AQUEARIUM ストーリー



三角地帯編


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帝国を揺るがした大渦事件から十年。
アトランティス統一帝国?領第十三区、通称三角地帯では、多くの海族らが集まり、深界魚のハントや財宝の探索を行っていた。

海族団、紅い海の女王、通称ロッソ団は、旗揚げ以来最大の危機に瀕していた。
戦闘要員であるFFライダーが、引退に故郷の親の病気、帝国軍への引き抜きによって、一人を除き全員抜けてしまったのだ。
船長アドリアーナ・ロッソと副船長ティレニア・ネイシスは急ぎ新規団員の募集を始めるが、腕利きは皆帝国軍や大手の海族団に所属しており、求める人材は中々集まらなかった。
また、大勢のライダーを雇う金も、中堅どころのロッソ団には無かった。

そんな中、一つの噂が流れる。
『三角地帯の狂い鮫』として知られる凄腕のFFライダー、ジョーズがアドリア達のいる区画に流れて来たというものだ。
アドリアは早速ジョーズをスカウトしようと情報を集めるが、凶暴な性格で孤独を好み、今までどの海族団にも所属しなかったジョーズを引き入れるのは、難しいことに思われた。

そんな中、ある飲食店でアドリア達はついにジョーズと遭遇。
因縁をつけてきた荒くれ者を軽々と倒すその強さを見て、ますます惚れ込む。早速誘いの声をかけるも、にべもなく断られてしまう。

アドリア「私の名はアドリア-ナ・ロッソ!貴女、私の眼鏡に叶ったわ。貴女を我が紅い海の女王に加えてあげる!!感謝しなさい!!」
ジョーズ「うぜぇきめぇ死ね消えろ」

しかし、ジョーズは全財産の入った財布を道すがら落としたことに後から気付き、料理の代金を払えずにいた。
アドリアはすかさず代金を立て替える代わりに、ロッソ団に入れと提案する。
意外にも、ジョーズはあっさりこれを承諾。かくしてジョーズは、紅い海の女王の一員となるのだった。
一方、ティレニアの手には、ジョーズのものとおぼしき財布が……

ジョーズを加えたロッソ団は、深界魚のハントに向かう。アドリアの命令を全く聞かないジョーズだが、
ティレニアは彼女を巧みに誘導し、結果、ロッソ団は多大な戦果を上げることに成功する。




その帰り道、クリムゾン・ロブスター号に、一機のFFが衝突する。
頭部に巨大な刀を乗せたFFに乗るライダーの名は対馬 汐。東方の龍宮国から、修行および深界魚狩りのために三角地帯にやって来たという。
しかし、後先考えずに突っ走る内、食料も路銀も底を尽き、彷徨っているところでロブスター号に激突したのだ。
食料を分けて貰った汐は、その返礼として、追い掛けて来た深界魚をあっさり片付けて見せる。
その腕前を知り、アドリアは彼女をロッソ団にスカウトする。
命を救って貰った恩と、破損したロブスター号の修理代を返すため、汐はロッソ団に加わることとなった。

しかし、汐はジョーズを目にした途端、初対面にも関わらず強い敵意を向け、ジョーズも売られた喧嘩は買うとばかりに、たちまち険悪になる。

汐「何故だか分からぬ……だが、拙者の血が、お主の存在を許容できんのだ!!」
ジョーズ「ただでさえうぜぇ場所だってのに、更にウザい奴が増えやがった……一匹ぐらい殺しといてもいいよな」


先行き不安な一行であるが、前借りで修理したロブスター号の修理費を稼ぐため、成体の出没するD層へのハントに赴く。
狩場に出てからも反目しあうジョーズと汐だが、ティレニアは二人の競争心を煽り立て、効果的な支援をすることで、二匹の猛獣を見事制御下に置くことに成功。
今回もまた、成体深界魚のアクアパールを含む、多くの戦利品を獲得するのだった。



突き抜けたアタッカーであるジョーズと汐。
そして、その二人を意のままに操る指揮官ティレニア。
FFライダーがたった三人にも関わらず、ロッソ団は破格の快進撃を続け、三角地帯中の注目の的になりつつあった。

そんなある日、アドリアは三角地帯の監督官であり、古くからの知り合いでもあるアラル・バルティモア湘佐から、帝国軍への引き抜きの誘いを受ける。
が、アドリアはそれを断った。彼女には、帝国に近付きたくない理由があるようだ。

アラル「そうか。ま、どんな事情があるのか知らんが、深く追求はせんよ。気が向いたらいつでも声をかけてくれや」

また、ロッソ団には多くの入団希望者が訪れるが、アドリアは懐事情を理由に、これも断っていた。
彼女は、団の規模を無闇に大きくすることを厭い、あえて少数精鋭に留めておく節があった。

やがて……三角地帯に、ロッソ団の名も霞むような、大きな波が押し寄せようとしていた。
黒髑髏海賊団(スクレット・ノワール)。
同じ海族や、民間の商船のみならず、時には官憲にさえ手を出すこともある彼らは、新興勢力でありながら急激に規模を拡張し、三角地帯のルールを壊す存在として恐れられ始めていた。
いや、ある意味彼らは、三角地帯の無法の法を、誰より正しく体現する者たちだった。

アドリア達は、アラルからの依頼を受け、黒髑髏の討伐に向かう。数の差は相手が上だが、深界魚をも恐れぬ精鋭三人の敵ではなく、あっさり蹴散らしてしまう。
後少しで敵の船を制圧できたところで……横から乱入して来た帝国軍が、敵船を拘束してしまった。
獲物を横から掻っ攫われ、アラルが嘘をついたのかと怒るアドリアだが、帝国軍を率いているのはアラルではなかった。
帝国宰相、ハンス・ベーリングの騎士、セレベス・フリーダと名乗った彼女は、アラルの補佐、および後任として、新たに中央が送り込んだ指揮官だった。官憲が相手では、アドリアも何も言えなかった。

セレベス「もはやお前たち海族の出る幕は無い。帝国領の治安は、我々帝国正規軍が取り締まる!」




監督府に着任したセレベスはこれまでのアラルの温いやり方を否定するように、三角地帯の取り締まりを強めていった。
多くの不審人物が検挙され、すねに傷持つ海族達も動きづらくなっていった。

だが、そんな官憲の動きに竦むどころか、黒髑髏はさらに奔放に暴れ回り、両者の争いは激化していった。
いざ戦いとなれば、犯罪者崩れの集まりである黒髑髏が、最新鋭機を扱う帝国軍に敵うはずがなく、逃げる海賊を追う軍……というやり取りが続いていた。

しかし、この日は違った。いつものように、黒髑髏の船を制圧したセレベスの下に、正体不明のFFが現れる。
シャチの姿をしたそのFFは、遊んでいるかのようなライディングでセレベスを翻弄。駆動系を破壊して行動不能にしてしまう。
だがそこに、帝国の撃ち漏らしを捕まえるためにやって来たロッソ団が駆け付け、シャチのFFと交戦を開始。
しかし、シャチのFFは予測不能な動きで飛び回り、ジョーズ、汐、ティレニアの三人を持ってしても捕らえられず、最後には逃げ去ってしまう。

あろうことか、逃げた先は深界魚成体の住まうD層だった。深追いは危険と判断し、アドリアは追跡を止める。
動けないセレベスは何故追わないのかと叫ぶが、アドリアは成功する可能性の低い戦いに、部下の命を賭けるつもりはないと返す。

アドリア「私達の仕事は、いつだって命懸け。だからこそ、冒す危険はいつも最小限にしないといけない。
正体不明の強敵に、D層の深界魚……消耗した状態で、こいつらを同時に相手にすることを考えると、割に合わなさすぎるわ。
私の貴重な戦力を、そんな無謀な戦いに放り込めますかっての。
船長(わたし)が危険の計算をトチったら、うちみたいな海族はそれでおしまいなのよ」


これ以降、セレベスはやや態度を軟化させるようになる。

シャチのFFは、その後オルカと呼ばれることとなり、度々帝国軍の前に姿を現すことになる。



帝国でテロ活動を行う組織の首領格が、黒髑髏の支援を受け、三角地帯に潜伏しているという情報を耳にしたアドリアは、帝国軍に先んじて彼らを捕縛すべく動き出す。
帝国軍を上手く足止めとして使い、生身でも圧倒的な暴力を振るうジョーズと汐の活躍もあり、ロッソ団は独自に首領の捕縛に成功する。後は彼を帝国軍に引き渡せば、莫大な謝礼を貰えるはずだった。
だが、その男は、アドリアの顔を見るなり叫んだ。

「アドリアーナ様!?」

その言葉を聞くや、顔面蒼白になったアドリアは、訝しむ仲間達をティレニアに下がらせ、男と一対一で向かい合う。

男はウェッデルと名乗り、かつてアドリアの父と同じ派閥に属していた貴族と自らの素性を明かす。

アドリアの本名は、 アドリアーナ・デル・カンパネルラ
帝国の名家、カンパネルラ家の一人娘だったのだ。
しかし、七年前、大渦事件の後に勃発した貴族同士の抗争で、アドリアの両親は敵対貴族に殺され、彼女は騎士であるティレニアと、彼女の祖父、そしてクリムゾン・ロブスター号と共に、三角地帯まで逃げ延びていた。以後、彼女はずっと正体を隠して、海族稼業に手を染めていた。
そして、両親を裏切り、敵対勢力に情報を流した男こそ、現在帝国宰相の地位に収まっている、ハンス・ベーリングだった。
アドリアが、帝国に近付こうとしないのは、権力を握ったかつての敵に、正体を知られないようにするためだ。
ウェッデルは、アドリアの父に多大な恩を受け、それ故に父の派閥に参加して、敵対貴族と戦った。力及ばず敗れた後も、ベーリングや敵対貴族達を憎み、地下に潜って反政府活動を続けて来た。幼い頃、父に紹介された記憶が蘇る。
ウェッデルは歓喜に咽びながら言う。

ウェッデル「これも海神様のおぼしめし。アドリアーナ様! 私と共に帝国と戦い、無惨に殺されたお父様とお母様の仇を討ち、カンパネルラ家を再興しようではありませんか!
あの逆賊ベーリングとその一味を、これ以上帝国でのさばらせておくわけには行きません!!」


アドリアは、内心激しく動揺するも、右手は護身用の銃を抜き放ち……
一辺の淀みも無い動きで、ウェッデルを射殺するのだった。

他の団員達も慌てて駆け付けるが、凶悪なテロ組織の首領のこと、
ウェッデルが狼藉を働こうとしてやむなく射殺したと解釈され、深く追求する者はいなかった。
生かして捕らえたウェッデルを殺したと聞き、
貴重な情報源を失ったセレベスは激怒、やはり海族は野蛮人の集まりと軽蔑する。
アドリアは、「単に気に入らなかったから殺した。自分は所詮そういう人間」だと虚勢を張った答えを返す。

一方、一人になった後、アドリアは緊張の糸が切れて茫然自失となる。
かつての父の友を殺したこと。もしまかり間違えば、自分も彼と同じように無謀な戦いに身を投じ、犯罪者に堕ちていたかもしれなかったこと。
だがそれ以上にショックだったのは、一切の躊躇いも無く、口封じのためにウェッデルを殺したことだった。
それは、自分の不利益になると判断すれば、誰であろうと即座に殺せる、
利己的かつ冷酷な人間であることの何よりの証明だった。


つづく……