「みどりの日」(2023/02/24 (金) 22:03:51) の最新版変更点
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季節は、もう4月も終わり。
土手を彩った染井吉野の代わりに、あちこちの庭先をチューリップや芝桜が飾り、それまで
枝だけだった木々も眩しい緑を吹き出している。
ほんの1ヶ月前まで、灰色と土色で覆われていたのが嘘のような、沢山の色。
心地良い陽射しをめいっぱい浴びる花々を見ていると、それだけで足取りまで軽くなる。
新しい生活にも慣れてきたゆーちゃんが、一家(と、ほか数名)を巻き込む爆弾発言をしたのは、
街が花の色で溢れる、春真っ盛りの食卓だった。
みどりの日 ~ 世界に二つくらいありそうな庭 ~
「お姉ちゃん、うちの庭って、どんな感じだっけ?」
何の変哲もないはずだった木曜の夜。
久々に3人が揃った食卓に唐突に降ってきた言葉が、全ての始まりだった。
「うちの庭か、なかなか独創的でアバンギャルドだぞ?」
そうじろうが空気の入れ替えついでに、カーテンと雨戸を開けて、庭に光を当ててみる。
「貧乏草の花園が綺麗で、秋になるとアワダチソウが……」
人工の光に浮かび上がる庭は……なるほど、なかなかものすごい。
植えられた庭木は伸び放題。
塀には枯れたツル植物が未だにへばり付いて、未解読文字のような文様になっている。
大地から伸びているシルエットも、ぺんぺん草やイネ科の何かや……
というか、どうみても雑草です、結論。
「うわぁ……折角広い庭なのに……」
「アバンギャルドというより、野性味に溢れてるねぇ」
この家が誕生して十数年間、庭を手入れしようなんて考える人がいるわけがない。
お陰でその空間には生存競争の原理が問答無用で適用され、かつて『あのひと』が植えた
桜草やパンジーは絶滅。力ある植物が繁栄を謳歌している。
「でも、どうして庭が気になったの?」
「あの、今日みなみちゃんの家に行ったら……」
諜報員ゆーちゃんによると、みなみちゃんの家には犬が駆け回れるくらいの大きな庭があり、
花壇には色とりどりの花が、絵本の世界さながらに咲き誇っているらしい。
でもって更に丸テーブルと白いパラソルまで装備されていて、放課後は二人水入らずで、
紅茶を飲みながら勉強会をしてきたらしい。
「勉強会って、まさか性てぶりゃぁっ」
「なるほどねー。で、うちでもちょっとそういうのに憧れた、と」
「うん、そうなんだけど……」
何かの後頭部に全力の蹴りを入れながら、こなたは庭を見やる。
「ゆーちゃん、夢を壊すようで悪いんだけど、さすがにこれは……」
考えるまでもなくめんどくさすぎる。
荒廃した庭一つのために、わざわざ雑草をなぎはらったり、鋼の腕で大地を拓いたり……
……。
………………。
「はっ、お父さん」
「お、おう、なんだ、こなた?」
「やっぱりゆーちゃんのために、園芸 や ら な い か 」
突然目を輝かせ始めたこなたに、思わず戸惑うそうじろう。だが。
「え?なんでまた……うんうん……なるほど…………この際だから、それもいいな!!」
「でしょでしょ?」
「よし、じゃあ明日の朝から、ミッションスタートだ!」
こうして、とあるネタ……いや、可愛い妹のために、
よく意味を理解できないゆたかを置いてけぼりにした一大作戦が始まったのであった。
「ったく、こなたのやつ……」
久しぶりに通う夕方の道で、かがみは久方ぶりに苛々していた。
――ねぇかがみ、今日なんだけど実家の方に来れる?
――はぁ?いきなりなんで?
――漢ってやつには、どうしても成し遂げなければならないことがあるのだよ……
4限が休講になったのを幸いに、さっさと学食をかき込んで行ってしまった、こなた。
理由を聞いても意味不明で、おまけに暫くしたら、『糖急ハンズで庭師の鋏&如雨露買ってきて』
とか、これまたわけわからないメールを送ってくる始末。
「こなた……」
別に、都心からこんな所まで、いちいち呼び出されるのがむかつくんじゃない。
もちろん嬉しいわけではないけど、それ以上に、こなたと色々な場所で、色々なことをするのは
嫌いじゃないから。
かがみが、本当に嫌なのは……。
「炸裂うぅっ、がいあくらっしゃぁぁぁぁ~~~~~~~」
「のわっ!?」
合ったら文句の一つも言ってやろう……そう不機嫌を爆発させようとしていたかがみの耳に、
突如お馴染みのゆるゆるヴォイスが飛んでくる。
それを聞いて、思わず。
「変なセリフ叫ぶなっ!近所迷惑じゃないっ!」
上空のカラスが進路変更するくらいの声で叫び返しながら、かがみは大急ぎで、
震源地である塀の向こうに全力疾走していった。
「ちょっとあんた、何やってんのよ?」
「園芸だよ。昨日から花を愛する人になったのでね」
庭に駆け込んだかがみの前で、こなたは夕陽を浴びながら、にやりと微笑んでいた。
その手には大きなシャベルを構え、たった今掘り出したのだろう雑草の塊を踏み台にして
よくわからないポーズをとっている。
その横ではそうじろうが、バズーカのようなレンズを構えて、腰を押さえながら富竹富竹叫んで
いるが、多分無視しても問題ないだろう。
「あ、かがみさんこんにちは」
「こん、ばんわ……」
奥の方から、ゆたかがとてとてと挨拶にやってきた。
汚れてもいい服装に、泥だらけになった軍手。手にしたスーパーの袋から大量の雑草が
顔を出しているのを見ると……これは本当に庭仕事をしているようだ。
「……ねぇ、ゆたかちゃん、いきなりだけど、なんで家族総出で庭仕事してるの?」
「ああ、昨日みなみちゃんのお庭の話をしたら、急にこなたお姉ちゃんが言い出して……」
「ちょ、ちょっと待って??」
どういうことなのだろう。あのアキバ系ニュータイプなこなたが……と、
そこまで来た所で、ようやく気付く。本当に、どうして今まで考えなかったのだろうか。
「ちょっとこなた」
「ん?」
「単刀直入に聞くわ。これって――何のネタ?」
「ふっふっふっ、さすが私の嫁♪」
えっへん、と胸を反らした後、周囲の気配を伺って、
「ゆーちゃんの居ないうちに、こっそり教えておこう、さあ見るがいいっ」
そう言うや否や、こなたは窓際に持ってきていたパソコンの、エンターキーを叩き……
「ただの園芸には興味ありません。この中に、演劇部員、委員長、能登っぽい声の天才少女が
いたら、私の所に来てくれたまへ、以上っ!!」
どこかの団長そっくりの声が響く中、そこに映し出されたものは――
今度一緒に見ようと誘っていた某アニメ……の、原作と思われるギャルゲーの一場面だった。
思わず液晶の角度を調整して、キーボードを叩きながら『資料』を漁る。
『MISSION CLANNAD』――
一般人である(と信じている)かがみには、作品名しか分からない物体。
内容はもちろん、これがどういうキャラのどんなシナリオなのかなど、全く知らない。しかし。
「ねぇこなた、このゲームって、もしかして、その……」
「んもぅ、はっきり『エロゲー』って言えばいいのに」
「言えない!言わない!言えるかっ!」
確かに、かがみはこのゲームを知らない。
けれど以前、こなたの部屋で、『この資料』に酷似したものをプレイさせられたことがあった。
千年前から続く、家族の絆の物語だったか……とにかく、そのテのゲームの気配がする。
まあ、アレはそんな、濃厚なシーンはなかったけど……じゃくて!
こなたとそのお父さん、二人は一体この庭になんてものを作ろうとしているんだ。
「とっ、とにかく、ゆーちゃんの情操教育というか、そんな、えろ……そのテのネタは、やめ」
「あれあれ~?私は別に、『エロゲー』だとは言ってないけど?」
「んなぁっ!?」
「かがみってばえっちだね~、全年齢(一応)のゲームなのに、何を妄想してたのかな?かな?」
「だ、だって、~~~~っ!」
にゅるっと後ろに回りこんで、うなじに頬をすりすりしながら質問責め。
咄嗟に反論しても絶対に核地雷なので、かがみはひたすら真っ赤になって我慢するしかない。
「っとに、あんたは……それよりほら、頼まれもの、買ってきてあげたわよ」
「ふっ、その程度の話題転換(エサ)に私が釣られ」
「大人しく釣られとけっ」
頭を軽く小突かれて、さすがのこなたも剥がれてくれる。 と。
「かがみさん、粗茶ですけど、どうぞ」
「おぉ~ゆーちゃんサンキュー」
「あ、どうも……」
雑草を片付けて、台所に行っていたのだろう、ゆたかがぎゅうっとお盆を持って、一歩ずつ
やってきた。頑張ってバランスを取る姿勢が、何とも愛らしい。
「へぇ、なかなかいいお茶使ってるわね」
「お茶もだけど、ゆーちゃんの淹れ方がいいのだよ」
こなたの言葉に、夕焼けに染まった顔の朱が濃さを増す。
それを見て頬を緩めていると、
「なんだか、お姉ちゃんとかがみさん……結婚したての夫婦みたいですね」
「ぶばふっ!?」
「ちょ、ゆーちゃっ、まさかさっきの見てごほっごほっ」
「えっ、うん……でも、すごく可愛くて、見ていて素敵だったよっ」
ゆたかの無垢すぎるひとことに、思わず玉露スプリンクラーと化した二人。
その飛沫は夕陽に煌いて、とても綺麗だったという……。
ちなみに。
「こなたぁ、ゆたかぁ、かがみちゃん……だ、誰でもいいから、湿布貼……ハァハァ……
っだぁ゙ーー腰があ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ーーーーーっ」
娘の前でいい格好しようとして見事に下位腰椎が壊滅し、最期に撮った娘の写真を見ながら
自室で呻いていた生き物が保護されるのは、それから数時間後のことだったとか。
■ガーデニング 1日目
本日の作業: 雑草抜き、雑草抜き、水撒き
本日の負傷者: 泉そうじろう(椎間板に坐骨神経がなんとか)
本日の出費: 『庭師の鋏&如雨露』2980+1580円 『湿布』398円
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季節は、もう4月も終わり。
土手を彩った染井吉野の代わりに、あちこちの庭先をチューリップや芝桜が飾り、それまで
枝だけだった木々も眩しい緑を吹き出している。
ほんの1ヶ月前まで、灰色と土色で覆われていたのが嘘のような、沢山の色。
心地良い陽射しをめいっぱい浴びる花々を見ていると、それだけで足取りまで軽くなる。
新しい生活にも慣れてきたゆーちゃんが、一家(と、ほか数名)を巻き込む爆弾発言をしたのは、
街が花の色で溢れる、春真っ盛りの食卓だった。
みどりの日 ~ 世界に二つくらいありそうな庭 ~
「お姉ちゃん、うちの庭って、どんな感じだっけ?」
何の変哲もないはずだった木曜の夜。
久々に3人が揃った食卓に唐突に降ってきた言葉が、全ての始まりだった。
「うちの庭か、なかなか独創的でアバンギャルドだぞ?」
そうじろうが空気の入れ替えついでに、カーテンと雨戸を開けて、庭に光を当ててみる。
「貧乏草の花園が綺麗で、秋になるとアワダチソウが……」
人工の光に浮かび上がる庭は……なるほど、なかなかものすごい。
植えられた庭木は伸び放題。
塀には枯れたツル植物が未だにへばり付いて、未解読文字のような文様になっている。
大地から伸びているシルエットも、ぺんぺん草やイネ科の何かや……
というか、どうみても雑草です、結論。
「うわぁ……折角広い庭なのに……」
「アバンギャルドというより、野性味に溢れてるねぇ」
この家が誕生して十数年間、庭を手入れしようなんて考える人がいるわけがない。
お陰でその空間には生存競争の原理が問答無用で適用され、かつて『あのひと』が植えた
桜草やパンジーは絶滅。力ある植物が繁栄を謳歌している。
「でも、どうして庭が気になったの?」
「あの、今日みなみちゃんの家に行ったら……」
諜報員ゆーちゃんによると、みなみちゃんの家には犬が駆け回れるくらいの大きな庭があり、
花壇には色とりどりの花が、絵本の世界さながらに咲き誇っているらしい。
でもって更に丸テーブルと白いパラソルまで装備されていて、放課後は二人水入らずで、
紅茶を飲みながら勉強会をしてきたらしい。
「勉強会って、まさか性てぶりゃぁっ」
「なるほどねー。で、うちでもちょっとそういうのに憧れた、と」
「うん、そうなんだけど……」
何かの後頭部に全力の蹴りを入れながら、こなたは庭を見やる。
「ゆーちゃん、夢を壊すようで悪いんだけど、さすがにこれは……」
考えるまでもなくめんどくさすぎる。
荒廃した庭一つのために、わざわざ雑草をなぎはらったり、鋼の腕で大地を拓いたり……
……。
………………。
「はっ、お父さん」
「お、おう、なんだ、こなた?」
「やっぱりゆーちゃんのために、園芸 や ら な い か 」
突然目を輝かせ始めたこなたに、思わず戸惑うそうじろう。だが。
「え?なんでまた……うんうん……なるほど…………この際だから、それもいいな!!」
「でしょでしょ?」
「よし、じゃあ明日の朝から、ミッションスタートだ!」
こうして、とあるネタ……いや、可愛い妹のために、
よく意味を理解できないゆたかを置いてけぼりにした一大作戦が始まったのであった。
「ったく、こなたのやつ……」
久しぶりに通う夕方の道で、かがみは久方ぶりに苛々していた。
――ねぇかがみ、今日なんだけど実家の方に来れる?
――はぁ?いきなりなんで?
――漢ってやつには、どうしても成し遂げなければならないことがあるのだよ……
4限が休講になったのを幸いに、さっさと学食をかき込んで行ってしまった、こなた。
理由を聞いても意味不明で、おまけに暫くしたら、『糖急ハンズで庭師の鋏&如雨露買ってきて』
とか、これまたわけわからないメールを送ってくる始末。
「こなた……」
別に、都心からこんな所まで、いちいち呼び出されるのがむかつくんじゃない。
もちろん嬉しいわけではないけど、それ以上に、こなたと色々な場所で、色々なことをするのは
嫌いじゃないから。
かがみが、本当に嫌なのは……。
「炸裂うぅっ、がいあくらっしゃぁぁぁぁ~~~~~~~」
「のわっ!?」
合ったら文句の一つも言ってやろう……そう不機嫌を爆発させようとしていたかがみの耳に、
突如お馴染みのゆるゆるヴォイスが飛んでくる。
それを聞いて、思わず。
「変なセリフ叫ぶなっ!近所迷惑じゃないっ!」
上空のカラスが進路変更するくらいの声で叫び返しながら、かがみは大急ぎで、
震源地である塀の向こうに全力疾走していった。
「ちょっとあんた、何やってんのよ?」
「園芸だよ。昨日から花を愛する人になったのでね」
庭に駆け込んだかがみの前で、こなたは夕陽を浴びながら、にやりと微笑んでいた。
その手には大きなシャベルを構え、たった今掘り出したのだろう雑草の塊を踏み台にして
よくわからないポーズをとっている。
その横ではそうじろうが、バズーカのようなレンズを構えて、腰を押さえながら富竹富竹叫んで
いるが、多分無視しても問題ないだろう。
「あ、かがみさんこんにちは」
「こん、ばんわ……」
奥の方から、ゆたかがとてとてと挨拶にやってきた。
汚れてもいい服装に、泥だらけになった軍手。手にしたスーパーの袋から大量の雑草が
顔を出しているのを見ると……これは本当に庭仕事をしているようだ。
「……ねぇ、ゆたかちゃん、いきなりだけど、なんで家族総出で庭仕事してるの?」
「ああ、昨日みなみちゃんのお庭の話をしたら、急にこなたお姉ちゃんが言い出して……」
「ちょ、ちょっと待って??」
どういうことなのだろう。あのアキバ系ニュータイプなこなたが……と、
そこまで来た所で、ようやく気付く。本当に、どうして今まで考えなかったのだろうか。
「ちょっとこなた」
「ん?」
「単刀直入に聞くわ。これって――何のネタ?」
「ふっふっふっ、さすが私の嫁♪」
えっへん、と胸を反らした後、周囲の気配を伺って、
「ゆーちゃんの居ないうちに、こっそり教えておこう、さあ見るがいいっ」
そう言うや否や、こなたは窓際に持ってきていたパソコンの、エンターキーを叩き……
「ただの園芸には興味ありません。この中に、演劇部員、委員長、能登っぽい声の天才少女が
いたら、私の所に来てくれたまへ、以上っ!!」
どこかの団長そっくりの声が響く中、そこに映し出されたものは――
今度一緒に見ようと誘っていた某アニメ……の、原作と思われるギャルゲーの一場面だった。
思わず液晶の角度を調整して、キーボードを叩きながら『資料』を漁る。
『MISSION CLANNAD』――
一般人である(と信じている)かがみには、作品名しか分からない物体。
内容はもちろん、これがどういうキャラのどんなシナリオなのかなど、全く知らない。しかし。
「ねぇこなた、このゲームって、もしかして、その……」
「んもぅ、はっきり『エロゲー』って言えばいいのに」
「言えない!言わない!言えるかっ!」
確かに、かがみはこのゲームを知らない。
けれど以前、こなたの部屋で、『この資料』に酷似したものをプレイさせられたことがあった。
千年前から続く、家族の絆の物語だったか……とにかく、そのテのゲームの気配がする。
まあ、アレはそんな、濃厚なシーンはなかったけど……じゃくて!
こなたとそのお父さん、二人は一体この庭になんてものを作ろうとしているんだ。
「とっ、とにかく、ゆーちゃんの情操教育というか、そんな、えろ……そのテのネタは、やめ」
「あれあれ~?私は別に、『エロゲー』だとは言ってないけど?」
「んなぁっ!?」
「かがみってばえっちだね~、全年齢(一応)のゲームなのに、何を妄想してたのかな?かな?」
「だ、だって、~~~~っ!」
にゅるっと後ろに回りこんで、うなじに頬をすりすりしながら質問責め。
咄嗟に反論しても絶対に核地雷なので、かがみはひたすら真っ赤になって我慢するしかない。
「っとに、あんたは……それよりほら、頼まれもの、買ってきてあげたわよ」
「ふっ、その程度の話題転換(エサ)に私が釣られ」
「大人しく釣られとけっ」
頭を軽く小突かれて、さすがのこなたも剥がれてくれる。 と。
「かがみさん、粗茶ですけど、どうぞ」
「おぉ~ゆーちゃんサンキュー」
「あ、どうも……」
雑草を片付けて、台所に行っていたのだろう、ゆたかがぎゅうっとお盆を持って、一歩ずつ
やってきた。頑張ってバランスを取る姿勢が、何とも愛らしい。
「へぇ、なかなかいいお茶使ってるわね」
「お茶もだけど、ゆーちゃんの淹れ方がいいのだよ」
こなたの言葉に、夕焼けに染まった顔の朱が濃さを増す。
それを見て頬を緩めていると、
「なんだか、お姉ちゃんとかがみさん……結婚したての夫婦みたいですね」
「ぶばふっ!?」
「ちょ、ゆーちゃっ、まさかさっきの見てごほっごほっ」
「えっ、うん……でも、すごく可愛くて、見ていて素敵だったよっ」
ゆたかの無垢すぎるひとことに、思わず玉露スプリンクラーと化した二人。
その飛沫は夕陽に煌いて、とても綺麗だったという……。
ちなみに。
「こなたぁ、ゆたかぁ、かがみちゃん……だ、誰でもいいから、湿布貼……ハァハァ……
っだぁ゙ーー腰があ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙ーーーーーっ」
娘の前でいい格好しようとして見事に下位腰椎が壊滅し、最期に撮った娘の写真を見ながら
自室で呻いていた生き物が保護されるのは、それから数時間後のことだったとか。
■ガーデニング 1日目
本日の作業: 雑草抜き、雑草抜き、水撒き
本日の負傷者: 泉そうじろう(椎間板に坐骨神経がなんとか)
本日の出費: 『庭師の鋏&如雨露』2980+1580円 『湿布』398円
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- GJ!!笑 -- 名無しさん (2023-02-24 22:03:51)
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