創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

その3

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sousakurobo

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鋼獣(メタルビースト)へ全速で迫るリベジオンの肩を蹴り、魔王ラウディッツは放たれた砲弾の如き凄まじい勢いで天高く飛び立つ。
生身の人間なら確実に死ぬ音速を超える速度で飛翔しながらも、外見は人と変わらぬ彼は苦痛を感じる所か穏やかな微笑を浮かべている。顔以外の首から下を完全に覆う黒衣が翼のように広がりはためく。
一気に懐へ入り込んだリベジオンは腰から引き抜いた大きな黒槍を鋼獣(メタルビースト)の喉元に突き刺す。機体から走る紅い閃光が軌跡となってなだれ込み、黒槍の矛先に収束していく。
矛先の空間が歪み始める。 歪みは紅の光を通し、一点の大きな光となっていく。 そうして集められた光をリベジオンは黒槍にあるトリガーを引く事で解放した。
閃光。
それは指向性を持った強大なエネルギーとなって黒槍の矛先から解放され鋼獣(メタルビースト)の巨躯を体の中から蝕む。
貯蓄した力の全てを放出するように体の中を駆け巡り、肉体を陵辱し、存在を蹂躙し、それがそこにいたという事実を消滅させていく。 そうして鋼獣(メタルビースト)は塵芥残さず消滅した。
仲間を一瞬で葬ったリベジオンを敵と見なし向き直る九体の鋼獣(メタルビースト)だが動きが遅過ぎた。既にリベジオンは別の鋼獣(メタルビースト)の体を黒槍で貫き、先程のように容易く消滅させる。
同じやり方で六体の鋼獣(メタルビースト)を滅ぼした所でリベジオンは黒槍を腰に戻す。残り二体の内一体が突撃してくる。
リベジオンは再び黒槍を取り出しもしなければ回避もせず、向かってくる鋼獣(メタルビースト)に全速飛行、凄まじい相対速度によって一気に距離を詰めると大きく広げた右手を突き出し、腕を鋼獣(メタルビースト)の体にめり込ませた。
鋼獣(メタルビースト)の弱点である胸元の装甲の奥にあるコアを掴んで引きずり出し、血管のように繋がっている十数本の配線を力尽くで無理矢理引き千切り、握り潰す。
コアを取り出され潰された鋼獣(メタルビースト)は糸が切れた人形のように停止し、地表へ落ちていく。
リベジオンの肩、膝、背が展開して各部から紅い光りが迸る。漆黒の御身に紅蓮の光を纏う機械仕掛けの悪魔。まるでそれはこの世に破滅をもたらす魔王のように見えた。
だがリベジオンは、黒峰潤也は理由はどうあれ確かに人類を救う為に戦っていた。もう一人の魔王も。
上空から降り注ぐ炎が最後の鋼獣(メタルビースト)を覆い尽くす。ラウディッツの放った大魔法である。
「地獄の炎だけでは満足してはもらえないだろうな」
もがき苦しむ鋼獣(メタルビースト)を覆い尽くす炎が氷に変わり、炎状の氷に包まれる。
「心を凍てつかせる終焉の氷結でもまだ足りない」
ラウディッツの手から放たれた雷が氷に包まれた鋼獣(メタルビースト)を撃つ。氷が砕け散り周囲に飛び散る。
「魂を打ち砕く神の怒槌(いかずち)、遠慮無く受け取りたまえ」
ラウディッツは腕を掲げ、指を鳴らす。同時に鋼獣(メタルビースト)の全身が粉々に砕け散った。
「満足して頂けたようで何よりだ」
鋼獣(メタルビースト)の全てが二人の魔王によって殲滅された。しかし、戦いはまだ終わらない。

廃墟となったビルが墓標のように林立するゴーストタウンに、身の丈五m程はある昆虫の姿をした敵が次から次へと来襲する。
魔族。
ヴァドル隊、清水静の超重装甲強化服改、黒峰潤也のリベジオンが迎撃に出る。魔王ラウディッツも。
姿形が全く異なるとはいえ同じ魔族に遠慮も情けも無く大魔法を連発し、塵へと変える。戦闘を続け、十体程滅ぼした所で、ラウデッィツは見知った姿を目撃する。
攻撃の手を止め、空中から地表のズタズタになった道路へ降り立つ。相手も同じように、静かに降り立ち対峙する。ラウディッツは自分より遥かに大きな相手を見上げる。
幾つもの節に分かれた胴体は、縦長の楕円立体。空気を弾き飛ばせそうな肉厚な二本腕には、兇悪な棘がびっしりと並ぶ。正面から見て体幹をはみ出すほどに大きい、翼とも脚ともつかぬ何かを背負っていた。
更に仰げば、太陽を食らうように、昆虫のカミキリムシを思わせる奇妙な貌がある。禍々しい重甲殻で全身を覆った、漆黒の巨体。巨大にして頑強極まる異形の体躯に、人類の修めた物理から遥かに隔絶した異能の力を宿す。
「御久し振りで御座います、ラウディッツ殿」
昆虫の姿をした異形の怪物は、彼らが見下す人間には決して行わない丁寧な口調で静かに語る。
「ドルンドメオンか、久し振りだな」
敵意の全く無い穏やかな口調でラウディッツは呟く。黒の瘴気を纏った魔族ドルンドメオンは禍々しい外見には似合わぬ丁寧な口調で続ける。
「ラウディッツ殿、お戯れはもうお止めになってはいかがですか。貴方程の御方が人族などの味方をするなど、貴方様の品位を下げるだけで御座います」
「戯れ、か」
ラウディッツは目を閉じ、小さく呟く。
「確かに、姿形が全く異なる種族とはいえ、同じ魔族同士。戦いたくない気持ちはこちらも変わらぬ。人間がどうなろうが知った事ではないしな。だが、日出ずる国に手を出すなら話は別だッ!」
ラウディッツは閉じた目を開き、赤眼がドルンドメオンを射抜く。実体化した黒と赤の禍々しい濃縮な魔力がオーラのように全身から噴き出す。魔王の覇気に晒されたドルンドメオンは脚を後ろへ下げそうになり、こらえる。

「ならば、ラウディッツ殿。答えは一つですな」
「そういう事だ」
ラウディッツは拳を固く握り、ドルンドメオンを睨む。ドルンドメオンの体は細かく震えていた。恐怖、否、歓喜の武者震いであった。魔王と戦うなど一生に一度あるかないかである。自身が尊敬の念を抱くラウディッツが相手となれば尚更。
互いに隙を伺い合い、両者が同時に踏み込もうとした、その瞬間。
「ラウディッツ殿。申し訳ありませんが、貴方と戦う前に勝敗を決しなければならない相手がおります」
ドルンドメオンは構えを解き、ラウディッツの後ろを見ている。ラウディッツは後ろを振り向き、微笑を浮かべる。
「そうか、先約がいたか。ならば仕方が無い」
そう言うと、ラウディッツは空へ飛びその場から離れる。入れ替わるように、ボロボロの道路をスーパーカーが駆け抜けてくる。流麗なフォルムをした超高性能乗用車、透き通る空のような鮮烈な青。
『フォルムチェンジッ、ロボットフォルム』
それは、スーパーカーが放った声であった。青い車体が前転するように起き上がる。屋根側は、変形後の背面に相当する。変形を終えたスーパーカーは、正しく機械仕掛けの巨人。スーパーロボットと言えた。
車輌形態の美麗な曲面と目映い青色を受け継いだ、芸術のような機体。目鼻口の揃った精悍な貌には光があった。 巨人は自然体に構える。前腕と下腿に移動したタイヤを、慣らすようにわずかに回転。
「待っていたぞ、人族のカースト。否、瞬転のスプリガン!」
ドルンドメオンの歓喜の叫びが、荒廃した都市に響き渡る。
「ドルンドメオン、今日こそ決着を着ける」
極超音速という神速の挙動と、ミクロン単位という極微の制動とを可能とする、エーテル圧式打撃マニュピレータの油断も隙も無い完璧な構え。スプリガンとドルンドメオンは同時に踏み込み、両者の拳が激突。
青い稲妻と化した生ける鋼鉄スプリガンと、黒の瘴気を纏った魔族ドルンドメオン。二大巨人の想像を絶する激戦に、一帯の次元と空間さえ歪んで見えた。

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