妖怪

 

 ○妖怪

人とも獣とも異なる、この世のものとは思えぬ超常的種族、
それを、古来より人は鬼や妖怪と呼び、怖れてきた。
彼らの発祥は謎に包まれており、
戯術革命が成った今となっても解き明かされていない。
最も、現代においては、調査対象とすべき妖怪の数が
絶対的に不足しているというのも大きい。

近年になって妖怪の数が激減したのには理由がある。
“彼ら”の力の源は人々の『未知への怖れ』である。
科学技術が進歩し、人々の心から未知への恐怖が取り除かれ、
言い伝えや怪談が、単なる迷信や絵空事になっていくにつれて・・・
人々は妖怪や幽霊を信じなくなり、それが妖族の衰退に繋がっている。
現代において生き残っているのは、
妖怪と人間、あるいは妖怪と獣の血を引く半妖怪が大半で、
それらも妖族としての力を失いつつある。
中には、極稀であるが妖怪としての純血を守り続けている生粋の妖怪も存在する。
最も、そう言った者達は、まず人前に現れない。
何故ならば、種族として既に完成されている妖怪は、
人間や他の種族と関わらずとも生きていける手段を確立しているからである。



○半妖族の歴史

妖怪の血を引く者達は、その異能ゆえに人々から迫害を受け、
滅ぼされるか、異能を活かせる裏の世界へと身を投じるしかなかった。
その裏の世界・・・主に乱波や隠密として、彼ら半妖の異能は多いに重宝された。
決して明るみに出る事は無いが、戦国時代においては、
諸国の大名は半妖から成る隠密組織を抱え、
諜報や暗殺の駒として使っていたという。
戦乱の世で、人間と同じく半妖達もまた、闇の世界で闘争に明け暮れた。
特に半妖を重用した戦国大名が、かの織田信長である。
信長の急激な勢力拡張の理由の一つに、
半妖からなる隠密部隊の暗躍がある。
彼は、その名の通りの妖族を従えし『魔王』だったのだ。
だが、本能寺の変によって、信長は死に・・・
同時に半妖達の運命は激変する。

新たに天下人の座へと昇った豊臣秀吉は、半妖の跳梁跋扈を嫌悪した。
人とは異なる彼らが、いずれ人間に牙を剥くと考えたのだ。
なお、その考えについては、
他の大名・・・徳川家康らも意見を同じくしていた。
そんな中・・・秀吉と、天才軍師・竹中半兵衛が目をつけたのは、
妖怪を特に忌み嫌う仏教勢力である。
しかも、法力や道術を身に付けた、半妖と同じく超人的な力を振るう・・・
『宗派七獄』を初めとする、異端の戦斗集団である。

ここに、『仏と妖の大戦争』が勃発した。
日本が東西に分かれて争う中、裏の世界でも、
人間と半妖、互いの存亡を賭けた死闘が始まったのだ。
結果としては・・・戦いは半妖族の惨敗に終わる。
今まで半妖を重用していた大名らは、秀吉に呼応してほぼ全てが彼らを見捨てた。
後ろ盾を失った半妖族は、もはや狩られる側の弱者。
秀吉の支援を受けた仏法勢力は、数で勝るはずの半妖族を圧倒した。
半妖達は徹底的に狩り尽くされ、『赤霧』などの僅かな血族だけが残された。
残った極少数の血族は、再び闇の世界に潜り、人間たちの闘争に関わる事を禁じた。

だが、その仏法勢力もまた、秀吉が天下人から陥落したことによって衰退する。
新たに頂点に君臨した徳川家康は、
彼ら闇の勢力そのものを、日本から排除しようとした。
その時暗躍したのが、伊賀・甲賀忍軍および、百々目胡蝶斎率いる<万寿菊>である。
胡蝶斎の巧みな煽動工作により、宗派七獄は壮絶な同士討ちに突入する。
やがてまだ争いを止めようとしなかった半妖勢力までも巻き込まれ、
闇の世界でかつてない殺戮の嵐が吹き荒れた。
宗派七獄もその大半が壊滅し、半妖族もまた再起の機会を完全に断ち切られた。
戦国時代が終わると同時に・・・闇の戦乱もまた終わりを告げたのだ。