創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

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匿名ユーザー

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※時間軸はep.6、マキがモリベと公園で待ち合わせする前の出来事です

私の朝は常にブラックコーヒーから始まる。朝の寝ぼけた眼を起こすのにはこれ以上無い程の起爆剤になるからね。
私が起きる時間帯に自動的に焙煎されるブラックコーヒーの味と香ばしい香りに私の頭脳が目を覚ます。
そう言えばティマの姿が見えないな……朝一番に図書館から借りてきた本を読んでいるのだが。

と、ティマがドアを開けてコーヒーを飲んでいる私の元にトコトコと歩いてきた。その動作は小動物を思わせて何とも可愛らしい。
ティマは私の膝元に座ると、小さく首を傾げながら言った。
「ねぇねぇ、マキ。聞きたい事があるんだけど、良い?」

「ん? 私に答えられる範囲でなら、何でも構わんよ」
私がそう返答すると、ティマは続けて言葉を発した。

「えっと……マキって、ロリコンなの?」

ティマの言葉に、私は盛大にコーヒーをテーブルに吹きだした。

<ROST GORL ep side>

私の反応に驚いたティマが、台所から直ぐに濡れた雑巾を持ってきてくれた。良い子だ……発言の意味がいまいち分かりかねるが。
受け取ってテーブルを素早く拭く。引いてあるカーペットに落ちていないのが幸いだ。染みを抜くのが非常に面倒だからな。
しかしティマ……一体どうしたんだ。いきなりそんな何とも言えない質問をぶつけてくるなんて……。

「ティマ……良かったらその言葉を何処で聞いたか教えて貰えるのか? 出来るだけ詳しく」
私がそう聞くと、ティマは視線を上に向けて何か思い出すような素振りをすると、ゆっくりと話し始めた。
「最近読んだ本でね、ロリコンって人の事を知ったの。私……みたいに小さい女の子と一緒にいる様な人を指すんだよね」

待て、その解釈だと世間で父親と言われている男が何人ロリコン認定されるのか……ま、まぁ良い。ティマが物を変に覚えるのは今に始まった事じゃないし。
ティマは続けて、予想し得ない言葉を私に語った。
「でね、ロリコンってね……ちっちゃい子に酷い事する様な悪い人が多いって書いてあったの。
 ……私、なんか怖くなってそれ以上は調べなかったけど、マキは悪い人じゃない……よね?」

何の……何の本を読んだんだ? ティマ……。私はその本の出版社に苦情を入れたい気分になった。
そうだ、ここはちゃんと教えてやらないと……と思うが教えていいのだろうか。逆にティマに引かれたらと思うと正直不安だ。
というかそもそもロリコンって別に個人の性癖を指してるだけで悪い意味じゃないよな……にしては何だ、この不安感は? 

私が頭を抱えている事に気付いたのか否か、ティマは慌てて言った。
「わ、私、マキが悪い人だなんて全然思ってないよ! だってマキ……」
ティマ、ティマ。それ以上は良い。何だかフォローにならない気がする。あくまで気がするだが。
「マキは……見ず知らずの私に、新しい服を着させてくれたり図書館に連れて行ってくれたり凄い優しいもん。……それに」

「……私みたいな子のをお嫁さんにしてく」
「待て、ティマ。それ以上はちょっとまずい」

嬉しい。心の中ではティマがそんな事を思ってくれて凄く嬉しいのだが、私の中の理性がこれ以上いけないと言っている気がする。
このままティマの言う事を認めたら、私は自らをロリコンと認める事になるのではないかという危惧を抱いているのである。
……待て。考え方を変えてみよう。私が好きなのはティマだ。小さい女の子ではない。ティマという女性その人なのだ。
何故かって? 妻と認めた以上、私はティマを一人の女性として取られているからな。間違ってはいないと思う。いないだろ?

それよりも、だ。今はティマにロリコンの認識を改めさせなければいけない。でも無いと私の精神衛生上、すっごく悪い。
私はティマの両肩に優しく手を置き、囁きかける様にロリコンの意味を説く。ここは……
「ティマ、良いかい? ロリコンというのはね、決して悪い事では無いんだ」

ここは……ウソも方便。なるべく良い意味に改変してティマに教えよう。でも無いと色々と困る。
「男という生き物はね、ティマ。古来より小さき物、弱き物を守る為に生きているんだよ。それで……」
ティマは興味深々と言った輝いた目で私を見上げる。……痛い。嘘をついていると思うとその目は私の心にズバズバと突き刺さる。
「……それで、ロリコンとはそういう男達に対して、人々が付けた名誉ある呼称なんだ」

とは言え、ティマが興味深々なら問題無い。このまま……嘘を付き通す。大人になると人は汚くなるってのを、今私は実感している。
「実はロリコンには由来があってね。悲しい事にあまり知られていない事なんだが……」

「昔々、とある国で人々を恐怖の渦に落とし入れた大盗賊がいたんだ。その盗賊達は物を奪い、人を殺し、そして国ごと奪っていった。
 そんな日、その大盗賊のボスは若くて小さい……そう、ティマの様な女の子達を誘拐していったんだ。己の快楽の為にね」

「しかし、そんなボスを倒す為に立ち上がった一人の英雄がいた。彼の名はロリ・コン。コン一族なる勇敢な一族の末裔だ」
自分で話していて馬鹿馬鹿しくなる。しかし途中で止める訳にはいかない。

「ロリ・コンはそんなボスを倒す為に仲間達と共に大盗賊に立ち向かい……若くしてこの世を去った。
 しかしロリ・コンは自らの命を犠牲にして、女の子達と国を奪い返したんだ。ロリコンの偉業は、細々と、人々の間で後世まで伝えられている……でだ、ティマ」

ここからが本題だ。まぁティマは静かに聞いてるから、多分信じてくれると思う。……あぁ、心が痛い。
「ロリコンって言葉は、そんなロリ・コンの様に、果敢にも君の様な女の子を身を呈して守る男の人に対して付けられてる呼称なんだ。決して悪い意味では無いのだが……」

私はワザとオーバーアクションで大きくため息をついた。如何にも時勢に失望しているかのごとく。正直、今私は私自身に失望しているが。
「最近、物を知らない評論家が、由来も知らずに子供を酷い目にあわす輩に対して、ロリコン、ロリコンとまるで侮蔑する様に使うんだ。
 この事象は非常に嘆かわしい。本当に嘆かわしい」

「良いかい、ティマ。ロリコンとは素晴らしい言葉なんだ。だからこそ、あまり口に出してはいけない。
 そういう品の無い評論家みたいになっちゃうからね。それはつまり、ロリコンという言葉の価値を下げる事に繋がる」
私がそう言うと、ティマは頷いた。ようし、良いぞ。この様子だと、私のホラ話を信じてくれたみたいだ。ごめんな、ティマ……。

ティマは私の話が終わると、大きく頷いて、言った。
「分かった、マキ。私、今度からロリコンって言葉はあまり言わないようにする。じゃないとロリ・コンさんに失礼だもんね」

私はティマの頭を撫でながら褒める。ホントに褒めたい気分だ。何処まで純粋なのだろう、ティマは……。
「ティマは賢いなぁ、偉いぞ」
ティマは私に頭を撫でられると、何時も照れ笑いを浮かべて嬉しそうにほほ笑む。素直に思う。可愛いわ、この子。

「あ、そうだ……マキ、もう一つ良い?」
ティマはそう言って、ソファーに重ねてある本から何かを抜きだした。何か分厚いな。
そして私にその本を手渡してきた。何何……?

「ロリ・コン自叙伝……え?」
「ごめんね、マキ。私……全部知ってたの」

その時、窓を突き破り、同時にドアを破壊しながら、奇妙な男達が入ってくた。その男達は警察官の姿をしていて……警察?
いつの間にかティマがソファーに仁王立ちし、私を見下すような眼をしながら指を指し、言った。

「マキの嘘つき! 嘘をつくのは悪い人って事だから、マキはロリコンだね! このロリコン!」

ティマの叫びに呼応するように、男達が私を罵る。しかも大合唱で。
「そうだ! 嘘つきはロリコンの始まりだ!」
「ロリコンは子供の敵! 社会から制裁を受けるべき!」
「ロリコンは須らく逮捕だ! マキ・シゲル! 貴様を逮捕する!」

家中で鳴り響く逮捕コールに、私は頭を抱えてうずくまった。こんな、こんなはずじゃ……
や、止めろ、止めてくれ! 私は、私はロリコンなんかじゃ……止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「うわぁ!!」
私は叫びながらベットから転げ落ちた。……掌と額と、その他体中の穴から汗が噴出している。
夢か……。……酷い、あまりにもひどすぎる。程度が低いってレベルじゃない。
……まるで私が自らをロリコンだという事を認めるのが怖いみたいじゃないか。どうしても私は認める気にならない。いやむしろ絶対。

しかし、別にロリコンだからと言って糾弾される理由も無いよな。あくまで(私個人は否定するが)個人の性癖の違いだけだ。
無論、手を出す輩は静粛されるべきだが、ロリコン自体である事は別に悪くないと思う。もう一度言うが、私は違うぞ。……誰に言っているんだ、私は。
さて、馬鹿馬鹿しい夢なんて忘れよう。今日はモリベと公園に会って、ティマの真実を知らねばならない。

リビングに行くと、ティマがソファーで本を読んでいた。……良かった。私は自然に胸を撫で下ろしていた。
「おはよう、ティマ」

早速挨拶をすると、ティマは私の方を向いた。ふむ、いつもの顔だ。やはりあれは夢だったのだろう。
「あ、おはよーマキ。あのさ……」

「聞きたい事があるんだけど、良い?」


RORICON・END(BGM:世にも奇妙な物語のテーマソング)


あ、別にループとかしません。……多分

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