っ赤になるのを、みゆきは少し微妙な表情で眺め、こなたはにやにや笑った。 「可愛いこと言うねえ、かがみん。私のことが、なんだって?ん?ん?」  べったべたとまとわりつき、抱きつくこなたに私は恥ずかしくなり、ついでにさっきの余りにも恥ずかしい台詞を思い出し、逆切れするしかなかった。 「うるさーい!もう!ひっつくな!!」 「ツンデレなんだからかがみったら~、嬉しいくせに~」  もう、殴るしかなかった。だからがつんと行かせてもらいましたよ。グーで。 「いた~い、かがみったらきょ~ぼ~」 「うるさい!離れろと言ったのに離れないからだ」  しかし、そんな様子を何故かみゆきさんは、少し真顔でじっと、何か言いたそうに見ていて、それに何かを察したこなたがすばやく言った。 「私は、同性愛者ってことでもいいよ。かがみの事好きだから」 「ちょ!?おま!?」  みんなの前で恥ずかしいこと言うなよ!? 「うふふ、泉さんったら・・・本当にかがみさんのこと、好きなんですね」 「そりゃそうだよ~。かがみんは俺の嫁、ってなもんだよ」 「ちょっとこなた!」  自分でも顔が赤くなっているのが分かる。なんだこれ、新手の拷問か? 「うふふ、末永くお幸せに」 「なんかやめてよ!?その結婚を祝福するみたいなの!」 「あ、そんでね、みゆきさん、かがみはいま、私と暮らしてるんだ」  その言い方だと、二人だけで同棲してるみたいに聞こえるだろ?!わざとか!?わざとなのか!? 「あら~、そうだったんですか」  スルー!?聞かないの詳しく!? 「あ、お姉ちゃん、そろそろチャイム鳴りそうだね。降りよう」 「誤解を解く機会無し!?」  なんだかみゆきが誤解をしてそうな気が、ひしひしとする。いいのかこれで?  みんなで階段を降りる時に、何故かみゆきは、私にこう尋ねた。 「女性しか好きになれない女性の同性愛者の方のこと、かがみさんは、どう思いますか?」  その問いに、私はみゆきだけにしか聞こえないように気をつけて、こう答えたのだった。 「いや、ほんと、私は、こなたの事が好きなだけだから」  と・・・。   ・・・・・・・・・・・・・   「よ~う、ひぃらぎ~、お前何日も休んで何してたんだよ~う」 日下部が肩をバシン、と叩いて私に言ってくる。そういえば、峰岸や日下部にはどうしようか・・・でも打ち明けはじめると切りがないし、こなたの意見も聞いてないし・・・私は2人にはこなたとの事は秘密にすることにした。 「ちょっと風邪よ、長引いちゃったの」 まるっきり嘘でもない。湖に落ちたら風邪くらいは引く。 「風邪~、この時期にすげえな~。私、あんまり風邪引いたことないぜぇ~」 確かに日下部は風邪を引かなそうだ。 「あ、ひぃらぎ、いま私のこと馬鹿だと思ったろ!?」 「まさか」  よく分かったな、日下部。そう思っていると、峰岸が言った。 「でも、柊ちゃんが元気になってよかったわ。みさちゃん、とっても心配していたのよ。携帯でも連絡つかないし」  その携帯は電源オフのまま湖の底へお亡くなりになりました。環境破壊への第一歩だ。 「あ、携帯、壊れちゃって。もうすぐ、新しい携帯買うから、そしたらまた登録しなおしになると思う。ごめんね」 「ん~~」  日下部が腕を組んでうなりだした。なんだろう、まさか考えごとって事はありえないから、新手の体操だろうか。 「なんか、柊、変だぞ」 「何がよ」 「なんつーか、なんか、なんか変なんだってヴァ!」 「変な事言ってるのはお前だろ・・・」  ちょっと呆れて私が言うと、峰岸が助け船を出した。 「柊ちゃん、何か、私達に隠してない?急に何日も学校休むし、携帯は壊れたっていうし、今日のお昼も、いつも行かない屋上に行ってたみたいだし・・・ってことを、みさちゃんは言いたいんだと思うの」 「そう!あやの!まさにそれだってヴぁ!」 「峰岸は日下部の通訳かよ・・・」 力の無い突っ込みをしながらも、峰岸や日下部が、私の変化に敏感に反応していることだけは、間違いなく分かった。いつまで誤魔化せるだろう・・・一瞬、2人に打ち明けたい誘惑に私はかられた、だがこなたの許可もとっていないし、みゆきの時のように、2人は絶対大丈夫と太鼓判を押してくれる誰かも居なかったのだ。 「学校休んだのは風邪だし、携帯は洗濯しちゃったの。屋上に行ったのは、たまたまそういう気分だっただけよ」 「ん~~なーんか納得いかねー、なーんか腑におちねー」 じろ~、と横目で見てくる日下部に、峰岸がやんわり注意した。 「みさちゃん、柊ちゃん困ってるじゃない。あんまりしつこくするんじゃないの」 「え~、だってあやの~、ひぃらぎ冷たいぜ~、私らとの方が付き合い長い筈なのに、ちびっこ達との方ばっかり大事にしてる気がするじゃんか~」 う・・・日下部はなんだか鋭い。最近は、妹や日下部の鋭さを再発見して驚くばかりだ、なんていうか、バカだけどバカじゃない。でもつかさは日下部と一緒にしたら怒るかな?日下部のバカさは、筋金入りだから。そういうバカさも、なんというか、私から見ると羨ましいというか、愛せるというか、まあ、要は友達ってことだ。  しかし、日下部より、こなたの方を大事にしてる、と来たか・・・。 「別に、そんな事ないわよ。あんたらの事だって大事な友達だと思ってる・・・」 言いながら、胸が痛い。そんな事を言いながら、隠し事をしている自分を意識せざるを得ないから・・・こなたと相談して、峰岸や日下部に打ち明けていいかどうか決めなきゃ・・・。  でもこうやって、打ち明ける相手を広げているうちに、いずれは不特定多数に私達のことがバレていくのかも知れない。特に日下部なんかバカだから、つい誰かに喋っちゃいそう。 「柊ちゃん、何か困った事があるのなら、いつでも言ってね」  そう言って峰岸が話を打ち切り、話題は全く別の事へ移っていった。しかし休憩時間の終わりに、日下部は念を押すように私に、珍しくまじめな顔で、少し不満そうに言うのだった。 「私は柊のこと、大親友だと思ってるかんね!そっちがどう思ってるか知んないけど!」  私だってそう思ってるわよ。バカ。   ・・・・・・・・・・・・・・・ 「ねえ、日下部達に、打ち明けていいかな?」 いつもの四人で下校中に、私はこなたに相談した。やっぱり峰岸や日下部は親友だから・・・。 「別にいいよ。かがみが打ち明けたいなら」 こなたは軽い調子で、まるで興味がないみたいに言う。なんだか、こなたは時々クールだな、と思う。 「でもそうやって打ち明けていくうちに、いろんな人に広まっていくのよ?日下部なんかバカだから、誰かに喋っちゃうかも知れないし」 「みさきちは、多分誰にも言わないよ」 不思議と、こなたは静かにそう断言した。 「何で分かるのよ」 「勘。それにね、かがみん、隠しおおせなくてもしょうがないよ。学校中にバレたとしても、それはそれ、だよ。学校中にバレたら、みゆきさんやつかさは、私達と距離を置く?」 「そんな筈ないよ!」 と予想外な強さでつかさが言い、みゆきさんもまじめな顔で、「泉さんもかがみさんも、何があっても大事なお友達ですよ」と言った。 「ほらね、問題ないよ」 「でも・・・」  バレたらきっと、影でこそこそ色々言われるんだろうな。興味本位で不愉快な事をいっぱい言われるかも知れない。男子なんか特に無遠慮だから、無神経なこと、いっぱい言われそうで・・・ 「他人の目、やっぱり気になる?かがみん?」 「そりゃあね・・・」  でも・・・前ほどじゃない。分かってくれる人がいるって事、今は知ってるから。 「かがみの事は絶対私が守るからさ。辛い事とか、あったら私に言うといいよ」  とこなたは、珍しく真剣な顔で言う。 「バカね。平気よ。そんな弱くないわよ、私」  もし、こなたとの関係が学校の噂として流れたら・・・つまり、柊はレズで、泉と付き合ってるんだぜ、などという噂として、口さがない連中が話題として弄ぶなら・・・私はそれをただ無視するだろう。そういう話題を喜ぶのは恐らく私の知らない人たちで、親友や近しい人、日下部、峰岸、つかさ、みゆき・・・私の大事な友達であれば、むしろ何も言わずとも理解してくれる気がした。  でも一体、誰かが同性愛であるとかないとか、そんな事がどうして口さがない噂として喜ばれるのだろう。人々は一体、そんな噂で何を求め、何を得たというのだろうか。  ともあれ、私は明日には、日下部達に打ち明けようと思った。 &br() [[後日談的な何か (後編)>http://www13.atwiki.jp/oyatu1/pages/981.html]]へ &br()

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